キャプテン翼if武蔵の10番〜三杉淳の意志を継ぐ者〜 作:ロンゲスト・ロード
冬の冷たさが和らぎ、武蔵野の街にも柔らかな桜の花が咲き誇る季節がやってきた。
4月。武蔵中学校にも、新しい制服に身を包んだ新入生たちがやってくる。
正門の前で、新緑の中に薄紅色を浮かべる桜の木を見上げ、ナトゥレーザが素直に感嘆の声を漏らした。
「翼、これか……桜って花は。すごく綺麗だな!」
「ナトゥレーザは日本で見る初めての桜だもんね。桜は新しい季節を告げる花なんだ。今日からナトゥレーザも、正式に武蔵の生徒だよ」
翼が嬉しそうに微笑んだその時、背後から軽やかな声が響いた。
「おはよう、翼君。今日からいよいよ新学期だね」
「おはよう、弥生ちゃん! ……あ、今年も同じクラスになったんだね。弥生ちゃんと一緒のクラスで、すごく嬉しいよ」
「えっ……」
不意打ちの直球な言葉に、弥生は顔をパッと赤らめ、慌てて視線を泳がせた。そんな二人のやり取りの横で、ナトゥレーザが大きな声で翼を呼ぶ。
「おい翼! 俺はどこの教室に行けばいいんだ?」
「ええと、1年の教室だよ。……あれ、ナトゥレーザのクラスメイトじゃないのか?」
ナトゥレーザが指さした先には、制服を着崩した一人の新入生が、こちらに向かって勢いよく手を振っていた。
「本当だ! あれは正己(真田の弟)たちだ! じゃあ翼、あとでな!」
無邪気に新入生の群れへと走っていくナトゥレーザを見送りながら、弥生はふぅっと息をついた。
「それにしても……今年の1年生、どれくらい入ってくるかな」
「去年の実績を考えれば、そんなに急激には増えないかもしれないけど……あまり多すぎるのも大変だしね。マネージャーは入ってくれるといいんだけど」
「そうね。今の人数でもなんとか回せるけど、正直……もう少し手がほしいところだわ。さ、翼君、私たちも教室に行かなくちゃ」
翼と弥生は並んで校舎へと歩き出す。こうして、武蔵中にも新しい春が訪れた。
それから入学式を経て一週間後。
グラウンドの脇に集まった在校生たちの前に、緊張した面持ちの新入部員たちが一列に並んだ。
「ざっと20人か。多すぎず、少なすぎずってところだな」
一ノ瀬が腕を組んで新入生たちを眺める。
「ここ2年の実績を考えれば、上出来すぎる人数だよ」本間が頷く。
「それにしても……真田、やっぱりあいつ(正己)もいるじゃねえか」
「うるさいな、ほっといてくれ!」一ノ瀬の冷やかしに、真田がボリボリと頭を掻いた。
やがて、兵藤監督が新入生たちの前に仁王立ちした。
「よし、それでは一人ずつ自己紹介を始めてくれ」
トップバッターはもちろん、この男だった。
「おーい、みんなよろしくな!」
満面の笑みで手を挙げるナトゥレーザに、一ノ瀬たちは思わず苦笑いを浮かべる。
「まあ、あいつはもう見慣れすぎて新鮮味がないけどな……」
続いて、真田の弟が緊張気味に一礼した。
「真田正己です! ポジションはDF希望です。よろしくお願いします!」
次々と自己紹介が続く中、一際目を引く大柄な体格の新入生が前に出た。
「相川大和です。小学校の頃はサッカーじゃなくて……バレーボールをやっていました。よろしくお願いします!」
その言葉に、在校生の一団がどよめいた。
「なっ……相川って、あの小学生バレーの全国大会で優勝したクラブのエースだった奴じゃないか!? なんでそんな大物がうちのサッカー部に!」
本間が目を丸くして驚く。
「あいつ、正己たちと同じ小学校でさ……ナトゥレーザが学校でサッカーをする時に『体がでかいから』って理由で、遊びでしょっちゅうゴールキーパーをやらせてたらしいんだよ」
真田がやれやれといった顔で頭を掻いた。
「お前、なんでそんな重要な情報を早く教えねえんだよ!」
「うるさい! 俺だって、あいつがそのままバレーの強豪校に進むもんだと思ってたんだよ!」
驚愕する先輩たちをよそに、自己紹介はさらに続く。
「北野陽子です。マネージャー希望です」
「同じくマネージャー希望の小山由美です。よろしくお願いします!」
二人の女子生徒の宣言に、マネージャーの弥生はパッと顔を輝かせた。
「これなら、サポート体制もすごく安心できそうね……!」
そして、列の最後の一人が静かに一歩前に出た。
「川村大介です。ポジションはMFです」
その名を聞いた一ノ瀬が、ハッと目を細める。
「おい……あいつ、明和FCにいた奴じゃないのか? なんでうちに……」
「真田、まさかあいつもナトゥレーザの繋がりか?」
「知らん!」
一癖も二癖もある新顔たちの顔ぶれを見渡し、本間は感心したように笑った。
「どちらにせよ、今年の新入部員はなかなか面白そうなのが揃ったじゃないか。なあ、翼?」
「うん!」
翼は新入生たちに向かって、キラキラと瞳を輝かせた。
部員たちの前に進み出た兵藤が、大きく頷く。
「よし、全員の自己紹介が終わったな。最後に、このチームのキャプテンである翼から挨拶だ」
一歩前に出た大空翼は、新入生一人ひとりの顔を真っ直ぐに見据え、凛とした、しかし温かみのある声で語りかけた。
「みんな、数ある学校の中からこの武蔵を選んでくれてありがとう。……正直に言うと、これからの練習はすごく厳しいです。だけど、みんなで一緒に泥だらけになって頑張ろう。そして……この仲間たちと一緒に、絶対に日本一を勝ち取ろう!」
その言葉に、新入生たちの瞳が一斉に力強い光を帯びた。
「「「はいっ!!」」」
「よし、早速全員でボールを追うぞ!」
翼の合図に、上級生も新入生も関係なく、グラウンドへと駆け出していく。
「「「おうっ!!」」」
4月の爽やかな青空の下、新しい力と圧倒的な熱量を加えた武蔵中学校サッカー部は、ますます勢いを増していく。
悲願の『全国中学校サッカー大会(全中)』への険しくも輝かしい道のりが、今、本格的に動き出そうとしていた。
いかがでしたでしょうか。新入生も新たに加わった武蔵中学サッカー部、ここからが本当の意味で全中への道のりがスタートします。
※相川大和、川村大介はオリキャラです。この代は沢田タケシが突出していますが、全小優勝も沢田1人の力だけというのは考えにくいので沢田にも同年代の相棒がいたと考えました。
今週の投稿はこれで終わりです。来週末に投稿予定です。