アクションバース “キン肉マンⅡ世VSアクション仮面” 作:速筆魔王LX
アクション仮面に殴り飛ばされたジェロニモがキャンバスを滑る。
ケビンマスクもいまだ立ち上がれず、リング上にはアクション仮面によって倒された超人がひとり増えた。
「さあ、どちらからアクションビームの塵にしてくれようか」
ケビンマスクにジェロニモ。
どちらも抹殺すべき“悪行・正義超人”と断じ、純然たる殺意をぶつける。
あまりにも度を超えた、超えすぎた凶行。
試合が終了した今、さすがに黙っていることはできない。
「いい加減にしろ――っ! アクション仮面!!」
怒鳴り声とともに、客席にいたキン肉万太郎とアレキサンドリア・ミートが飛び出した。
万太郎とミートくんだけではない。
春日部スタジアム中央のリングに向けて、四方八方から超人が飛び出してくる。
『あ――っと会場警備のために集結していた
この一大イベントのために集った超人の数は多い。
正義超人養成大学校“ヘラクレス・ファクトリー”の卒業一期生として日本に駐屯している者、超人オリンピック・ザ・レザレクションの出場者、ケビンのように悪行超人から正義超人に転向した者……いずれもアクション仮面の行動が理解できず、困惑していた。
共通しているのは、とにかく彼を止めなければならないという意思のみ。
彼ら新世代超人の緊張感は観客席にも伝わっていた。
野原ひろしとみさえの夫婦も、やはり動揺を隠せない。
「おいおい、なんだか大変なことになってきてないか?」
「万太郎くんやミートくんまで出動して行っちゃったし……って、あれ? しんのすけは?」
目を離すとなにをしでかすかわからない五才児の姿がない。
ひろしとみさえが我が子の不在に慌て始めた、その頃。
アクション仮面はリングの周囲に集まってきた超人たちを見ながらしれっと言う。
「これはこれは、新世代超人の先輩方。大勢で血相を変えてどうしたんですか?」
この物言いに、新世代超人の中でも古株になるセイウチンとガゼルマンが答えた。
「どうしたもこうしたもあるか!」
「さっきからおまえの言っていることはメチャクチャだ!」
ふたりに続き、他の超人たちも続々とアクション仮面の言動がおかしいことを主張する。
アクション仮面はそのすべてを耳に入れ、やれやれとため息をついた。
「21世紀の正義超人代表たる新世代超人が揃いも揃って私を非難とは。現代正義超人のレベルはここまで落ちているのか」
正義超人という肩書きに甘え、真の正義とはなにかを考えることもせずただ役割をこなすだけ。
正義とはそうではない、真の正義を知るのはもはや私ひとり、そういった結論にたどり着いたアクション仮面は――
「よし! 私は決めたぞ!」
勇ましく拳を握り、周囲の新世代超人たちをぐるりと見回す。
そして、全員に聞こえるよう大声でこう言い放ったのだ。
「このアクション仮面は真・正義超人として……現代の腐ったエセ正義超人共の
俳優業でならした声量は、リングの周囲のみならず会場全域に響き渡った。
「な……なんだって~~~~っ!?」
万太郎やミートくん、その他の正義超人たちも、揃って驚きのリアクションを取る。
ただひとり、事の重大さをわかっていない顔がぽつりとつぶやいた。
「
万太郎の耳元から発せられた、幼い声。
疑問形の発言に、思わず反応する。
「そうなんだよ~~っ、ミートの料理ってばいっつも酢を効かせすぎでさぁ~~っ」
お酢の使いすぎは料理を酸っぱくさせ、香りも殺してしまう。
うんうんと頷く万太郎に、ミートくんはどこからともなく取り出したハリセンを構えた。
「
万太郎の頭をスパァァァンとひっぱたくミートくん。
そんなコミカルなやり取りの中、万太郎の背中に小さな姿が引っついているのにと気づく。
先ほどの「酢臭え」発言はこのじゃがいも頭の少年の口から発せられた。
「って、なんでしんのすけくんが!?」
「ん~、万ちゃんがオラと離れたくないって言うから」
「ボクの背中にくっついてきたのか~~っ」
一触即発の現場に人間の子供をつれてきてしまい、動揺するミートと万太郎。
そうこうしている間にも話は進み……リング上で伏せっていたジェロニモ、がわずかに身を起こした。
「ア……アクション仮面。おめえ、自分がなにを言っているのかわかってるのか……?」
アクション仮面の正気を疑いながら――いっそ「今までの発言や振る舞いはすべてアクションジョークです」と言ってほしいと願いながら、黒く変色してしまった仮面の相貌を窺う。
その顔色に、冗談はなかった。
「無論ですよ、ジェロニモ先生。私の正義を認められない現代正義超人など悪と同義。あなたやケビンマスク同様、悪行・正義超人として成敗させていただく」
アクション仮面は本気で新世代超人の全員を敵に回そうとしている。
それがどんな結果を生むか、まさか本人に想像できないはずはないだろう。
「おもしれえじゃねえか――っ!」
新人レスラーの挑発的な態度を受け、人一倍大きな声で応えてみせる者がいた。
群衆の中から一歩前に出たのは――額に据えたドミノマスクが特徴的な、ハンサムフェイスのこの男。
「スカーフェイス!」
新世代超人の中でも実力派として知られる超人、“蒼白き脳細胞”ことスカーフェイスである。
ケビンマスクと同じ“
「これだけの数の正義超人に囲まれて喧嘩を売るとは、大したビッグマウスだ。先輩として鼻の折り甲斐があるぜ」
周囲の超人がたじろぐほどの敵意に、しかしそれを直にぶつけられたアクション仮面は怯まない。
「元“d・M・p”の悪行超人、スカーフェイスか……ケビンマスクと同じく、貴様も正義の皮を被ったケダモノだ。早急に殺処分してやろう」
アクション仮面から返ってくる、スカーフェイス――いや、この場の全員に対しての殺意。
このままでは一大事になると察したジェロニモは、声を振り絞る。
「やめろ~~っ! おまえたち! きっとアクション仮面はサタンに操られているんだ――っ!」
年長者の必死の訴えに、この場にいる超人で最も幼いミートくんがハッとした。
視線をアクション仮面からやや上に傾ければ、そこには明らかに悪いやつがいるではないか。
アクション仮面が為すべき正義とは、同胞の粛清などではないはずだ。
「そ、そうですよ! ケビンマスクやジェロニモさんを悪だのなんだの言いますが、今まさに空で邪悪な笑みを浮かべている悪の権化、大魔王サタンこそ無視できない巨悪じゃないですか――っ!」
倒すべき敵がいるとするならば、それはサタンを置いて他にいない。
ミートくんはそう主張するのだが、アクション仮面はふるふると首を横に振った。
「自らの罪を棚上げし、他者をやり玉に挙げるとは……見苦しいな、悪行・正義超人」
結果は、聞く耳持たず。
アクション仮面は両腕を振り上げ、必殺の構えを取ろうとする。
「もはや貴様らには一片の慈悲もない! 全員アクションビームの前に散るがいい!!」
振りかざした両腕を胸の前に持っていき、ケビンマスクを追い詰めた殺超人ビームを放つつもりか――誰もがアクション仮面の狙いを察し、身構えた。
「待て! アクション仮面!」
が、アクション仮面は構えを解く。
突如、彼を静止した声。それは頭上に浮かぶ悪魔のものだった。
「いくら正義がおまえの側にあるとはいえ、これだけの人数を相手にひとりで立ち向かうのは無茶というものだ……」
サタンはアクション仮面の判断が間違っていないことを大前提に、シンプルな数的不利を訴える。
「正義の闘いとは常に孤独なもの。覚悟の上さ」
アクション仮面は事実は事実と認めつつ、しかし一歩も退かなかった。
悪を目の前にしたアクション仮面に撤退はない。それは誰もが知るところ。
テレビの中の彼は、いつだってひとりで悪の軍団と闘ってきたのだから。
「孤独か……いいや、そんなことはあるまい」
サタンはそんなアクション仮面の境遇を否定する。
「古今東西、正義の味方という存在には共に闘う仲間がいるもの……そうでなくては悪は倒せんものなぁ。であれば、おまえにもそういった同志が必要であろう」
アクション仮面は共闘者のいない孤独なヒーロー……そんな番組制作上の都合は知ったことではない。
ならば“呼ぼう”ではないか。
アクション仮面と共に闘う味方――頼れる仲間というやつを!
「カァ~~ッ!」
サタンは口から新たに4つのジェネラル・ストーンを吐き出す。
それらは意思を持っているかのごとく、アクション仮面の四方を取り囲んだ。
「あ……ああ~~っ! 4つのジェネラル・ストーンがアクション仮面の周りに――っ!」
ジェネラル・ストーンの力を最大限警戒するミートくんは、不穏な気配を察し声を荒げた。
さらに気になるのは、アクション仮面の下腹部。“A”の刻印が刻まれたベルトのバックルから光が迸っている。
「アクション仮面のベルトから放たれた光がジェネラル・ストーンに繋がり、怪しく共鳴している――っ! なんだあれは――っ!?」
万太郎は目玉が飛び出しそうな顔でリング上の異変を観察するが、それがなにを意味するかは窺い知れない。
真っ先に気づいたのは、彼の背中にいる少年だった。
「あそこにはアクション・ストーンがあるんだゾ!」
「ア……アクション・ストーン!?」
万太郎には聞き馴染みのない代物だったが、名前から察するにアクション仮面にまつわるなんらかのパワーを持った石……それこそサタンのジェネラル・ストーンのようなものがバックルに収納されているのだろう。
そのアクション・ストーンなるものが、ジェネラル・ストーンと共鳴している。
「そうだ~~っ! 次元に干渉できる力を持ったその石と我がジェネラル・ストーンを組み合わせることにより、別次元からこのアクション仮面に相応しい仲間を呼び寄せる!」
なにが起こるか予想できる者はおらず、サタンが意気揚々と己の狙いを告げた。
「アクション仮面の仲間だって~~っ!?」
「いったい誰が……!?」
万太郎やミート、その他の超人たちが身構えるその間も、ジェネラル・ストーンは怪しい輝きを放ち続ける。
やがてのその輝きはヒトの像を作り出し、ジェネラル・ストーンを核として具現化していった。
『あ――っと、ジェネラル・ストーンを中心に4つそれぞれヒトの形のようなものが浮かび上がり、実体化していく――っ』
実況も見たままを伝え、光より生まれし像はより鮮明になっていく。
はたしてサタンが呼び寄せる4人の仲間とはいったい誰のことなのか。
答えは、もうまもなく――