ネオン父に転生したのでふんわりした未来知識で成り上がる   作:パラレル・ゲーマー

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第12話 ネオンの父、モラウに新人の話をする

 1979年、夏。

 ジリジリと肌を焼くような日差しが、ヨークシンの港に降り注いでいた。

 港の一角に接岸しているのは、一年近く前にライトが初めて見送ったあの大型調査船だ。

 あれから調査船は、数十日単位の調査航海と帰港を何度も繰り返している。今回も人員交代と機材整備、サンプルの搬出を兼ねた一時帰港だった。船体は白かった塗装が剥げ落ち、無数の潮と赤錆に覆われている。積み下ろされる深海用の機材には過酷な使用感が刻まれ、作業員たちの肌は痛々しいほどに黒く焼けていた。

 

 ノストラード組のロゴが入ったトラックが数台横付けされ、クレーンを使って慎重に荷物の積み下ろしが行われている。

 厳重にロックされたサンプル箱。膨大な量の測量記録とフィルム。現場で密封され、低温保管された深層のコアサンプル。そして、水圧や岩盤との接触でひしゃげた無残な機材の数々。

 

(一年近く、行ったり来たりしながら海底を調べ続けてるんだよな……)

 ライトは日除けのテントの下から、その物量と船の傷み具合を眺めていた。当初組んだ調査予算も、成果が上がるたびに協会、セオドア財団、研究機関の追加承認を受け、今では長期継続案件へと姿を変えている。マフィアの組長として補給とロジスティクスを裏から支えてきた身としては、謎の解明というロマンよりも先に、「よくまあ誰も死なずに済んでるな」という現実的な感心の方が勝る。

 

 タラップを下りてきた男の姿が見えた。

 大柄な身体に、潮風でさらにゴワゴワになった髪。以前よりさらに『海の男』としての凄みを増したモラウだった。

 ライトは歩み寄り、短く声をかけた。

「お疲れ様です。長丁場でしたね」

「おう」

 モラウは肩を回しながら、第一声でこう言った。

「お前が送ってきたコーヒー、悪くなかったぜ」

 

 ライトは思わず苦笑した。

「感想、そこですか」

「海の上じゃ、カフェインと煙草くらいしか楽しみがねえんだよ」モラウは愛用の煙管をポンと叩いた。「で、壊れた深海用照明が二基ある。次の出航までに交換を頼む」

「もう同じ規格のものを手配して、そこの倉庫に搬入済みです」

「高圧保存ケースも追加だ」

「そっちも」

「……話が早くて助かるぜ」

 この一年で、現場責任者と後方支援のトップとしての関係は、極めてスムーズなものに仕上がっていた。

 

 午後。

 港にほど近いノストラードが所有するビルの、広い会議室。

 壁一面に、最新の『ベレノス海東部遺構・測量図』が貼り出された。

 参加者は、ライト、モラウ、エレノア教授、そして海洋考古学者と地質学者、金属材料の専門家。

 

 ライトは壁の図面を見上げて、思わず呟いた。

「……随分と、広がりましたね」

 最初の調査前にモラウが撮ってきた写真では、「数十メートルの石組み」に過ぎなかった。だが今の図面には、広大な範囲にわたって複雑な建造物の痕跡がマッピングされている。

「現在確認されている人工構造物の範囲は、東西に約一・七キロメートル、南北に約一・二キロメートルです」

 海洋考古学者が指示棒で図面をなぞった。

「さらに外側は分厚い海底堆積物に埋まっており、未確定ですが……」

 エレノア教授が冷静な声で結論を述べた。

「ただの神殿跡や、単独の居住施設ではありません。少なくとも『都市』と呼んで差し支えない規模です」

 

 これで正式に、あの海底の石組みは『未知の都市遺構』として扱われることになった。ただし、文字の解読が進んでいないため、文明の固有名詞はまだない。

 

 本題の分析報告に入る前、ライトはふと思い出したようにモラウに声をかけた。

「そういえば、モラウさん」

「なんだ?」

「ジン=フリークスっていう新人ハンター、ご存じです?」

 

 モラウは少し考え込んだ。

「……今年の試験で、たった一人だけ受かったっていう単独合格のガキか?」

「それです」

「知らねえな。会ったことはねえ。そいつがどうかしたか?」

 ライトは手元のペンを弄りながら答えた。

「先月、うちのオフィスまで来たんですよ」

 

 モラウの眉が微かに動いた。

「何しに?」

「このベレノス海の遺跡の資料を見せろ、と」

 モラウは鼻で笑った。

「十一歳だろ、そいつ」

「ええ、十一ですね」

「元気なガキだな」

 

「どうやってうちが関わってるか知ったと思います?」ライトが少しだけ含みを持たせて言う。「ハンター協会で、あなたが長期調査に入ってるという噂だけを聞いて、港まで行って補給船の出入りを調べて、うちの運送会社のトラックを辿ってきたそうです」

 モラウの煙管を持つ手が少し止まった。

「……それだけで?」

「ええ。それだけで」

「ほう」モラウの口角が少し上がった。「生意気だが、ハンター向きの嗅覚ではありそうだな」

 

「資料は見せたのか?」

「見せませんでした」ライトは首を振った。「俺の一存で開示できる資料じゃないし、守秘義務もある。そりゃそうだ、と言ってあっさり引きましたよ」

「だろうな」

「ただ、どうしても参加したいなら、調査の現場に『必要とされる人間』になってから来い、とは言いましたが」

「なんて返してきた?」

「半年後にまた来る、と」

 

 モラウは短く息を吐いた。

「…………半年?」

 呆れたような声だった。

 

 横で聞いていたエレノア教授が、眼鏡の奥から冷ややかな視線を向けた。

「ライトさん。その十一歳の子は、学術調査において何ができるのです?」

「今は、何も」

「では、今は全く必要ありませんね」

 清々しいほどのバッサリ感だった。

「俺も、彼に全く同じことを言いましたよ」ライトは苦笑した。

 

「ですが、もし半年後、彼が調査に本当に必要な能力と実績を持ってきた場合は、その時に参加の可否をフラットに判断します」

 エレノアは厳格な顔で付け加えた。

「十一歳でもか?」モラウが尋ねる。

「ええ」エレノアは頷く。「十一歳であることを理由に、危険な深海底へ潜らせることには当然反対します。ですが、十一歳であることを理由に、研究や分析の能力まで最初から否定する気もありません」

 

 潜水の安全管理と、学術参加の基準は別の話だ。

「まあ、本当に何か役に立つモンを持ってきたら、その時は俺も面接くらいはしてやる」

 モラウのその言葉で、ジンに関する事前報告はあっさりと終了した。半年後に本当に戻ってくるなら、現地責任者と研究班のトップには名前だけ共有しておいた方がいい。それだけの話だった。

 

「さて、新人ハンターの雑談はそこまでにしましょう」

 エレノアが手元の分厚い資料の束を、机の中央に置いた。

「もっと面倒なものが見つかっています」

 

 その一言で、会議室の空気が一気に引き締まった。

 

「まず、前回の調査で検出された『陸生植物の花粉』についてです」

 地質学者が資料を開く。

「前回はコンタミネーションの疑いがありましたが、今回は全く別地点から、新品のコア採取機材を使用し、現場で完全密封。別ルートで輸送し、クリーンルーム環境下で、複数の研究所に追試を依頼しました」

「結果は?」ライトが促す。

「陸生植物由来の花粉を、深層堆積物から再検出しました。しかも、複数種です」

 

 さらに地質学者が続ける。

「花粉だけではありません。現在の深海特有の堆積物のさらに下から、陸上で形成された可能性の高い『古土壌層』の痕跡を確認しました。植物の根の跡、炭化した植物片、そして淡水環境を示す微細な痕跡です」

 

 エレノアが静かに結論を述べた。

「断定という言葉は使いませんが……この都市が、過去のある時期において陸上環境に存在していた可能性は、極めて高くなりました」

「アーネストが見た『青空の下の街』と一致するわけですね」

 ライトの言葉に、エレノアは深く頷いた。「ええ」

 

「ただし、今回の報告の本題はそこではありません」

 エレノアは、十数枚の鮮明な水中写真をテーブルの上に並べた。

 そこには、最初の発見のきっかけとなった、あの『黒灰色金属』が写っていた。

 

「黒灰色金属の発見数が、激増しています」

 第二次調査の開始当初は、最初の発見地点を含む数地点でしか確認されていなかった。

 しかし現在は違う。

「住宅区、市場の跡、水路、公共建築物と思われる巨大な石造り、道路、倉庫、そして都市の中心部。……広範囲の、あらゆる場所からこの金属の構造物が見つかっています」

 

 ライトは写真を覗き込んだ。

「……街中で一般的に使われていた、ただの便利な建築素材だったってことですか?」

「我々も、最初はそう考えました」

 金属材料の専門家が、重い口を開いた。

 

「この都市の建物の年代は、大きく三つに分けられます」

 海洋考古学者が、別の写真を三枚並べた。

「A地区にある、最古級の巨大な石造建築。B地区の、数百年後に増築されたと思われる中期の建物。そしてC地区の、文明の末期に建てられた比較的新しい建物。……その全てから、黒灰色金属が発見されています」

「なら、長期間使われてきた一般材料で間違いないじゃないですか」

「いいえ。金属の『入り方』がおかしいのです」

 

 考古学者は、A地区の最も古い建物の写真を指差した。

「古い建物の壁を調べて分かったのですが、本来の石積みの壁を後から途中まで削ってあるんです。そこに細い溝を彫り、黒灰色金属を挿入し、その上から漆喰のようなもので補修している」

 つまり。

「この金属設備は、建築当初から存在していたものではありません」

 

 エレノアが決定的な一枚の写真を出した。

 崩落して断面が剥き出しになった、分厚い壁の写真だ。

「構造を見てください。一番内側が、元の古い石壁。その上に、数十から数百年後の補修層。さらにその後から溝が開けられ、黒灰色金属が埋め込まれ、最後に新しい層で表面が塗り直されている」

 

 ライトの目が険しくなった。

「……後から、付け足した?」

「そうです。しかも、一箇所や二箇所ではありません。発見された十数地点の全てにおいて、建築された年代がバラバラであるにも関わらず、この黒灰色金属だけは『最終的な改修期』に、都市全体でまとめて追加設置された痕跡があるのです」

 

 海洋考古学者が補足する。

「この都市は、ある特定の時期に、極めて大規模な改修工事を受けています。規模で言えば、都市全域です」

「公共施設だけじゃない。一般の民家の壁や、床下、水路の接続部にまで、後付けでこれが埋め込まれている」

 モラウが低い声で言った。

「古い石畳の道路もだ。一度わざわざ石を剥がして、地下にこの金属を設置してから、再舗装してある箇所が数百メートルも続いてた」

 

「……都市インフラの更新工事?」

 ライトが一番現実的な仮説を口にした。水道管の敷設や、現代の電線のようなものだ。

「それなら、私たちも理解しやすかったのですが」

 エレノアはそこで言葉を切った。

 

 彼女は、一枚の巨大な『大判配置図』をテーブルの中央に広げた。

 都市の測量図の上に、黒灰色金属が発見された地点が、数十個の『赤点』でプロットされている。

「最初は、バラバラに設置されているように見えました」専門家が言う。「単体の位置だけでは、法則性が全く分からなかったのです」

 そこで、各地点の金属の配置角度と規格を整理し、同系統と思われるものを結び合わせてみたという。

 

 赤い点と点が、直線や緩やかな曲線で結ばれていく。

 そこに現れたのは、極めて規則的で幾何学的な『線』のネットワークだった。

 

「これは……」

 ライトは息を呑んだ。

 

「都市の既存の道路網とは、全く一致していません」

 エレノアが図面を指でなぞる。

「ある線は道路に沿っていますが、途中で民家の敷地を横切り、水路を跨ぎ、古くからの区画境界線を無視して直進しています」

 つまり、人々の生活に合わせて発達した設備ではない。既存の都市構造へ後から上書きされた、別の系統だ。

 

 しかも。

「複数の系統が、都市の外周から……全て『中央区画』へ向かって伸びています」

 放射状に伸びる線と、それを繋ぐ環状の線。

 完全な魔法陣のようなオカルトチックなものではない。だが、明らかに都市の中央を意識した、工学的な配置だった。

 

「……これ、何なんです?」

 ライトの問いに、専門家たちは誰も答えなかった。

 

「補強材では説明できません」金属専門家が言う。「建物の強度とは無関係な場所に設置されていますから」

「水道や下水の設備でもありません。水路から離れた密閉空間にもあります」

「装飾の類でもありません。ほとんどが地下や壁の中に埋め込まれていますから」

 エレノアが眼鏡のブリッジを押し上げた。

「この配置自体に、何らかの機能があったと考えるのが自然です」

 

 何の機能かは、分からない。

 その時、ずっと黙っていたモラウが口を開いた。

「あの、過去を見る能力者の野郎」

「アーネストですか?」

「あいつ、実況中に言ってなかったか? 『この金属に、周期的にオーラが流れてる』って」

 

 ライトは手元のアーネストの実況記録をめくり、その一文を確認した。

 確かに、過去の映像では、同じ黒灰色金属へ周期的にオーラが流れていたと証言している。

 

 ライトは、赤い線が張り巡らされた配置図を見下ろした。

「……念に関係する設備だった可能性がある?」

「あくまで可能性です」

 エレノアは淡々と答えた。

「『念の巨大送電網』だの、『都市全体を使った巨大な念装置』だの、証拠もないのに勝手な名前を付けないでください」

「まだ言ってねえよ」

 モラウが肩をすくめた。

 

「ですが」エレノアは続けた。「アーネスト氏の記録と、今回確認された物理的な配置が一致し始めているのは事実です」

 個人の能力で見えた過去の情景と、海底から拾い上げた物証が、少しずつ同じ方向を指し始めていた。

 

「でも、おかしくないですか」

 ライトが根本的な疑問を口にする。

「本当にそんな都市設備が必要なら、最初からそういう都市計画で作ればいい。なのに、何百年も普通に存在していた街の歴史を無視して、最後になって全域を掘り返してまで、無理やりこれを追加した」

 ライトは図面から顔を上げた。

「……文明の途中で、突然これが必要になった?」

「その通りです」エレノアが頷く。「この都市は、この設備を前提として建設されていません」

 

 さらに、海洋考古学者が年代測定の結果を説明した。

「金属を固定していた補修材や、挟まっていた有機物を複数地点から調べましたが……設置された時期は、文明の最終期に集中しています」

 文明が何百年続いたかはまだ分からない。しかし、この巨大な黒灰色金属のネットワークは、文明が滅びる直前の数十年、あるいはもっと短い期間で、急速に作られた可能性が高い。

 

「滅びる直前に、街中をひっくり返してこんなもんを入れたってのか?」

 モラウが腕を組んで低く唸る。

 

「何か、巨大な危機が迫っていた?」

 ライトが推測を巡らせる。地質災害への対策か。未知の敵との戦争か。防壁を張るための設備か。

「しかし、アーネストの見た過去の日常には、避難準備の痕跡なんて一つもありませんでした」

 生活区画には、普通に食器が並び、商店には商品があり、日常の道具がそのまま残されている。

 混乱もない。戦争の準備もない。切羽詰まった避難の様子もない。

 

 モラウが、紫煙を細く吐き出しながら言った。

「危機に備えたんじゃなくて……」

 モラウは図面の中央、全ての赤い線が集束する一点を見つめた。

 

「こいつら、自分から何かをやろうとしてたんじゃねえのか?」

 

 その言葉に、誰も反論できなかった。

 ライトも地図を見たまま黙った。

 

 第二の新発見の報告が続く。

 各設備の近くから、小型の石板や金属プレートが多数確認されたという。

 そこには、全て同じ六文字から八文字程度の文字列が刻まれており、末尾の一、二文字だけがそれぞれ異なっている。

「大半は現位置で撮影と位置記録だけを行い、自然に剥離していた数点のみを回収しています。まだ文字は解読できていませんが、おそらく『区画番号』『系統番号』、あるいは『管理標識』のようなものだと推測されています」

 言語学者の暫定評価だ。同じ形式の標識が、都市各所に規則的に配置されていたことだけは確かだった。

「そこまでです」エレノアが言った。「意味が分かるまでは、番号札と断定することもできません」

 

 そして、第三の報告。

「測量図の通り、全ての配置は都市の中央区画へ収束しています」

「なぜ、その中央を直接調べなかったんです?」ライトが聞く。

「中央の崩落区画そのものは、かなり早い段階から分かってた」モラウが答えた。「ただ、巨大な建物が丸ごと潰れて、分厚い堆積物まで乗ってる。何があるか分からねえ場所へ、崩落の危険を冒して突っ込む理由がなかったから、外側から優先して調べてたんだ」

 

 エレノアが配置図を見る。

「中央区画の重要性が分かったのは、各地の金属設備を地図上で比較してからです」

 そして、ソナーの記録を机へ出した。

 中央広場らしき場所の地下。そこに、人工的な大空洞が存在している。直径三十から四十メートル級。深さ十数メートル。

 しかも、その地下空洞の周辺だけ、黒灰色金属の反応密度が異常に高いという。

 

「……ここが、中心?」ライトが図面を指す。

「配置を見る限り、その可能性は高いでしょう」

 エレノアが頷く。

「次はここだな」モラウが言う。

「崩して強引に入るのは禁止です」

「分かってるよ。まずは隙間からソナーと小型の無人探査機を入れる」

 

 ライトは、赤い線が都市中央へ集まっていく配置図をもう一度見た。

 

「これ……」

 ライトは線を目で追った。

 

「建物ごとに、別々の便利な設備を置いたんじゃなくて」

 

「ええ」

 エレノアが、赤い線の一本を指でなぞった。

「既存の都市全体へ、一つの系統を後から組み込んでいます」

 

 ライトはそれ以上、名前を付けなかった。

 何のための系統なのか。

 何を流し、何を動かしていたのか。

 まだ何も分からない。

 

 モラウが煙管を咥え直した。

「街一個使って、何する気だったんだろうな」

 

 ライトの脳裏に、アーネストが語った過去の情景が浮かんだ。

 青空。普通の日常。黒灰色の金属を流れるオーラ。

 そして、一瞬の白光の直後、全てが深海の底にあった。

 

「この設備と、あの白い光は関係あるんでしょうか」

「分かりません」

 エレノアは明確に答えた。

「時期が近い可能性があるというだけで、因果関係はまだありません。それを確かめるには、中央区画を調べる必要があります」

 

 会議が終了し、各専門家が退室していく中、モラウが立ち上がってライトを見た。

「そういや、さっきの新人ハンターのガキ」

「ジンのことですか?」

「半年後、本当に何か役に立つモンを持ってきたら、俺に連絡しろ」

 ライトは少し意外そうに笑った。「興味出ました?」

「十一歳で、お前んとこのマフィアの窓口まで一人で辿り着いたんだろ」

 モラウは煙管の灰を落とした。

「あんなこと言っといて、あいつが半年後に何を持ってくるかくらいは、見てえじゃねえか」

「分かりました」

 

 エレノアはドアの前で振り返り、冷たく言い放った。

「私は、持ってきた『実績』を見てから判断します」

 学者の態度は一切ブレなかった。

 

 夜。

 全員が帰り、一人になった会議室。

 ライトは壁に貼られた巨大な都市図の前に立っていた。

 

 何百年もかけて形成された古い街へ、文明の最後になって新しい系統が後付けされている。

 赤い線は、住宅も、市場も、水路も区別せず、都市中央の地下へ集まっていた。

 

 そこまでして、この街の人間たちは何かを完成させようとしていた。

 その直後に見えるのが、アーネストの記録に残った白光と、深海の光景。

 

 ライトは、赤い線が集中する地図の中央へ視線を落とした。

 

「街一個使ってまで……何がしたかったんだ?」

 




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