どんな罰ゲーム?

 ヤバい女がノイズになるから見たくない人は見ないでね。

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踏み出し

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 英明なりし我等が王陛下が設けられた騎士学校によって、平民にも騎士の道が開かれたのだ──‼︎

 

 

 

 

 なんて言っても。

 

 

 ……その実情には厳然たる身分差というものが存在している。

 

 

 

 

 そもそも騎士学校の学生である為に学生料という金を年間五万アロール払う必要がある。

 これを払えなければ即、学校から蹴り出され、二度と騎士になる事は許されない。

 そして授業料という、騎士学校学師への報酬を払わなければ如何なる授業も受けられず、騎士とは認められない。これが年間五万アロール。

 ……この時点で年間十万アロール。並みの商家が傾く値だ。

 ……しかもこれを最低三年間支払わなければならない。

 更に授業で使う書物の数々、練習用武具、騎士学校の学生として恥ずかしくない服装(規定を満たさないと学生料未納と同じく蹴り出され騎士にはなれない‼︎)、平民にとって大金である千アロールがぽんぽん飛んで行く品々で更に金が飛んで行く。

 更に更に、日々の食事や入浴など生活費、文具代、図書館利用料、寮の賃料などが行軍訓練のようにじわじわと金を削って行く。

 

 

 ……よほどの豪商で無ければ身請けしても足りない金。

 しかし慈悲深い王国は騎士を志す若者を奨学金として支援しているのだ!

 ……その金がどこから出ているのかって?

 そいつの将来の給料からだよ。

 

 

 ……で、そんだけの金を払って騎士になっても、正式の武器・鎧・馬を手に入れるにも金が居る。

 しかし、奨学金を支払うような学生にも慈悲深い王国は支援してくださるのだ!

 ……そいつの将来の給料を削って。

 

 

 ……(わたし)は必死に働いたが、雀の涙にしかならず、無事奨学金と支援という名の借金の首輪がはめられそうだ。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 で、お貴族様はそんな大金を湯水のように払ってしまえる。

 しかも怠けもんは五千アロールという欠席料だとかを支払って度々授業を休んだりする。

 

 

 ……そして、奨学金のお世話になった平民騎士は二度と顕職になれない。

 一生下働きだ。

 

 

 ……そもそも、貴族と平民では下地にさえ差がある。

 貴族なら習って当然、覚えて当然の読み書き足し引き、これだって平民には覚えていない者の方が多い。農村ではほぼ零ではなかろうか。

 ……私は頑張った、つもりだった。

 ……騎士学校に入って、私が覚えたものを貴族は幼児で覚えるのだと知って十五歳の私は愕然とした。

 それどころか掛け割りをも加えた高度な計算、地図の読み方、周辺国の言葉、王国の組織、騎士の軍制、産業についての基礎知識、礼儀作法、芸術審美、そして戦闘訓練に馬術、平民にとって未知の洪水を貴族は当たり前のように知っている。

 人脈だって貴族は当たり前のように貴族を、ひいては王国のお偉いさんを知っているが、平民はそんな方々(もの)知らない。

 ……無礼打ちが簡単に出来なくなってなければ、うっかり働いてしまった無礼で平民騎士学生はいったい何割が死んでいただろうか。

 目を付けられれば何故か危険な任に就かされて死ぬから実質変わりないとしても。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 クソが。

 

 

 

 

「きゃーっ、アリアナ様よーっ!」

 

「かっけぇ……」

 

「美しい……」

 

 

 

 

 …………。

 

 

 ……ちょうどすぐそこの廊下の交差を通った、ノルシュティゲリオン連爵(れんしゃく)家長子アリアナサマを筆頭にした奴らは違うんだろうな。

 

 

 ……いや、アリアナサマを奴らと同じに扱うのは失礼が過ぎた。

 授業は真面目に出てるし覚えもいい、キツい訓練もサボらない、誰だろうと気さくで、馬小屋の掃除すら手ずからする。

 それに強い。

 私が百回やって全く勝てないくらい強い。

 剣槍弓、素手の組み打ちすらも。

 盾を構えれば揺るぎないし、鎧姿も揺らがない、どれだけやっても揺るがない。

 男女関係なく抜きん出てる。──いや、教える立場に足る実力の騎士であると認められた学師がせいぜい練習相手にしかなってなかった事を考えると既にこの国の騎士の中に入れても実力者だろう。

 三年連続で模範生だし、当然のように騎士学生筆頭だ。

 ……おまけに容貌が美しい。暗い赤の髪が落ち着いた顔立ちによく似合い、すらりと切れた薄黄の吊り目がそこに挑戦的な活動力を印象付け、色彩の変調による芸術を作り出しているのです──とは彼女を慕う学生の熱評。

 背も高くて手足も長い。

 後ろで高く括っただけの馬尾結びの髪型すら美しい──、と言葉を尽くされなくとも私にだって彼女が美しい事ぐらい分かる。

 

 

 何日も風呂をサボった者の異臭もしない。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 あいつは、風呂代を削らざるを得なくって指導師に嫌味を言われる惨めさを知らないんだろうなあ。

 

 

 頭が溶けるくらい勉強を詰め込んで気絶同然に眠って意識も理解もギリギリな授業を必死に書き取って頭に刻もうとしても落第スレスレな惨めさを知らないんだろうなぁ。

 叩かれて叩かれて叩かれて叩かれて叩かれて叩かれて叩かれて叩かれて叩かれて叩かれて転がされて、防具の下は痣だらけ、手が痺れるくらい武器を振って練習しても一向に勝ちが増えない負けてばっかの惨めさを知らないんだろうなあ。

 できる奴ばっか恵まれた奴ばっか交流華やかなりし奴ばっかの中で、あ、そう言えばこいつ平民だったって目で見られる惨めさを知らないんだろうなぁ。

 なんで騎士学校の奴がこんなとこで働いてんだ?あっ、平民だからか!どうせ騎士なんてなれやしないのにご苦労なこったな、って目で見られる惨めさを知らないんだろうなあ。

 寒さがきつい年にそう多くもない家族の分の食べ物が妬ましくなった後の惨めさを知らないんだろうなぁ。

 

 

 惨めってものを知らないんだろうなぁ。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 ざわめきを残して、アリアナサマは去って行った。

 

 

 

 

 私も歩む。

 アリアナサマの通った跡をちょうど真っ直ぐ断ち切るように。

 

 

 

 

「────」

 

 

 

 

 ──私の心も断ち切る。

 アリアナ「嬢」を装飾にした恵まれた者への妬み、嫉みを湯気を逃すように散らし、()らす。

 

 

 妬み、嫉む事。

 羨ましいと思い、欲しいと思い、自分にないのに誰かが持っている事を憎らしく思う事は仕方ない。

 人の心のはたらきだ。

 

 

 ──けれどそれは騎士の心ではない。

 いや、妬み嫉みを抱えたままの騎士だって確実に居るだろうけど、

 私のなりたい騎士はそういう騎士ではない。

 助けた子供に妬みと嫉みで澱んで仄暗く燃える目を向ける騎士でありたくない。

 ──どれほど惨めできつくて辛くて大変で貧乏でもなりたい騎士(ひと)の姿がある。

 

 

 

 

「騎士学生メブモ、鍛練を申請します」

 

 

 

 

 だから、私は諦めない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──出校(しゅっこう)まで残り三ヶ月。

 模擬戦は十戦して三勝七敗だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「騎士メブモ!汝をレデメイデ郡騎士巡視隊に任ずる!」

 

「はっ」

 

 

 

 

 騎士学校の出校とは、騎士に足ると認められた学生が騎士叙任され、任地へと送り出される事を意味する。

 ……ああ、家督を継ぐ奴もいるから絶対じゃないか。

 ともあれこれで学生生活は終わり、私メブモは曲がりなりにも騎士メブモとなった訳だ。

 ……一応、お貴族様の一員となった訳だ。

 

 

 

 

「巡視隊本部への到着は三巡間を以ってせよ!」

 

「はっ」

 

 

 

 

 配置はまあ想像通りの下働き。

 レデメイデは王領だけど田舎の方……。

 ま、自然災が無ければ三巡間あれば着くでしょ。

 

 

 

 

「では、失礼致します」

 

 

 

 

 さて、騎士としての格好を初めて整える。

 

 

 

 

「……つってもこれかぁー」

 

 

 

 

 全ての出校者がこの間で服装を整え、鎧を身に着け、武器を手にする一室、送りの間。

 ここから併設された馬小屋で騎乗し、任地に赴くのが習わしだ。

 ……けど私は前髪を下ろして、胸当て着けて、装靴履いて、小盾を付けたら、銛か投げ槍みたいに細っこい歩兵槍持って終わり。

 ……農村出身でぶっちぎりで序列の低い私はこれで終い。

 ……田舎から徴兵された兵士と何が違うんだろ。

 馬?

 馬一つで騎士扱い?

 ……たいしたもんだ。

 

 

 これが一番最初に送りの間に入る騎士学生筆頭で連爵家、それも五連爵が一家、ノルシュティゲリオン家長子のアリアナ嬢だったら、全身鎧に槍剣盾、何十人の従者が手伝い見守り付き添ったんだろうけど。

 

 

 

 

「ちょ、ちょっと待て!」

 

 

 

 

 と、ここで慌ただしくドアが開けられる。

 

 

 

 

「?はい、フージェ学校監」

 

「〜〜〜〜っ」

 

 

 

 

 私の返答も無視して馬小屋へと通じるドアへ飛び込んだのは、王陛下の下騎士学校を管轄するフージェ学校監。

 一応校長よりも偉いし、さっきのように任地の通達もこいつが行なうが、今のように私のような平民学生になど目もくれず、権力に(おもね)るハゲてヒゲ面で眼鏡のオッさんだ。

 

 

 

 

「……?」

 

 

 

 

 ……しかしあのハゲがあそこまで焦るって何事?

 しかも目的地は馬小屋。

 ……馬小屋でそんな焦る事ある?

 ……三公爵か、五連爵、……あるいは王族の牧からお気に入りの馬を引っ張って来ちゃったとか?

 

 

 …………いやそれ校長やあのハゲが気付かないとかある?

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 やがてあのハゲが馬小屋から戻って来た。

 ……が、なんか表情がおかしい。

 なんか常識が打ち崩されてる顔してる。

 

 

 

 

「……騎士メブモよ。……出発を遅らせて馬を換えないか?」

 

「はぁ?」

 

 

 

 

 ……やがてなんか変な事を言い出した。

 

 

 

 

「はっ、と言ったなヨシ!これで、」

 

「あっいえフージェ学校監、意味が分かりません!私にそんな金子はありません!」

 

「はぁ⁉︎口答えするな平、」

 

「私、王陛下からの慈悲をこれより騎士としての任で返す身!再び馬を購入などしては任を成す為、命を保つ事ができません!」

 

 

 

 

 ただでさえ騎士巡視隊は給料が少ないのに!

 

 

 

 

「いや、だが、」

 

 

 

 

「騎士メブモよ、とりあえず一度お主に当てがわれた馬を見て来てくれんか?」

 

「ハドリエ校長⁉︎」

 

 

 

 

 フージェのハゲがなんか悩んでる間に、この騎士学校の校長、ハドリエ元主爵(しゅしゃく)まで現れた。

 真っ白く長いヒゲにゆったりとしたローブと杖と、如何にも老隠者風だけど、あのローブの下は齢六十にして未だずっしりと筋肉が詰まる猛者中の猛者である事を騎士学校の学生は誰もが知ってる。

 

 

 

 

「……って一度?」

 

「とりあえず一度見に行って欲しい。それから聞きたい事があればここに戻って来るがよい」

 

「えっ、いいんですか?送りの間に戻らないのが最後の校則では?」

 

「ただのかっこつけじゃよ、校則ではない」

 

「は、はあ……。分かりました……」

 

 

 

 

 いや確かにそんな校則無かったけど……。

 

 

 

 

「ええ〜……?」

 

 

 

 

 とりあえず疑問を抱いたままドアを開け馬小屋への短い道を歩む。

 もうちょっとシリアスにこの道を進むと思ってたんだけどなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな思考も馬小屋の戸を開けた途端止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──おお、待ち侘びたぞ!我が騎士よ!」

 

 

 

 

 馬小屋に居たのは馬じゃなかった。

 

 

 

 

 馬の格好をした人間だった。

 

 

 

 

「さあ早く鞍を乗せて乗ってくれ!この日を心待ちにしてたんだ!」

 

 

 

 

 ……芸人や劇場の呼び込みで似たような格好を見た事がある。

 

 

 全身すっぽり、茶色の毛布のような布で包んで、顔だけを丸く出している。

 そしてその上に同じく同じく茶色の毛布で象られた馬の頭が真っ直ぐ前を向いて乗っている。

 足元は蹄を模した形の大きな靴。

 手元も丸く蹄型に囲われた中に、同じ色の厚ぼったい手袋を嵌めて、一見手が蹄にすげ変わったように見える。

 黒い鬣に尻尾も生やしている。……衣装なので尻尾は動かない。

 どうやら詰め物も入れているらしく、()()()()()()体型は全く分からなくなっていた。

 ……かと言って太り過ぎず「直立した馬」として、不気味なバランスにならないように整えられた感じの格好だ。

 

 

 

 

「         あの、」

 

「なんだ?」

 

 

 

 

 馬の首、いや喉?から顔を出すその格好は通りでおどけていれば滑稽で面白みもあり、人目を引くだろう。

 ──けど、これに騎士が乗って?いても滑稽で面白みもあり、人目を引くだろう。

 

 

 ──いや結論が同じ!

 これに騎士が乗っていても許可を得た芸人か劇場の呼び込みにしか見えないっ!

 

 

 

 

 だ、ダメだ、既に思考がなんかおかしい。

 

 

 

 

 これを着てる奴はホント顔しか見えない。

 ……暗い赤の前髪が少し、すらりと切れた薄黄の吊り目、落ち着いた顔立ち。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………お名前はありますでしょうか?」

 

「ああ!アリアナと呼んでくれ!今日からメブモ卿の馬を務める!」

 

 

 

 

 ……それは騎士学校を筆頭で終え、引く手数多の筈の、惨めなんて知らないはずの、五連爵家の長子アリアナ・ノルシュティゲリオンのものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・『騎士学校を卒業した私に支給された馬が、馬の格好をした学校みんなの憧れの人だったのですが』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 

「……………………あのー……」

 

「なんだ⁈」

 

「…………その、貴方は人間……、ですよね」

 

「馬だぞ!」

 

「……そのー、……人間の顔が……、出ているように、……見えるのですが」

 

「こうしなければ馬としての働きを果たせないのでな!」

 

「…………馬としての働きとは?」

 

「光栄にも騎士の乗騎となれたので、騎士を乗せて運ぶ事だ!」

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 

「…………私、かのノルシュティゲリオン家に、…………何か恨みでも、買いましたか?」

 

「?貴君は品行方正だ、褒め称えられこそすれど恨まれる筋合いはないはずだが?」

 

「…………何故私の元に?」

 

「我が騎士に相応しいからだ!」

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 

 …………馬は、見当たらない。

 

 

 

 

 …………横を見ると、棚の上に鞍らしきものがあった。

 …………背負子みたいに短い所に腰を掛けるらしい。

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 

「…………ちょっと、失礼します」

 

「うむ!」

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 

「……………………」

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 

「……………………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 

「…………なんですかあれ」

 

「馬じゃ」

 

 

 

 

 …………送りの間まで、戻って来てしまった……っ‼︎

 

 

 

 

「はあ⁉︎」

 

「……と言い張っておるアリアナ嬢じゃ。そこは儂も間違えん」

 

「間違えまくってんだろうがふざけんなよジジイ‼︎」

 

「……全く以ってその通りじゃ、返す言葉も無い……」

 

「…………」

 

 

 

 

 …………本当に申し訳なさそうにしている校長に怒りが鎮まる。

 

 

 

 

「…………なんでこうなったんですか」

 

「……うむ。……儂が彼女の望みを知ったのは任地希望を聞いた時じゃ。そこでアリアナ嬢は私は馬になります!と言ったのじゃ」

 

 

 

 

 ……なりたいです、じゃなくてなります、……か。

 ……意思固っ…………。

 

 

 

 

「……儂も耳を疑ったよ。馬の定義付けなど確認して、彼女が馬の様に働きたい、ではなく馬そのものになりたい、のだと分かった時、儂は暫し放心した」

 

「……でしょうね」

 

「……そして、父君と母君、連爵殿と連爵夫人殿は知っておるのかと尋ねたのじゃ。咎め立てはされておりません!と返して来た」

 

「……許し立てはされてませんよね。それ」

 

「儂もそう思う。弟君、あ、いや妹君のアイン嬢にも話を聞いてみた。……姉は小さい頃から馬に憧れの視線を向けていました、当時両親は騎士への憧れだと勘違いしていましたが、同じ程度の背丈の私には分かりました、姉がなりたいのは馬だと、そう教えてくれた」

 

 

 

 

 ……そんな昔からかよ‼︎

 

 

 

 

「……姉が騎士学校で頭角を表し、憧れの視線を向けられるのが恐ろしかったです、当然騎士になるのだと思われてるのが恐ろしかったです、あんな異界の願望を抱えていられるのが恐ろしかったです……!ずっと、誰にも言えなくて……!とべそをかいておったよ」

 

「アイツ何かの罪に問えません?」

 

 

 

 

 あの怜悧な美男子にしか見えない何事も涼やかにこなすアイン君、いやアイン嬢がべそかくなんて相当な事だぞ?

 実の弟、いや妹にそこまで気を遣わしてんじゃねーぞ?

 

 

 

 

「……問えんのじゃ」

 

「はあ⁈なんかありますよね⁈卑猥な服装とか全裸で路上に出るのを禁ずるとか!」

 

「王国法五十七条じゃな。……あの格好は顔以外どこも出ておらん。恥部が透けるような薄い格好でもない、むしろ体型自体隠れておる。それにその理屈じゃと芸人の類も捕まるぞ」

 

「人を牛馬の如く働かせてはならないとか!」

 

「……王国法三十二条で禁じておるのは人を雇う者が雇った者に給金もしくは衣食住の手当ないしその両方無しで働くよう強いる事じゃな。厄介な問題となっておるが、自ら牛馬のように働くのは禁じておらん。そこを突くとちょっとした人助けすら罪に問うてしまう」

 

「っ。……じゃあそもそも騎士学校出校者が騎士にならないのは⁈任に就かず任地に行かないのは背任じゃないですか⁈」

 

「家督を継ぐ者もおるし背任にはできん。……じゃから騎士学校出校者の行く末を縛る校則は無い。ごく僅かじゃが商人や職人になった者も居る」

 

「ぬああ″ああーー〜〜っ‼︎規定外いいぃいーー‼︎」

 

 

 

 

 おのれ王国法‼︎おのれ学校則‼︎

 

 

 

 

「…………そもそもじゃ、アロノジエン王国の如何なる法度にも人が馬になってはならんという条文は無い」

 

 

 

 

 わあ〜、おとぎ話〜。人を動物にする妖魔の為のほうりつかな〜?

 

 

 

 

「…………連爵家はどうなんですか。ふざけた事抜かす娘を勘当はしてないんですか」

 

「……今の所はしておらん。代々かの家の後継者が継ぐフワル主爵の地位がアイン嬢へと移りはしたそうじゃがな」

 

 

 

 

 …………当代のノルシュティゲリオン連爵は実に寛大なようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………ふうぅーーーーっ…………。

 

 

 

 

「…………で、それがなんで私の所に来てんですか。ノルシュティゲリオン様で引き取ってくれなかったんですか。アイン嬢あたりが引き取ってくれなかったんですか」

 

「……儂も一応連爵殿が咎めてはいないと言うので、てっきりかの家の牧あたりで走らすものかと思っておったのじゃがな……。……支給される馬を担当した者が新任で学校に疎くてな。お主に支給される馬の欄にアリアナ・ノルシュティゲリオンと記されていたのを見て、筆頭学生が序列の低い平民騎士に馬を送る習わしがあるのか!なんと慈悲深く素晴らしい!と勘違いしてな」

 

「……実際には自ら馬になっていたと」

 

「当人も馬がちゃんと学校に到着しておるか確認しに行ったら、自分を馬だと言い張るアリアナ嬢があの格好で馬小屋におって混乱して錯乱しておったよ」

 

 

 

 

 ……きっといい人なんだろうなぁ、その人。

 

 

 

 

「……筆頭学生で五連爵家なんですから名前を紛れ込ます手段なんかいくらでもありますよねえ……」

 

「……必ず改善しよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、なんです。自分の権力ねじ込めるから地元の牧に入らず騎士学校に入ったんですかあの馬は。ふざけてんですか」

 

 

 

 

「より良き乗り手に巡り合いたいから、そしてより良き馬として乗り手の事をよく知りたいから騎士学校に入ったのだと言っておったよ」

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 ……確かにあれは、あの顔は。

 

 

 ふざけてはいなかった。

 

 

 

 

 ……存在そのものがふざけてるってのは変わらないけどねっ‼︎

 

 

 

 

 …………ぅうぅーーーーっ…………‼︎

 

 

 

 

「…………ふざけてないらしいのは分かりましたけどなんで私なんですか⁈もっと良い成果出してるのがいるでしょう⁉︎アイン嬢は…………姉の醜態見たくないとして、アヴィン嬢とかジェルマール君とか‼︎貴族だからダメだとしても平民にだって!」

 

「今年の出校生の中で三年で出校した平民出身者はお主だけじゃ」

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

「えっ、そうでしたっけ?」

 

「そうじゃ。八年かけても追い出されるしかない者も多い中、必死に勉学に励み、武芸を鍛え、生きる為骨身を惜しんで働いて、三年で騎士の座を勝ち取りおった。──何の助けにもなれはしなかったが、お主が騎士となった事を儂は誇らしく思う」

 

 

 

 

 …………っ。

 

 

 

 

「……世話役の任を仰せつかった時、頂いた食事、温かい湯浴み、柔らかい寝床。見せて頂いた書物。吐き出した澱みをただ受け止めて下さった事がどれほど救いになったでしょう。ハドリエ校長、貴方への恩をこの私は死して尚、きっと忘れません」

 

 

 

 

 あの頃、へし折れかけてた私がそれでも騎士を目指せたのは、この人の暖かい心を受けたからだ。

 貴族というものに不信感を抱いていた私が貴族にも人がいると知ったからだ。

 この人から受けた暖かみがあったから、理不尽にしか見えなかった学師にも心を感じる事ができた。

 

 

 

 

 

「深き深き、っ、感謝を」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……騎士たる者、それに相応しき装いをするべしでなんとかなりませんかね?」

 

「……王国法二十四条はおかしな格好を騎士やその馬にさせてはならないという法度で、おかしな馬を禁ずるものではないのぅ。足の曲がった馬や痩せた馬しか馬小屋に居ない騎士もおるのじゃ」

 

「そっかー……」

 

 

 

 

 ……それはそれとしてあれが私の馬になる事は避けたい。

 なんならハドリエ校長とあの馬とは全く関係ないし。

 

 

 

 

「……あの馬……と言い張る彼女に乗った?らどう考えても芸人にしか見えない事は脇に置くとして、そもそも五連爵の子弟を馬扱いして大丈夫なんですか⁈私が何かの罪に問われてかの家に処刑されません⁈」

 

 

 

 

「もしそうなるのであれば儂が庇い、戦おう。他者にそちらの不手際を押し付けるばかりの家など騎士は疎か人にも悖るわ」

 

 

 

 

「──……」

 

 

 

 

 ……ガチで、戦う気だ。

 行き着くとこまで行ってしまえばあの強大なる五連爵家が一家を、この騎士はたった一人で滅ぼす。

 …………なら、大丈夫だろう。

 

 

 

 

「…………念の為聞きますが、馬を換える、ないしその資金を提供して下さるという事は無いのですね?」

 

「それはほれ、フージェ学校監」

 

「…………私だって、出来るものならそうしたかったわっ‼︎」

 

 

 

 

 あっ、まだいたんだこのオッさん。

 

 

 

 

「ただでさえお前ら平民如きが騎士になる為方々に頭を下げて媚びてへり下って漸く手に入れられたと言うのにこれ以上手に入れられる馬など無いわっ‼︎尊き方々もこの時期に騎士を増やすから元々馬は足りぬと言うのにっ……!」

 

「資金も難しいのぅ、お主はもう騎士じゃ。……しかし遺憾ながら地位が低い。贈賄にならぬよう手続きをしても後回しにされ、三巡間などすぐ過ぎてしまう」

 

「そ、それにかの五連爵家の令嬢を金で売り買いしたなどと噂が立ったらどうするっ……?吹けば飛ぶような男爵でしかないんだぞっ、わ私は。そ、そうなったら私は、私は」

 

 

 

 

 ……大変なんだなこのオッさんも。

 初めて同情した。

 ……公爵、連爵、主爵、子爵、男爵で一番下とはいえ、無爵の騎士なんて及びもしないはずなんだけどな。

 ……現状既にあの馬と名乗る女を金で売り買いした形になってしまってる事は黙っといてやろう。

 

 

 

 

「そうなったら儂が味方しよう、学校監」

 

「……そもそも何処かから他の馬、正真正銘の馬を借りてはこられないですか?……いや無理だったんでしょうけど」

 

「うむ……。……こうして与えられる馬は王陛下からの支援金により支給された、という形故な。王陛下の慈悲たる馬に乗らず、となると不敬罪に問われるやもしれん」

 

「あのっなんとかしてアイツ人に戻せません⁈アイツのせいで色々面倒くさくなってるんですけど⁉︎」

 

「…………無理じゃろうな。補足すれば王都からレデメイデは遠い。例え何の支障も無い任務でも、時間が長過ぎて馬を貸す者はそうおらんじゃろう」

 

 

 

 

 …………面倒くせえなこの国っ‼︎

 

 

 

 

「……それに余りぐずぐずするのはおすすめせんぞ、騎士メブモ?」

 

「へ?」

 

「アリアナ・ノルシュティゲリオンは慕われ、愛され、憧れられておった。アヴィンナ嬢など特にな。……いつ噂が耳に入ってもおかしくないぞ」

 

「……………………」

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

 ……アヴィン、読み方によってはアヴィンナ。

 アヴィンだと実妹のアインと似てる、アヴィンナだとアリアナ当人と似てるとしてどちらの読み方も「お姉さまの妹として大変嬉しいです……♡」と頬を赤らめて喜んでいた。

 ……今も馬小屋で待つであろうあれをお姉さまとして大変慕っていたヨハクナ連爵家長子だ。

 

 

 ……そもそも王族から分かれ万が一の時は新たな王を出す三公爵に匹敵する五連爵が抜きん出てるだけで、連爵は古くは盟爵と呼び、「貴族集まる盟を束ねる爵位」とみなされた大貴族達だ。

 五連爵含めても二十二家しか無く、減る事はあっても増えはしない、事実上の貴族の頂点だ。

 ……ハドリエ校長がとんでもなく慈悲深くておおらかなだけで本来主爵ですら「主たる、一角の貴族たる爵位」のとても偉い地位なのに、連爵なんてようやっと騎士になったばかりの農民騎士ではどうしようもない。

 実家だけでも配下からは子爵男爵がごろごろ出て来るし、同じようにあの馬を慕う奴らが集まる「アリアナ模範生の会」を合わせたらもっとヤバい。ヤバい。

 

 

 ……おまけにアヴィン嬢、強い。

 長い手足から繰り出す槍と突剣の突きは石さえ突き刺す。

 ……あの馬が抜きん出てただけで二番手は間違いなくあいつ。三番手のジェルマールの野郎はほとんど負けてた。

 ジェルマールの野郎に全戦全敗してた奴にさえほぼ全戦全敗してた私では勝ち目など無い。

 

 

 ……そして、人の話を聞かない節がある。

 あいつ一人にでも知られたらあれが馬になったのは問答無用で私のせいにされて、私の首が王都の城門に晒されるだろう。

 慕う会、違った模範生の会が殺到したら、私は無数の肉片になってアルロー川の小魚の餌だ。

 

 

 

 

「幸い、レデメイデは王領の田舎じゃ。そうそう無体な真似はできんし、慕う会、いや模範生の会の縁者もおらん……はずじゃ。野営のみで行く事も出来よう。それにかの家の不始末、かの家から何の接触も無いとは思えん。……お主に様々な事が重なった故の不始末を押し付けるのは大変心苦しいが、どうかその時まで辛抱してくれんか?」

 

「一刻も早く逃げないと命が危ないので急ぎ任地に赴きます」

 

「お、応」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハドリエ校長。──私が死んだら葬儀はどうかよろしくお願いしますね?」

 

「──……任せい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む、大丈夫だったか⁈」

 

「…………」

 

 

 

 

 お前のせいだよ。

 

 

 ……実際こいつは自分が馬になる事で生じた諸々の面倒事を知っているのだろうか。

 ……なんとなく、知ってても曲げなかった気がする。

 

 

 

 

「…………一応確認しとくけど」

 

「?うむ!」

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

「私は金持ちじゃない。実家も豊かじゃない農家で金は無い。これから給金の高くなる職位や任に就ける見込みも無い」

 

「うむ!」

 

「あんたの寝床は馬小屋になる」

 

「ああ!」

 

「……あんたの食事は飼葉になる」

 

「ああ!」

 

「あんたを馬扱いする事になる」

 

「ああ!」

 

「……それでほんと良いの?」

 

「?馬として扱うだけだろう?もちろん良いぞ‼︎」

 

 

 

 

 ……とぼけてさえ見える馬面の馬の頭の下で、茶色い皮に囲われて、実に輝かしい顔をこの女はしている。

 もうこいつ自認が人じゃない、馬だ。

 顔を出した馬の格好をした人間じゃない。

 ……多分馬の頭を被っては飲み食いができないとかで顔だけは出さざるを得なかったから顔を出しているだけで。

 ……人を馬にする妖魔とかがいたら、喜んで馬になりに行ったんじゃなかろうか。

 

 

 ……それを本人の口から聞いて安心──

 

 

 ……はしなかった。

 寝床が馬小屋になる、餌が飼葉になる、と聞いての返事。

 知識で知っているという感じじゃなかった。

 もう経験しているという感じだった。

 

 

 …………こいつは馬小屋で寝た事はあるし、飼葉を食べた、いや食事とした事があるのだ。

 

 

 ……怖い。

 馬小屋で寝るのはまだ分かるけど飼葉を食べるってなに⁈

 実家でどうしようもなくヤバい頃草は食べた事あるけどあんなん不味くて青くてお腹壊すだけだったよ私は⁈

 人として生まれたものが生きていける食べ物じゃないでしょ⁈

 怖いっ‼︎

 

 

 

 

「……分かった。行くよ」

 

「‼︎うむっ‼︎」

 

 

 

 

 ……けどこいつを慕う会は恐ろしい。

 一瞬も無駄にしたくないので心を無にしてこいつに乗る事にする。

 

 

 ……ちなみに私は馬術は苦手だ。

 最初怖かった馬自体は慣れるとなんかこいつらかわいいかも?と思えたけど馬に跨って手綱で操るのはどうにも慣れない。

 揺れるし。

 

 

 

 

「あ、さっきは忘れる所だった。手綱と頭絡を嵌めてくれ!」

 

「……。……はあ?」

 

 

 

 

 などと思ってるとなんか言ってきた。

 

 

 はあ?

 

 

 

 

「ほら、これを私の頭に嵌めて、はみを噛ませてくれ‼︎」

 

「⁇」

 

 

 

 

 ……はみとは馬の口に噛ませるもので、これを手綱で引っ張る事で馬に進みたい方向を命令する。

 頭絡とは馬の頭に付ける諸々を固定する為のものだ。

 

 

 ……いや、いるぅ⁇

 

 

 

 

「ああ、このままでは高いかっ。さっ!」

 

「……」

 

 

 

 

 しゃがんで差し出された馬面をひっぺがして「ふざけてんじゃねーぞてめぇ‼︎」ってぶん殴った方がいいのではないかと思えた。

 

 

 ……でも「あっ、すまない!傷を癒やして来る!」とか言って終わりな気がするし、その間に慕う会が来たら終わりだ。

 生存確率は零だ。

 ……だから付ける。

 

 

 ……けどこの手綱、真ん中らへんにもはみが有るけど……?

 ……。

 ……………………。

 

 

 

 

「…………」

 

「!むぅ‼︎」

 

 

 

 

 ……真ん中らへんのはみを馬の格好した女の口に噛ませると喜び出した。

 ……無心で作り物の馬の頭に頭絡その他も付ける。

 

 

 

 

「むぅ!ふー!ふふふ……!」

 

 

 

 

 ついに人の言葉すら喋れなくなったのに馬の首に手ぇ当てて喜んでるこいつに無心が震えて壊れる……っ‼︎

 ほんとにこれが裸やら乳首やらが見える格好に劣らないというの⁈

 

 

 

 

「……‼︎」

 

 

 

 

 慕う会を思い出してなんとか鞍に手を伸ばす、あいつらに衝き動かされるの嫌なんですけど⁉︎

 

 

 ……肩紐背嚢みたいにすりゃあいいのに普通の鞍みたいに横帯にしやがって──‼︎

 

 

 

 

「むぅ‼︎」

 

 

 

 

 ……そうして一式付け終えたヤツは「さあ乗って‼︎」と言うように背中を差し出す……。

 

 

 ……座面ちっせぇ……。

 諸々考えたら肩車の方がマシでは?

 

 

 ……あとこの馬の格好、縫い目は見つかるけど、脱ぎ着する為のボタンとか紐とかが全く見当たらないぞ……?

 もよおした時とかどうすんだ……?

 まさか、垂れ流し……?

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 ……今日で騎士人生は終わったものと考え、顔を出した馬の格好という大変面白い姿の女が背負った鞍に乗る。

 

 

 …………。

 

 

 

 

「…………」

 

「むぅ‼︎」

 

 

 

 

 騎士を嘱望されまくってただけの身体能力で軽々立ち上がる。

 

 

 ……やっぱり馬の頭が近過ぎて視界が悪りぃ……。

 本物の馬だったらもっと離れてるし低めだから気にならないのがすぐそこにあるから邪魔……。

 あと槍片手で持ってないとなのも邪魔……。

 

 

 

 

「……城門通ったら、山の方通ってレデメイデまで行く。走って」

 

「むぅ!」

 

 

 

 

 ……最も早く抜けて人目を避けたい王都内では非常時以外走らせられない。

 ……こいつは馬の格好した人なんだから関係無いけど、こいつは人扱いを聞いてくれなさそうだし。

 

 

 

 

「──‼︎」

 

「うぅっ‼︎」

 

 

 

 

 ──農民が騎士を目指すのってそんなに悪い事ですか──?

 そう天に嘆き怒りながら馬にするように両脇挟み蹴って出発の合図を出し、私の旅路は始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もし、釣りというものを覚えられなければ野営の食卓は悲惨なものになっていた筈だ。

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 ……釣れたのですぐ締める。

 腹を開き、内臓を掻き出し、口から鰓に細蔦を通してぶら下げる。

 

 

 ……もう十分釣れたので今日の寝床へ戻る。

 ……。

 ……畳めるように作られた飼葉桶を開いてまた川岸へと向かう。

 

 

 

 

「おぉ、すまない‼︎ありがとう、メブモ卿!」

 

 

 

 

 水を汲んで戻るとちょうど馬の格好をしたヤツも自分が食べる草やらを抱えて戻って来ていた。

 馬の頭の下の顔がパァッ!と明るく笑ってる。

 

 

 

 

「……別にいいよ、こんぐらい」

 

 

 

 

 ……出発してもう三日経つが、この女が馬の格好を脱いだ所を一度も見た事が無い。

 糞尿の類を馬の格好に垂れ流してる様子も無い。

 

 

 ……強い奴って、そんなとこまで、非現実的なの……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……愚かにも騎士を目指した農民への罰たる辱めとしか思えなかった、永遠にも思える辱めは──王都北西門を出た瞬間一瞬で過ぎ去った。

 

 

 

 

『⁉︎』

 

 

 

 

 私を乗せたヤツが走り出したからだ。

 ──超速で。

 

 

 景色は流れる流れる、帯のように。

 風は吹く打つ、痛い程に。

 

 

 あっという間に、とんでもない距離を踏破された。

 

 

 

 

『…………』

 

 

 

 

 何がすごいって、

 

 

 全く揺れなかった事、

 

 

 全く疲れなかった事。

 

 

 その上でとんでもなく早かった事。

 

 

 ……どんな馬も、まるで比べ物にならない程。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 ……何が嫌って、

 

 

 ……この馬の格好着込んで人間の顔がばっちり出てるのに自分は馬だと言い張ってるふざけた格好のふざけた女が、

 ……今まで乗ったどんな馬より乗り心地が良かった事。

 

 

 

 

「♪」

 

「…………」

 

 

 

 

 ……飼葉桶から水を直接ごくごく飲んでるこいつの足で、山ん中通ってるのにもう旅程の三分の一を踏破している。

 このまま同じ調子で行けるなら、九日、つまり一巡と二日でレデメイデへ着く。

 十八日、つまり二巡と四日くらいで着けるかな、と思っていたので大幅な短縮だ。

 

 

 ……なんというか……。

 

 

 

 

「──むっ」

 

 

 

 

 するとヤツがいきなり真剣な顔をしてこっちを見る。

 ……だけどちょうどとぼけたように馬の頭が見える具合ですぐ上にあって、いまいち真剣に決まらない。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 ……まあいくら奴がふざけた格好でいようと、訪れる危機は変わらないし、私の背後の方から危機が来てる事も分かる。

 立ち上がり、槍と盾を構える。

 夜ん中、火ぃ焚いてるのにガサゴソ来るって事はよっぽど凶暴な獣か──!

 

 

 

 

「──ぉお、女かあ〜」

 

 

 

 

 ──盗賊!

 

 

 

 

「それに騎士、兵士かあ〜?オレの」

 

 

 

 

 一人、それも素手って事は()()()()()()()()()──!

 

 

 

 

「……いや〜、芸人かあ〜?」

 

 

 

 

 と、筋骨隆々な身体に粗雑な格好を纏った盗賊の男は変なことを言い出す。

 …………私の後ろを見ながら。

 

 

 

 

「馬の格好の奴と騎士兵士のモノマネする奴」

 

 

 

 

 ──……そこには二足歩行の馬の喉から人の顔を出すという大変面白おかしいお姿をした女。

 

 

 

 

「むっ、物真似ではないぞ!騎士と馬だ!」

 

「…………」

 

「……」

 

 

 

 

 ……ちら、と盗賊が私を見たのは私の格好がショボ過ぎて、あの馬を名乗る女と二人組でそれっぽい格好した芸人と言っても通用しうるから迷ったのだろう。

 私だってひょっとして今の私は騎士じゃなくて芸人なんじゃないかって迷ってる。

 

 

 

 

「……まあやるこた変わらねえ‼︎」

 

「‼︎」

 

 

 

 

 賢明にも狂人の戯言を切り上げた盗賊は拳を打ち込む‼︎

 ──盾で防げたけど重いっ‼︎メイス、いや大鎚並みっ!

 

 

 

 

「!はっはあー‼︎兵士で合ってたかあーっ‼︎オレの大好物だぜえーっ!」

 

「っ‼︎」

 

 

 

 

 槍で突く、けど避けられる。

 身のこなしもいいっ!

 

 

 

 

「オレはなぁ、呑気に巡回してる騎士兵士をブチ殺すのが大好きなんだぜえーっ!」

 

 

 

 

 防ぐ、突く、避けられる。

 素手で盗賊なんてやってるのは、拳一つで剣槍鎧だろうと勝てるって自信!

 

 

 

 

「てめえがいつ血潰されるか楽しみだぜえーっ⁉︎」

 

 

 

 

 防ぐ、突く、避けられる。

 一人で盗賊なんてやってるのは、何十何百いようと一人で倒せるって自信!

 つまりこいつすごく強い!

 

 

 

 

「あぁーんっ⁈」

 

 

 

 

 防ぐ、突く、避けられる。

 全く、

 防ぐ、突く、避けられる。

 ホントに、

 防ぐ、突く、避けられる。

 キツい……!

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 

 

 

 

「……よく粘るじゃねえか!」

 

 

 

 

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 

 

 

 

「……なあ」

 

 

 

 

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 防ぐ、突く、避けられる。

 

 

 

 

 

「…………いつまでやんだよっ‼︎」

 

 

 

 

 ──……こっちのセリフだっ‼︎

 一回くらい当たれよ‼︎

 もう腕の感覚が無

 

 

 

 

「ぐばっ、」

 

 

 

 

 顔面が殴られた。

 

 

 

 

「……やっとかぁ‼︎」

 

 

 

 

 あっ、なんか、切れた、気持ちが、

 

 

 ……腕上がんない、

 突くだけにしよう。

 

 

 

 

「死ねぇえー‼︎」

 

 

 

 

 殴られる、突く。

 殴られる、突く。

 

 

 

 

「ーーーー…………」

 

 

 

 

 殴られる、突く。

 殴られる、突く。

 殴られる、突く。

 殴られる、突く。

 

 

 …………。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 殴られる、突く。

 殴られる、突く。

 殴られる、突く。

 殴られる、突く。

 殴られる、突く。

 殴られる、突く。

 殴られる、突く。

 殴られる、突く。

 

 

 ……ちょっとさあ……‼︎

 

 

 

 

「……っ、」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……馬だってんならさ、私のこと、助けなさいよ──‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

「承知した‼︎」

 

「ぐぶべっ‼︎」

 

 

 

 

 ずどーん。

 べきべきべきべき。

 …………。

 

 

 …………。

 ……私が散々殴られ一刺しもできなかった相手を、この馬は一撃で吹っ飛ばした。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 焚き火から一本、松明代わりに薪を抜く。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 山ん中の木が嘘みたいに何本もへし折れた先へ向かう。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 ……盗賊は白目剥いて気絶してた。

 胸倉に薪を焼き付けても目覚めないが、生きてはいる。

 

 

 ……()()()()()()()()と思う。

 砦を一撃で吹き飛ばせる強い騎士の一人であるあいつにとって、あんなの手加減でしかない。

 

 

 

 

「おお、戻ったな!」

 

「…………」

 

 

 

 

 ……ふざけやがって。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……騎士より強い馬とか、ありえないでしょっ……‼︎」

 

 

 

 

 人の事バカにして……っ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、メブモ卿はきっと私より強くなる」

 

「適当言ってんじゃねーよふざけやがって‼︎」

 

「私より粘り腰の強い騎士が弱い訳ないだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────。

 ……なに?

 

 

 

 

「アンタより粘り腰が強いって?」

 

「ああ、貴君は有名だったからな。勝てはするが誰よりも粘られる、厄介者の雑草騎士──、貴君は誰よりも面倒な相手だと誰もが噂していたよ。恐れられていたとも言う」

 

 

 

 

 …………あれ、そんな意味合いあったの?

 ……農民上がりを蔑んでるだけかと。

 

 

 

 

「だが私が貴君を知ったのはもっと後だ。第一回の行軍訓練の時最後まで立って、歩いていたのは貴君と私だけだっただろう?」

 

「……ほとんど気絶してたから覚えてない」

 

「そうか、アヴィンくらいはもしかしたらと思うくらいで私しか保たないと思っていたよ。アヴィンすら立つのがやっとだったのに、貴君が立って歩いていた時私は驚いたよ」

 

 

 

 

 何がおかしいのか馬の頭の下の顔が微笑む。

 

 

 

 

「──だが貴君を調べてみて愕然としたよ。貴君は戦地に居る者より苛烈な生活を二年以上していた。毎日荷役の仕事をこなし、訓練は休まず、それでいて勉学も落第しない。それも騎士に生まれた者が十年掛けて覚える物事を並行して覚えながらだ──!貴君は並みの騎士の五倍、いや十倍以上の速さでの成長に耐えきったのだぞ⁈あれは百人がやれば百人が倒れて患い最悪死ぬ道程だ‼︎」

 

「えっ……」

 

 

 

 

 ──だがそれも一転して、怒るような驚くような呆れるような顔で猛然と言葉が連ねられる。

 

 

 ……困惑している。

 何事にも泰然としたこの人のこんな剣幕初めて見た……。

 

 

 

 

「更に訓練ではどんな相手にも三分の一刻より長く戦わない事が無かっただろう?私にも、アヴィンにも、ジェルマールにも。あの過酷な生活をしながら、これだけ長く戦うのだと分かった時、──負けた、と思ったよ」

 

「……」

 

「私は、足を取られる事が無かったからなぁ──。──是非、貴君の馬になりたいと思ったよ」

 

「待て待て待てなんでそうなる?」

 

 

 

 

 少ししんみりした空気が台無しだよ。

 

 

 

 

「……いや本当は貴君に「私を貴君の馬にしてくれ‼︎」と頭を下げに行くのが道理かと思っていたのだがな。……受け入れられるか不安で馬になってから押し掛けてしまった。誠に申し訳ない」

 

「その道理を選んでいたらアンタを慕う会にブッ殺されてたから選ばないでくれてありがとうございますね?でも今も別に受け入れた訳じゃありませんからね?」

 

「えっ⁉︎」

 

 

 

 

 えっ⁉︎じゃねーよ。

 

 

 

 

「アンタの自認がどうだろーと傍目には芸人と何も変わらないからね?」

 

「幻術や妖魔はこの国のどこにも実在しなかったからな……」

 

 

 

 

 探しに行ってたのかよ。

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 ヤツはしょんぼりしている。

 ……これも初めて見る顔だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………私は」

 

「……?」

 

「……小さい時に、私を助けてくれて、村を守ってくれた騎士に憧れて、騎士になりたいと思った。……兵士として功を立てて騎士に引き立てられる道だってなくはない。……けど、あのひとみたいな最高の騎士になりたかったから、学校に入った。…………アンタは?」

 

「私は、最高の騎士にも恥じぬ馬になるべく、騎士学校を志した」

 

「……そっか」

 

 

 

 

 ……「なれるかな」。

 ……とは聞かなかった。

 

 

 ……「麦の騎士」リュイセ。

 リュイセ・ス=ディザム。

 騎士巡視隊として数多の盗賊蛮族を切り伏せ多くの農村を救った民衆の英雄、故に民衆を象徴する「麦」の騎士と称えられた、するどく、あたたかいひと。

 ……栄転したとされる国境の都市で、何十万の民衆の身代わりとなって、包囲する敵軍に捕まった彼を、この国は見捨て、身代金を支払わなかった。

 ……その後の報せは無く、包囲軍を半分以下にまで減らした恨みでとっくに殺されてるはずだ。

 

 

 ……それが英雄の末路、騎士の現実だとしても、私はあの人みたいな騎士になりたい。

 いや、なる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 気付けば、夜が明ける。

 

 

 

 

()()()()

 

 

 

 

 ……ずぶとく行こう。

 

 

 

 

「‼︎」

 

 

 

 

 ……こいつ程とは行かなくても。

 

 

 王国でも五本の指に入る戦力が私んとこいるのは心強いと言えなくもない。

 ……自認馬だけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

コイツ(盗賊)引き渡しに一旦町まで行くよ。──あとこうして話せるなら手綱いらないでしょ。鞍も正直不安だから肩車か背負うにして」

 

「──うむ‼︎委細承知した!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 雑草を呪わない農民はいないだろう、恐らく。

 私ももちろん呪わずにはいられないそのずぶとさは知ってる。

 

 

 うん、ずぶとく行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 盗賊が「騎士殺し」と名を馳せた大物賞金首だと知るのは後の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 漫画だったらキャーキャー言われるコマと馬として待ってたコマの二コマで最初の説明はだいたいできるんだろうけどなぁ。


・メブモ
 色々噛み合った結果とんでもない罰ゲームを喰らった。
 濃緑の髪に下半分だけ目元が見えるメカクレ。
 しぶとくって体力がある。

・アリアナ
 色々噛み合った結果馬になれた。
 美人だけどずっと馬の顔出し着ぐるみ着てる(着ぐるみを表す言葉が無いので着ぐるみと呼ばれる事は無い)。
 馬耳馬尻尾だけ付けてるのでも、頭と手足だけ着けてるのでも、着ぐるみパジャマの類でも、ましてやパーカーや帽子の類でもなく、顔以外全身を包み体型さえ変えてる着ぐるみ。
 美人だけど冒頭以外顔しか出てない。
 すごく強い。

・学校監
 かわいそうなオッさん。

・校長
 騎士学校の長たる老人。
 世話役などにかこつけて苦労する学生を助ける人格者。
 王国でも五本の指に入るくらい強い。

・アイン
 直接の登場はしてない。
 かわいそうな妹。
 校長も含め六割くらい男だと思われてる節がある。

・アヴィン
 直接の登場はしてない。
 ヤバい女と認識されている。

・世界観
 だいたい悪魔の実と火薬と極端にデカい生物のいないO○E PIECE。
 将来的にトイレに行かないスーパーアイドル伝説が生まれる。

・騎士学校
 騎士を育てる為の学校。
 改善点はまだまだあれど、確実に時代を変えてる。

・アロノジエン王国
 王都はアルロー川の側に広がるアロノジェンド。
 通貨はアロール。
 近年騎士学校が設立された事により、平民でも騎士になれるようになった(それ以前からなれる見込みが無かった訳ではないがより時間と実力と運が要る)。

・五連爵
 アロノジエン王国の大貴族たる二十二の連爵家の中でもカルゲラ・コワルディオン・ログサーナの三公爵にすら匹敵する程抜きんでた五つの家。
 ノルシュティゲリオン家、ロロサーナ家、ファイエンナル家、ス=ディザム家、アルローンサン家を指す。
 広大な領地と確固たる権威を持ち、人々からの扱いはもはや小王国と言ってすら良い(というか移封されたロロサーナとアルローンサン以外の三家はかつて王家であるアリエ家と同格の家だった)。

・麦の騎士
 リュイセ・ス=ディザム。
 メブモの憧れの人である騎士。
 メブモが助けられた頃はやつれた雰囲気の三十代くらいの男性。

・アリアナ模範生の会
 ヨハクナ連爵家長子アヴィンによりアリアナを慕う学生を集め設立されたグループ。
 学生の模範であるアリアナを見習って人間としての向上を目指す集まり……、……とされているがその実態はアリアナのファンクラブ。
 校長も含めた外部の人々に正式名称を「アリアナお姉さまを慕う会」だと思われてる節がある。
 ……五連爵も三公爵も王家すら恐れない校長さえこの会を恐れている節がある。
 アリアナの欲望については何も知らない。
 


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