主人公はフォドラ不幸自慢大会、山賊部門最高金賞を狙える逸材です。
描写はされませんがディミトリ達の地獄の空気を想像してください。
書いてて頭が痛くなるぐらい悲しくなりました。
はあ、みんな死んだか。俺を生かしたのは尋問のためか。まあ何でも話してやるよ。
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ま、そんなとこだな。大体しゃべったと思うぜ。
なんで山賊なんかを?へっへっへっ、お嬢ちゃん、おもしれぇこと言うな。そりゃあ奪うためよ。
いや年上か、すまんな姉さん。ん?俺はこう見えて19なんだぜ。ヒゲモジャだから貫禄あるだろ?
まあ、山賊のくだらねぇ来歴を聞いてくれや。
そっちのあんた。金髪で隻眼のあんた。そう、今にも死にそうな不健康な面をしてるが、あの時もそうだった。あんたの顔は忘れもしない、4年前だ。
あんたは覚えてないか、目の傷でぼぅっとしてたもんな、俺の村はあんたらから奪われたんだ。へっ、正しい言葉は徴発か?
あんたの軍が去ったあと、残飯や獣の皮に残った脂に捨てられた内臓と骨髄、土に溢した麦なんかを集めたんだぜ。
まあ、足りるわけがねぇんだが。
ダチの嫁さんが産後の肥立ちが悪くて死にそうになってな、知ってるだろ?俺のダチ。
⋯⋯さっきお前の槍から俺を庇って死んだ奴だ。命尽きるまで槍を離さずにお前を殺すチャンスをくれた。俺が動揺して台無しにしてしまったけど。最期まで義理堅かった自慢の友人だ。
⋯⋯アイツの嫁さん以外にも死にそうなのがいたから、山賊をやって他の村から奪おうと人を集めたのさ。みんな飢えてたしな。
けど実行する前に司祭のじいちゃんに止められてな。じいちゃんは立派な人だったから、みんな従って真面目に飢えた農民をやったさ。
俺は山に入って獲物を取ってダチの嫁さんに食わせてやったんだ。まあ、あんたの軍が狩った後だから狩場は滅茶苦茶だし獣もいなかったけどな。朽木で越冬する虫を探して食わせてたよ。
その甲斐あってダチの嫁さんは無事だったんだが、村に餓死者がぽつぽつ出てな。それで俺達の精神的支柱だったじいちゃんが死んじまった。
⋯⋯奪う事は許容できないけど、それは俺達を飢え死にさせることになる。信仰と現実で板挟みになってじいちゃんは自殺したんだ。苦悩していることは知ってたけど俺には何もできなかった。あの人に何も報いることが出来なかった。
それからは俺を叱る人はいなくなったよ。
⋯⋯あんたらがそうしたように俺達は自分より弱い連中から奪ったのさ。泣こうが喚こうが関係ねぇ、額こすりつけてみっともなく懇願した俺にあんたらが教えてくれたことだ。
歯向かった奴は殺した。残りは飢えて死んだんだろうな、まあ知ったこっちゃねぇや、身内が飯食えりゃそれでいい。あんたもわかるだろ?罪に向き合うなんてのは自己満足に過ぎねぇ。やった事の報いを受けるなら、さっさと惨たらしく死ぬしかないんだからな。
ああ、役に立つって志願した奴は拾ってやったぜ?ま、あんたらが拾わなかった俺ほどできる奴はいなかったけどな。ここはあんたらと違うところだな。
俺達のせいで死んだ連中には悪い事をしたと思ってるが、間違ったことをしたとは思っちゃいねぇ。
奪われたんだ、なら奪うしかねぇよな?
いや、あんたを責めてるわけじゃねぇんだぜ。あんただって帝国の皇帝に奪われたんだ。きっと皇帝だって誰かに奪われたんだろうよ。そんでその誰かも別の誰かに奪われたのさ。
そうじゃなきゃおかしいだろ?
なんてな!へっへっへっ。
自分がこんなに辛い思いをしているからきっとみんなが痛い目を見ていて、世界は公正に違いないって思い込みを公正世界誤謬っていうんだぜ。
世界ってのは不公平でくだらなくてどうしようもねぇものだよ。
どうせ皇帝はくだらない領土欲で戦争を起こした大悪党に決まってる。
あんたもくだらない自己保身で弱者から奪った悪党さ。
俺は真面目に働かず村人から奪うくだらない山賊。
まともなのは奪う力があったのにそれをせずに死んだじいちゃんだけさ。
⋯⋯実際、山賊を辞める機会はあった。最初の冬を乗り越えれば、後は農民に戻って土を耕してればよかった。
だけど奪われる側に戻るのが怖かった。弱者を殺し奪ったんだ、弱者に戻れば殺し奪われるに決まってる。
抜け出せないんだよ。俺達は罪のない農民だなんて、図々しい顔して忘れることなんて出来ない。俺達はクズの山賊なんだ。
⋯⋯へっ、あんた、士官学校の先生だろ?俺も戦争が起こらなければじいちゃんの推薦で春から通うはずだったんだぜ。じいちゃんは元セイロス騎士だったんだ。
俺の槍は中々のもんだったろ?ガキん頃からじいちゃんに鍛えてもらったんだ。本当は剣を習いたかったけど、村に剣は無いからいざって時みんなを守れる槍にしとけって言われてな。騎士団仕込みの訓練はガキにはきつかったぜ、じいちゃんは俺なら出来ると期待してくれてたんだろうな。
4年前は渡された剣しかあんたらに見てもらえなくて素人だと思われただろうけど、今日はじいちゃんに仕込まれた俺の腕、その隻眼に焼き付いただろ?もうちょっとであんたに残された光も奪えるところだった。
何でもするつった俺を雇って、村に少しの食料を残せばよかったって後悔してくれたか?
ま、俺の槍の腕で一番後悔してるのはじいちゃんだろうな。みんなを守るために教えた槍が殺して奪うための道具になっちまったんだからな。
俺が作った山賊組織も初めてにしては中々だったろ?
上の方は従順だったが、デカくし過ぎて末端の統制が取れなくなったのは失敗だったな。動けりゃ誰でも受け入れる方針がダメだったか、戦争のやり過ぎで奪うしかないやつが多すぎるんだよ。
何で後は死ぬだけの俺がこんなにべらべら自分語りしてると思う?恨み節?違うぜ、あんたらに罪悪感を植え付けるためさ。
ここまで聞いといて可哀想な連中を見捨てるなんて言わないよなぁ?
あ?山賊は処刑?何当たり前のこと言ってんだ。弱者を殺した俺達は弱者になったら死ぬんだよ。
だけど奪った飯を与えられて生きてただけの連中には罪なんてないよな?じゃないと俺達から奪ったあんたらだけじゃなくて、その領民も罪ある存在になっちまう。
俺の懐に地図がある。取り出しな。俺が測量して作ったもんだ。正確だぜ。
真ん中がこの砦だ。その東の方に村が書いてるな?そこに女子供がいる。食糧は作ってるが面積に対して人が多すぎる。まるで足りねぇよ。
俺達が帰らなきゃ遠からず餓死する。ここまで聞いといて見捨てるなんてことできねぇよな?
分ける飯がないならせめて俺達の死肉を振る舞ってやってくれよ、それで今年の冬は越せる。あ?俺たちゃ死体ぐらい食ったことあるぜ、初めて食ったのはじいちゃんの死体さ。
⋯⋯最悪の経験だったよ、何よりも。けど、元気に動けるやつが必要だったんだ。許してくれよ、じいちゃん。
⋯⋯死体を食うってのは便利だぜ、見せしめに使える。規律を破って犯したり無駄に殺したやつはさばいて全員で食うんだ。どんな荒くれ者だってビビって言うことを聞くようになるぜぇ。人が増えすぎて俺の目が届かなくなって破綻したけどな。
村のこと、頼むぜ。山賊の妻子なんて見捨てられて当然かもしれねぇが、そんなことすりゃあ俺がゾンビになって地獄から這い上がってやらぁ。
俺達の死体をあいつらに食わせりゃあ恨みはなく、もし地獄から這い上がっても戻る肉体がねぇ、良い事づくめさ。頼むぜ。
じゃ、殺してくれよ。痛くても文句は言わねぇからさ。
⋯⋯やりずれぇか?いいよ、任せな、しっかり握ってろよ。
ぐっ、切腹って、言うんだぜ⋯⋯責任を果たして、名誉を保つ死に方、らしいが⋯⋯わからねぇな⋯⋯
ぐううっ、こんだけ斬れば、そのうち死ぬさ⋯⋯
痛ぇけど、俺みたいなクズには⋯⋯ふさわしい、まつ、ろ⋯⋯
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→そんな事に加担はできない
せめて村に連絡をする
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サプラーイズ、皇帝陛下の死体のそばから失礼。地獄から這い上がってきたぜ。
兜の下の顔に驚いてくれたかい?ヒゲがないから誰だかわからないかぁ?生者とは思えない血色の悪さのせいかぁ?いや、俺みたいな雑魚山賊のことは覚えちゃいないか。
気づいたか?あんたの死にそうな顔がより一層ひどくなってるぜ。
なんで生きているかって?さあなぁ、やつらは血がどうのこうの紋章がどうのこうの言ってたけど興味ねぇや。
俺の目的はただ一つさぁ。
お前を殺すことだ。
よくも俺から奪ってくれたな、誇りを、尊厳を、師を、倫理を、村を、友を、預かった女子供の命さえ。
俺のすべてを奪ってくれたなぁっ!
軍隊が山賊の妻子なんかに食料を分けてくれるなんて思ってはいなかった。死体を届けろなんて過ぎた願いだ。だけど使いをやって俺達の死体の場所ぐらいは伝えてやっても良かっただろう?
そんなに倫理観が大切か?俺達からは取り上げたのに?
見ての通り皇帝は俺が殺した。こいつが原因の一端だ。
因縁のあるお前達じゃなくて、踏みにじった知りもしない平民に裏切られて殺されるのがお似合いの末路だろう。
ああ、裏にいる存在か、知ってるよ。俺を生き返らせたアガルタの連中だ。
けど優先順位が低いんだ。この皇帝だって本当はどうでもいい。
だってそうだろう?俺のすべてを手ずから奪ったのはお前なんだから。
死んでくれよ、ディミトリ。なあ!
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はぁ⋯⋯げほっ、誰も守れず、仇を取ることさえ⋯⋯
俺は⋯⋯何のためにこの世界に生まれてきたんだ⋯⋯?
誰かのために、生きたかったのに⋯⋯不幸を振りまいただけだ⋯⋯じいちゃん、ごめんよ⋯⋯
主人公はまだ聞かされていませんでしたが士官学校にはじいちゃんの推薦だけでなく多額の授業料がかかります。じいちゃんの貯金と村のお金を合わせて、じいちゃんが大修道院まで払いに行ってました。
その最中、戦争が始まり、じいちゃんは巻き込まれて兵士にお金を奪われました。なんとか村に帰ってくると主人公が山賊になろうとしています。叱って止めたものの、状況を把握すると病みました。
この主人公にとってのグッドエンドは、じいちゃんを説得して信仰を取り戻させ人としての道徳を保ったままみんなで餓死することです。