「個性婚って……第二〜第三世代の間で問題になったやつ、だよね?」
「俺の親父はエンデヴァーだ。万年2位のな」
「!」
フレイムヒーロー、エンデヴァー。ビルボードチャート不動のNo.2であり、オールマイトをも超える事件解決数を誇るヒーロー。そして、No.1に執心している。
「親父は極めた上昇志向の強い奴だ。それだけに、生ける伝説オールマイトが気に食わなかったらしい。自分じゃオールマイトを超えられないと踏んだ親父は……個性婚を使って、超えられるような子供を作った」
それが轟と言うわけか。頼まれてもいないのに勝手に託され、無理やりに育て上げられ、母は病み煮え湯を浴びせ、長兄は死に、家族仲は何とも言えない状況。……なんでこれでヒーロー目指せてるんだろうな、お前。
「左を使わずに一番になることで……俺はあいつを否定する」
「……」
緑谷は何も言えないままだ。俺視点、ワンフォーオールの継承者……オールマイトと強固な繋がりがある。轟としては嫌でも目につく。
「……僕は」
緑谷が轟に向き合う。
「僕はずっと、助けられてきた。今も誰かに助けられてここにいる。……オールマイトのようになりたい。そのために強くなくちゃいけないから。だから……負けられない。今まで僕を助けてくれた人たちに応えるためにも。だから……僕も。君に勝つ!」
轟の目は、ほんの少し見開かれていた。
「で、俺はなんだ」
「お前は……純粋に強さだ」
炎は使わない。それを念押しして、轟は告げる。
「炎なんて使わなくても、お前の力は止められる。お前が妖刀の力の使い方を模索すらなら……俺はお前を止める策を練る」
「……はは」
そりゃあ……面白いな。
「やってみろ、轟焦凍」
「……ああ。話は終わりだ。時間取らせて悪かったな」
「……緑谷、飯食うか?」
「あ、うん」
轟と別れて、緑谷を連れて食堂へ。
……入った瞬間、たまたま耳郎と心操と鉢合わせたんだが?
「あれ、緑谷も?話終わったんだ?」
「ああ。これから昼飯だ」
「そっか。後でレクリエーションあるみたいでさ、なんか峰田と上鳴が──」
チアガールで応援合戦ねぇ。
それ多分嘘だぞ、女子にやめろって言っとけ。峰田と上鳴には俺から言っておくから。
「あ、ありがと……やっぱ嘘かー峰田のやつ」
「……ま、あいつはそういう奴だろ」
「そうだけどさ」
バイバイ、と手を振る耳郎と心操の目は、ギラリと光っていた。
「……緑谷」
「……え、何?」
「心操の個性、教えてやろうか」
「え?心操って……あの普通科の、曽我くんと耳郎さんと組んでた人だよね」
「ああ」
「なんで、個性を」
「あいつの個性は初見殺し。それ+俺が鍛えた。お前でも足を掬われる可能性が高いからな」
それでも緑谷は首を振る。正々堂々を貫く腹づもりらしい。
「そうか……まぁ、トーナメントが決まったわけでもない。しっかり飯食って、エネルギー蓄えるぞ。カツ丼にするか?」
「うん、僕カツ丼好きなんだ」
「……おんなじだ」