「はっ、クソ...本物じゃないか、害虫どもの王...。今更...突然、孵化...しやがったのか...?」
アタシの心臓が、目の前のクソ虫に貫かれている。アタシの腕が、足が、辺り一面を覆ううざったらしい羽虫どもに喰われている。
「群れは絶えず繁殖しなければならない。捕食、捕食、摂取、繁殖...」
ゴミ虫の分際で、クソッタレめが。訳のわからないことをほざきやがって。殺るならさっさと殺りやがれってんだ。
「不規則で、ぞんざいな...食事。」
...クソが、アタシは...アタシはボニャテッリ家のヴァレンチーナだぞ...こんな...汚らわしい虫ケラ如きに...
ーー蜘蛛の巣焼き討ち作戦から数日後、蜘蛛の巣・前線基地
「ふわぁぁあ...おい、これどんだけ長いんだ?もう小一時間は経ってるぞ」
「いやはや、申し訳ない...いかんせん、『蜚蠊の皇帝』に関する戦闘情報は是非とも収集したいもので...なにぶん、旧G社の決戦兵器ですから、その情報は相当に貴重なのです。それに、囚人13番に関する身体検査のために必要でして...」
「ま、私はお菓子くれるから多少長くてもいいんだけどね〜」
「はい、ありがとうございます。...皇帝が使役していたとされる害虫について、もう少し詳細をお願いしたいのですが」
「それさっきも言った気がすんな?まあいいや...オッサンが纏ってる方の虫は、とにかく俺たちの攻撃を防いできたな。どこから湧いてるのか知らねえが、わんさか現れて、案内人の旦那の剣の火とかも防いでたっぽいな?」
「それとこっちに噛み付いてきた羽虫どもね。グレの攻撃に当たると、あいつらがもう前見えないくらいまとわりついてきて、ヴェルの貼ってくれたバリアもろともガシガシ噛み付いてくるの...うぇっ、気持ちわる...」
「攻撃害虫と防御害虫は特色の攻撃、防御能力にも匹敵する、と...ふむ。ありがとうございます、これで質問項目は全部です」
「ふう、やっと終わったか。映画の続きでも...」
「あぁ、それと最後にもう一つ。親指の親方が装着していた遺物『予知眼』の行方についてなのですが...」
「あぁ、あのイカれインチキ眼のことか?さっきも言ったろ、あん時はそれどころじゃなかったんだよ...」
「そーよそーよ。あの時はヒースもヴェルもみんなグレッグを元に戻すので精一杯だったんだって〜」
「...ふむ。となると...」
「完全に喪失した、と見て間違いないだろうな」
「...!赤い視線様...」
「丸3日探索して見つからないということは...そういうことだろう。貴重な遺物の回収に失敗したことは詫びよう。だが...あの状況での回収は極めて困難だった」
「つーかそもそも、あの親方はぐっちゃぐちゃのミンチになってた気がすんだが。その予知眼も完全に粉々になっちまったんじゃねぇのか?」
「...わかりました。親指の廊下の探索は打ち切るように伝えておきます」
「おっけー、これで終わり?やっとお菓子パーティーの続きができるね?」
「はっ、時計ヅラに呼ばれて目が覚めたらケーキに突っ伏してたのは笑えたな?」
「もー、思い出させないでよ...」