春の日差しが、街を優しく照らしていた。
今日。
雄英高校の合格発表の日。
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緑谷家。
朝から落ち着かない空気が流れていた。
「出久。」
引子が朝食を並べながら微笑む。
「ちゃんと食べなきゃ駄目よ。」
「……うん。」
そう返事をするものの、出久は何度も時計へ目を向けてしまう。
「まだ時間あるのに。」
引子は思わず笑った。
「そんなに気になる?」
「う、うん……。」
出久は照れくさそうに笑う。
「今日で全部決まるんだって思うと……。」
引子は優しくうなずいた。
「ここまで、本当によく頑張ったものね。」
幼い頃から積み重ねてきた努力。
小学生の頃。
中学生の頃。
前を向いて歩き続けた娘の姿が頭をよぎる。
「大丈夫。」
引子は静かに微笑んだ。
「お母さんは信じてるよ。」
その言葉に、出久は大きくうなずいた。
「ありがとう。」
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一方、爆豪家。
「勝己。」
光己が新聞を畳みながら声を掛ける。
「今日は合格発表だね。」
「ああ。」
勝己はいつも通りだった。
朝食を食べ終え、水を一口飲む。
その様子を見て、光己は苦笑する。
「あんた、緊張しないのかい?」
「する必要ねぇ。」
即答だった。
「受かる。」
その一言に、光己は思わず笑ってしまう。
「ほんと、自信家だねぇ。」
そう言いながらも、その表情はどこか誇らしかった。
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そして。
雄英高校から届いた通知。
出久は小さく息を吸う。
「開けるね。」
震える手で封を開いた。
中から飛び出した映像。
明るい声が部屋いっぱいに響く。
出久は画面を見つめたまま固まった。
「……受かった。」
小さくこぼれた言葉。
次の瞬間、涙があふれた。
「お母さん……。」
引子も目元を押さえる。
「おめでとう。」
「本当に……おめでとう。」
出久は涙を流しながら笑う。
「やった……。」
幼い日に交わした約束。
『一緒にヒーローになる。』
その約束が、今、確かな形になった。
出久は涙をぬぐい、小さく笑う。
「約束、守れたよ。」
引子は何も言わず、そっと娘を抱きしめた。
「うん。」
「本当によく頑張ったね。」
春の日差しが、親子を優しく包んでいた。
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爆豪家。
勝己は通知を開いた。
映像を最後まで見届けると、封筒を静かに閉じる。
「受かった。」
その一言だけだった。
光己は腕を組み、小さく笑う。
「でしょうね。」
勝己も少しだけ笑う。
光己は照れ隠しのようにそっぽを向いた。
「……おめでとう。」
勝己は短く返す。
「おう。」
たったそれだけの会話。
それでも爆豪家には、いつも以上に温かな空気が流れていた。
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午後。
いつもの待ち合わせ場所。
先に着いていた勝己が空を見上げている。
「勝己!」
聞き慣れた声。
振り向くと、出久が笑顔で駆け寄ってきた。
「受かった!」
息を切らしながら、それだけを伝える。
勝己は口元を少しだけ緩めた。
「知ってる。」
「俺もだ。」
出久は思わず笑ってしまう。
「えへへ。」
「やったね。」
「ああ。」
幼い日に交わした約束。
『一緒にヒーローになる。』
その夢が、今。
ようやく現実になった。
少しだけ静かな時間が流れる。
出久は肩に掛けたバッグを持ち直した。
「……じゃあ。」
「始めよっか。」
勝己は当たり前のように歩き出す。
「おう。」
二人は並んで河川敷へ向かった。
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夕暮れ。
どれくらい走ったのか。
どれだけ汗を流したのか。
そんなことを語る必要はなかった。
二人にとって、それはもう特別なことではない。
夢を叶えた今日も。
夢を追い始めたあの日と変わらず。
努力を積み重ねる。
それが、緑谷出久と爆豪勝己だった。
トレーニングを終えた二人は、並んで帰り道を歩いていた。
桜が静かに風へ舞っている。
「いよいよだね。」
出久が小さくつぶやく。
「うん。」
「ここからが、本当のスタート。」
勝己は前だけを見て歩く。
「ああ。」
「ここからだ。」
二人は並んで歩き続ける。
夢だった場所は、もうすぐ目の前にある。
幼い日に交わした約束。
小学生の頃に積み重ねた努力。
中学生で流した汗。
そのすべてが、この日へつながっていた。
春風が桜を運んでいく。
二人は未来へ向かって歩き出す。
その歩幅は、今日も自然と揃っていた。