PS,ちょこちょこ書き足したのと最後ちょっと変えました。
地獄を見た。
それはここではない何処か別の世界の記憶。
それは俺ではない俺、衛宮士郎という人間が歩んだ一つの生涯。そこでの俺も理由や由来、道は違えど自分の追い求める理想を志していた。
しかし、それは俺が思い描くようなきらびやかな生涯ではなく。
その掲げた理想のためにただ、人を殺していた。
そしてある時、より多くの人を救うために世界と呼ばれる存在と契約をし守護者となった。
そうして世界が、人の世が壊れないように。
幾百、幾千の人間を殺して、殺し続けて。
代わりに幾万、幾億の人間を救っていた。
人知れず、ひたすらに。
だがその人生の結末は断頭台の上。
救った筈の人間の手によって生涯を終えた。
しかし生前した契約により、生涯を終えてなおまるで傀儡のように世界の守護するため人を殺し続けた。
永劫とも言えるほど時の中で。
気がつくと視界は元に戻り、現実である荒れ果てた世界の光景を映していた。
「は、はは……」
今の状況でそんな突拍子もないものを見たからだろう。
あまりに残酷過ぎる別の自分の生涯に、思わず笑いが零れて、朽ちたビルに背を預けた身体で、焼けたような夕暮れの空を見上げる。
次第に、身体を巡る血液は体外へ流れていき、息は吐く度に浅くなり、意識も時が経つにつれて遠くなっていく。
俺、シロウという名前の人間は死にかけていた。
記憶で見た別の俺が世界を守るために人を殺すように俺は、ラプチャーという存在を殺すために生きてきた。
奴らと戦う能力の無い凡人である俺に代わり戦ってくれたはずの彼女達はもういない。
事前に知らされていた情報には無いはずのタイラント級ラプチャー3機に、俺の部隊は成す術なく一方的に蹂躙された。
別の俺のように魔術なんて呼ばれるような戦う力は、この世界で生きた俺には無い。
身体の右胸と左の脇腹に深手を負いながら、逃げろと叫ぶ彼女達を背に、非力にもただその言葉通りに逃げるしかなかった。
その逃げた先に味方の部隊がいればまだ可能性はあっただろうが、そんなことなどありもしない。
本部への通信も、先の戦闘で駄目になってしまっている。
それ故、生き残る可能性なんて万に一つもない。
もう既に血を流し過ぎている。
助けが来たとしても確実に死ぬだろう。
体温が下がっていく、身体から力が抜けていくのがわかる。
「け、ど……なんだっだんだろ、うな……」
しかし、なんでこんなものが見えたのか。
それはもう先のない俺が考えたところで意味なんてないのだろう。
そう考えた時、ふと思い出す。
死に際だからだろうか。
別の俺はある災害で衛宮切嗣という男に救われ、そこから衛宮切嗣の理想である正義を自分の夢とし、その道を歩んだ。
「あぁ……なん、で、忘れていた、んだろう、な……」
ではこうして死にかけている俺は何が切っ掛けでその夢を、理想を志し、生きてきたのか。
それを考えたとき、思い出した。
まだ二人の親が居た頃、そして同時に居なくなった頃。暮らしていた町にラプチャーが現れ蹂躙の限りを尽くされた。
あれは人間の殲滅と言ってもいい有り様だった。無数のラプチャーが人という種を殺し尽くし、人々の悲鳴と叫びが途切れることなく町で木霊する。
そんな幼い俺にとっては残酷がすぎる光景。
既に両親は物言わぬ骸、恐怖で足が竦み、腰が抜けた幼少の俺の前には、その無骨な銃口を向けるラプチャーが数体。
死、そんな単語が泣きじゃくりながら頭に浮かんだのを今でもはっきり思い出す。
頭を下げ、目を瞑る。
その直後。
『大丈夫、もう怖くないわ』
鈴のような凛とした、それでいて暖かさを感じる、そんな声が聞こえた。
下げていた頭を上げて、瞼を開ける。
両断され、後方にて爆ぜるラプチャー。
そして前には、白百合のような美しい一人の女性が優しい笑みを浮かべて、こちらに向かって手を差し伸べていた。
リリーバイス。
それが彼女の名だった。
ラプチャー侵攻が始まって以来、過去現在に渡り、人類が敗北し続けたラプチャーを相手に勝ち続け、多くの人々に希望をもたらしたその切っ掛け、そしてまた多くの人々にとっての勝利の女神として立ち続ける存在。
別の俺が正義の味方という理想を追い求めた切っ掛けが衛宮切嗣と言うのであるならば、俺にとっての衛宮切嗣はリリーバイスだ。
ただ憧れた。
別に最強だから、強いからと言う理由じゃあない。
死が飛び交う戦場で、その死に怯える誰かに微笑んで救いの手を差し述べる。
そんな正義のヒーローのような在り方に、俺は憧れたんだ。
その在り方が、有り様が。
美しいと思ったから。
格好いいと思ったから。
だからこそ、そして故にこそ、いずれは俺も彼女のようになりたいと、そうでありたいと。
その憧れにどうしても近づきたくて、目標を掲げ自分なりに走っていくつもりだった。
だが現実は違った。戦うのはニケである彼女達であり、ただの人間である俺は、後ろから指揮官として戦況を把握して指示を飛ばすだけ。
そう、実際は守られるだけの非弱な存在に過ぎなかった。
憧れ、追い求めていたはずの理想。
戦場に立ち、指揮官となり数年。
守られるだけ守られてただ生き残った。
その道半ばで、そして共に戦い散っていたニケ達の命の上に立ちながらも、俺は現実から目を背けて足を止めてしまっていたらしい。
ふざけるな。
そんなことが許されるか。
それなのに俺はどうだ、もう死ぬからと諦めて立ち上がることも考えずやろうともせずただ死ぬのを待つだけ?
それでは駄目だ。
それだけは駄目だ。
目指した先である彼女、リリーバイスに対する、そして俺を逃がしてくれた部隊と、それまでに死んでいった彼女達に対する侮辱に他ならない。
「ク……ソ……グハッ……」
片ひざに手を置いて立ち上がろうとする。
傷口から血が漏れ続け、口から血が吹き出た。
だが構いはしなかった。
リリーバイスだけではない。
逃げろと命を少しでも繋ごうと犠牲になった彼女達の為に、俺は生きなければならない。
死ぬことなど許されるものか。
目を見開き、俺は立ち上がる。
「……?」
目線の先、光る何かがそこには存在した。
朦朧とする意識の中でそれはラプチャーではないと、何故だか直感的にそう思った。
そして、それからはなにか意思のようなものが僅かに感じ取れた。
同時、俺は先ほど見た別の自分の記憶の中に似たような存在とやり取りしていたのを思い出す。
それはかの世界に置いて世界の意思。
抑止力、と呼ばれていた。
だが恐らくこの世界にこれは存在し得ない。
理由は明白、ラプチャーという存在そのものであり、なにより現在の人類の状況だ。
これが元来より存在していたのであればその力によってラプチャーは疾うに消され、人類は変わらず平和に暮らしていたはず。
「ん……?」
その証拠と言っていいのか、別の自分の記憶のほど凄まじい何かはない。
ただ弱々しくなにか意思のようなものを僅かに感じるだけ。
それは生きたいと言うような死にたくないと言うようなもの。
そうしてしばらくした後、やがて光は消えた。
「まさ、か……」
ある推測が浮かんだ。
血は流れ意識もぼやけつつあり、ほぼ死に体だと言うのにこうして何故か俺は生きてる。
あの弱々しい抑止力のようななにかと先ほど見た別世界の自分、その記憶。
そこでの俺は魔力と言うものを用いて魔術という技術を行使することで戦っていた。
これはもしも、もしもの話だ。
もしもこれらの事象、技術や文明がこの世界にも存在し得ていたら。
もしくは、この抑止力のようななにかがこの力を与えるため、今こうして俺の目の前に現れたのだとしたら。
勿論、こんなものは非現実的な都合の良い考えだ。
だけれども。
俺にも、彼女達と肩を並べ戦いそして同時に守ることのできる力が宿っている、もしくは託されたのだとしたら。
俺は……その可能性に手を伸ばさない理由はない。
あるいは願おう、力が欲しいと。
目蓋を閉じ、ぼやけた意識を意地でも集中させて。
記憶で見たあるもの思い浮かべる。
それは別の俺が力を行使する際によく使っていた武器。
そう……無意識の内、俺はこう言っていた。
「……
直後。
青白い光が瞬き、共になにも持っていなかったはずの両手になにかを握る感触があった。
「なっ……」
思わず眼を見開く。
何故ならば俺の両手中で、記憶にあった別の俺が振るっていた二振りの短剣。
青白い光を迸らせた干将莫耶が、形を成そうとしていたからだ。
ちなみにわたくし一応UBWとかFGOとか触ってはいるんですが設定とか売る覚えの部分ありますゆえご容赦くだせぇ。