昼食時、葛城君からこの島で起きていることとそのためにポイントを使うことに関して説明がありました。勿論、爆発物処理班が来ないことも含めて。
葛城君が誠実に対応したので、戸塚君のような反応はありましたが、最終的に命には変えられないためかクラスの皆さんはポイントを大量に使うことを了承してくださいました。
そして、昼食を終えた頃、私達は行動を開始します。ロケットランチャーの費用を除いた百八十ポイントを使い、必要なものを一気に購入しました。
「解体セットの中に爆発物探知機があって良かったです。これで爆弾のある場所をある程度、見つけ出すことができるでしょう」
「やはり、全てを見つけることは不可能か」
「えぇ、爆発物はオカルトが生み出したものでしょうから、その爆弾もオカルト由来のもの。つまり、通常の爆弾ではないでしょう。とはいえ、爆発物であることには変わりありません。これで検知できると良いのですが」
検知できなければ、爆発物探知機に頼らずに自力で見つけ出すしかありません。しかし、見つけ出せれば、この探知機の方を調べてみる必要がありそうですね。
「では、まずはどこから探す?」
「分かりきったことを言いますね。勿論、このペンションの中ですよ。ここが爆発されたのでは、この無人島で暮らす場所が無くなってしまいますから」
「方針は私の方で送っておく……もう購入したから今更だけど、明星に防護服っている? 爆発でも死なないんでしょ?」
「死にはしませんが、怪我はします。私は超天才清楚系病弱美少女ハッカー。少しの怪我でも命に関わってきますから」
「じゃあ尚更、明星は後方支援向きだね。爆弾処理は手伝ってもらうけど、オカルトとの戦いでは作戦の立案と遠くからの指揮をよろしく」
まぁ、そうなりますよね。万が一にも失敗することがないように、完璧な作戦を立案してましょう。
「爆弾を見つけたら安全な場所に運んでから解体しましょう。それが建物を壊さないことにも繋がりますから」
「運んでいる最中に爆発する可能性は?」
「それは爆弾として不完全なものです。移動させるだけで爆発してしまう代物なのですからね。設置している以上、運んでいるということです。なので、運んでいる最中に爆発することはないかと」
私もキヴォトスで爆弾を運んだ経験はありますが、運んでいるだけで爆発するような粗悪品は無かったと思います。キヴォトスでは爆弾なんて誰もが持っているようなものですから。
「いつの間にか忍者に渡す予定だった防護服と爆弾の解体道具とかが無くなっているし、忍者はもう動き始めたみたいね。私達も行動しましょう」
「それじゃあ、夕飯の時にまた会おう」
葛城君や神室さんと別れ、私も爆弾を探し始めます。探知機には反応していませんが、このペンションには確実に爆弾はあるはずです。ここが最も私達を葬りやすい場所ですから。
不安にさせないようにあえて言っていないことがあります。それは爆弾の解体マニュアルで全ての爆弾が解体できるわけではないということです。勿論、彼らは賢いので分かっていると思いますが。
私は車椅子での生活ですので、二階に行くことはエレベーターがない限りできません。そのため、探索できる一階を隅々まで見て回ることにしました。二階は他の方に任せましょう。
◇
龍園 side
この島に仕掛けられた爆弾の解体はCクラスでは俺と坂上の班でやることになった。人数は勿論、最大だ。
このくらい使わねぇと、もしもの時に近くにある爆弾に巻き込まれて死ぬ可能性が高いからな。反発してきそうな奴らはそう言って黙らせた。
それに、ここでケチって大量にクラスポイントを得ても、協力する別の特別試験で足を引っ張るクラスだと認識されても面倒だしな。
本当なら、暴力で黙らせれば良いんだが、そんなことをすれば別のクラスのリーダーに普通に殺されそうだ。『預言者だと誤認した』とかいうクソみてぇな理由でな。
全ては七月の初めに坂上の呼び出しを受けたことがきっかけだが、目をつけられてしまった以上、仕方ねぇ。
話を戻すが、今の俺は爆弾の探索をしている最中だ。一人ではなく、自前の防護服を着た変な奴と一緒にな。
「おい、防護服を持っているってことは軍人だろ。今まで何してやがった?」
「……」
「何とか言ったらどうだ」
『私は確かに軍人ではありますが、今の貴方に正体を明かすわけにはいきません。もしも明かせば、貴方は確実に私を利用しようとするでしょうから』
そいつは携帯をいじると、俺にその文字を見せてきた。声を出した途端にバレると思っているようなので、俺の知っている誰かなのだろう。防護服のせいで男か女かも分かんねぇがな。
「お前がついてくる目的は何だ? 爆弾を探すことくらい一人でもできる」
『解体の知識がない貴方は見つけることができたところで、その後は何もできません。むしろ、何かしようとすれば大惨事を招くでしょう』
「マニュアルや解体道具なら、ここにあるが?」
『それだけで解体できるほど爆弾は甘くありません。同じ素人でも訓練を受けている分、綾小路君や葛城君の方がまだマシです』
爆弾の処理はこいつがやることになるのだろうが、利用されたくないってことは前線に出るつもりはねぇってことか。つまり、こいつは今回の特別試験では戦力にならねぇ。そんな奴の指揮下にならねぇといけねぇのは腹が立つな。
『私のことは良いですから、怪しいものを見つけたら遠慮なく言ってください』
こいつは俺に対して全くビビってねぇから、遠慮なく文句を言ってきやがる。だが、あいつが言っていることが正論に近いのもまた事実だ。いつかは俺に屈服させてやるが、今はその時じゃねぇ。大人しく振り回されるとするか。
「ん? ベッドの裏にくっついている物があるが、こりゃ爆弾か?」
『爆発物探知機の方も反応していますし、爆弾で間違いないと思います。では早速、外に運び出しましょう』
そいつは爆弾と思われる物をベッドの裏から慎重に取ると、俺に解体道具を渡して部屋から出て行きやがった。俺についてこいって言っているんだろうな。
同じクラスだから俺の性格が分かってねぇとも思えねぇ。こいつは俺をわざと振り回してやがるな。面白れぇ、乗ってやろうじゃねぇか。
『龍園君、早くついてきてください』
「今は従っておくが、俺と戦って俺が勝てばその時は俺に従ってもらう。それで良いか?」
『どんな方法でも貴方は私に勝てませんよ。ですが、貴方が暴力を信仰しているのは知っています。爆弾を解体し終えたら、一回だけ勝負してあげましょう』
「それは全ての爆弾を……ってことか?」
『いえ、一つの爆弾の解体につき、一回です。勿論、私が解体した爆弾のみをカウントしますが』
随分と舐められているな。俺はCクラスを恐怖で支配している男だぞ。一対一で戦うわけねぇだろうがよ。まぁ、それも分かった上で言っているんだろうな。じゃなきゃ、利用する価値もねぇ。
『さて、ここは人の気配もありませんし、ここで解体しますか』
こいつについて行き、屋外まで出ると、こいつはそう言い放った。Cクラスの連中にはペンションからできるだけ離れるように言ってある。最も安全な場所は遮蔽物もなく、昨日は安全に遊べていた海辺だろうがな。
『解体道具とマニュアルを貸してください。さっさと解体して勝負しましょう』
「勝負は今日の解体が終わってからでも良いと思うんだがな。その方が解体には集中できるだろ」
『私としてはどちらでも構いません。それよりも早く渡してください』
「へいへい」
そいつに言われた物を渡すと、そいつは爆弾を観察しながらマニュアルを開き始めた。該当する爆弾を探してんだろうな。
『……ありえない』
「それだけ、見せられてもな。該当する爆弾が無かったか? まぁ、オカルト産なら無くても不思議ではねぇがな」
『そうではありません。このマニュアルに爆弾の情報は一種類しか記述されていないのですが、それがこの爆弾にピタリと該当するのです』
「それってつまり、これを用意した奴は仕掛けられた爆弾を分かっていたってことだよな。そうなると、そいつはオカルトと繋がってたってことになるか」
それか、このマニュアルを用意したのがオカルトだったという場合も考えられるな。そのオカルトがコクマーか他の奴かは分かんねぇが。
『これを用意したのは軍の上層部です。急な特別試験だったはずなので、他の先生方は携われていません』
「そうなると、軍の上層部がオカルトと繋がってたってことになるか。だが、奴らはオカルトを殲滅させたいはずだろ? 何故、オカルトと繋がるようなことをする」
『……もしかしたら、軍の内部にオカルトがいるのかもしれません。そして、ケセドの力で次々と機械兵と交換していった……とか』
「ケセドは高育のショッピングモールだけを交換したわけじゃねぇってことか。そういえば、機械兵の擬態だった奴らが更迭されたって話は聞いてねぇが、そのままだったりすんのか?」
『人事権は理事長にありますからね。更迭したら、その者達が野に放たれることになります。なので、理事長が何もしなかったのは正しいと思いますよ……っと、話している間に解体も終わってしまいましたね』
爆弾の解体自体は手慣れているようで、俺と話しながら片手間にやっていたな。俺は軍の人間じゃねぇから分かんねぇが、片手間にやるべきじゃないと思うんだが。
「残骸の処理はお前達に任せれば良いのか?」
『それに関しては上司の坂上先生に押し付けます。爆発する危険はないと思いますが、念のために』
「まぁ、経験が長い奴の方が処理方法も知ってるか。じゃあ、ペンションに戻るぞ。残りの爆弾も解体しねぇとな」
『その前に一試合しませんか? 貴方が今の状態でどれくらい動けるのか確かめたいので。お互いに防護服の状態なので、平等だと思いますが』
「戦闘狂か、お前は。いや、だったらとっくに戦闘には参加してるか。お前は何が目的なんだ?」
『言ったじゃないですか。貴方の動きが見たいだけなんです』
俺の動きを見たいなら、今じゃなくても良いはずだ。今じゃないとダメな理由があるのなら、おそらくは正体バレを防ぐ目的だろうな。その手に乗ってやる義理はねぇ。
「悪いが、遊んでいたら何を言われるか分からねぇ。遊ぶのなら、今日の作業が終わってからにするぞ」
『貴方、そんなにつまらない男でしたか?』
「あ?」
我慢の限界が来ていたのかは知らねぇが、気づいた時にはそいつの顔を目掛けて蹴りを入れていた。とはいえ、相手は軍人。当然のように腕で防がれる。
『この程度の挑発で攻撃を仕掛けてくるということは、煽り耐性もかなり低いようですね』
「うるせぇ。今までのお前の行動にキレただけだ」
『それに動きもまだまだ素人。何人でかかってきても私に勝つことは無理そうですね』
「言うじゃねぇか。こっちは一応、坂上にオカルトと戦えるように特訓されてんだぜ」
特訓をし始めたばかりの頃にオカルトであるケセドと戦う羽目になるとは思っていなかったがな。あの時はマジで死ぬかと思ったぜ。
『貴方の実力は先ほどの蹴りで把握しました……なんて言えれば良いんですけどね。どのくらい動けるか見たいので、早くかかってきてください』
「その言葉、後悔すんじゃねぇぞ」
結果的に相手の思惑に乗ることになったが、構わねぇ。今の俺と軍人のどちらが上かは知っておきたかったところだったしな。
俺は早く決着をつけるために相手の顔を目掛けて拳を入れようとした。しかし、相手の顔に当たるよりも早く、俺の顔に相手からの拳が当たる。いつの間に攻撃したのか、分からなかった。
「痛……くはねぇな。この防護服のおかげか?」
『えぇ、銃弾すら何とかできるこの防護服なら、ただの拳程度なら防御をしなくてもノーダメージです。おかげで防御のことを考えなくて良い』
なるほどな、痛みがねぇのか。それだったら思う存分暴れられそうだが、痛みで屈服させることはできなさそうだな。
「この勝負は俺の負けで良い。お前とは防護服を脱いだ状態で戦いたいからな」
『なるほど、私を屈服させることができないからですね。すみません、貴方の意図が汲めていなかった私の落ち度です。今回の勝負は無かったことにしましょう』
「つまり、脱いだ状態で勝負してくれるのか?」
『はい。それをお望みであれば、喜んで。とはいえ、そうなったら、私の正体を知るところからですが、それで構いませんね?』
「お前の正体はある程度分かってる。誰にも屈服させられてねぇCクラスのやつなんざ、一人しかいねぇからな」
だが、まだ確信はねぇ。本当にあいつが軍人だったとしたら、まずは俺に興味を持たせるところから始めた方が良さそうだ。そして、こいつを表舞台に引っ張り出す。それが俺の当分の目標になった。
龍園と一緒にいた軍人が身につけていた防護服はわざわざ、持ってきた物です。今回の事件がなくても龍園とは軍人として接触するつもりだったからですね。