新エリー都 ヤヌス区
六分街『Random Play』
「そういえば二人って、このビデオ屋以外にも副業してるって言ってたけど、何をやってるの?」
「あっ……それはっ……! あのーっ! そう! あれだよ、あれ!」
「そうだな……。言ってしまえば、ガイドみたいなものだよ」
「そうなの! ガイド! いろんな人を、いろんなところに案内してるんだー!」
そう説明する二人は、すごく慌てていて、明らかに何かを誤魔化そうとしていた。
「――ふーん? そうなんだ」
僕は、そんな二人の必死な姿を見て、心の内に生まれた疑問を飲み込むしかなかった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「危なかった……。でも、どうしようお兄ちゃん。○○、絶対納得してない顔してたよ」
「あんな苦し紛れの言い訳じゃ、納得しろっていう方が難しいさ」
「やっぱり、ちゃんと私たちのこと話した方がいいのかな……?」
「もちろん、ずっと内緒になんてしていられないさ。でも、もう少し落ち着いてからの方が僕はいいと思うんだ」
「そうだね、お兄ちゃん! ○○には、もう少しだけ待っててもらっちゃお!」
「そうだね。おっと、そろそろ集合時間だ。リン、準備をしよう」
「うん! 私、集合場所に行ってくるよ!」
「僕もすぐ向かうよ」
二人はそれぞれ準備を始めた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あの二人、なんか隠してる気がするんだよな……」
僕はそう考えながら、町中を歩いていた。
「でも、無理に聞くのも気が引けるしなぁ……」
そんなとき、近くから悲鳴が聞こえてきた。
「誰か助けて! うちの子が!!」
声の聞こえた方向へ向かうと、取り乱している女性と、その近くにホロウの裂け目があった。
「大丈夫ですか!?」
「うちの子がホロウに入ってしまって……!」
周囲からは、
『早く治安局に連絡を!』
などの声が聞こえてくる。
確かにホロウ内部にはエーテリアスのような危険が多く、一般人が入るのは死にに行くようなものだ。
(それに、リンやアキラからも『絶対にホロウには一人で入らないで!』って、口酸っぱく言われてる……)
○○はしばらく考えた後、覚悟を決めて女性に声を掛けた。
「僕が、中に入ってお子さんを連れ戻してきます!」
「ほ、本当ですか!?」
「写真とかありますか? それと、お子さんの特徴を教えてください」
女性から子供の特徴を聞き、写真を見せてもらった後、リンとアキラにメッセージを送る。
そして、○○はホロウの裂け目へと入っていった。
(あとで、絶対二人に怒られるな……)
そんなことを考えながらモヤを抜けると、そこには工場地帯のような場所が広がっていた。
「ほんとにホロウって、いろんなところに繋がってるんだ……。とりあえず、子供を探さないと」
僕は広いホロウの中を歩き回り、子供を捜索した。
それからしばらく経った頃、ふと物陰に人影が見えた。
僕はその物陰に近づく。
そこにいたのは、ホロウに入る前に写真を見せてもらった子供だった。
「大丈夫かい?」
そう声を掛けると、子供はビクッと身体を震わせて僕の顔を見た。
そして、
「ごめんなさい……」
そう言いながら、泣き出してしまった。
「ほら、もう泣かないで。ここから――」
――出よう。
そう言おうとしたとき、近くから物音が聞こえた。
「エーテリアス……!」
子供の泣き声を聞きつけたのか、エーテリアスが数体集まってくる。
「どうしよう……」
○○は子供と一緒に物陰へ隠れながら、どうするべきか考える。
すると、近くに一本の鉄パイプが転がっているのが目に入った。
「何もしないくらいなら……!」
そう言って、○○は鉄パイプを手に取る。
そして、エーテリアスの前に立ちはだかった。
僕は鉄パイプを大きく振りかぶり――
「なんとか……なれ!」
力いっぱい振り下ろす。
フルスイングした渾身の一撃がエーテリアスの一体を捉え、その身体を吹き飛ばした。
「よしっ!」
仲間が吹き飛ばされたのを見て、残りのエーテリアスもこちらへ襲い掛かってくる。
僕は振り下ろされる腕を、なんとか躱していく。
まるで――
「体が覚えている……?」
自分でも、なぜこんな動きができるのか分からなかった。
それでも、身体は勝手に動いていた。
「走って!!」
攻撃をかわしながら、確実に一体ずつエーテリアスを倒していく。
そして、子供に向かって叫んだ。
(幸い、こいつらは足が遅い。一度距離を離せれば……!)
そう考えて子供の方へ向き直り、走り出そうとした、そのとき――
ゾクッ……。
背中から、嫌な気配を感じた。
僕は咄嗟に鉄パイプを前へ突き出す。
その瞬間――
「グッ……!」
強烈な衝撃を受け、僕の身体は後方へ吹き飛ばされた。
「痛っ……!」
なんとか身体を起こす。
すると、そこには緑色と赤色――二体のエーテリアスが、こちらを見つめていた。
「勘弁して――」
悪態をつこうとした、その瞬間。
片割れが、目の前にワープしてきた。
「っ!」
僕はそれを何とか躱し、子供の手を取って走り出す。
(やばい、やばい、やばい!! なんとか、この子だけでも助けないと……!)
(そもそも、プロキシやボンプもなしで、どうやってホロウから出るんだ!?)
必死に考えながら走っていると――
「まずい……!」
ついに行き止まりへとたどり着いてしまった。
後ろを振り返る。
先ほどよりも数を増やしたエーテリアスが、こちらへ迫ってきていた。
(もう……ダメだ……)
そう思った僕は、子供を強く抱きしめた。
その瞬間――
目の前に無数の光の柱が降り注ぎ、同時に白い羽が舞い落ちてきた。
先ほどまでそこにいたエーテリアスは――
文字通り、消えていた。
突然の出来事に、僕が呆然としていると。
頭上から声が聞こえてきた。
「ほんっと、君は昔から無鉄砲で、後先考えずに行動するよね。まあ、それが君の良いところなのかもしれないけど」
そう言いながら、頭上から一人の女性が目の前へ降りてくる。
ピンク色の髪。
そして、腰には白い翼が生えていた。
「た、助けてもらってありがとうございます。僕は○○っていいます。あなたは?」
僕は相手に感謝を伝えながら、自己紹介をする。
「……やっぱり、覚えてないんだ……」
「えっ……?」
「ううん、何でもないよ。そうだな~……まだ内緒♪ そのほうが面白いでしょ?」
目の前のピンク髪の女性は、笑いながらおどけてみせる。
僕が困惑していると、彼女は胸元から白い羽のネックレスを取り出し、僕に渡してきた。
「また私に会いたかったら、それを大切に持っていてね」
「あなたは――」
「○○!!」
僕が声を掛けようとしたとき、遠くからリンの声が聞こえてきた。
「リン?」
「もう来ちゃったんだ! それじゃあ、今日はここでお別れ! またね、忘れん坊さん♪」
そう言いながら、彼女は空へ飛び立っていった。
「○○!!」
「あっ、リン。どうし――」
パシッ!!
僕が言い切る前に、頬に鋭い衝撃が走った。
じんじんとした熱が頬に広がる。
そして、リンが泣きながら僕に抱きついてきた。
「○○っ……! 私っ……! 言ったよね! 一人でホロウに入らないでって!」
「……ごめん。でも、放っておけなくて……!」
「○○は昔からそう! あのときだって! 今回も……! 間に合わなかったらどうしようって……!」
「ごめんなさい……」
そんなやり取りをしていると、リンの後ろからボンプと、傘を持った紫色の髪の女性が走ってくる。
「あれは……イアス?」
「リン! 思うことはあるだろうけど、まずはホロウから出よう!」
「パエトーン様! ビビアンもその意見に賛成なのです!」
「でも、どうやって?」
僕が疑問に思っていると、イアスが僕の方を見て口を開いた。
「言ったろう、○○。僕たちはガイドみたいなものさ。ついてきてほしい」
イアスに導かれ、僕たちはあっという間にホロウの外へと出ることができた。
外で待っていた母親に子供を預ける。
そして僕たちは、治安局の目を避けながら帰路についた。
紫色の髪の女性は、途中で予定があるということで、何度も謝りながら僕たちと別れていった。
しばらくして、僕たちは『Random Play』へ戻ってきた。
「リン、そろそろ話してくれても……」
「嫌だ!」
ホロウから戻ってきてから、リンはずっと僕の腕に抱きついたままだ。
「アキラ~」
「今回は君が悪いよ、○○。それに、僕も少し怒っているんだ」
「うっ……ごめんなさい」
そんなやり取りの後、おもむろにアキラが口を開いた。
「○○。朝話していた僕たちの副業の件なんだけど……聞いてくれるかい?」
「大丈夫なの? 朝は言いたくなさそうだったけど」
「もう今回の件でばれてしまったからね。もう隠してもしょうがないだろう」
そう言って、アキラが改めて僕の目を見る。
「○○。僕たちは『プロキシ』なんだ」
「『プロキシ』って、あのホロウ内部をホロウレイダーとかにナビゲートするやつだよね?」
「そう。私たちは、その繋がりで○○と知り合ったの」
「そういえば、あの紫の人に『パエトーン』って言われてたけど、あれは?」
「あれは『プロキシ』業での名義のことだね」
「そうだったんだ……」
「……ごめんね、○○。黙ってて」
「職業柄、いろいろ巻き込まれることが多くてね。すまない、○○。君を巻き込みたくなかったんだ」
「謝らないでよ、二人とも。僕のためを思って黙ってたんでしょ? それなら、怒ることなんてないよ!」
「「○○……!」」
「でも、今度から隠し事はなしだから!」
「ああ……! 約束さ!」
「うん! 約束する!」
そう言って、三人で笑い合った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
とあるホロウ内。
「あ~あ、あんなに私たちのことを待たせたのに、とうの本人は忘れちゃってるなんて……ひどい話だよね」
「でも、忘れちゃってても○○が生きてる……! それだけで、どうでもよくなる」
「ねぇ、ベリ……。私が抜け駆けしても、君は許してくれるかな……」
その言葉は、誰にも聞かれることなく消えていった。
中々書きたいことがまとまらなくて大変ですが頑張ります。