大いなる力には大いなる責任が伴うらしいが転生者もそれに含まれますか? 作:御船上郎
第一話 突撃隣のオズコープ
-1-
天まで届くかのような摩天楼を、ピーター・パーカーは見上げている。
それは世界に名を轟かせるオズコープの本社ビルであるが彼にとっては魔王が住む魔王城に見えていた。
なにせ、どの世界線、ユニバースにおいても数多くのヴィランが産まれ、闇堕ちする原因の一角となる企業である。
この世界でも公明正大な大企業という看板の裏で、どんな不祥事やら後ろ暗い部分があるのか解ったものではない。
しかし、そんなことはピーター・パーカー以外の他の面々は知らないし、知ることも出来ない。
彼らにとってオズコープというものは地元であるニューヨークを代表する憧れの大企業なのだ。
「ふん、どうしたピーター?まさか緊張して寝不足になっているのではあるまいな」
「はは・・・さすがにないよフラッシュ、君こそ大丈夫?クマ出来てるけど?」
「問題ない!」
眼がギンギンになっているフラッシュから寝不足を疑われたが苦笑いで誤魔化す。
このメガネ男子は女生徒との初デートよりも、憧れの場所に来れることの方が興奮できるようだった。
そんな彼がピーターは羨ましい。
なぜなら彼以外のインターンに参加する人間がピーターにとってこれ以上のストレス要因だからである。_
ガリガリと精神が削られる光景に、彼は目を向けた。
「けど本当にデカいわねこのビル」
「そだね~?ネットで調べた限り、オズコープのアメリカでの研究業務とかほぼ取り仕切ってるところだからじゃないかな」
「電力はどうなってるのかしら」
「地下じゃない?」
美しい美少女が二人、そこにいる。
彼のメンタルゲージが真っ赤に点灯している理由であるMJと、グウェン・ステイシーであった。
正反対に美しい二人は、一枚の絵画の様であるがちっとも彼の心に感動をもたらすことは無い。
ピーターと関わって死ぬ可能性が高い人間が、これまたヴィランを生み出すオズコープにいるという事実は心に負担のみをかける。
―――おのれスタン・リー!!
毒づくが現実は変わることは無い。
美少女は美少女なままだ。
「ふん、MJ。お前はグウェンのように成績優秀では無かったと記憶しているが、なぜここにいるんだ?」
(いいぞフラッシュ! 地雷を一つ解除するんだ!)
ピーターはクイクイとメガネを上げながら厭味ったらしく言うフラッシュを初めて応援する。
地雷を一つでも解除してくれ!と心の底から願ったが、フラッシュのそんな口撃に校内ナンバーワン陽キャである彼女は動じない。
「あはは、手厳しい言葉をありがとうフラッシュ。前オズコープの広告に出たからその人から枠貰えないかお願いしたの」
どうやらすでに彼女はオズコープと接点があったようだった。
そしてその当時の知り合いのコネで枠を勝ち取ったのである。
「だから皆みたいに天才じゃない私がここに来れたってわけ」
ミッドタウンハイスクールはアメリカ全土という規模で見ても科学の分野では秀でた人間が多い。
その中でも全てにおいてピーターはトップクラスであり、フラッシュはそれに次ぐ、グウェンは生物工学の分野ではすでに論文すら書いて発表していた。
全員が天才と言える存在の中、中の上程度であるMJがここにいる理由は人脈によるものである。
彼女の発言を不愉快気に鼻を鳴らし、フラッシュはもう一度眼鏡をクイと挙げた。
「つまりコネか」
彼にとってはそれが不快らしい。
実力主義者な彼にとって、実力ではない要素でMJがここに来れたのが気に入らないのだろう。
「人脈も大事なモノでしょう?」
「ふん、それだけでやっていけるものではないがな。精々ピーターとグウェンの脚を引っ張らんことだ」
フラッシュの嫌味を受け流し、MJはグウェンへと抱き着く。
周囲の視線が一気に二人へと引き寄せられた。
美しい少女の抱き合いは目の保養になるのは万国共通のようである。
「大丈夫よグウェンには抱き着いてでも助けてもらうから」
「熱いわMJ、周りが見てるしやめて頂戴」
恥ずかし気なグウェンを無視してぎゅっとMJは抱き着き続け、オズコープの入口へと入っていった。
そのエモい、心が洗われる光景にも目を向けずピーターは青空を見上げる。
この場から一刻も早く立ち去りたい衝動を抑え、小さな言葉で呟いた。
「ああ、僕はついていけるだろうか。この残酷な世界のスピードに」
そのポエムは誰にも気づかれることなく消える。
ピーターはため息を一つ、彼は吐いた。
「何を黄昏ているピーター、我々もさっさといくぞ」
「うん・・・」
入っていったMJとグウェンを追いかけるべく、フラッシュがピーターへと呼びかける。
それに頷いて、とぼとぼとピーターは歩みを進めた。
-2-
夢と興奮を胸に収めたピーター達を出迎えたのはオズコープに所属するだけのそこいらの職員では無かった。
それらを統括する管理職でも、更にそれを管轄する役員でもない、所属する職員全てより上位の立場にいる存在。
「よく来てくれた我が後輩たち、私がこの会社の代表取締役であるノーマン・オズボーンだ」
代表取締役、ノーマン・オズボーンである。
―――リーチがかかった!リーチがかかったよ!役満ってレベルじゃねぇぞ!
ポーカーで言うなら、彼にとって地獄展開のロイヤルストレートフラッシュが揃ったかのような感覚である。
ストレス値を図るメーターというものがあればそれは許容値の限界を超えたレッドゾーンにあるのは明白だった。
アハハ今日にでもグリーンゴブリンが誕生するのかなぁ!と思いつつ彼はノーマンと握手する。
皴の入ったばかりのごつごつとした一般的な中年男性の手だった。
他の面々も人のいい笑みを浮かべたノーマン・オズボーンと握手していったが、一際熱意があるのがフラッシュである。
「初めましてノーマンさん!フラッシュ・トンプソンと言います!あなたのファンです!」
キラキラと瞳を輝かせて、見たことない明るい笑顔を浮かべた少年がそこにいた。
いつもの厳しい皴を眉間に刻む姿はどこにもない。
あるのはただ、憧れの存在に出会えたことの歓喜のみである。
「誰あれ?」
「フラッシュだけど」
その姿は、どうにもMJとグウェンには予想出来なかったようだ。
MJは思わず二度見と無作法にもフラッシュを指を差し、それにピーターが答える。
「いやあの堅物君が目をキラキラさせて握手する相手がいるとは思えなくてさ」
フラッシュ・トンプソンはミッドタウン・ハイスクールでの好感度ランキングでは下位に入る人間だ。
自他共に厳しく、それでいながら成績ではトップクラスなのだから、面白くない人間は多い。
いじめられたのも一度や二度ではないらしいが、それに負けることなく彼は今日ミッドタウン・ハイスクールを代表する生徒となっている。
そんな厳しい男が、ただの少年になっているのだ。
しかしそれに相応しい格、というものがノーマン・オズボーンにはある。
ピーターは前世の知識以外にも、今世の記憶を引き出し、MJの疑問を解消することにした
「仕方ないよ、ノーマンさんは僕らからしてみれば憧れの人だから・・・」
「そうなの?」
MJにとってはその凄さが解らないようである。
なので解りやすい例をピーターは挙げることにした。
「SF映画によくあるナノテクとか核融合、反重力装置や神経接続インターフェースその他様々な技術の基礎理論を作って実際に作り始めてる人って言えば解る?」
「すごい」
子供のような感想であるが実際そうとしか形容出来ないのだから仕方ない。
現代のレオナルド・ダヴィンチとか言われてたかな、と脳裏にノーマンを称賛する呼び名が幾つあったか思い出す。
まあそんなわけで、科学者及びそれを志す少年少女にとっては今目の前にいるノーマン・オズボーンは憧れの存在なのだ。
それはプロのスポーツ選手への憧れに等しい。
「すごいなんてものじゃないわよMJ、もっとも空想を現実に持ち込んだ人って言われてるんだから」
グウェンにとってもそうらしい。
彼女もいつものクールな雰囲気を僅かに崩し、その凄さをMJに解説しようとする。
そしてそれはノーマンにも聞こえていたらしい。
フラッシュから視線を外した彼が振り返り、グウェンの言葉を補足した。
「あくまで基礎の中の基礎、階段の一段目だよ。大したことではない。今後の人間には踏まれることさえないものだし今後の発明などには関係ない可能性が高い」
その謙遜をフラッシュは許さない。
彼の凄さを解説するように大仰に手を動かす。
「それでもすごいですよナノマシンをあんな方法で安定させて作り上げるなんて!」
夢見る少年にとって先達の偉業は解説してしかるべきものなのだ。
そしてフラッシュが口に出したナノマシンに関連する論文を興奮して読んでいたのを思い出す。
「フラッシュ興奮してたもんねあの論文見て」
ネッドと珍しく一緒に共同作業をして読み込んでいた記憶が呼び起こされた。
ピーターもそれを手伝い理解したのである。
それに驚いたように、ピーターの傍にノーマンが近寄り、フラッシュもそれに追随した。
「解ったのかい?あの論文を理解できたものは少ない筈だが...スタークぐらいだと思っていたが我が母校は将来有望な若者が多いな」
驚愕の表情で、彼は言いそこからは完全に先ほどまでの人のいい経営者ではなく科学者として言葉を交わすことになる。
専門用語が飛び交い、激論が開始された。
「つまりこのナノマシンの安定化は出来たが外部から干渉されず運用していく制御方法の確立こそが今後重要に―――」
「神経インターフェイス研究との接続は出来ないのでしょうか?」
最早MJはついていけない。
こういう時の対処法は大人しく身を引いて外から見る、である。
最早魔法の言葉に等しい言葉を交わす男子たちから身をそらし親友のグウェンをみたが、先ほどまでいた場所に彼女の親友はいない。
「安全性が重要だわ、接続するにしても長期的な外部からの電波が入ると考えれば後遺症が起こる可能性が高いでしょう?」
親友は議論に参加していた。
寧ろ自身の専門分野である生体工学の分野に積極的に参加してすらいる。
「危険性は承知の上だが、やはりもし発生した場合の治療法も模索すべきだな」
「ええ、もしそれを無視してしまった場合危険だけが残ります」
「うむ、それが解る人間でいてくれたまえ」
「では次にそのナノマシンの体内投与の可能性を―――」
それを遠い目で、MJは見つめた。
親友の新しい一面を見つけたことが嬉しい半分、ちょっと寂しいと思ったのである。
「う~んグウェンもあっちいっちゃったな」
やることが無い。
どう考えても自分に介入できる段階ではないとMJは理解した。
ならばすることは一つである。
「すいませ〜ん!コーヒーいただけませんか!」
人数分のコーヒーを頼んで、ゆっくり待つ、だ。
流石のオズコープは高級品のコーヒーを持ってきてくれた。
そしてそれをゆっくりと啜ること三杯、ようやく話が終わる。
「おっとすまない話し込んでしまったな、君たちの貴重な時間を使ってしまった」
ノーマンは自身の精緻な時計を見下ろし、予定よりも遥かに時間をとってしまったことを謝罪する。
「いいえ、私達も貴重な経験をさせてもらいました」
「あのデブがいないことがくやまれるな、あいつなら幾つか発展形が思いつくかもしれんのに」
「ネッドはスタークに行ったからねぇ」
三者三様の答えであるが、楽しんではいたようだ。
そして才能ある三人が言葉に出した少年にノーマンは興味を惹かれる。
「君たちがそこまで言うネッドという少年も、才能が溢れているようだね。なぜオズコープに来なかったんだい?」
その疑問にピーターは答える。
「AIに関してもっと知りたいらしくて」
なるほどと、ノーマン・オズボーンはうなずいた。
スターク社の社長である男は自分よりもその手の分野では上だからである。
尚、ネッドがAI研究に励んでいるのは美少女AIって良くない?というひどく即物的な欲望のための物だった。
「スタークはAI研究では私を遥かに超えているからな」
敗北を素直に認めたノーマンにピーターはジョークを言う。
「女遊びもですか?」
それがツボに入ったのかククク、と喉を鳴らしながらそれに答えた。
「奴ほどのプレイボーイはそうそう見つからんだろうよ、正しく天才という奴だ。私など彼の足元にも及ばない」
そして、三人で笑った。
「「「ハハハ!!」」」
尚女性陣はそれを冷ややかな目で見ているのは言うまでもない。
それに気づいたノーマンは咳ばらいを一つして、全員に向けて今後の予定を告げる。
「ではインターンのことだが基本的には研究といっても直接的ではなく間接的なデータ収集などをやってもらうことになるがいいかね?」
「わかりました、大得意です」
ピーター・パーカーの、嫌な予感しかしないインターンは今ここから始まったのだ。
Tips
・ピーター・パーカー
大体なんでも出来る万能型、あと原作知識とかによる超技術の再現など
ストレスたまりすぎるとマーベラーを作ろうとする
ソードビッカーを打たせろ!
・フラッシュ・トンプソン
ピーターに次ぐ万能型、成績ではアベレージが高く全般的に高度な知識を持つ。
発想力自体は並であり、新しい1を作るのではなくそれを発展させることに全力を捧げる。
努力を惜しまず、自身を信じ研鑽するタイプなので努力を努力と思わず続けられるタイプであるネッドとはそりが合わない。
だが別に嫌ってるわけではない
・ネッド・リーズ
今回の章では彼は留守番である。
通信では登場するが彼は今スタークの本社にいるので助けられない。
プレイボーイの社長になんか気に入れられて高級車運転させてもらってる
わーい!ペッパーさんを送り迎えすると同時にガチモンの高級AIを見せてもらえるぞー
・グウェン・ステイシー
得意分野は生体工学、それ以外は上の中程度。
難病を患った母親が機械に繋がれ苦しんで死んだので、その苦しみをどうにかしたいと考え道を志した。
機械と人間の接続に関しては慎重派であり、あくまで安全に使える代物を目指す。
フラッシュとは仲が良い部類に入る(外見にあまり左右されない人間なので)
・MJ
得意分野は特にない、が要領がいいため平均より上にいるタイプ。
先輩や先生からのアドバイスを元に分析し、対策しているので問題にならない。
コミュ力がバカ高い為、相手の困っていることを理解しそれを解消するために動ける人間。
人をプロファイリングしてる。
相手に嫌われたくないので内部に鬱屈した感情を貯め込んでいる。
オズコープを選んだ理由は家に帰らなくてすむから
ボブカットである
・ノーマン・オズボーン
皆さんご存じCV山路の男
この世界では様々な超技術の原型を作った天才。
あ~企業運営辞めてぇ~ってなってるがほっとくとクソ馬鹿役員に乗っ取られそうなのでいやいややってる
若人導きてぇ欲が強く、今回のインターンを受け入れたのも彼の意見である。