スキル・コレクター〜魔物を倒すとスキルをゲットできる俺は、強化合成を繰り返した最強スキルで、S級探索者へ成り上がる〜   作:PN模索中

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第10話 タイラント・デビル

 俺の眼前に倒れていたのは、ボロ雑巾のようになった部長だった。

 

 体中の至る所に裂傷が出来ており、血が流れ出ている。

 装備も鉄クズ同様にひしゃげていて、最早防具のていを成してない。

 そんな中、僅かに体表に紫色の電流が流れている……部長の固有スキルだろうが、それも弱々しい。

 辛うじて息をしているものの、今すぐ回復させなければマズい。

 

 俺は部長に駆け寄ろうとするが、その眼前にタイラント・デビルが立ちふさがった。

 

「……ッ!」

 

 悠然と構えているその姿に、俺は気圧されて一歩下がった。

 タイラント・デビルの身長は約5メートル超、俺の3倍程ある。

 悪魔の一般的なイメージに近しい、禍々しい姿をしていた。

 紫と黒が混ざったような皮膚、筋骨隆々の肉体に不自然に長い手足。

 頭部には2本のねじれた角が生え、三叉槍を手に持っている。

 そして、何と言ってもその体を覆うように生えている、一対のコウモリのような翼……その圧倒的存在感に俺は冷や汗をかいていた。

 

 デビルの顔は歪み、嗜虐的な笑みを浮かべている。

 きっと、俺のことを新しい獲物だと思っているのだろう。

 

「……クソ」

 

 この位置では、部長を助け出し、抱えて逃げることはほぼ不可能だ。

 部長を助けたかったら、このデビルと戦って勝利しなければならない。

 

 A級のグランド・ドラゴンやデビルの分体は俺でも倒せた。

 俺の実力は、凄まじい速度でA級を超していったのだ。

 しかし果たして、S級魔物相手に1対1で戦えるのか。

 勝利を収められるのか。

 

 ここまで順調だっただけに、目の前に立ちふさがる強敵のオーラに怯んでしまう。

 

 ……だけど。

 

「……やるしかねぇだろ、部長を助けるためなら」

 

 今までにないぐらいキツく拳を握りしめ、構える。

 あらゆる恐れを振り切って、俺は戦う覚悟を決めた。

 俺が負ければ、ここで部長も俺も死んでしまうだけだ。

 だから俺は……生きるために、戦う。

 

 俺の戦う意志を読み取ったのか、デビルは意外そうな顔をする。

 しかし、次の瞬間には、俺の目の前から既に消えていた。

 

「なっ……ッ!?」

 

 眼にも止まらぬ速さで、三叉槍で腹部を横殴りされたと分かったのは、先ほどまで立っていた場所から吹き飛んでからだった。

 鋭い痛みと共にゴロゴロと地面を転がるが、すぐに体勢を立て直し次の一撃に備える。

 

 だが、デビルは俺を殴った場所から微動だにせず、黒い魔力を三叉槍の先に溜めているようだった。

 やがて黒い魔力は収束していき、巨大なビーム砲として俺を穿たんと襲ってくる。

 

「チィッ!!『火炎』!!」

 

 俺は強化された火炎・強で迎え撃つ。

 

「ぐゥッ……!!」

 

 光り輝く炎と、暗黒のエネルギー砲の対決……その押し付け合いは、僅差で俺が破れた。

 

「ぐはぁっ!?」

 

 全身に黒い魔力を一身に浴びる。

 魔力で強化していても、皮膚が焼けるように痛い。

 段々と装備も黒ずんでいき、ボロボロと崩れ落ちる。

 強力無比な攻撃、部長は恐らくこれにやられたのだろう。

 

 俺は耐えきれず、その場へ膝をついた。

 

「ハァ、ハァ」

 

 タイラント・デビルと俺とでは、明らかに戦闘能力に差がある。

 今のままでは勝てない。

 

 俺はポーチに収納していたA級魔物の魔石を触ると、次々能力を吸収していく。

 

『……を獲得しました。……を獲得しました。……を獲得しました。……を獲得しました。……を獲得しました。……を獲得しました。……を獲得しました。全て既存のスキルと自動で合成されます』

 

 脳内で絶えずレベルアップ音が響き、俺の所有スキルが急速に強化されていくのを感じる。

 だが、この強化された状態で、どこまでタイラント・デビルに食らいつけるか……。

 

「んなこと考えても仕方ない、か。来いよ!」

 

 挑発するように、俺はデビルへ叫ぶ。

 デビルはどうやら、少しは俺を遊びがいのある人間だと判断したようで、歯をギリギリとこすり合わせながら不気味な笑みを浮かべた。

 

「ギ、ギヒ、ギヒ、アアアア……!」

 

 デビルは興奮したように三叉槍を急激な速度で回転させる。

 その回転はやがて風を生み……巨大な竜巻へと姿を変えた。

 

「アアアアアアッ!!」

 

 デビルは俺に向けて竜巻を放つ。

 

「『岩石破』」!!」

 

 俺は大量の岩石を竜巻へ向けてぶつけ、風の速度を緩め、かき消した。

 その岩石の隙間を縫うように、デビルは攻撃を仕掛けてくる。

 

 三叉槍による連続突き。

 眼が段々慣れ来たのか、辛うじて避けることが出来るようになっていた。

 しかし、それでも避けるのがやっと。

 中々反撃に転じる隙がない。

 

 まずは、デビルの動きを封じることから始めなければならない。

 そう思った俺は、連続突きの僅かな間にスキルを放った。

 

「『氷結』!!」

 

 強化された氷結は、デビルの体を一瞬で凍らせる。

 しかし長くはもたない。

 その前に畳みかける。

 

「『重力』!!『弱体化』!!」

 

 敵を弱体化させるスキルを二つ重ね掛けし、さらにデビルの動きを封じる。

 こうなると、すぐには抜け出せないはずだ。

 その上で俺は、決め手のスキルを出現させた。

 

「喰らえ……『酸性斬撃』!!」

 

 膨大な数の斬撃を一点集中、デビルの胸部……人間ならば心臓がある位置に向け、収束させて打ち込んだ。

 100発や200発どころではない、ほぼ無限に魔力が尽きるまで撃ち込む。

 

「オラアアアアアア!!」

 

 ひび割れた氷を貫通して、大量の斬撃がデビルに注ぎこまれる。

 そこから少しでも傷を作ることが出来れば、中から酸がジワジワと侵食していき、やがて致命的な負傷になるはずだ。

 このまま斬撃でダメージを与え続けられれば……勝てる。

 

 はずだった。

 

「ギシャァッ!!」

 

 動けないはずだったデビルは、三叉槍を振り回し、いとも簡単に氷を破壊する。

 そして、重力と弱体化のスキルをものともせず上空へ飛び上がると、急降下しながら俺へ向かって高速の突きを繰り出した。

 

「ヅッ……!?」

 

 あまりの一瞬の出来事に、反応が遅れる。

 俺の体が泣き別れることは避けられたが、それでも胸から下半身に掛けて、深い裂傷が出来てしまった。

 鮮血が噴き出し、俺は膝をつく。

 焼けつくような痛み。

 ポーションを飲まないと死ぬ……そう思い、ウエストポーチからポーションを取り出そうとするが、手が震え、ままならない。

 

 そんな俺をデビルは嘲ると蹴り転がした。

 呻きながら、俺は数メートルほど吹き飛ばされる。

 ポーションのうち1本は地面を転がり、割れてしまった。

 

 完全に遊ばれていた。

 しかし、それだけ実力の差は歴然。

 おまけにもう立ち上がるだけの気力もない。

 

「クソが……!」

 

 だが、そんな状態とは裏腹に、俺は怒りに燃えていた。

 部長を助け出せない、デビルに実力が届かない自分に。

 そして、俺たち人間を遊び半分で殺し、己の快楽の糧とするタイラント・デビルに。

 だから、俺はここで倒れる訳にはいかなかった。

 何とか根性で立ち上がると、懐からさらにポーションを三本、同時に一気飲みする。

 

「……ふぅ」

 

 これで、身体はある程度回復した。

 しかし、このままではデビルに勝てない。

 残存魔力もそんなに多くない。

 それならどうするべきか……。

 

「俺は……可能性に賭ける」

 

 両手に全ての種類のスキルを出現させると、俺は唱えた。

 

「『酸性斬撃』『岩石破』『火炎』『氷結』『重力』『弱体化』……合成だ!!」

 

 全てのスキルを一度に合成する。

 こんなこと、今までやったことはなかった……未知の方法だが、逆転できる可能性があるのは、今はこれしかない。

 

 果たして、俺の願いは聞き入れられた。

 

『手持ちスキルを全て合成します』

 

 手中にあるスキルが全て混ざり、眩い輝きを放つ。

 それを警戒したのか、デビルは少し距離を取り、こちらをじっと睨み据えていた。

 

 しかし、それも長くは続かない。

 

「ギシャァッ!!」

 

 再び、デビルは俺に槍を突き刺さんがため突進してくる。

 

 だがそれを……俺は新スキルで跳ねのけた。 

 まるで恒星……太陽のように強く輝く、青い光線。

 それが、デビルの体を一気に吹き飛ばした。

 

 俺の両手の中で、燦然と光を放つそのスキルこそ、既存スキルを全て合成した新スキル。

 

『群青輝砲(メテオ・カノン)を獲得しました。現在レベル10です』

 

 その光を携え、俺は空中へと吹き飛んだタイラント・デビルを睨んだ。

 

「さぁ、反撃開始といこうか!!」

 

 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

<保有スキル>

■群青輝砲(LV.10)

 

<保有武器・アイテム>

■ゴルド・ゴーレムの宝石指輪(固有スキルの能力上昇)

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