王女アレシナが日本から帰国した翌朝、ヴァレシアの王宮では、早くから御前会議が開かれていた。
出席者は、国王アルヴェリオ三世、王妃エレヴィナ、王太子ルヴェリオ、王女アレシナ、第二王子セルディオ、宰相、財務官、軍務長官、王室外交官、宮廷魔術師長。それに今回は、国内の交易を担当する官吏と、王都の商人組合から選ばれた代表者まで加わっていた。
日本との最初の接触について議論したころとは、机の上の資料の量がまるで違った。
「いわみ」との遭遇の記録。リヴァーノで交わされた暫定覚書。日本政府から提供された基礎資料。視察団が提出した、病院、教育、農業、魔法研究、交易についての報告。そして、ヴァレシア国内で広がり始めた噂と、それに対する諸侯や商人組合、職人組合、魔術師組合からの意見書。
数週間前まで、東の海には何もなかった。それが今では、日本関係の文書だけで机の半分が埋まっている。
「では」
アルヴェリオが言った。
「最後に聞こう。日本国との正式な外交関係を結ぶことについて、反対する者はいるか」
部屋は静かだった。誰も、手を挙げなかった。
だが、国王はそれで終わりにはしなかった。
「反対がないことと、不安がないことは違う。今日は、後者を聞いているのだ」
最初に口を開いたのは、軍務長官だった。
「陛下。私は、国交の樹立そのものには賛成です。しかし、日本との関係が深まれば深まるほど、ヴァルガニアは我が国が日本側へ傾いたと判断するでしょう」
「実際には、どうだ?」
「少なくとも、軍事同盟ではありません。しかし、相手がそう理解してくれる保証もありません」
「その通りだ」
アルヴェリオは頷いた。
「だから、そこは曖昧にしない。日本との国交は結ぶ。だが、日本の軍をヴァレシアの剣として数えることもしない」
ルヴェリオが、顔を上げた。
「父上。しかし日本ほどの軍事力があるのなら、ヴァルガニアへの抑止に利用しない理由はありません」
「利用するな、とは言っていない」
「では」
「その存在そのものが抑止になるのなら、それを拒む必要はない。だが、我々自身が国を守る努力を捨て、日本が助けてくれることを前提に国家を動かすな、と言っているのだ」
国王は、息子をまっすぐに見た。
「友好国を持つことと、自分の剣を捨てることは、同じではない」
ルヴェリオはしばらく黙っていたが、やがて小さく頷いた。
「分かりました」
◇
次に、財務官が口を開いた。
「経済については、さらに慎重さが必要です。交易そのものには、大きな利益があります。日本側が我が国から買いたいという品目も、予想以上に多い。しかし、日本との経済の格差は、あまりにも大きすぎます」
アルヴェリオは、資料に目を落とした。
人口百九十万人、購買力換算で約一兆五千億円相当の経済。その隣には、人口八千三百万人、一人当たり二十万米ドル相当の国。単純に総量へ引き直せば、比べること自体が馬鹿らしくなるほどの差が出る。
「日本人が大勢やって来れば、我が国の商品の値段が、日本人の財布に合わせて動いてしまいかねません」
財務官は続けた。
「食料も、土地も、宿も、職人の賃金もです。しかもそれは、相手に悪意がなくても起こるのです」
「日本側も、同じことを懸念しています」
アレシナが言った。
「最初から完全な自由交易にはしない、と。品目、量、決済、入国、土地の取得、検疫。かなり段階的に進めるつもりのようです」
商人の代表が、苦笑した。
「商人としては、不満です。ただ、今はその方がよいでしょう。八千三百万人が一度に財布を持ってやって来られては、我々も困りますから」
「あなたがそう言うとは、思わなかったわ」
アレシナが言うと、商人は肩をすくめた。
「日本を見る前なら、言わなかったでしょう」
少し、笑いが起きた。
◇
だが、次の話題に移ると、空気が変わった。
「技術です」
宰相が言った。
「国内で最も期待され、同時に、最も誤解されている分野です」
日本との国交──その言葉を聞いた地方の領主たちからは、すでにさまざまな要望が王都へ届いていた。
日本式の農具が欲しい。病院を建ててほしい。道路を作ってほしい。水道を引いてほしい。強力な武器を買いたい。飛行機械が欲しい。印刷機を。薬を。発電設備を。通信機を。
要求は、増え続けていた。
「まるで、国交を結べば宝物庫が開くと思っているようね」
エレヴィナが、呆れたように言った。
「実際、日本側にある物だけを見れば、宝物庫でしょう」
宰相が返した。
「だからこそ、危険なのです」
アレシナは、日本で見たある一室を思い出していた。
そこにあったのは、最新の技術ではなかった。何百年も前の技術の歴史。かつて日本自身が貧しく、今よりはるかに少ない資源と簡単な機械で国を築いていた時代の資料だった。
「日本は、私たちに何を渡せばいいのかを考えるために、自分たちの過去を調べているのです」
「過去を?」
ルヴェリオが聞いた。
「最新の機械をそのまま渡されても、私たちには直せません。部品も作れない。だから日本は、ヴァレシアにある材料と技術で作れて、維持もできて、その上で日本の知識を活かせるものを探しているそうです」
「ずいぶんと、遠回りだな」
「でも」
アレシナは、兄を見た。
「その方が、最後には本当に私たちのものになります」
アルヴェリオが、そこで頷いた。
「それでいい」
全員が、王を見た。
「日本の工場で作った機械を百台もらうより、我々自身が一台目を作れる方法を学ぶ方がよい。百台は、壊れればそれで終わりだ。だが一台目を作れるのなら、二台目も作れる」
「時間はかかります」
宰相が言った。
「国家は、明日までしか存在しないわけではない」
アルヴェリオは、静かに答えた。
◇
今度は、宮廷魔術師長が口を開いた。
「魔法については、こちら側にも同じことが言えます」
「日本に何を教えるか、という話か」
「はい。日本側は、すでにかなりの速さで魔法の研究を進めています。現時点では、日本人の魔力の適性は我々より低い。しかし、学習と体系化の速さは侮れません」
セルディオが、興味深そうに身を乗り出した。
「日本人が、ヴァレシア人より強い魔術師になるのですか?」
「そういう話ではありません」
「では」
「強さだけが技術ではない、ということです」
老魔術師は、少し考えてから続けた。
「我々が師匠の感覚として教えてきたものを、日本人は記録し、比べ、共通する法則を探している。もし彼らが魔法を体系化すれば、我々自身が、そこから学ぶものも出てくるでしょう」
アルヴェリオは、アレシナを見た。
「お前は、どう思う」
「共同研究は、進めるべきです」
「危険ではないか」
「危険です」
即答だった。
「ですが、こちらが扉を閉ざしても、日本は自分たちで研究を続けます。それなら、私たちも参加した方がいい。日本だけが学ぶのではなく、こちらも学べます」
「同意いたします」
魔術師長が頷いた。
◇
会議は、さらに続いた。
外交使節の扱い、日本人の入国の制限、ヴァレシア人の日本への渡航、検疫、海難救助、通商の協議、度量衡、通貨、犯罪者の扱い、文化財、宗教活動、魔法の研究、技術の交流。
一つ決めるたびに、その先に十の問題が見えてくる。
だが、それは関係を結ばない理由にはならなかった。むしろ逆だった。問題があるからこそ、話し合うための仕組みが必要だったのだ。
昼をかなり過ぎたころ、アルヴェリオはようやく議論を止めた。
「十分だ」
書記官が顔を上げた。王は、机の上の資料を一度見渡してから、ゆっくりと言った。
「ヴァレシア王国の、対日方針を定める」
部屋が、静まり返った。
「第一。日本国を、ヴァレシア王国と対等な主権国家として扱う」
書記官の筆が動く。
「第二。日本国との正式な外交関係を樹立する」
「第三。通商は、段階的に開放する。日本側の資本と購買力によって、王国内の食料、土地、労働の市場が急激に変化することを防ぐ」
「第四。技術協力は、王国内で再現、修理、維持できることを基本とする。ただし、医療、公衆衛生、災害対策など、緊急性の高い分野については、別途判断する」
「第五。魔法と学術については、相互の利益を原則として、共同研究を進める」
一度、間を置いた。
「第六」
アルヴェリオは、ルヴェリオを見た。
「日本国との関係を、軍事同盟とはしない。また、日本国の存在を理由に、我が国自身の防衛の努力を弱めない」
王太子は、今度は何も言わずに頷いた。
「そして、最後に」
王は、全員を見渡した。
「日本国を、我々を救う国とも、我々を滅ぼす国とも、決めつけない」
静かな声だった。
「隣国として、付き合う」
◇
その決定から五日後。王都ヴァレシアスでは、朝から異様な緊張が続いていた。
日本国の内閣総理大臣が、ヴァレシア王国を公式に訪問するのだ。
その知らせが最初に公表されたとき、多くの者は、その意味を理解するまでに時間がかかった。
日本の総理大臣──八千三百万人の国家で、政府を率いる人物。その人物が、アルヴェリオ三世を日本へ呼びつけるのではなく、自らヴァレシアへやって来る。
「本当に、来るのか」
王都の貴族たちの間でさえ、その言葉が何度も繰り返された。
そして、本当に来た。
王都の郊外に設けられた臨時の着陸場に、日本政府代表団の航空機が降り立った。その轟音にも、巨大な翼にも、人々は驚かされた。
だが今回、それは主役ではなかった。
航空機から降りてきた、一人の人間。日本国の内閣総理大臣である。軍服ではない。王冠もない。勲章をたくさん付けているわけでもない。わずかな警護と政府の関係者を伴って、待っていたヴァレシア側の代表団の方へと歩いてくる。
その先頭にいたアレシナが、一礼した。
「ヴァレシア王国へ、ようこそ」
「お招きいただき、ありがとうございます」
翻訳機器を介した言葉だった。だが、その意味は明確だった。
日本の政府の首脳が、ヴァレシア王国へ、客としてやって来たのだ。
◇
王宮の正門前には、近衛兵が整列していた。沿道にも、人々が集まっている。日本人を実際に見たことがある者は、まだ王国の民の中ではごく少数だった。
「普通の人間だ」
群衆の中で、誰かが言った。
「何だと思ってたんだ」
「もっと、こう……」
「もっと、何だ」
「知らん」
そんな会話が、あちこちで交わされていた。
日本の総理は、沿道の人々を見た。人々もまた、日本の総理を見つめた。
このとき、ヴァレシアの民のかなりの数が、初めて実感した。
日本というのは、船でも、機械でも、数字でもない。人間が暮らし、人間が政治を行っている国なのだ、と。
◇
アルヴェリオ三世は、謁見の間ではなく、会議室で総理を待った。外交儀礼としての正式な挨拶は、すでに済ませてある。ここからは、政治の話だった。
部屋の中央には長い机が置かれ、日本側とヴァレシア側が向かい合って座った。国王の椅子だけが高く作られている、ということはなかった。すべての椅子が、同じ高さだった。
それを提案したのは、ヴァレシア側だった。父がその指示を出したとき、アレシナは何も言わなかった。ただ、少しだけ嬉しかった。
「まず」
アルヴェリオが口を開いた。
「遠いところを、よくお越しくださった」
総理が、わずかに笑った。
「以前の世界でしたら、外国への訪問としては近い方でした」
一瞬の間があって、アルヴェリオも笑った。
「そうでしたな。あなた方は、月まで行っていたのでしたか」
「今は、海の向こうが外国です」
「我々も、同じです」
最初の緊張が、少しだけ解けた。
◇
会談は、二時間以上に及んだ。
形式的な部分だけなら、それほど時間はかからない。だが、アルヴェリオには確かめておきたいことがあった。
「日本国は、ヴァレシア王国に、国内の制度を変えるよう要求されますか」
「いいえ」
「我が国の身分制度が、あなた方のものと大きく異なることは、ご承知でしょう」
「承知しています」
「宗教も」
「はい」
「それでも?」
総理は、少し考えた。
「我が国が好ましいと思う制度と、他国に強制してよい制度とは、同じではありません」
「では、何もおっしゃらない、と?」
「人権上の重大な問題や、日本国民に直接関わる問題が生じれば、意見は申し上げます。しかし、ヴァレシア王国を日本の写しにすることは、我が国の目的ではありません」
アルヴェリオは頷いた。
「安心しました」
「ですが」
「何でしょう」
「交易が始まり、人が行き来するようになれば、我々が何も要求しなくても、社会は変わっていくでしょう」
国王の目が、わずかに細くなった。
「そこまでは保証できない、と」
「はい」
「正直ですな」
「保証できないことを約束する方が、後で困りますから」
「娘と、同じことを言う」
総理が、アレシナを見た。
「王女殿下も?」
「日本政府は人ではない、と」
アレシナは、少し恥ずかしそうな顔をした。
「父上」
「良い言葉だ」
「私も、そう思います」
総理も頷いた。
◇
話題は、安全保障へと移った。
「ヴァルガニアについて」
アルヴェリオが言った。
「日本政府は、どこまで把握しておられますか」
「我々が直接確認できている情報は、まだ限られています」
「我が国との緊張関係については」
「承知しています」
「もし」
国王は、一度言葉を選んだ。
「ヴァルガニアが我が国を攻撃した場合、日本は参戦されますか」
部屋が静まり返った。ルヴェリオも、軍務長官も、アレシナも、総理を見つめた。
「現時点では」
総理は答えた。
「そのお約束はできません」
軍務長官の表情が、わずかに動いた。だが、アルヴェリオは驚かなかった。
「そうでしょうな」
「日本国が、ヴァレシア王国の安全保障に無関心だという意味ではありません。しかし、本日結ぶのは、軍事同盟ではないのです」
「分かっています」
王は、少し笑った。
「むしろ、それを直接お聞きしておきたかったのです」
「なぜです」
「国内には」
アルヴェリオは言った。
「日本と国交を結べば、日本の軍がヴァルガニアから守ってくれる、と思っている者がいるのです」
「我が国にも」
総理が答えた。
「ヴァレシアと友好関係を結ぶのなら、この地域の安全は日本がすべて担うべきだ、と考える人はいます」
今度は、アルヴェリオが少し驚いた。
「日本にも?」
「八千三百万人もいれば、意見も八千三百万通り──とまでは言いませんが、それに近いものがありますから」
ルヴェリオが、小さく笑った。アルヴェリオも笑った。
「それは、少し安心しました」
◇
最後に、条約の案が机の上に置かれた。
『日本国とヴァレシア王国との友好及び基本関係に関する条約』
両国の主権と領域の相互尊重。外交関係の正式な樹立。紛争の平和的な解決。外交使節の交換。海難救助。検疫と感染症対策での協力。人の往来の段階的な拡大。通商協議の開始。科学、医学、教育、魔法研究における交流。技術協力については、受け入れる側の社会への影響と、持続可能性を考慮すること。
そして、この条約が軍事同盟を構成するものではないこと。
それは、これまで何度も実務者たちが確認し、翻訳し、双方の法制度に合わせて調整してきた文書だった。
アルヴェリオは、最後にもう一度だけ、全文に目を通した。
数週間前まで、東の海には何もないと思っていた。
それが今、その海の向こうには、八千三百万人の国家がある。強く、豊かで、理解できない技術を持っている。
だが、知らないこともある。魔法を学び始めたばかりで、自分たちが判断を誤る可能性も認め、強すぎる自分たちの影響を警戒している。完璧な国ではない。
だからこそ、国として付き合うことができる。
「総理」
「はい」
「一つだけ、よろしいか」
「何でしょう」
アルヴェリオは、ペンを取る前に言った。
「私は、日本国が我が国を守ってくれるとは、考えないことにしました」
日本側は、静かに聞いていた。
「日本国が我が国を豊かにしてくれるとも、考えません」
「はい」
「我が国を変えるのは、我々自身です」
「それがよいと思います」
総理が頷いた。
「しかし」
王は続けた。
「我々だけでは知り得なかったことを、あなた方は知っている」
「そして」
総理は言った。
「我々だけでは知り得なかったことを、皆さんは知っておられます」
魔法のことだ。アレシナは、その言葉を聞いて、少し笑った。
「ならば」
アルヴェリオ三世は言った。
「互いに必要なところだけ、助け合うことにしましょう」
「はい」
「できれば、長く」
「そのための、条約です」
◇
二人が、署名した。
まず、日本国内閣総理大臣。次に、ヴァレシア国王アルヴェリオ三世。署名を確認し、文書を交換する。そして、握手。ほんの数秒のことだった。
王宮の外では、何も起きなかった。空が光ったわけでもない。鐘がひとりでに鳴ったわけでもない。魔力が世界を駆け巡ったわけでもない。
ただ、日本国とヴァレシア王国が、正式に互いを隣国と認めたのだ。
◇
条約の署名の後、王宮前の広場で、両国の政府による簡単な発表が行われた。
日本国とヴァレシア王国は、本日、正式な外交関係を樹立した──。
その知らせは、王都から街道へ、港へ、地方の都市へ、村々へと広がっていった。魔術師組合へ、商人組合へ、教会へ、軍営へ。
◇
王都の酒場では、「で、日本の商品はいつ来るんだ」という話になった。
商人組合では、「最初の輸出品を誰が扱うか」で喧嘩になった。
鍛冶屋では、年老いた親方が、「日本の鉄を見るまでは死ねん」と言った。
農村では、「麦を買うという話は本当なのか」という問い合わせが、代官のもとに殺到した。
魔術師組合では、共同研究に誰を送り出すかで、早くも揉め始めていた。
◇
そして、王宮の一室。
役目を終えたアレシナは、最初の暫定覚書と、今日署名された条約の写しを、並べて眺めていた。
「短かったような」
背後から、声がした。アルヴェリオだった。
「父上」
「長かったような」
王は、娘の隣に並んだ。
「どちらでしょう」
「両方ね」
アレシナが答えた。
最初は、海から一隻の白い船がやって来た。言葉も、相手の名前も、分からなかった。それが今、正式な外交関係がある。
「これで」
アレシナが聞いた。
「一段落、ですね」
アルヴェリオは、少し考えた。
「違う」
「違う?」
「始まったのだ」
王は、窓の外を見た。王都の街並み、そしてさらにその東、海のある方角を。
「これまでは」
王は言った。
「日本が何者なのかを、知ろうとしていただけだ」
「はい」
「これからは」
王は、わずかに笑った。
「日本と、付き合っていかなければならない」
アレシナも笑った。
「そちらの方が、大変そうですね」
「間違いなく」
◇
この日、日本国とヴァレシア王国は、正式な外交関係を樹立した。
後の世、この日は、日本がこの世界で初めて外国と国交を結んだ日として、両国の歴史書に記録されることになる。
だが、その日のヴァレシア王国で最も多く交わされた言葉は、歴史でも、外交でも、主権でもなかった。
「日本とは、何を売り買いできるんだ?」
◇
国交とは、文書に署名することではない。
その後で、人が会い、物が動き、知識が渡り、ときには揉めながら、互いに相手がそこにいることを当たり前だと思うようになっていくこと。それが、国交なのだ。
その長い関係の、最初の一日が、ようやく始まった。