2036年 8月10日 京都府立呪術高等専門学校
「ありえない!いくら特級事案だとしてもあの男を解放するなんて論外だ!」
呪いを用いて呪いから日本を守ることを生業とする呪術師。彼らを取りまとめ組織化させている日本政府の一機関〝呪術総監部〟
総監部を構成する呪術師の一人である青年は怒りを露わにする。その理由は彼が参加している会議の議題にある。
その内容は18年前の死滅回遊発生時、沖縄結界を平定する際、沖縄本島のあらゆる生命を虐殺した最悪の呪詛師〝剣聖〟をアフリカから日本に向けて侵攻している蝗害の呪霊の討伐に利用するというものであった。
「早とちりするな、何も野放しにする訳ではない。奴の呪具の封印を一時解くだけだ。アフリカから輸入した黒縄もある。…10年前の失敗は繰り返さぬ。」
青年の激しい口調に一切の物怖じをせず相対する老人は有無を言わせぬ口調で続ける。
彼にとっても苦渋の決断なのである。
「成功するわけがない。妖刀量産計画が頓挫した理由なら楽巌寺殿も知っているはず‼︎妖刀は決して我々の手に負える物ではないんですよ。」
「ならばどうする?先月の震災の影響で少なくとも八体の特急呪霊が確認されている。虎杖悠仁や乙骨優太は東京から離れられん。無論、他の術師たちもな。」
老人は淡々と、自身にも言い聞かせるように言葉を続けていく。
「…1週間後には日本に到達するだろう。それまでに東京の呪霊を祓い切る目途は立っていない。時間がないのだ。」
尚も反対意見を押し通そうとする青年に楽巌時は逆に質問した。
青年は18年前の沖縄で両親を、10年前に行われた妖刀量産計画の実験の際に実姉を亡くしている。
青年には才能があった。それは一般家庭出身ながら総監部に籍を置いていることが証明している。故に理解しているのだ。
日本には次世代の英雄が必要であると。
そして英雄とはあらゆる呪いと愛を背負い、孤独に生きて孤独に死ぬ生贄のようなものだと。
誰かが妖刀を握れば、その者は呪いに蝕まれ、死に至る。
ならば、その誰かに自分がなればいい。
そうすれば仲間を犠牲にする必要はなくなる。
青年は、決意を口に出す。
「私に妖刀を握らせてください。お願いします。」
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同年 8月12日 中国 チベット自治区
青の絵具を塗りたくったような晴天とそれを片っ端から削り取るように蠢く暗雲。
この雲を形作るのは水滴ではない。
雲の正体は“皇”を冠する災いの虫。即ち蝗の群れ。
群れを率いるのは飛蝗が呪いに転じた飢餓の化身 特級呪霊。
相対するのは黒い衣で身を包む四人の呪術師。
特別一級術師 栗原由良。
一級術師 憂憂
準一級術師 田中美子
準一級術師 鈴木良和
妖刀の特異な呪力を使い群れの中核を担う特級呪霊“斑皇”をおびき寄せ、撃退する、もしくは群れ全体に大打撃を与えることで弱らせることで斑皇を孤独相にして、群れを消滅させる作戦を立てているが成功率が低いであろうことが彼らの表情から読み取れる。
妖刀は使用者の心身を侵す。青年の右腕にまかれた黒縄は侵食を食い止める役割を担う呪具である。
「封印を解けば勾罪の侵食が始まります。皆さん準備は整いましたか?」
不気味な羽音が響くなか、鈴木が言葉を投げかける。
「勿論だ」
その返答には僅かな恐れが混じっていた。しかし、その瞳に灯る覚悟に一切揺らぐことは無い。
「僕たちは憂憂さんの術式で離脱して遠方から監視をするので安心してください」
「ありがとう、憂憂さんもよろしくお願いします」
「すでに前金で三億支払って貰っていますので相応の働きはして見せます。」
憂憂はいつもの調子を崩すことなく返事をするも由良への心配の感情は隠しきれていない。
「では、始めます。」
両手で印を結ぶ鈴木の一声を合図に各々が身構える。
最初の一枚が剝がれたのを皮切りに、
一枚。
また一枚。
柄から鞘の先までを覆う呪符が剝がれてゆく。
妖刀「勾罪」
十年の時を経て黒塗りの鞘と共にその力の一端が露わになった。
ノリで書き始めたせいで駄文になってしまいました。
誤字脱字やアドバイスがあれば教えてください。