無個性の私と、幼馴染のかっちゃん   作:千遇万歩

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第二章 夢が叶った日

 

春の日差しが、街を優しく照らしていた。

 

今日。

 

雄英高校の合格発表の日。

 

---

 

緑谷家。

 

朝から落ち着かない空気が流れていた。

 

「出久。」

 

引子が朝食を並べながら微笑む。

 

「ちゃんと食べなきゃ駄目よ。」

 

「……うん。」

 

そう返事をするものの、出久は何度も時計へ目を向けてしまう。

 

「まだ時間あるのに。」

 

引子は思わず笑った。

 

「そんなに気になる?」

 

「う、うん……。」

 

出久は照れくさそうに笑う。

 

「今日で全部決まるんだって思うと……。」

 

引子は優しくうなずいた。

 

「ここまで、本当によく頑張ったものね。」

 

幼い頃から積み重ねてきた努力。

 

小学生の頃。

 

中学生の頃。

 

前を向いて歩き続けた娘の姿が頭をよぎる。

 

「大丈夫。」

 

引子は静かに微笑んだ。

 

「お母さんは信じてるよ。」

 

その言葉に、出久は大きくうなずいた。

 

「ありがとう。」

 

---

 

一方、爆豪家。

 

「勝己。」

 

光己が新聞を畳みながら声を掛ける。

 

「今日は合格発表だね。」

 

「ああ。」

 

勝己はいつも通りだった。

 

朝食を食べ終え、水を一口飲む。

 

その様子を見て、光己は苦笑する。

 

「あんた、緊張しないのかい?」

 

「する必要ねぇ。」

 

即答だった。

 

「受かる。」

 

その一言に、光己は思わず笑ってしまう。

 

「ほんと、自信家だねぇ。」

 

そう言いながらも、その表情はどこか誇らしかった。

 

---

 

そして。

 

雄英高校から届いた通知。

 

出久は小さく息を吸う。

 

「開けるね。」

 

震える手で封を開いた。

 

中から飛び出した映像。

 

明るい声が部屋いっぱいに響く。

 

出久は画面を見つめたまま固まった。

 

「……受かった。」

 

小さくこぼれた言葉。

 

次の瞬間、涙があふれた。

 

「お母さん……。」

 

引子も目元を押さえる。

 

「おめでとう。」

 

「本当に……おめでとう。」

 

出久は涙を流しながら笑う。

 

「やった……。」

 

幼い日に交わした約束。

 

『一緒にヒーローになる。』

 

その約束が、今、確かな形になった。

 

出久は涙をぬぐい、小さく笑う。

 

「約束、守れたよ。」

 

引子は何も言わず、そっと娘を抱きしめた。

 

「うん。」

 

「本当によく頑張ったね。」

 

春の日差しが、親子を優しく包んでいた。

 

---

 

爆豪家。

 

勝己は通知を開いた。

 

映像を最後まで見届けると、封筒を静かに閉じる。

 

「受かった。」

 

その一言だけだった。

 

光己は腕を組み、小さく笑う。

 

「でしょうね。」

 

勝己も少しだけ笑う。

 

光己は照れ隠しのようにそっぽを向いた。

 

「……おめでとう。」

 

勝己は短く返す。

 

「おう。」

 

たったそれだけの会話。

 

それでも爆豪家には、いつも以上に温かな空気が流れていた。

 

---

 

午後。

 

いつもの待ち合わせ場所。

 

先に着いていた勝己が空を見上げている。

 

「勝己!」

 

聞き慣れた声。

 

振り向くと、出久が笑顔で駆け寄ってきた。

 

「受かった!」

 

息を切らしながら、それだけを伝える。

 

勝己は口元を少しだけ緩めた。

 

「知ってる。」

 

「俺もだ。」

 

出久は思わず笑ってしまう。

 

「えへへ。」

 

「やったね。」

 

「ああ。」

 

幼い日に交わした約束。

 

『一緒にヒーローになる。』

 

その夢が、今。

 

ようやく現実になった。

 

少しだけ静かな時間が流れる。

 

出久は肩に掛けたバッグを持ち直した。

 

「……じゃあ。」

 

「始めよっか。」

 

勝己は当たり前のように歩き出す。

 

「おう。」

 

二人は並んで河川敷へ向かった。

 

---

 

夕暮れ。

 

どれくらい走ったのか。

 

どれだけ汗を流したのか。

 

そんなことを語る必要はなかった。

 

二人にとって、それはもう特別なことではない。

 

夢を叶えた今日も。

 

夢を追い始めたあの日と変わらず。

 

努力を積み重ねる。

 

それが、緑谷出久と爆豪勝己だった。

 

トレーニングを終えた二人は、並んで帰り道を歩いていた。

 

桜が静かに風へ舞っている。

 

「いよいよだね。」

 

出久が小さくつぶやく。

 

「うん。」

 

「ここからが、本当のスタート。」

 

勝己は前だけを見て歩く。

 

「ああ。」

 

「ここからだ。」

 

二人は並んで歩き続ける。

 

夢だった場所は、もうすぐ目の前にある。

 

幼い日に交わした約束。

 

小学生の頃に積み重ねた努力。

 

中学生で流した汗。

 

そのすべてが、この日へつながっていた。

 

春風が桜を運んでいく。

 

二人は未来へ向かって歩き出す。

 

その歩幅は、今日も自然と揃っていた。

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