エセ・スパイダーマンがノー・ウェイ・ホームに参戦する話 作:マッキーガイア
「良いのか?」
Dr.ストレンジがそう問いかけてきた。後数分でピーターが連絡してネッドやMJを此処に連れてくるであろう。
それに、答えは決まっている。
「どの道、言わなきゃならない事だよ。それに今が良いタイミングだと思うから…」
「君がそれで良いのなら構わないが…」
ストレンジはそう言い淀む。現状を考えて言ってくれているのだろう。
「大丈夫だよ。何もピーターみたいにネットで大々的に公開されるって話でもないんだ。
それに彼らはあんな状態のピーターの元に非難を浴びても今だに居続けられる人物達だよ。信用も信頼も足ると思う。」
「…………………ふむ。」
少ししてそう息を吐いた。
今だに雪が積もり続けるサンクタムのロビーで厚着を着た男2人、吐いた息の分冷たくなったココアを飲んだ。
……えっと、なんて説明しよう。
僕はピーター・パーカー。放射線の蜘蛛に噛まれてから僕はこの世界でたった1人のスパイダーマンだった。
あとはみんな知ってるでしょ?スタークさんにインターシップに呼ばれてアベンジャーズに参加して
長い戦いの末にスタークさんを失った。
凄い落ち込んだ時もあったけど、色々あって立ち直って。ミステリオに正体をバラされた。
今は世間の敵って言うやつらしい。
でも、大丈夫!僕には親友のネッドがいるし、MJも僕の味方をしてくれている。
ハッピーもメイおばさんももう一人のスパイダーマンだって!
そう考えてみると僕って案外恵まれているかも。
でも、それに気付かないで手を伸ばし過ぎた先にマルチバースから僕の事知ってる奴らが集まってきちゃったらしい。
自分で蒔いた種は自分で刈らなきゃ…
と言う事でみんなに助けて貰う事に…もちろん危険が及ばない様細心の注意を払わせてもらうけどね。
「…うわぁ…俺がサンクタム・サンクトラムに居るなんて…」
「ああ、信じられん。」
ロビーに入った瞬間、周囲を見渡しながらそう呟いたネッドにドクターはそう続けた。
どうやら彼としてはあまりネッド達を歓迎していなさそうであった。まぁ、それも仕方ないと言えば仕方ないのだけれど…
「あれ?彼は?」
ふと、ネッドが僕の近くに座っていたもう一人のスパイダーマンを指差しながらそう問いかける。
「ああ、見ての通りスパイダーマンだ。」
「スパイダーマン?でもピーターはあそこに居るし…もしかして、分身?」
「そんなわけ無いだろ。もう一人の方だ。」
そう言うとドクターは階段を登り切り、見下ろす様な位置に着いた。
「……もう一人…」
ネッドはそう呟くと、「…まさか」と零してから見よう見まねのファイティングポーズをし始める。
隣にいたMJも続いた。
「偽スパイダーマン!ここで会ったが100年目!」
「そのポーズ何処で習ったの?」
「うるさい!ここで会ったが100年目!」
そう叫べば、スパイダーマンもどうすれば良いのかと困惑表情を隠せなくなった。
「わかったよ…歩み寄ろう。」
困った挙句の言葉だったのだろう。ネッドに向けてまるでハルクを宥めるブラック・ウィドウの様に手を伸ばしつつ、そう言った。
歩み寄るとはどう言う事だろうかなんて思いつつも、僕としては仲裁にも出ずらいため何気なくみていると…
するりと、顔を隠していたそのマスクを脱いだ。
「…まってまってまって!?何してるの!?!?」
思わずそう叫べば、マスクの下の男はイタズラっぽい笑みでこちらを見て、
「…やっと肉眼で見れた。やっぱりトム・ホ◯ンドだ。」
開口一番そう呟いた。トム・ホラ◯ド…
偶に似てるって言われるけど、そこまでだろうか、なんて思った。
マスクの下には思わぬ人物が!なんて事は無かった。僕の時はトム・ホラ◯ドがスパイダーマン!?なんてジョークを言われて、彼にも迷惑をかけたが…これは心配は無さそうだ。
「僕はベン・ライリー…実名じゃないよ!
この世界ではデイリービューグルのカメラマンやってる。」
「デイリービューグルってあのJJJの会社!?」
「カメラマンって事はピーターの写真撮ってたのか!?」
「まって、この世界ではって言った?」
上からMJ、ネッド、僕である。
色々、聞きたい事が多過ぎるけれど、その最たる例だけピックアップした素晴らしい質問だと思う。
「一問目、答えはYES。あのジョナ・ジェイムソンの会社だよ。
二問目、これはNO。自分自身の写真だけしか撮ってないよ。つまり自撮り送ってお小遣い稼ぎしてるの!
で、三問目、これもYES。さっき"この世界では"って言ったよ。」
返事に次々と答えて
「…じゃあ、つまり貴方は…」
「下にいる奴らと同じ、違う世界のスパイダーマンって事になる。」
そう締め括った。
「少なくとも、ここは私の世界ではないわね。世界滅亡の危機何回起きてるのよ…」
グウェン・ステイシーは州の図書館にてそう、重いため息を吐く様に呟いた。
手元にあるのはここ20年の激動の時代を描いた歴史書である。たった20年であるのに参考書並みの分厚さを誇っている。
この以前2000年ほどは自分たちの世界とさほど変わらなかったが、2008年くらいからトンデモ歴史書に大変身。私とピーターが出会った頃にはニューヨークで異星人が大暴れして大変な事になったとか、米国政府が民間人ごとミサイルでニューヨークを壊滅させそうになっただとか。
もはや第二次大戦中の些細な違いなど記憶の彼方に押し流されてしまった。
とても、1人ではこの衝撃は耐えきれなくなっていただろう。
隣で私と同じく項垂れている別世界のピーターが居なければ…
このピーター、私の世界のピーターと比べて年齢もスパイダーマン歴も10年程は上で、すっかり大人なのだが、人間関係において少し積極性には欠けているっぽい感じだ。
彼の好きな女性、MJというらしいけれど、その人に対してもどうも受け身の姿勢が多く彼曰く『良い関係を築けた』との事だが、あまりはっきりとした印象を受けない。
そう言う意味では未だに少し子供っぽいと言うか…
「…一応聞くけど、貴方の世界じゃないわよね?」
「絶対に違う。こんな世界でスパイダーマンなんかやってた日にはいくら死んでもおかしく無い。僕の世界なんか時々宇宙からネバネバの化け物が来るくらいだよ。」
「……………来てるじゃない…異星人。」
そうツッコむと彼は少し笑って「そうだね」なんて返してくる。
「どうだったの…?そのネバネバの…って奴。私の世界にも来るかも知れないから一応聞きたくて。」
「…あー……あはは、そうだね。
…僕は奴をヴェノムって呼んでる。黒くてネバネバして、ある時急にスーツにへばりついて来て…
気付いたら…ワァオ、真っ黒なスパイダーマンになってた。」
「へぇ…クールね。」
「そうだね。確かにクールだし、あれを着ている間は気分が良くて、パワーもアップしてて…
でも気付いた時には自分を見失ってた。」
後悔の念が浮かぶ様な声色でそうピーターは呟くと懺悔する様に…
「まず、MJを傷つけた。君を傷つけた。ハリーを傷つけた。
もうわけ分からないくらい傷つけて、気付いた時には後に引けなくなってた。」
「………」
「だから、奴が現れたら本当に気を付けるんだ。
それと覚えていてくれ、奴の弱点は音だ。それなりの高音波で怯ませる事が出来る。」
そう言うと彼はまた少し笑った。
『なぁ、エディ…』
「聞くな…」
『さっきまで、サンフランシスコに居たよな…』
「聞くなって言っただろ…?」
『なんで俺たち今、ニューヨークに居るんだ?』
「………はぁー、そりゃあ、あの赤い奴に連れて来られたからだろ…」