ホグワーツは今日も非合理である   作:汐川

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付録『特別保全対象第一号に関する記録』英国魔法省 魔法執行部 極秘文章より

【英国魔法省 魔法法執行部】

 

機密指定:極秘/特別保安指定

文書番号:MLE-SC/01-3

作成日:1998年5月4日

件名:特別保全対象第一号の暫定保管、移管及び最終処置に関する記録

 

※対象者の実名、通称その他直接的な識別語については、名称に付随する未知の魔法的作用及び情報保全上の理由により、本書中での記載を禁止する。

 本書では「特別保全対象第一号」又は「対象者」の呼称を用いる。

 

 

一、概要

 

1998年5月2日、ホグワーツ魔法魔術学校における戦闘終結後、対象者の身体を同校大広間内にて確認した。

 

対象者については、複数の現場証言及び初期確認により生命活動の停止が認められた。

 

ただし、以下の事情から、通常の戦没者又は死亡被疑者に準じた即時処置は行わないものとした。

 

一 対象者は1981年10月31日、肉体を喪失したと推定される状態となった後も魔法的活動を継続し、後年、肉体を伴う状態で再出現した実績を有すること。

 

二 魔法界においては、術者の死亡が魔法作用の終了を意味せず、死亡又は自己犠牲そのものを発動条件とする魔法が存在すること。

 

三 対象者が既知及び未知の高度な闇の魔術を多数使用していたこと。

 

四 遺体、血液、骨、毛髪その他身体組織を媒介とする魔術が存在すること。

 

五 対象者支持者、旧死喰い人その他関係者による遺体の奪取、保存、利用又は崇拝対象化のおそれがあること。

 

以上により、対象者の身体は「死亡した遺体」であると同時に、「安全性が確認されていない魔法的危険物」として取り扱うこととした。

 

 

二、戦闘終結直後の確保

 

戦闘終結時、英国魔法省は対象者及びその支持勢力による長期間の掌握から解放された直後であり、魔法法執行部その他の正規行政機構は、通常の指揮命令系統を即時に回復できる状態になかった。

 

このため、対象者の身体は、アルバス・ダンブルドアを中心として組織された抵抗組織「不死鳥の騎士団」の構成員、ホグワーツ魔法魔術学校教職員及び現場に残存していた信頼可能な魔法法執行関係者の共同管理下に置かれた。

 

暫定管理責任者には、闇祓いであり不死鳥の騎士団構成員でもあるキングズリー・シャックルボルトを指定した。

 

対象者は同日中に大広間から移動させ、他の戦没者とは完全に分離した。

 

移動先:

 

[特別保安指定により非開示]

 

当該区画は石造りの閉鎖空間であり、外部からの立入りを制限するとともに、対象者へ直接魔法を作用させることなく室内温度を低く維持し、腐敗進行の抑制を図った。

 

 

三、初期取扱制限

 

対象者に未知の死後魔法又は遺体を媒介とする呪詛が施されている可能性を排除できなかったため、以下の行為を禁止した。

 

一 焼却

二 切断又は解剖

三 血液その他身体組織の採取

四 消失又は変形を目的とする魔法の使用

五 一般的な呪文解除の無差別な実施

六 対象者の杖その他所持品との再接触

七 対象者の実名又は既知の通称を対象者付近で発声すること

八 その他、対象者の身体に不可逆的変化を生じさせる処置

 

注記:

 

対象者が過去、特定の名称の発声を利用した追跡性魔法を運用していた事実を踏まえ、当該魔法が対象者死亡後も残存している可能性について安全確認が終了するまで、対象者の固有名称の使用を避けることとした。

 

文書記録についても同様の予防原則を適用する。

 

 

四、安全確認

 

1998年5月2日から同月4日までの間、対象者の身体及び保管区画について、闇祓い、呪い解除技能を有する協力者その他指定された者により検査を実施した。

 

確認項目は以下のとおり。

 

一 生命反応の有無

二 既知の呪詛及び罠の有無

三 接触又は接近を条件とする魔法作用の有無

四 死亡を条件として発動した魔法作用の有無

五 対象者外部から継続して作用する魔法的接続の有無

六 身体組織に対する異常な魔法反応の有無

七 その他[以下非開示]

 

現時点までに、周囲へ即時の危害を及ぼす魔法作用は確認されていない。

 

ただし、

 

「確認されていないことは、存在しないことを意味しない」

 

との判断から、対象者の危険指定は解除しない。

 

 

五、英国魔法省への移管

 

1998年5月4日、英国魔法省の行政指揮系統が暫定的に復旧したことに伴い、対象者及び関連記録を魔法法執行部の管理下へ正式に移管した。

 

移送にあたっては、

 

・経路を事前に公表しない

・移送担当者を必要最小限とする

・対象者の身体を外部から視認できない状態とする

・通常の死体移送記録とは別系統で管理する

・移送後の保管位置を担当者間でも必要以上に共有しない

 

ものとした。

 

移送先:

 

[魔法大臣権限により非開示]

 

 

六、最終処置

 

対象者の身体を恒久的に保存することは、以下の理由により不適当と判断した。

 

一 旧死喰い人又は支持者による奪取の対象となること。

 

二 身体又はその一部が闇の魔術の素材として利用される可能性があること。

 

三 対象者の身体そのものが、支持者により遺物又は崇拝対象として扱われる可能性があること。

 

四 保管場所が判明した場合、当該地点が支持者の集会又は巡礼の場所となるおそれがあること。

 

五 対象者が過去に肉体喪失後の再出現を果たした事実から、身体を残存させること自体に不測の危険があること。

 

以上を踏まえ、十分な検査期間を経た後、対象者の身体には不可逆的な最終処置を実施することとした。

 

処置方法:

 

[以下十一行、特別保安指定により削除]

 

処置実施日:

 

[非開示]

 

処置実施場所:

 

[非開示]

 

立会者:

 

[非開示]

 

処置後に残存した物質:

 

[非開示]

 

 

七、遺体及び処置情報の非公開

 

対象者の身体の所在、処置方法及び処置後の状態については、一般への公開を行わない。

 

対象者の墓所は設けない。

 

慰霊碑、標識、名称を記した記念物その他、特定の場所と対象者を恒久的に結びつける物についても設置しない。

 

照会があった場合、魔法省は以下の内容のみを回答する。

 

対象者の死亡は1998年5月2日、複数の証人及び英国魔法省によって確認されている。

死亡後の身体の取扱いに関する事項は、公共安全上の理由により公表しない。

 

 

八、関連情報の保安指定

 

対象者の死亡をもって、対象者に関連する治安上の危険が消滅したものとは判断しない。

 

特に以下に該当する情報は、別途指定のない限り一般公開を認めない。

 

一 対象者の復帰又は肉体再構築に関する方法

二 対象者が使用した特殊な闇の魔術のうち、模倣可能性が認められるもの

三 対象者の身体的又は魔法的特性のうち、支持者による神格化に利用され得るもの

四 対象者の血統及び家系に関する未公知情報

五 対象者と特定の歴史的人物又は家系との関係

六 対象者とハリー・ポッターとの間に存在した特殊な魔法的関係

七 その他、復活企図、模倣、後継者思想又は血統差別を助長する可能性がある情報

 

対象者の犯罪行為、戦争責任、死喰い人による迫害及び被害の歴史については、本指定の対象とはしない。

 

本指定の目的は、対象者による犯罪の記録を抹消することではなく、対象者本人を再び政治的・宗教的・魔法的象徴として利用することを防止することにある。

 

 

九、継続監視

 

旧死喰い人、同調者、支援者、対象者の思想又は象徴を利用する集団については、引き続き魔法法執行部の監視対象とする。

 

特に、

 

「復活」

「帰還」

「継承」

「真の後継者」

「正統な血統」

 

その他これらに類する主張を掲げる個人又は集団については、優先して情報収集を行う。

 

対象者が死亡したという事実のみをもって、再発防止措置を終了してはならない。

 

――以上――

 

追記 1998年6月18日

 

対象者の既知の通称に付随していた追跡性魔法について、現在まで有効な作用は確認されていない。

 

ただし、固有名称を使用しない本件文書の運用方式については、魔法的安全性とは別に、情報保全及び対象者の象徴化防止の観点から有効であると判断し、継続する。

 

追記 2003年5月2日

 

特別保安指定を継続。

 

理由:

 

・旧死喰い人関係者の所在がなお一部不明

・対象者の名称及び意匠を使用する小規模集団を確認

・対象者の遺品を称する偽造品の地下取引を確認

・復帰方法に関する違法研究の照会事例あり

 

追記 2013年5月2日

 

特別保安指定を継続。

 

対象者死亡後に出生した世代による、対象者及び戦争の娯楽的・英雄的消費傾向について注意を要する。

 

追記 2023年5月2日

 

特別保安指定を継続。

 

対象者の身体、最終処置及び復帰方法に関する資料について、現時点で一般公開する公共上の利益は、公開に伴う危険を上回らないものと判断する。

 

次回指定見直し予定:2028年5月

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