スキル・コレクター〜魔物を倒すとスキルをゲットできる俺は、強化合成を繰り返した最強スキルで、S級探索者へ成り上がる〜 作:有本カズヒロ
俺の眼前に倒れていたのは、ボロ雑巾のようになった部長だった。
体中の至る所に裂傷が出来ており、血が流れ出ている。
装備も鉄クズ同様にひしゃげていて、最早防具のていを成してない。
そんな中、僅かに体表に紫色の電流が流れている……部長の固有スキルだろうが、それも弱々しい。
辛うじて息をしているものの、今すぐ回復させなければマズい。
俺は部長に駆け寄ろうとするが、その眼前にタイラント・デビルが立ちふさがった。
「……ッ!」
悠然と構えているその姿に、俺は気圧されて一歩下がった。
タイラント・デビルの身長は約5メートル超、俺の3倍程ある。
悪魔の一般的なイメージに近しい、禍々しい姿をしていた。
紫と黒が混ざったような皮膚、筋骨隆々の肉体に不自然に長い手足。
頭部には2本のねじれた角が生え、三叉槍を手に持っている。
そして、何と言ってもその体を覆うように生えている、一対のコウモリのような翼……その圧倒的存在感に俺は冷や汗をかいていた。
デビルの顔は歪み、嗜虐的な笑みを浮かべている。
きっと、俺のことを新しい獲物だと思っているのだろう。
「……クソ」
この位置では、部長を助け出し、抱えて逃げることはほぼ不可能だ。
部長を助けたかったら、このデビルと戦って勝利しなければならない。
A級のグランド・ドラゴンやデビルの分体は俺でも倒せた。
俺の実力は、凄まじい速度でA級を超していったのだ。
しかし果たして、S級魔物相手に1対1で戦えるのか。
勝利を収められるのか。
ここまで順調だっただけに、目の前に立ちふさがる強敵のオーラに怯んでしまう。
……だけど。
「……やるしかねぇだろ、部長を助けるためなら」
今までにないぐらいキツく拳を握りしめ、構える。
あらゆる恐れを振り切って、俺は戦う覚悟を決めた。
俺が負ければ、ここで部長も俺も死んでしまうだけだ。
だから俺は……生きるために、戦う。
俺の戦う意志を読み取ったのか、デビルは意外そうな顔をする。
しかし、次の瞬間には、俺の目の前から既に消えていた。
「なっ……ッ!?」
眼にも止まらぬ速さで、三叉槍で腹部を横殴りされたと分かったのは、先ほどまで立っていた場所から吹き飛んでからだった。
鋭い痛みと共にゴロゴロと地面を転がるが、すぐに体勢を立て直し次の一撃に備える。
だが、デビルは俺を殴った場所から微動だにせず、黒い魔力を三叉槍の先に溜めているようだった。
やがて黒い魔力は収束していき、巨大なビーム砲として俺を穿たんと襲ってくる。
「チィッ!!『火炎』!!」
俺は強化された火炎・強で迎え撃つ。
「ぐゥッ……!!」
光り輝く炎と、暗黒のエネルギー砲の対決……その押し付け合いは、僅差で俺が破れた。
「ぐはぁっ!?」
全身に黒い魔力を一身に浴びる。
魔力で強化していても、皮膚が焼けるように痛い。
段々と装備も黒ずんでいき、ボロボロと崩れ落ちる。
強力無比な攻撃、部長は恐らくこれにやられたのだろう。
俺は耐えきれず、その場へ膝をついた。
「ハァ、ハァ」
タイラント・デビルと俺とでは、明らかに戦闘能力に差がある。
今のままでは勝てない。
俺はポーチに収納していたA級魔物の魔石を触ると、次々能力を吸収していく。
『……を獲得しました。……を獲得しました。……を獲得しました。……を獲得しました。……を獲得しました。……を獲得しました。……を獲得しました。全て既存のスキルと自動で合成されます』
脳内で絶えずレベルアップ音が響き、俺の所有スキルが急速に強化されていくのを感じる。
だが、この強化された状態で、どこまでタイラント・デビルに食らいつけるか……。
「んなこと考えても仕方ない、か。来いよ!」
挑発するように、俺はデビルへ叫ぶ。
デビルはどうやら、少しは俺を遊びがいのある人間だと判断したようで、歯をギリギリとこすり合わせながら不気味な笑みを浮かべた。
「ギ、ギヒ、ギヒ、アアアア……!」
デビルは興奮したように三叉槍を急激な速度で回転させる。
その回転はやがて風を生み……巨大な竜巻へと姿を変えた。
「アアアアアアッ!!」
デビルは俺に向けて竜巻を放つ。
「『岩石破』」!!」
俺は大量の岩石を竜巻へ向けてぶつけ、風の速度を緩め、かき消した。
その岩石の隙間を縫うように、デビルは攻撃を仕掛けてくる。
三叉槍による連続突き。
眼が段々慣れ来たのか、辛うじて避けることが出来るようになっていた。
しかし、それでも避けるのがやっと。
中々反撃に転じる隙がない。
まずは、デビルの動きを封じることから始めなければならない。
そう思った俺は、連続突きの僅かな間にスキルを放った。
「『氷結』!!」
強化された氷結は、デビルの体を一瞬で凍らせる。
しかし長くはもたない。
その前に畳みかける。
「『重力』!!『弱体化』!!」
敵を弱体化させるスキルを二つ重ね掛けし、さらにデビルの動きを封じる。
こうなると、すぐには抜け出せないはずだ。
その上で俺は、決め手のスキルを出現させた。
「喰らえ……『酸性斬撃』!!」
膨大な数の斬撃を一点集中、デビルの胸部……人間ならば心臓がある位置に向け、収束させて打ち込んだ。
100発や200発どころではない、ほぼ無限に魔力が尽きるまで撃ち込む。
「オラアアアアアア!!」
ひび割れた氷を貫通して、大量の斬撃がデビルに注ぎこまれる。
そこから少しでも傷を作ることが出来れば、中から酸がジワジワと侵食していき、やがて致命的な負傷になるはずだ。
このまま斬撃でダメージを与え続けられれば……勝てる。
はずだった。
「ギシャァッ!!」
動けないはずだったデビルは、三叉槍を振り回し、いとも簡単に氷を破壊する。
そして、重力と弱体化のスキルをものともせず上空へ飛び上がると、急降下しながら俺へ向かって高速の突きを繰り出した。
「ヅッ……!?」
あまりの一瞬の出来事に、反応が遅れる。
俺の体が泣き別れることは避けられたが、それでも胸から下半身に掛けて、深い裂傷が出来てしまった。
鮮血が噴き出し、俺は膝をつく。
焼けつくような痛み。
ポーションを飲まないと死ぬ……そう思い、ウエストポーチからポーションを取り出そうとするが、手が震え、ままならない。
そんな俺をデビルは嘲ると蹴り転がした。
呻きながら、俺は数メートルほど吹き飛ばされる。
ポーションのうち1本は地面を転がり、割れてしまった。
完全に遊ばれていた。
しかし、それだけ実力の差は歴然。
おまけにもう立ち上がるだけの気力もない。
「クソが……!」
だが、そんな状態とは裏腹に、俺は怒りに燃えていた。
部長を助け出せない、デビルに実力が届かない自分に。
そして、俺たち人間を遊び半分で殺し、己の快楽の糧とするタイラント・デビルに。
だから、俺はここで倒れる訳にはいかなかった。
何とか根性で立ち上がると、懐からさらにポーションを三本、同時に一気飲みする。
「……ふぅ」
これで、身体はある程度回復した。
しかし、このままではデビルに勝てない。
残存魔力もそんなに多くない。
それならどうするべきか……。
「俺は……可能性に賭ける」
両手に全ての種類のスキルを出現させると、俺は唱えた。
「『酸性斬撃』『岩石破』『火炎』『氷結』『重力』『弱体化』……合成だ!!」
全てのスキルを一度に合成する。
こんなこと、今までやったことはなかった……未知の方法だが、逆転できる可能性があるのは、今はこれしかない。
果たして、俺の願いは聞き入れられた。
『手持ちスキルを全て合成します』
手中にあるスキルが全て混ざり、眩い輝きを放つ。
それを警戒したのか、デビルは少し距離を取り、こちらをじっと睨み据えていた。
しかし、それも長くは続かない。
「ギシャァッ!!」
再び、デビルは俺に槍を突き刺さんがため突進してくる。
だがそれを……俺は新スキルで跳ねのけた。
まるで恒星……太陽のように強く輝く、青い光線。
それが、デビルの体を一気に吹き飛ばした。
俺の両手の中で、燦然と光を放つそのスキルこそ、既存スキルを全て合成した新スキル。
『
その光を携え、俺は空中へと吹き飛んだタイラント・デビルを睨んだ。
「さぁ、反撃開始といこうか!!」
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<保有スキル>
■群青輝砲(LV.10)
<保有武器・アイテム>
■ゴルド・ゴーレムの宝石指輪(固有スキルの能力上昇)