デミウルゴスに憑依した一般読者   作:目ん玉

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ショートショート詰め合わせ その17

黒兎可様のリクエストです。

モモンガさん、周辺の国々から縁談話とか飛ばないのかな

国家間バランスやら面子やら貸し借りやらの調整を処理できそうなのがデミえもんことレクターしかいないと忙殺

カルカとケラルトとレメディオスがデミえもんコネを利用してモモンガさんへ見合いを取り次いでくれと来て

アルベドと交渉(モモンガさんェ)、「もう好きにしてください」って感じで見合いのセッティング

お見合い結果の正否は性格的な相性次第とアルベドがどれくらい内助できてるか次第で…

 

 エ・ランテルで、ナザリック教の至高神(人間形態)とその奥方様が、たいへん仲睦まじい様子でお忍びデートを繰り返している。

 人の口に戸は立てられぬ――情報は各国の王侯貴族に広まった。

 

「……で、これ、か」

 

 モモンガは、大量に届いた釣書を見下ろした。

 釣書(つりがき、つりしょ)は、縁談(お見合い)の時にお互いで取り交わす自己紹介(プロフィール)を載せた書面のこと。身上書(しんじょうしょ)と、同義語である。――wikipediaより。

 もちろん御方々から釣書を出したことはない。一方的に送られてきたものだ。ナザリック地下大墳墓の場所が知られて――それは必要な作戦だったが――副作用として、こういうものが送りつけられるようになった。

 

「まあ、オーバーロードの姿よりは親しみやすいという事なのだろうが……」

 

 神の血を身内に引き入れたい。

 政治的な発言力の強化、レベルキャップの引き上げ、宣伝に使うなど商業利用した際の経済効果……メリットを考えれば「欲しい」と思うことに理解はできる。

 だが、モモンガの視線は冷ややかだ。

 

「……不快だな」

 

 モモンガは、フォーサイトに嘘をつかれた時くらいブチギレていた。

 この世界線のモモンガは、魔導国を立ち上げて国王として振る舞うこともなければ、孤独に支配者として振る舞うこともない。つまり中身が一般人の感覚のままだ。

 なので貞操観念も一般人のままである。

 

「王族や上位の貴族が、血筋を絶やさないように大勢の女性を抱える傾向が強いというのは知っている。

 私はアンデッドだから、寿命で死ぬ心配もないし、血筋が絶えるなどという心配もする必要がないが。

 そういう事を理解できずに送ってきたのだとしても……」

 

 めらァ……!

 絶望のオーラが漏れ出す。

 

「これが『私たちを見て送られてきた』という事が、非常に不快だ。

 シモベでもない者が、私とアルベドの間に割って入ろうなどと……!」

 

 アルベドと深い関係になって「俺の妻」と公言するほどになった今、そこへ釣書を送りつけてくるというのは、不倫の誘いをかけられているような気分だった。

 

「アルベド。

 なぜこんな物を俺の前に持ってきた?」

 

 主人を不快にさせた。

 かつてのアルベドなら、即座に平伏し、謝罪していただろう。

 だが――

 

「ありがとうございます」

 

 今のアルベドは、優しく微笑するだけだった。

 逆にモモンガのほうが混乱した。

 

「ありがとう……とは?」

 

「他の女にコナをかけられて不快に思ってくださる。

 つまりは、私だけを愛してくださっている。……という事でしょう?

 嬉しく思いますわ」

 

「…………」

 

 沈静化されたモモンガは、おもむろに立ち上がり、3人は座れそうなソファに腰掛けて腕組みした。

 するり、とアルベドがその隣に腰掛ける。

 そのまま何の会話もなくモモンガは横になり、アルベドの膝枕を楽しんだ。

 幸い、今日のモモンガは、アニメ4期の第1話でエ・ランテルにいる時に着ていたような、肩幅が普通の服装だった。

 ……………………。

 …………。

 ……。

 

「で、これをどうするべきか、ですが」

 

 落ち着いたモモンガは、ギルメンを集めて相談した。

 要するに「神の血」が欲しいわけで、別にモモンガでなくても良いわけだ。

 ならば、自分は興味ないが、誰か興味をもつギルメンがいるかもしれない。

 

「誰か、興味あります?」

 

「はいはいはーい! 俺ある! めっちゃ興味ある!」

 

 真っ先に手を挙げたのはペロロンチーノだった。

 他のギルメンたちから「お前はそうだろうな」と納得の視線が集まった。

 シャルティアは両刀遣いで調教好きだから、反対はしないだろう。

 夫婦の問題として見れば、他のギルメンが口を出すことではない。

 女性メンバーは顔をしかめていたが、知り合いの知り合いあたりまでにセフレだの不倫だのという話を小耳に挟んだ事があり、そういうのに抵抗がない女性もいるのだろうと思う程度には理解もできる。

 

「じゃあ、最終処分場は愚弟ということで」

 

「マジ!? 姉ちゃんが反対しないの珍しいね」

 

「愚弟さぁ、受け入れるんだったら、ちゃんと責任とれよ?」

 

「え? せ、責任って……?

 もちろん女の子たちは幸せにするつもりだけど……」

 

「そうだけど、そうじゃねーよ」

 

「パワーバランスの問題ですね」

 

 タブラ・スマラグディナが言った。

 神話に詳しいタブラは、神々のそういうアレコレもよく知っていた。

 たとえば――と神話うんちくを披露し始める兆候に、死獣天朱雀がすかさず口を挟む。

 

「そうですね。

 王国の女性を迎えたなら、帝国の女性は断るというわけにもいかないでしょう。

 全生命と環境の保護を打ち出して、神様やってるわけですからね」

 

「そんなの断るわけないじゃん! どんと来いだよ!」

 

 胸を叩くペロロンチーノ。

 ぶくぶく茶釜が、地を這うような声を漏らした。

 

「ほう……?」

 

「え? え? 何? それどういう……何?」

 

「聖王国の3人から釣書が来たら、どうするつもりだ愚弟?」

 

「え? 聖王国の3人って、カルカちゃんとケラルトちゃんとレメディオスちゃんのことでしょ?

 もちろん受け入れる――痛い!? なんで殴るのさ!?」

 

「パワーバランスって言ってんだろ。

 聖王国のトップ3を受け入れたら、他の国からもそれ相応の地位にある女性を迎えないとバランス取れないんだよ」

 

「え。じゃあ受け入れるけど?」

 

「聖王国は特殊な状況なんですよ、ペロロンチーノさん。

 他の国で上位の家柄にある女性が、フリーのまま妙齢で、ってのは、まずあり得ない事です」

 

 たっち・みーが言う。

 そして珍しくウルベルトが乗った。

 面白そうだから、からかってみようという魂胆だ。

 

「ああいう上流階級の奴らってのは、物心つく前に許嫁が決まってるもんだからな。

 国のトップ3と並べて恥ずかしくない家柄の……って事になると、旦那と死別した後のエルダーマダムとか、容姿や性格に問題があって貰い手がない人とかだろうぜ」

 

「た、多少なら……」

 

「ケケケ……祖母みたいな年齢でも抱けるっていうのなら、ペロさんの色好きも筋金入りだねぇ」

 

 るし★ふぁーが笑う。

 

「祖母!?!?」

 

「そうだよぉ。政略結婚に年齢なんて関係ないしね。

 それに、王侯貴族で結婚できないレベルの『問題あり』ってなると、生活全般に『介護』レベルの世話焼きが必要ってことになるよ。ひどいワガママ程度なら脅せばいいだろうけど、マジの病気とかだと……ねえ?」

 

 ペロロンチーノが「楽しむ」どころではない。

 世話をシモベに任せる手もあるが、「幸せにする」と言った手前、それでは茶釜が許さない。

 

「え? いや……え? でも、ザナック王とか……」

 

 ザナック王にそこまで深刻な問題はない。

 わずかな希望にすがりつくペロロンチーノ。

 しかし、それはあっさり砕かれた。

 

「あの人は、ラナーの子供を次の王にするために、わざと結婚しないでいるんですよ」

 

 本人から直接聞きました、とモモンガが言う。

 

「え? なんで……あっ、頭脳?」

 

 次の世代にラナーの頭脳を残すため。

 そこにクライムの精神性が加われば、まともに優秀な王へと育つことを期待できるだろう。

 組み合わせが逆になったのがバルブロだが、その場合は後継者にしなければ良い。

 今、ラナーとクライムの立ち位置は、ザナック王にとって非常に都合が良い状態だった。

 

「愚弟もラナーちゃんの爪の垢、煎じてもらうか? お?」

 

 しっかり情報は共有している御方々であった。

 ……………………。

 …………。

 ……。

 

「てことで、デミえもん召喚」

 

「無視するのが最善ですね」

 

「無視?」

 

「返事も出さずに、ってこと?」

 

「はい。当然です」

 

「なんで?」

 

「それはさすがに失礼じゃない?」

 

「いや……そうか。そういう事か」

 

「ウルベルトさん?」

 

「なるほど。いかにもそれは『神様』って感じですね」

 

「タブラさんまで?」

 

 ウルベルトとタブラが、レクターを見る。

 視線で「どうぞ」と促し、見せ場は奪わない。

 レクターは一礼して、

 

「手紙を出したら返事をもらえる……そんなフレンドリーな神様だと思われたら、世界中からどれだけ手紙が来ると思いますか?

 治安当局や冒険者ギルドを無視して集まる手紙……混乱する市場……あいつには返事が来て、どうして自分には返事が来ないのか、と不満もたまるでしょう。

 最終的に、ナザリック教は『秩序を乱す邪教』として扱われることになるかと」

 

「Oh……」

 

「一方で、返事を出さない場合は。

 治安当局や冒険者ギルドを頼って、それでも駄目な場合に頼る、最後の奇跡……神頼み。

 本当に神々に救われたのか、単なる偶然の幸運で助かったのか……いずれにせよ集まる信仰心。

 手紙の選別や下調べのために専門部署を立ち上げる必要もなく、たまたま手に取ったもの、目についたものだけを気まぐれに助けてやれば事足りる……非常にコスパが良いですね。

 送りつけられた釣書は無視しても、それとは関係なく『気に入った人間をお手つきにする神々』というのは神話にたくさん事例がございます」

 

「なるほど」

 

「そもそも平民が王城に手紙を出して返事をもらえる可能性もないのに、なぜ王より上の神々に返事をもらえるなどと思い上がっているのでしょう?

 不敬が過ぎます。この釣書を送ってきた連中には、『畏れ多い』とはどういう事か教えて差し上げねば……ああ、なるほど、それでアルベド様はこれをモモンガ様に見せたのですね。怒りに任せてゴーサインが出れば、我が意を得たり……という事ですか。

 ……うん? ではなぜ中止を……?

 …………。

 モモンガ様、アルベドを喜ばせましたか?」

 

「う……!? ん……いや、その……」

 

「まあ、とにかく、シャドウデーモンでも送って身辺調査をするべきですね。

 さっそくパンドラに……いえ、ここは少し苛烈に、デミウルゴス様を頼ることにしましょうか」

 

 ……………………。

 …………。

 ……。

 

「――ていう噂を聞いたのですけど、神々がお見合いをする予定でもありますの?」

 

「ございません。

 あったとて、ですが……カルカ様は、異形種に嫁ぐ覚悟がおありですか?

 種族的に人間を単なる食料としか思わないはずの御方もいらっしゃるのですが……亜人に襲われ続けた聖王国の方々には、つらい環境では?」

 

「私は人間がいいな、と思います」

 

「変わり身が早い……いえ、ご理解いただけて幸いです」

 

「レクター様は、そんな環境でどうして平気でいられるんです?」

 

「ケラルト様。それは私が御方々の御姿を『かっこいい』と感じる感性を持っているからです。

 私のような者にとっては普通のことですが、この世界においてそれは特殊な感覚でしょうね」

 

「亜人のごとき連中を『かっこいい』とは、意味が分からんな」

 

「姉さん……!」

 

「失礼なことを言っては駄目よ、レメディオス」

 

 たしなめるケラルトとカルカ。

 しかしレメディオスは、あまり理解していない様子だった。

 ちょっとイラッとしたレクターは、しかし直ちに不快感を表すことはしなかった。

 

「まあ、人間種にとって異形種はひとまとめに異形種なのでしょうね。

 中には人間そっくりの異形種というのも存在しますが、そうであってもレメディオスさんのような一芸特化の方に神々の領域は向きません。多方面に気を回さねばなりませんので――」

 

 ごそごそ。

 レクターは、何やら取り出し、上映を開始した。

 

「玉座に座って誰かの謁見を受けるような『らしい仕事』では悠然と振る舞うものですが、実際はそんな仕事はごく一部ですよね」

 

 映像の中で、アルベドがソファに座って右手を素早く動かしていた。

 左手はあまり動かない。その手に布があって、どうやら縫い物をしているらしい。

 右手の動きはあまりの速さで腕が複数に見えるほどだ。少なく見積もっても、1コマの撮影中に1回前後という素早さで縫っているのだろう。

 ソファの左右にエルダーリッチが2体。それぞれ書類を手に、何やら報告している。

 

「案3がアスコット・タイで、案4がループ・タイです」「案3がいいわ」「土地が痩せており作物が育ちにくいのではないかと」「マーレを派遣……いえ現場の努力で改善・状態維持できる方法を探って」「ただいまアルベド~」「おかえり~。ティールブルーのサテン地でお願い。どうだった?」「指示するのか会話するのかどっちかにしなんし!」

 

 上映終了。

 不死者のOh!ではエルダーリッチの代わりにラナーが登場しているが、この世界線でもアルベドの多忙さはそれほど変わらないようだ。

 

「神々の妻になる、というのは実際はこのようなものです」

 

 極端な事例を「平均」のように言うレクター。

 ギリギリ嘘ではない言い方ではあるが。

 印象操作である。

 

「……全力戦闘の最中に小難しい報告を受けながら世間話もする感じか……私には無理だな」

 

 自分たちが3人でやっている事を1人でこなすアルベドの姿に、レメディオスの口から魂が抜けかけた。

 分からせた。俺の勝ち。とレクターは溜飲を下げた。




19が書けたので、19まで投稿します。
意外と何とかなった……。

誤字報告を頂きました。
タイガージョー様 tino_ue様
ありがとうございます。
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