異物語 作:一兵卒
025
「うぎゃあああああああああ!?」
「ッ!?」
地下十三階を飛び出して、皆の所に走っていると、突如として悲鳴が響き渡る――しかしその声に聞き覚えはない。
恐らくであるが、
地下十三階から一回上がって、地下十二階。そこは、迷宮・日本庭園・動物園と続き、ゲームセンターだったが、重要なのはそこじゃない。
「皆――!」
人吉善吉。阿久根高貴。黒神真黒が倒れ伏し、そしてもう一人、仮面をつけ得た少年が倒れていて。喜界島もがなだけが、血みどろになりながら、制服をずたずたに引き裂かれながら立っていた。
「……一体全体、どんな状況なんだ?」
「あ、阿良々木せんぱい……」
「嘘だろおい、お前王土から逃げおおせたってのか!」
正確に言えば、逃げおおせたというか、逃がされたという方が適切だが――そこを訂正したところで、どうなるという事でもないだろう。
「阿良々木せんぱい、黒神さんはどうだったの」
「……すまない。僕が目を覚ました時には、もう洗脳されていた」
「そん、な――」
「……おいおいマジかよ、洗脳作業には千八百秒――三十分!かかるって聞いたんだけどな」
――「阿呆が」
瞬間。
ゾッとするほどの気配が、周囲を支配した。
「千八百秒かけると言って千八百秒かける俺だとでも思うのか?」
周囲に散らばる硝子の破片を踏みにじりながら、その男は地下十三階より姿を現す。
「常に
そう、都城王土は断言して、一層その笑みを深めた。
「行橋!お前は名瀬と共に待機しておけ。「心」を見るのはお前の専門分野だろう?
「終わり次第って……何がだい?」
「そうか言ってなかったな。いやはや、いくら偉大なる俺としても、あそこに混じるなんてことは土台無理な話だよ」
バギャ!と。音を立てて、地下十三階への扉が、何者かの左腕と共にひしゃげながら吹っ飛ぶ――。
「は」
「は「はは「ははは「はははは「はっ「はははは「は――――!!」
飛び出した二人の女性。片方は忍野忍で、もう片方は言わずもがな黒神めだか(改)だった。先程視線を横切ったのは忍の左腕だったようだ――あいつは右腕だけで、作り出した大太刀を振るう。しかし黒神もまた化物。その一閃を右腕で防ぎながら、カウンターで蹴りを叩き込んだ。
「げ」
至極あっさりと、血反吐を破棄ながら吹き飛ばされて、無数にある筐体のうち一つに叩き付けられるも即座に復活。
心底楽しそうな笑みを浮かべながら立ち上がった。
「黒神さんと、あれは……?」
「同居人、みたいなものだよ。あいつもまた――吸血鬼だ」
「かかっ!」
高速で迫る黒神に向けて放ったパンチは、彼女が先の戦いでに習得した高千穂の異常反射神経に世てあえなく躱されてしまう。
やはり、異常反射神経と言う
「おらッ!」
――二人の化け物の戦闘を眺めている都城に向かって拳が付きだされる……が、到達する直前でその動きを止めた。
「起きたのか、随分とゆっくり寝ていたようだな。えーとたしか……
否。目覚めたのは善吉だけではない。
「!!」
「悪いが!古賀さんの件で大いに反省しているのでね都城先輩!このまま一瞬で!締め落とさせてもらいますよ――!」
もう一人の生徒会メンバ――阿久根高貴もまた目覚めていた。善吉に意識を割かれたところに、完全な不意打ちで首に腕を回し、そのまま力を込める。
「『言葉の重み』というネーミングから、俺はあなたの
「
「遅い」
「ッ!?」
ベキゴキと、両腕から嫌な音を立てながら阿久根が飛びのいた。加えて、その顔は驚愕の一色だ――まるで、自分の体が自分の意に反して動いたかのように。
「催眠術とか念動力とか重力操作とか、お前たちバトル漫画の読みすぎだよ――そもそも『言葉の重み』など俺の
二人?片方は僕として――。そこでようやく、善吉と阿久根と共に倒れていた真黒がいなくなっていることに気が付いた。
「……暦は兎も角、僕は友達の
「はっ。相変わらずと言うか、ますます盛んに変なところで律儀なやつよ……いいから教えてやれよ真黒くん。
一拍おいて、黒神真黒は語る。
「喜界島さん、君が渡り合った行橋くんは「人の心を読む」
……喜界島はそんな奴に勝ったのか?
「都城王土は、人の心を操る事が出来るんだ」
相変わらず、それを聞いただけではとんでもないチート
「正確には電磁波を発し、対象の駆動系に干渉するのだがな。行橋の読心能力が受信なら、王の支配力は発信だ」
そういいながら、都城は全身をスパークさせる――。
あらゆる攻撃を回避する男。
あらする人間を殺害する男。
あらゆる心を読み取る男と来て、あらゆるものを操る男と来たか――
「故にこそ、
再び、都城の全身がわずかにスパークし――そして、無数の筐体が浮かび上がる。
「!?」
「安心しろ、喋る機能ぐらいは残しておいてやる」
地下十二階のほとんどの筐体が浮かび上がり、そして勢いをつけて迫る――
そして、それはみんなも同じだった。その場で硬直してしまって、筐体を防ごうにも防ぐ事が出来ない。
「ッ!」
声を出すこともできない。
目を背けることもできない。
そして、そして――。
「~~~~~!!」
奇跡は起きない。
無感傷に、赤く染まったボルトだけが転がっていた。