第二話 とある夏休みの
7/20 夏休み初日
朝日が差し込み、アラームが鳴り響く。
「あ゛つ゛い゛ぃぃぃ!!!!」
俺はそんな朝を告げる面々なんかが自己主張をするとっくの前に起きていた、いや、そもそも寝ていなかった。
「な゛ん゛で゛電子機器が全部逝ってるんだよ゛お゛ぉ゛!!!」
そう、何を隠そう、昨日、ファミレスで死にかけながらもなんとか家に帰って来た時には既に家じゅうの電子機器が全てぶっ壊れていた。
最初はエアコンだけだと思いうちわで凌いでいたが、夜ご飯を作ろうとして開けた冷蔵庫が冷たくないところで事態の深刻さに気づいた。
そしてその時間には店も閉まっていた訳で。
「(俺は今から買い物に行く!!!!)」
俺は電子機器一式と装備の調達をすべくあっつい部屋から外に飛び出した。
※現在時刻AM5:30
因みに早朝というのもあり外の方が幾分か涼しかった。
「はぁ....もっと能力に慣れて演算をもっと出来るようになればいいのだけれど....」
昼少し前の外を太陽様が照らしているであろうこの時間、商業施設内の涼しいベンチで自販機からかった炭酸飲料を飲みながらそんな口をこぼす。
何を隠そう俺はまだこの能力に慣れていない、そもそも、概念などの事象に適応できるようになってのはつい最近偶然視野が広がったから。
簡単に言えば今まで出来ないと勝手に思っていたが、ふと、物体を保存できるんならこの世に存在するものなんでも保存出来るんじゃね?と思いこんだのがきっかけである、まぁ、つまり屁理屈だ。
昨日、あんな動きできたのもひたすら反復練習を放課後にしたからである、運動エネルギーのストックはバッティングセンターのボールで練習をしたりしたりとかね。
もし部屋の熱をストックしようとしたものなら少しミスっただけで熱全部失って絶対零度に瞬時になってジエンドである、まぁ、いつかは練習しなければなのだが。
「(それにしても、上条はちゃんと補習を受けているだろうか)」
俺は思考がころころと変わるタイプの人間なので能力の応用や反省もそこそこに缶を握り潰しゴミ箱へと放り投げ立ち上がる。
「(まぁ、元よりがっつり戦闘なんてする気も無いのだが)」
そうである、能力を言いふらさない最大の理由、それはやらされる努力をしたくないからである。
周りに言いふらせばそれ相応に強くなくてはいけない、が、俺はそこまで能力を使いこなせていない、それ故訓練しなければ恥じをかくことになるだろう。
上にバレれば強制的にカリキュラムを組まされるだろう、そんなのごめんである。
俺は俺のやりたいときにやりたい努力をする、その程度でいい、自衛が出来る程度の、退屈を消してくれる不幸体質の友達を最低限助けられるだけでいい、そういうスタンスで生きている。
「(買い物も終わったしさっさと帰ろ...)」
俺はいやいやながらこの涼しい、楽園と呼ぶに値する大型商業施設の外へと向かった。
「やっと家がみえてきたぁ......」
そんなに家からは距離のない場所のはずだがこの暑さのおかげか時間が引き延ばされてるかの如く長く感じる。
「(家に帰ってもエアコン設置しなきゃだからまだまだ暑いし....はぁ、憂鬱だ)」
え?設置の工事とかはって?こちとら家電一式買いそろえてさらに居合道とか用の居合刀とか武器もろもろも買ったんだぞ?もう手持ちがねぇよ....、カードも契約してないし...。
能力が弱すぎて始めた武道も今となってはあまり必要ないかもしれない......買う必要なかった....。
「(暑くなりきる前に諸々終わらせておきたい...)」
現在時刻は約12:30、気温が一番高くなるのは一般的に14:00~15:00、それまでには終わらせておきたい....。
そんなことを思い少し歩調を速め自分の家へと急ぎ、階段を上がっていく。
と、その時。
「きゃあっ!!?!」
そんな悲鳴と何かが裂ける音、そして何か液体が飛び散るような音が進行方向、目的地である部屋の少し奥の方から聞こえてきた。
「(なんだ...?)」
何かただ事ではない雰囲気を感じ足早に階段を上がっていく。
「なっ、なぜ....歩く教会は.....」
曲がり角の先でそんな震えたような声が聞こえる。
「(ここの先か...)」
曲がり角を曲がるとすぐ目の前の通路で。
「...は?」
背中を斬りつけられたのか、背中から血を流し床へ倒れ動かない白い装束?を着た少女とその少し奥に奇抜な恰好をし、2mはあろう刀を持って呆然としている女の人がいた。
「っ!?」
思考がとまりかけた俺とは対照的にその女性はこちらを見て即座に戦闘態勢に入り、刀に手をかける。
「見てしまいましたか」
「....そりゃもうばっちりね」
声をかけられ、なんとか思考が戻ってくる、目の前には凶器を持っていて、明らかこの少女を傷つけたのであろう危険人物。
思考をなんとか回す、今すぐすべきは少女の治療、そしてそれをするには話し合いで解決するか、この女性を倒すか......平和的解決を望みたいが。
「.....一応、その少女、どうする気か聞いても?」
「...保護です」
どうやらまともな会話は望めないようである。
「保護って.....まぁいいや、ここから立ち去るつもりは?大人しくお縄にかかりますか?」
「あなたこそ、退いてくれませんか、こちらにはこちらの事情があるのです」
あくまでも徹底抗戦するようである、あまり時間はかけられない、少女の出血が多い。
「事情ね、それは小さい女の子を傷つけることが正当化されるほどのもの?」
「っ、それは!」
明らかに女性が動揺した、傷つけておいて動揺するのか....、どういうつもりなんだ?
「....最終警告、自首...する?」
「あなたこそ、退いてくれますか」
まぁ、わかりきっていたが頑固だ、正直、この場で戦ったとして勝てる気がする、こいつがどんなに強いかは知らないが、今の自分もまぁまぁ強いはず、最低でもレベル4並みには。
今は時間が惜しい、だから、ここでの最適解は...。
「退かないと言ったら?」
「....仕方ないです」
その女性が刀を構え抜くような動作をとる。
「七閃」
その言葉が場に落ちると共に、その言葉の通り七閃の斬撃が俺の体を斬りつけていた。
「っ!?(全く見えなかった!?そしてあの体勢からあの刀で、この距離を、視認できないスピードで七回の斬撃!!?無理があるだろ!)」
だが事実として俺の体には七つの裂傷が刻まれている、何故か浅いが紛れもなく斬撃を受けた証拠である、いくら無理に見えてもそのような居合術なのであろう。
「名乗っていませんでしたね、私の名は神裂火織です、できれば魔法名を名乗る前に禁書目録を保護したいですが...」
「ご丁寧にどうも、如月トアだ、」
魔法名?魔法と言ったか?超能力のことでなく?なんだ?本当にイカれてるのか?
「今のはほんの威嚇です、次は確実に刻みます、なので退いてください」
「....お優しいこった」
どうやら温情だったらしい、優しいんだかなんだか焦りのせいで感情ぐっちゃぐちゃになるわ...。
そしてはっきり分かった、この人は強い、だから、女の人を攻撃するのは気が引けるが本気で行くしかない。
「恨まないでくれよ」
演算を開始し、まずは距離をゼロにする。
「.......」
「(無反応か!?いや反応出来てないだけだろ!!)」
驚くほどに冷静なその姿に若干動揺しながらもそれを押し殺すように側頭部を狙い最短距離の蹴りを放つ。
「少し驚きました」
「っ、」
が、その蹴りは刀の鞘ですんでの所で止められた。
「(まっ、半分予想通りだけどね)」
今までのストック、運動エネルギーのストックを自らの足、つまり蹴りへと途中から貼り付ける、するとどうなるか、突然大きなエネルギーが出現する、そしてそのエネルギーは蹴りのエネルギーとして消費される。
「なっ!」
完璧に止めたと思った蹴り、そんな攻撃から最初よりも数倍強い力が生じる、本来ありえないことである。
当然そんなことに対応できるわけもなく神裂とやらは寮の手すりの上を奇跡的に通りながら外へと投げ出される。
「(まずは怪我人を連れて離れなければ、あの人どうせ落下しても死なないだろ)」
そう思い踵を返そうとした、その瞬間。
「七閃」
「っ!?(まさか!!)」
咄嗟に振り返り身を低くする、そしてその時には当然のように斬撃が建物を切り裂いている、辛うじて自分には当たってないがこのまま攻撃され続けられれば少女も危ないであろう。
「(俺も降りるのがいいか...)」
仕方なく自分も先ほどの斬撃で壊れた部分から飛び降りる。
「(落下の直前にエネルギーを切り取る...)」
演算、あまり慣れないタイプだが四の五のは言ってられない、ぶっつけ本番、着地の直前に演算をし、コードを抜き取るようにし勢いを殺し、音もなく着地する。
「....」
「(この人がどの程度か分からないが....やるしかないな)」
ポケットの中をまさぐる、奇跡的にあった、五百円玉が。
「(五百円玉か、贅沢だな....)」
神裂とやらも思考を巡らせてるのか、先ほどの件で警戒しているのか刀を構えながら様子見をしてくれている。
「死なないでくださいね」
「....なにを言って」
警戒するような顔をしながらそう言う神裂をよそに左腕を前に突き出し構えを取る、狙いは少し外す、あくまでも爆風だけを当てるよう。
自分だけの現実、この世界のコードを視認し、そこから何かを切り取りストックしたりストックから付け加えられる、その中で俺はあるストックを自らに付け加える。
「とっておきだから、」
次の瞬間体が帯電する、バチバチと空気中に電気が放電される、髪が少し逆立つ、普通に痛いし筋肉が強制的に固まる、けどやめはしない、もうやめられない。
コインを弾く、五百円玉が裏表を翻しながら上へと昇っていき、勢いを失い下ってくる、何度か見た技、イメトレは十分、あとは。
放つだけ。
「
次の瞬間、五百円玉はもはやコインではなく、砲弾と化していた。
こんな作品をここまで読んで頂きありがとうございます!!
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