【異世界版】ドラクエ3の女賢者さんが、遊び人になって色んな世界に転移・召喚される話 作:ポップ
今後は、番外編はこちらに投稿させて頂きますので、宜しくお願いします。
流れをご存知ない方の為に、ザックリ紹介
↓
①ドラクエ3の女賢者が遊び人になる
②気付いたらダンまち世界に…
③オラリオに来る
④元の世界に帰ろうと思ったらダイの大冒険の世界にきてしまう
⑤ダンまち世界に戻る
⑥色々……あって、起きたら知らない山で寝てた
⑦今はここらへん
バニーが控え室に戻ってきた後。
パプニカ側からの謝罪も済み、ようやく面倒なイベントから解放されたバニーは、椅子に座って一息ついていた。周囲の空気も少しずつ和らぎ始め、これでやっと落ち着けると思ったところで、扉を叩く音が響く。
入ってきたのは、フローラ王女と、カール王国の重臣達だった。
「初めまして、バニー様。私はカール王国の王女、フローラと申します」
「あら、さっきの王女様ね」
バニーが顔を向けると、フローラはその前まで進み出て、丁寧に頭を下げた。
「お疲れのところ申し訳御座いません。先程のお話を伺い、どうしてもバニー様にお願いしたい事があり、こうして参りました」
「私にお願い?」
一国の王女が、しがない遊び人風情にどんなお願いがあるというのか。バニーは首を傾げながら、続きを待つ。
フローラは小さく頷くと、それまでよりも真剣な表情で切り出した。
「現在、魔王ハドラーが多くのモンスター達を従え、地上への侵略を続けています。カール王国も一度襲撃を受け、どうにか撃退する事は出来ましたが……再びハドラーが攻めて来ないという保証はありません」
僅かに息を整えてから、フローラはバニーを真っ直ぐに見つめる。
「バニー様。魔王ハドラーから地上を守る為に、どうかそのお力をお貸し頂けないでしょうか?」
「やだ」
その瞬間、部屋の時間が止まったかの様な沈黙が落ちた。
フローラは言葉を続けようとしたまま固まり、後ろに控えていた重臣達も、揃ってバニーを見ている。条件を付けられる事はあっても、これほど間髪入れずに断られるとは思っていなかったのだろう。
驚く顔を浮かべながら、フローラはバニーに訊ねる。
「……失礼を承知で、お聞きしても宜しいでしょうか。バニー様は、かつて古代の大魔王を討ち倒された、勇者一行の賢者だったと伺っております。差し支えなければ、今回のお願いを断られる理由を、お聞かせ頂けないでしょうか?」
その問いに、バニーは面倒臭そうな顔をしながら、椅子の背に身体を預ける。
「何言ってんのよ。私は『昔の』人間なのよ?」
バニーは大きく息を吐いてから、話を続ける。
「少し前に、ここが私のいた時代から遥か未来らしいって事も分かって、ついさっきもあんな面倒な事があったし……だから、前に使ったことのある世界間移動の術式を組み直して、むしろそろそろ帰る方向で考えてたんだけど?」
フローラとしては、バニーがアバンやロカに協力してくれれば、これほど心強い事はないと考えていた。
しかし、自分はこの時代の人間ではなく、元いた場所へ帰るつもりだと言われてしまえば、無理に引き留めて戦ってほしいとも言いづらい。返事に迷っていると、バニーは更に言葉を重ねてくる。
「大体ね、私が一緒に行って魔王を倒したとしても、それから何年かしてもっと強い奴が現れたりしたらどうすんのよ」
と、呆れたように告げてくるバニーからの物言いに、フローラはすぐには答えられなかった。
確かに、その様な事が起こらないとは限らない。それでも、フローラが今どうにかしたいのはハドラーによる侵略であり、まだ現れてもいない敵の事まで持ち出されても困ってしまう。
「……ですが、魔王ハドラーさえ倒す事が出来れば、地上に平和が戻るのではないでしょうか」
と言うが、しかしーー
「甘いわね!」
「えっ?」
まさか自分の考えを一言で切って捨てられるとは思っておらず、フローラの口から、思わず間の抜けた声が漏れた。
「魔王を倒したら大魔王が出てくる、世の中大体そんなもんなんだから。歴史を紐解いて見なさいよ。どの時代も絶対そんな感じになってるから」
「魔王を倒したら、大魔王が出てくる……」
フローラは今聞いた言葉を小さく繰り返したが、魔王を倒しても更に上の存在まで現れるという話を、すぐに受け入れられる筈もなかった。
「そうよ。私達の時だってそうだったわ」
バニーは昔の事を思い返しながら、思わず肩を竦める。
「魔王バラモスを倒して『これで世界も平和になる〜!』って国をあげて皆が思ってたら、実はバラモスは中ボスみたいな奴で、その後ろに大魔王ゾーマって奴がいて、皆もテンションだだ下がりだったわ。ロモスで私が歴史を調べてた時も、幾つかの時代で似たような話が残ってたし。魔王を倒したら破壊の神が出てきた……とかね」
そうしてフローラは、何も答えられずにその話を聞いていた。
自分は、そんな話は聞いた事がない。というより、これまでそれ程深く歴史を調べた事がなかったのだが。
「この時代には、この時代を生きてる人達がいるんだから、その人達が自分達で何とか出来る様にならないと駄目でしょ」
彼女の言う事も分かるが、それでもフローラとしては、今いっときだけでも力を貸してもらいたいという気持ちは無くせなかった。
しかし、つい先程あの様な仕打ちを受けた後であれば、手助けをしたいという気持ちになれないのも仕方がないのだろう。こちらがどう頼もうと、バニーに旅への同行を強制出来る訳でもない。
(……本当に、パプニカは余計な事をしてくれたものだわ)
せめて、気持ち良く交流会を終えられていれば、もう少し違う返事を貰えたかもしれない。そう思うと、今この部屋にはいないテムジンにまで腹が立ってきてしまう。
そんなフローラを見ながら、バニーは少しだけ表情を緩めた。
「でもまぁ、帰るっていっても今すぐ帰れる訳じゃないからね。もし私の前に、そのハドラーって奴が湧いて出てきたとしたら、その時は軽くボコっといてあげるから安心しなさい」
笑顔で答えるバニーの表情には、ただの魔王程度には負けないという、絶対の自信が窺える。
フローラにとって最善の結果ではなかったが、これ以上しつこく頼んで、彼女からの心証まで悪くしてしまうのは避けたい。同行してほしいという願いは一旦諦め、別の頼み事を口にする事にした。
「……だとすれば、私達はどうすればよいのでしょうか?」
「えっ?」
何の話だと聞き返すバニーに、フローラはカールから旅立った者達の事を話し始める。
「カール王国にも、魔王に立ち向かう為に旅へ出た者達がいます」
脳裏に浮かぶのは、アバンとロカの姿だった。
「彼らはきっと、この時代を代表する勇者になってくれるものだと私は信じています。ですが、魔王を倒すまでの道のりが、決して簡単ではないという事も分かっているつもりです」
そこで、フローラは改めて頭を下げる。
「ですから……戦ってほしいとはもう申しません。なので、どうかバニー様が大魔王を倒すまでに経験されたことだけでも、私達にお聞かせ頂けないでしょうか?」
「う~ん、私達の頃と今じゃ、結構色々と違うからなぁ……」
バニーが腕を組んで考え始めると、フローラは顔を上げ、もう一度お願いした。
「それでも、是非お話をお聞かせ願いたいのです。きっと、今を生きる人々にとっても、バニー様の御経験は参考になると思いますので」
「う〜ん……」
戦いに連れ出すのではなく、話を聞くだけであれば、そこまで嫌がられる事もないだろう。バニーも少し考えた後、仕方ないわね、といった様子で頷いた。
「まぁ、今の時代に適してる考えかは分からないけども、参考にはなるかしらね〜」
その言葉を聞いて、フローラ達が姿勢を正す。
遥か昔の勇者達は、強大な敵を相手にどの様に戦ってきたのか。これから語られる経験の中に、アバン達の役に立つ何かが見つかるかもしれない。
皆が期待を込めて待つ中、バニーはあっさりと答えた。
「やる事は簡単よ。死ぬまで戦って、死んだら教会で蘇生してもらって、また戦いに行く。これを繰り返しなさい」
そこでは、誰もが何か貴重な教えを期待していたのだが、しかし、かつての英雄から金言とも言えるその言葉を聞いても、今の言葉をすぐに理解出来る者はいなかったのであった。
◇ ◇ ◇
バニーが話し終えても、フローラ達は黙ったままだった。
死ぬ気で戦え、という意味なら分かる。しかし、その後に続いた言葉まで思い返すと、どうにも話が繋がらない。
「バニー様、あの……それは、何かの比喩でしょうか?」
「うん?いや、そのまんまの意味よ」
そのままの意味と言われても、どういう意味なんだという気持ちしか湧いてこない一同。
バニーは、全然大したことを言っている風ではない様子で答えたが、それを聞いても、フローラ達の表情は変わらない。彼女は頬に指を当てながら、少し困った様に言葉を足す。
「あ~、やっぱりちょっと難しかった?こういうのって、今の時代の人達には受け入れられない感じなのかな?」
……冗談を言っている訳ではないようだ。
フローラは重臣達と顔を見合わせた後、聞き違いではない事を確かめる様に尋ねた。
「その、バニー様……死んでしまいますと、それで終わってしまうと思うのですが……」
「そんな訳ないじゃない。何の為の教会だと思ってるのよ」
「教会……で御座いますか?」
そう言われても、フローラにはバニーの話がどういう事か、さっぱり分からない。
「教会は、皆が神にお祈りをする場所ではないのでしょうか?」
それにはバニーも頷き返す。
「あ~、確かにお祈りも重要だわね。冒険中は、私達もしょっちゅう祈りに行ってたわ」
その言葉を聞いて、フローラも「やはり……」と納得しかけた。
先程見せてもらった賢者の姿には、神聖さすら感じさせるものがあったので、もしかすると、かつては非常に信仰心の篤い方だったのかもしれない。
しかし、続くバニーの言葉で、その考えはあっさりと脇に追いやられてしまう。
「でもね、お祈りとおんなじくらいに重要だったのが、蘇生よ蘇生!」
「蘇生……で御座いますか?」
バニーは椅子に座り直すと、今度は順を追って説明するつもりなのか、フローラ達を見渡した。
「今の時代じゃ信じられないかもしんないけどもさ、昔は各教会で蘇生してもらえたり、毒や呪いを解いたりしてもらえてたのよ」
「……えっ?」
思わす声が出てしまったが、同じことを思っていたのは他の者も同様であった。
教会で、蘇生?
「私達の頃は、大抵の村や町に教会があってね。そこの神父さんやシスターさんは、皆、蘇生の呪文や呪いを解く呪文が使えたのよ」
その言葉に、再度驚くカール王国の者達。
バニーはそのまま言葉を続けていく。
「だから、この時代の人達に私が提案出来る事といえば、まずは僧侶を育てる事!それで、各村や町にその人達を振り分けていって、とにかく人死にを減らす!そこからじゃない?」
バニーが、これならどうだとばかりにフローラを見る。
いたって真面目に考えて助言してくれているのだろう。だが重要なのは、死者を生き返らせる程の呪文を扱える僧侶など、今の時代には殆どいないという事である。
その様な者を一人育てるだけでも、どれほどの歳月が必要なのか。ましてや、それを各地の村や町に配置出来る人数となると、簡単に「分かりました」とは答えられなかった。
「蘇生の呪文を扱える者を、それ程大勢育てるとなりますと……」
フローラが言い淀むと、バニーはそれもそうかと頷き返す。
「大体、私達の時なんて国からの支援なんて殆ど無かったのよ?」
「そうなのですか?」
それは初耳だった。
大魔王を倒した勇者達であれば、当然、国からも十分な援助を受けていたものだと考えていたのだが、バニーはその想像を否定する様に手を振る。
「私は勇者と幼馴染だったから最初から知ってるけど、私達が住んでたアリアハンって国の王様に呼ばれて行ったら、旅立ちの時に貰えたお金は50ゴールドよ?」
フローラが返事をする前に、バニーは指を折りながら、渡された装備なども挙げていった。
「装備品も『たびびとのふく』とか『こんぼう』とか『ひのきのぼう』しかくれなかったし、そこらの兵士よりも貰えてなかった気がするわ」
「それは……」
古代の賢者から明かされる王国の実態に、一同は言葉も出ない。大変失礼な物言いになるが、その国の王は、本気で世界を救わせるつもりがあったのだろうか。
ところが、バニーの不満はそこで終わらなかった。
「それにね、あの王様の本当~にムカつくところが、私達が全滅した時の扱いなのよ」
全滅した時という事は、仲間の中に、生き残って遺体を運べる者もいない筈である。それでも目の前の彼女が生きて話している以上、何かがあったのだろう。
「どういう仕組みだったのか知らないけど、全滅すると、誰かが私達の遺体を国まで運んでくれてたみたいなの。国のそういう、裏で動いてる人達が回収してくれてたんじゃないかしら」
そこは、本人にも確かめようがなかったらしい。
「でも、そうやって国まで戻されても、生き返らせてもらえるのは勇者だけよ?私達は棺桶に入れられたまま、勇者に引きずられて教会まで連れて行ってもらって……それで蘇生費用はこっち持ち」
死んでも終わりではない。
何も言えず、ただ昔の話を聞いているだけなのに、皆が呆然となっている。
『死ぬまで戦って、死んだら教会で蘇生してもらって、また戦いに行く』
その言葉が比喩でも冗談でもなかった事を、フローラ達はここにきて、改めて実感させられていた。
しかも、一人だけ蘇らされた勇者が、死んだ仲間達を引き連れて歩いていたというのである。
その光景を想像しようとしていたフローラに、バニーが不意に問い掛ける。
「そういえば、カール王国にも、時代を代表する勇者になってくれそうな人達がいるって言ってたわよね。その人達には、遺体を回収してくれる人とかは付けてないの?」
「……いえ。その様な役目の者は、付けておりませんが……」
答えながらも、フローラの胸中は複雑だった。
アバン達の旅を助けたいとは思っている。しかし、遺体を回収する者を付けるなど、これまで一度も考えた事はなかったのだから。
バニーは腕を組み、少し考えてから続ける。
「それなら、そういう部隊も付けておいた方がいいんじゃない?一人でも生き残れば、死んだ仲間を連れ帰って蘇生出来るかもしれないけど、万が一全員やられちゃったら、流石にちょっと困るでしょ?」
そもそも、死亡を前提として考えていないのだが……いや、バニーの時代では、国が満足のいく支援をしてくれなかったと聞くので、そういうところにも現代との違いがあったのかもしれない。
「それでさ、話を戻すけど。そうやって全滅した後に勇者だけ生き返らせて、王様が何て言ったと思う?」
「えっ、その…『よく頑張ったな』とかでしょうか?」
それを聞いたバニーは、笑いながら胸の前で両腕を交差して、大きなバツを作った。
「私達もさ、まぁ何度も何度も全滅しちゃった事があってね。それで、勇者がお酒によって愚痴を言ってた時に聞いたんだけど……『おぉ勇者よ、死んでしまうとは情けない』よ?ありえないでしょ!」
それは確かにありえない。
一国の王ともあろう者が、世界を救う為に命を懸けて戦い、それで命を落とした勇者に向かって言う言葉ではないだろう。
聞かされたフローラも、王族という立場から、思わず居た堪れなくなってしまう。
「そりゃ~私達もキレるってもんよ。実際私も、何度王様をボコボコにしてやろうって思った事か……」
「そ、それは、思っただけなのですよね?」
話を聞いていた重臣が、慌てて確かめる。
バニーは軽く頷いたものの、その後に続いた言葉は、彼を安心させるには少し物騒なものだった。
「勿論よ。流石に王様を殴ったらマズイからね。でも、今だったら我慢出来るかは分からないわねぇ。こっちは命懸けで戦ってたのに、何が情けないだって、一発くらいは殴っちゃうかも」
重臣は、それ以上尋ねるのをやめた。
既に遥か昔の話なのだから、今ここで止めようとしても仕方がない。それに、あの炎を放ったバニーが王を殴るところなど、あまり想像したくもなかった。
「それにさ、あの王様、私達とは一言も喋らないのよねぇ……」
今度はフローラが、思わず問い返す。
「勇者と一緒に旅をされている方々にも、労いのお言葉などはなかったのですか?」
バニーは笑いながら、顔の前で片手をひらひらと振った。
「ないない。労いの言葉なんて、正直一言も言われた事ないんじゃないかなぁ」
フローラが何か言おうとしたところで、もっとも、バニーは『自分達にも都合のいい面はあったからまぁいいけど』と付け加える。
「まぁ、私達もさ、面倒な話を勇者に押し付ける事が出来て、それはそれは楽って思ってたのはあるのよ?でも、国としてそれはないんじゃないのかなぁって思う事も、やっぱりしばしばあったわねぇ」
と、過去を思い返しながら笑いのネタにしているつもりのバニー。
しかし、それを聞いているフローラ達は無言である。
正直、想像以上だった。
大魔王を倒した古代の勇者達。その立派な肩書きからは、とても想像出来ない旅の実情ばかりが出てきてしまった。
僅かな支度金で送り出され、命を落とせば教会で蘇らせられ、全滅したら回収され、王からは労われるどころか、情けないとまで言われていたという。
よく年老いた者達が「自分の若い頃は大変だった」と話すのを聞いた事はあるが、それの更に凄い版を聞かされた気分である。
バニーはそんな皆の顔を見渡して、苦笑しながら締めくくる。
「まぁ、私達の頃はそんなんだったのよねぇ。今の人達には受け付けてもらえない気もするけど、これが何か参考になったら嬉しいわね」
それに対して、フローラ達も何とか笑いながら返す。
確かに、今聞いた話を全て実現出来るのであれば、魔王軍との戦いも大きく変わるだろう。
実際に昔は、何度敗れても生き返り、経験を積んで、また立ち向かう。それを繰り返した末に、大魔王を倒したというのだから。
だが、蘇生呪文を使える僧侶が今の時代に殆どいない今、戦ってくれている者達に「死んだら蘇生してあげるから、死ぬまで戦ってきなさい」と伝える訳にもいかない。
アバン達に役立つ助言を持ち帰るつもりだったフローラは、満足そうなバニーの笑顔を前にして、心の中だけで結論を出した。
(……この話を、今の時代で広めるのは無理ね)
こちらの異世界版に関しましては、事情により感想の欄を廃止させて頂いておりますが、それでも感じた事をお話しして頂ける場合は、本家版の感想欄にお願い出来ますと幸いです。
それでは、今後とも宜しくお願いします。