レベルMAXの百合サキュバスに転生した元・女子高生の異世界蹂躙録 〜冤罪の聖女様と『共犯者』になって、彼女を嵌めた悪党どもを物理的に分からせます〜 作:百合サキュバス好き
廃屋を出て、私たちは『魔の森』の獣道を歩き始めました。
鬱蒼と生い茂る木々が陽の光を完全に遮り、薄暗い森の奥からは時折、名も知れぬ不気味な獣の遠吠えが響いてきます。
この森は、外周であれば初級の冒険者でも立ち入れるそうですが、内周は中級以上の実力がないと命を落とす危険な場所です。そして最奥に至っては、いまだ帰還者が一人もいない『未踏破領域』だと言われています。なんでも、魔神に近いとされる魔王よりは劣るものの、人族にも魔族にも与せず、ただ静かに暮らしたいだけの『知恵ある強大な魔物』が住み着いているのだとか。
この世界にはそういった不可侵領域がいくつか存在し、ここもその一つです。逆に言えば、この森が巨大な緩衝地帯となっているおかげで、ここを抜けた先にある『魔族領・辺境』は、他の国境沿いのように人間との激しい戦争が起きていない、比較的平和な地域らしいのです。
「ひゃんっ!」
そんな解説を脳内で反芻しながら歩いていると、私の後ろを歩いていたセシリアが、また可愛らしい悲鳴を上げました。
「だ、大丈夫ですかセシリア!?」
「は、はい……。少し、木の枝が掠ってしまって……」
足元はぬかるみ、道なき道を進むのは、温室育ちの聖女様には過酷すぎたのでしょう。振り返ると、セシリアは痛みを堪えるように、幻影の布地の上から自分の二の腕や太ももをさすっていました。幻影の神官服に隠れて直接は見えませんが、おそらくその下の雪のように白い柔肌には、いくつも赤い擦り傷ができているのでしょう。
虫に対する『虫除け』の効果は幻影魔法に付与していましたが、当然、物理的な『木の枝』や『鋭い葉っぱ』に対しては無力です。神官服という幻影をすり抜けて、容赦なく彼女の柔肌を攻撃しているのです。
「ストップです! じっとしていてくださいね。『中級治癒(ミドル・ヒール)』!」
私が指先を向けると、淡い光がセシリアの肌を包み込みました。
「わぁ……っ。痛みがすっかり引きました……! ありがとうございます、リゼット様。……え? あれ?」
痛みが消えた腕をそっと撫でながら、セシリアはふと何かに気がついたように小首を傾げました。
「あの、リゼット様? 魔族は、神聖な力である『回復魔法』は使えないはずでは……? そういえば、私が盛られていた猛毒の解毒も……」
「えっ!? あ、あははは! 私はちょっと特異体質と言いますか、特別製なんですよ!」
私は引きつった笑顔で、適当なハッタリをかまして誤魔化しました。……そういえばそうでした。この世界の常識では、闇属性の魔族は光属性の回復魔法を使えないのです。
(どういう原理かよくわかっていませんが、今のこの身体は私が生前プレイしていたVRMMOの自キャラそのものです。あのゲームはジョブを結構自由に組み替えられたのですが、最後にログインしていた時はソロで素材集めをするために、回復魔法や感知スキルが使えるジョブを入れてビルドを組んでいたのです!)
いわゆる『ソロ専の万能ビルド』を組んでいたのがこんなところで活きるとは。偶然にも、転生直前に素材集めをしていた自分を褒めてあげたい気分です。
「と、とにかく! 傷は治せても、このまま歩けば痛いことには変わりません。わたしが運びます!」
「えっ? 運ぶって……」
「私には背中にコウモリの羽が生えているので『おんぶ』はできません。……ですので、失礼しますね」
「ひゃああっ!?」
私は有無を言わさず、セシリアの膝裏と背中に腕を回し、ふわりと『お姫様抱っこ』の体勢で抱き上げました。高レベルのゲームキャラである私の筋力からすれば、彼女の体重など羽毛のように軽く感じます。これなら、お姫様抱っこをしたままでも森を高速で駆けることができるでしょう。
しかし。
抱き上げて身体を密着させてしまった結果、セシリアの口から思わず「んっ……」と、甘い吐息のような声が漏れました。そして私自身も、ある『致命的な事実』に気がつき、思わず「あっ」と小さな声を上げてしまいました。
(な、なんという破廉恥な状況ですか、これは……っ!)
よく考えてみてください。
今のセシリアは、見た目こそ神官服ですが、中身は一糸まとわぬ全裸です。そして私といえば、布地が極端に少ないサキュバスの煽情的な専用装備を着ています。
つまり、現在私たちがどういう状況にあるかというと。
布地が薄い煽情的な衣装からこぼれんばかりの私の爆乳が、セシリアの素肌の背中や脇腹にダイレクトにぐにゅぅっと押し潰され、完全に密着しているのです!
肌と肌が直接触れ合い、互いの体温が伝わった瞬間。
その熱い体温と、すべすべの柔肌の感触は、必然的に、つい数時間前まで廃屋の床で互いの身体を貪り合い、ドロドロの快楽に溺れきった『甘美な情事』の記憶を私たちの脳内に強烈にフラッシュバックさせました。
(あわわっ! さっきの彼女の熱い声や、私の指先の感触が鮮明に蘇って……っ!)
「あ、あの……っ、リゼット様……。その、お肌が……っ」
「わ、わかっています! 何も言わないでください……っ!」
ただでさえ全裸なうえに、情事の記憶を直接揺さぶってくるほどの密着度合いに、セシリアは全身を真っ赤に茹で上げ、目を潤ませながら私の首にしがみつきました。私も顔から火が出るほど赤面し、極上の柔肌の感触に暴れ出そうとするサキュバスの淫魔ソウルを、必死に理性でねじ伏せます。
……それから目的の場所に着くまで、私たちは恥ずかしさと気まずさで、一言も喋ることができませんでした。
鬱蒼とした森の中、ただお互いのドクドクといううるさいほどの心音と、密着した肌の熱だけを感じながら。私たちは限界スレスレのドキドキ状態のまま、無言で獣道を駆け抜け————やがて、目的のものを見つけました。
「……ありました。あそこです」
「ひっ……!」
少しひらけた獣道の傍ら。そこには、魔物に肉を喰い荒らされたのか、無残な白骨遺体と、いくつかのお金や荷物だけが散乱していました。生々しい血の匂いこそ薄れていましたが、そのおぞましい光景に、私の腕の中でセシリアが恐怖に震えます。
「リ、リゼット様……っ。白骨化しているとはいえ、こんなに酷い……。人を喰う魔物がここにいたのなら、また戻ってくるかもしれません……っ! 早く逃げないと……!」
「あ、大丈夫ですよ。魔物は寄ってきませんから」
私は震える彼女の背中をぽんぽんと優しく叩き、落ち着かせました。
「実は廃屋を出る時から、私たちの周囲に強力な『魔物避けの結界魔法』を展開しているんです。なので、この森の魔物が私たちに近づいてくることは絶対にありません」
「えっ!? そ、そうだったのですか……っ!?」
驚くセシリアに対し、私はドヤ顔で頷きました。
(ふふん、ただの魔族ではなく、ゲーム的に言えばレベルMAXの上級魔族ですからね! ちなみにこの結界も、ゲーム時代にソロで動く時によく使っていた『エンカウント減少魔法』の亜種のようなものです)
……とはいえ。私はふと、自分の魔力残量について冷静な計算を始めました。
(セシリアの神官服を維持する『幻影魔法』に加えて、この広範囲の『結界魔法』の常時展開。さらにはこれから聖都に潜入して、身分偽装などで色々魔法を使うとなると……いくら私の魔力が膨大とはいえ、ジワジワと確実に減っていくことになります)
そして、魔力が減って枯渇しそうになれば。当然、私はサキュバスとして、失った魔力を補うための『魔力補給(お食事)』をしなければならなくなるわけで……!
「幻影魔法に結界まで……。リゼット様は本当に凄いです。……でも、そんなに魔法を使い続けて、お疲れではないですか?」
私を気遣って、腕の中から上目遣いで見つめてくるセシリア。そんな彼女の美しさに、私の胸の奥でサキュバスの本能が『しめしめ……』とよこしまな笑みを浮かべました。
(いえいえ! むしろ早く魔力が減ってくれないかとワクワク……コホン! いけません、また淫魔ソウルが暴走しそうに!)
私は顔のニヤけを必死に引き締め、元・清楚な女子高生としての理性を総動員しました。
「き、気にしないでください! これくらい造作もありませんから! さあ、安全なうちにちゃっちゃとギルドカードやお金、それに使えそうな物資なんかも拾ってしまいましょう! 荷物も持たずに手ぶらだと、街に入った時に怪しまれそうですしね!」
私は彼女を地面に降ろし、2人で手早くアイテムの回収作業に入りました。
「おおっ、木製の見習い冒険者のギルドカードが三枚! それに、銅貨や銀貨が入った革袋に、使えそうな傷薬まで! 序盤のドロップアイテムとしては破格の美味しさですね!」
「リゼット様……どうか、死者のお荷物を宝箱を開けるようなテンションで漁らないであげてください……っ。主神様、どうか彼らの魂に安らぎを……」
十字を切って涙ぐみながら祈りを捧げつつ物資を回収しているセシリアを見て、私はハッと我に返りました。
(……っ! しまった、私ったら完全に『ゲームのモブが落としたアイテム』感覚で歓喜していました!)
廃屋を出る前にも感じた、強烈な違和感。人間の死体を前にして、微塵も抵抗を感じないどころか物資の供給源として喜んでしまうのは、完全に『魔族から見た人族』という捕食者の観点になってしまっている証拠です。
(危ない危ない。私は元・普通の日本人女子高生なのです。いくら生き残るためとはいえ、この命を軽視する魔族の思考に染まりきってしまっては、人間としての『心』まで失ってしまいます……っ。これからは気をつけないと!)
私は内心で強い危機感を抱き、自分の頬をペチッと軽く叩いて気合を入れ直しました。
「ご、ごめんなさいセシリア。少し不謹慎でしたね」
私は先ほどの浮かれた態度を反省し、セシリアの隣で改めて死者たちに深く一礼しました。そして「来世では平和な世界に転生できますように」と心の中で祈りながら、敬意を持って遺品を革袋へと収めました。
……こうして私たちは、無事に身分証といくらかの路銀、そして最低限の旅の物資を手に入れ、『魔の森』を抜けて人間の街へと向かうのでした。