□王都アルテア・魔術師ギルド 【
「……それじゃあ<フォスタ森林>に現れた逸話級<
「うん、お兄ちゃんは死んじゃったけど<マスター>だから3日で戻って来るし」
「MVP特典は死んだ兄様が持って行ったので証拠になる特典武具は出せませんけど」
あれから私達は現実で少し休んだ後に再びデンドロにログイン、次のログイン場所として設定していた王都のセーブポイントに出るとアットさんとアオイさんが待っていたのでクエスト達成含めた確認の為に一旦魔術師ギルドに向かった。
そこでは先にティアンの冒険者達を連れて王都に戻っていたアミタリアさんもいて負傷したティアンは既に教会に送っておいたとの事なので、今回の依頼人であるメリア・ローランさんにクエストの報告ついでに【ドランクリーチ】云々の事についても話す事になった。
「《真偽判定》でも嘘はないみたいねぇ。しかし<UBM>の討伐を殆ど下級職か成り立ての上級職でやってのけるのは流石は<マスター>って事なのかしら?」
「<マスター>が凄いと言うよりレント達ウィステリア三兄妹が凄すぎたのが勝因だと思う。今回の功績度とかあれば3人がダントツでしょ」
「確かに貢献度がパーセンテージなら90%以上が3人で占められるだろうな。俺はほぼ何も出来なかったし」
「アタシは<UBM>戦に参加していないから何とも言えないけど、クエスト達成もこの3人は<マスター>の中でも頭抜けてるとは思ったねぇ」
アオイさんとアットさんとアミタリアさんがそう言うけどアミタリアさんが居なければティアンを王都まで連れて行けなかったし、アオイさんとアットさんの援護がなければ【ドランクリーチ】を削りきれなかったと思うけどね。
「まあとりあえず薬草集めクエスト自体は達成してくれたから報酬は渡しておくわ。それと<UBM>の討伐に関しても冒険者ギルドの方に伝えておいた方がいいかもね。ギルドの依頼を受けた冒険者達から<UBM>の情報が渡って、今頃ウチの姉辺りが対策取ろうとしてるだろうし」
「そうだね、まあアイラさんに報告に行くぐらいはいいかな。みんなはどうする?」
聞いてみたらミュウちゃんは頷き、他の3人も『まあそのぐらいなら』と言ってくれたので私達は報酬を貰った後に冒険者ギルドに行ってみると、王都近辺に<UBM>が現れたという情報が出て騎士団の人まで事情を聞きに来ているちょっとした騒ぎになってた。
それで【ドランクリーチ】は討伐した事を丁度色々と指示を出していたアイラさんに説明すると凄く驚かれたが、便利スキル《真偽判定》のお陰で私達の言葉が真実だと証明されたので一先ず<UBM>の脅威は去ったと納得してくれた。
その後はアイラさんや助けた冒険者ティアンの人にお礼を言われたり騎士団の人に少し話を聞かれて、一通りの後始末が終わってから今回のクエストの報酬とドロップアイテムを分配、デスペナ中のお兄ちゃんの分は私が預かっておく事にして色々あった野良パーティーは解散となったのだった。
◇◇◇
□王都アルテア・冒険者ギルド 【
「これが【ドランクリーチ】を倒した時に手に入れた特典武具ですね」
「ありがとうございますレントさん。既にミカさん達から話は聞いていたんですが、<UBM>の討伐はそれなりに大事なので念の為に確認したかったので。装備自体の詳しい情報は見ていませんし、情報料として報酬も渡しておきます」
現実で24時間のログイン制限が開けた後、俺は再びデンドロにログインしてミカに『アイラさんが【ドランクリーチ】の事について話したいんだって。討伐の証拠である特典武具の証明が欲しいんだってさ』と言われたので冒険者ギルドにやって来ていた。
例の【ドランクリーチ】は討伐した事自体は伝えていたがその証拠である特典武具はデスペナになった俺が持っていってしまったからな。それを確認させて欲しい報酬も出すのでってクエストを提示されて特典武具を見せた訳だ。
「手間を掛けてしまって申し訳ありません。……最近王都まで周辺で<UBM>と思われるモンスターの目撃情報が幾つかありまして、それらについて冒険者ギルドや騎士団の方で色々と情報を集めているんです」
「<UBM>が他にも?」
「ええ、レントさんが討伐した【ドランクリーチ】以外には<ノズ森林>で巨大な狼の様な<UBM>の目撃情報がありましたね。<マスター>増加から王都も色々と立て込んでいると言うか……」
「まあクエスト扱いで特典武具を見せるだけで報酬も貰えたので俺としては問題ないですけど」
俺はクエストを達成すれば《
「それでも本当にありがとうございます。貴方達が【ドランクリーチ】を倒して冒険者を救ってくれたお陰でギルドの依頼を受けた冒険者が助かりました」
「どういたしまして。<マスター>的にはユニークボス倒すついでに助けただけですけどね」
一応出会ったティアンが出来るだけ死なない様には動いたけどな。今回の薬草クエストに“ミカが連れてけと言ってきた”時点で何か事件が起きる公算は高かったし、助けられない人が出ればウチの2人は凹むだろうから上手く行って良かった。
それでアイラさんからの情報提供依頼を達成した俺は多少の金銭を報酬として貰って冒険者ギルドを出ると、依頼が終わるまで待っていた妹達が誰かと話していた。あれは確か<フォスタ森林>で助けたティアンの冒険者だな。
「あ、お兄ちゃん。この人達がお礼を言いたいんだって」
「お久しぶりです、死んで別の世界に飛ばされていたと聞いていましたが戻って来られたと聞いて挨拶を。……我々を助けてくれて、何よりあの【ドランクリーチ】を倒して仲間の仇を討ってくれてありがとうございました」
「……礼は受け取ります」
そう言ってティアンの冒険者は頭を下げて来たので礼は受け取るが余り気にしなくて良いとオブラートに包んで話しておく。偶然遭遇したボスを倒しただけだしな。
それに犠牲が出た事でミカとミュウちゃんがちょっと暗い感じになったし、相手側も無理に俺達に時間を取らせるのは悪いと思ったのか礼をしてから直ぐに立ち去ってくれた。
「……まあ、俺達が関わらなかった所で起きた悲劇はどうしようもない。人間がその辺りを気にし過ぎると間違いなく碌な末路を迎えないぞ、絶対メンタルがおかしくなる」
「そのぐらいは分かってるよー。私達は全知全能ではないし、救えなかった人より救えた事実を見るべきだって事ぐらいは」
「兄様が散々言ってましたからね」
なまじ才能があり過ぎると何かあった時に『もっと自分に何か出来たんじゃないか』って思ってしまうものだからな。俺も色々とジャンルが違う事件に巻き込まれて所詮人間に出来る事は限られてると知る前は割り切れずに悩む事もあったし。
とりあえず少しお腹が空いたので一先ず表通りから少し離れた静かな喫茶店に向かう。王都を巡っている時にミカが見つけたんだがコーヒーと料理も美味しいし、余り人がいない隠れた名店なので色々話すにも便利な良い店だ。
「モグモグ、やっぱりここのサンドイッチは美味しいね。そう言えばお兄ちゃんの特典武具はどんな効果だったの?」
「そのズボンの効果は詳しく聞いてませんでしたね」
「デスペナ中は効果を確認出来なかったからな。装備スキルは効果を見ただけで実際に使ってないが」
2人が言う特典武具【蛭紋皮袴 ドランクリーチ】は下半身装備枠を使う濃い茶色の革製ズボンで赤いヒルの様な紋様が三本、白色の同じかたちの紋様がもう3本入っており、少し履いてみたが革製ながら動きを阻害しない程度には柔軟性がある質のいいズボンだ。
まあ特典武具なのでメインは履き心地ではなく装備補正と装備スキルの方であり、ステータスの説明文を見ただけでもこれまで使っていた装備品とは比べ物にならない性能をしていると分かる。
【蛭紋皮袴 ドランクリーチ】
<
血を啜り自在に操る吸血蛭の概念を具現化した逸品。
持ち主の生命力・技力を増大させると共に、血液を媒介にして強化と再生を齎す。
※譲渡売却不可アイテム・装備レベル制限なし
・装備補正
HP+[着用者の合計レベル]×10
SP+[着用者の合計レベル]×10
防御力+50
・装備スキル
《血戦覚醒》
「まず装備補正によるステータス補正が高い、合計レベルの10倍の数値HPとSPが増える装備なんて俺のレベルで装備出来る品で見た事ないし。この装備スキル《血戦覚醒》も強力な効果だ」
「どんな効果なの?」
「24時間に一つ、最大六つまで貯められるストックを一つ消費して、5分間装着者のSTR・AGI・ENDを2000上昇させる効果、及びHPを秒間1%継続回復する効果と【出血】した血液によって傷痍系状態異常を回復させる効果があるらしい。事前ストックが必要だから乱用は出来ないがステータス上昇だけでも強力だな」
六日間でストックは最大になって連続使用すれば最大30分は効果を継続出来る仕様か。色々と検証は必要そうだがステータスの固定値上昇だけでも亜竜級まで物理ステータスを上げられるのはデカい。
ストック制だから使える時間は限られているが消費するのはストックだけでMP・SPは使わないのも良いな。丁度ズボンは良いのが見つからなくてライオットシリーズの下半身装備を使い回していたから、装備の更新としては一気に性能が上がったと言える。
「いいなー特典武具、こうして言われると私も欲しい」
「悪いなミカ、この特典武具譲渡不可能なんだ。やっぱり自分の力と才能で勝ち取ったモノで他人に優越するのは気分がいいな」
「兄様言い方」
「別に構わないだろう。少なくとも節度を守ってさえいれば自分の才能や能力を活かして活躍し、他人と比べて優越感に浸って楽しむのはそこまで悪い事ではないよ。スポーツでの競争や対戦ゲームとかで技術を磨いて勝つのは楽しいのと同じで、自分の能力が他人に優越すると楽しく思うのは人としておかしい事ではない」
言い方を少し露悪的にしたが“自分のやりたい事探し”の為にデンドロをしている俺としては、自分の才覚とそれを活かせる【ルー】によって自分が活躍して事件を解決出来るこの
よく巻き込まれるジャンルが違うトラブルはどう頑張っても俺は添え物か脇役にしかなれず、別の主人公が活躍する脇で必死に逃げ回るか生き残るかしか出来ないから達成感がまるでないしな。やっぱ戦うならスーパーパワーがあった方が良いって。
「自分の才能を活かして活躍して達成感を得るってのは楽しい事ではある。俺自身が求める“自分のやりたい事”も自分の才能や技術が認められなかったのが根幹にある。俺も自分のやりたい事はまだはっきりとはしてないが、この<Infinite Dendrogram>はかなり満喫出来ているしやりたい事に掠っている感じだし」
「うーん、まあ私もデンドロは楽しんでるけど、そこまで割り切れないかな」
「そうですね、デンドロは楽しくはあるんですが思う所もあると言うか……」
まあ俺はこの2人と違って自分の才能に嫌悪感は抱いていないからな。自分の才能が足りない事に不満はあるが、自分の才能を振るう事に関しては素直に楽しめるタイプだ。
その不満も単に“才能を評価されなかった“や“ジャンル違う案件では自分の才能が大して活かせなかった”とかだから、妹達程に逸脱した自分の才能に対するトラウマを抱えてはいないしな。
……ただ、それでも己の才に悩む先達として妹達には出来るだけアドバイスをしておくが。
「そうやって思い悩む事は決して悪い事じゃないし、時に自分の心に向き合って立ち止まって迷い悩む事も必要な時はある。自分の心に向き合うのは物凄く大変な事で、そういった問題にはどうしても時間が必要だからじっくり考えていつか答えを出せれば良いんだ。……そうやって悩んでいるのも2人が人として当たり前の善良さを持っているからだしな。自分の才能や能力を振り翳して他人に迷惑掛けても気にせず楽しんで目的に向かって突っ走る様なクズならそもそも迷う事すらしないだろうし」
「やけに具体的な極論だね」
「そういう連中と遭遇した事が何度かね。自分の夢や目標に向けて迷わず突き進むと言うのは一見良さそうに見えるけど、他人や社会への配慮がなければ他者を轢殺して突き進む事になりかねんからな。そういう物語の主人公が好ましく見えるのは最低限の善性と社会性があるからだから」
俺の
兎に角、思い悩む事は決して『悪』ではない、むしろ悩んで考えて時には立ち止まる事だって人間には必要だ。まあ悩みすぎて迷走する事もあるので迷い過ぎには注意が必要だけどな。
「自分の心の問題は他人がどうこう言っても納得出来ないモノだからな、自分に向き合うとか覚悟を決めるとか言うのは簡単だが行うのは難しい。俺の場合は必要なのはじっくり考える時間と他者との触れ合いなどの経験だったな。幸い
「まあデンドロはゲームとして見ても楽しいし、現実と違って悲劇に自分の力で立ち向かってる感があるからやり甲斐はあるかな」
「まだ思う所はありますが兄様姉様達との戦いも教会での手伝いも楽しくはありますから」
ちなみに俺の経験は知人が起こした騒動とかジャンル違いな事件とかに巻き込まれて、自分の才能ですら及ばないモノがこの世界にあると分からされてとんがっていた部分がグラインダーで削られた様に丸くなったと言うか、正直言って悪い例だから妹達がそんな事にならない様に見守らないとな。
「まあ他人から言われた事が自分と向き合う一助になる事もあるから言っておこう。……俺がトラブルに巻き込まれた時のミカの“直感”による助言は本当に助かっている、実際何度も命を救われたから本当に感謝してる、ありがとう。……そしてミュウちゃん、君が友達を救おうとして力を振るった事を俺は間違っていたとは思わん。その結果君にとっては望まない結果になったとしても、君の力と善意が友達を救ったのは間違いなく良い事だと思っている」
「……えーっと、改まって言われるとちょっと恥ずかしいね」
「……ありがとうございます、兄様」
少々小っ恥ずかしい事を言った自覚はあるが人の心を持つが故に規格外な才能に悩む妹達に俺が出来るのはこのぐらいだからな。これからも自分のやりたい事を探しながら妹達が答えを見つけられる様に手助けはするつもりだが。
そうして俺はこの<Infinite Dendrogram>が謳う“貴方だけの可能性”が2人の道行に良い結果を齎してくれる事を期待し、同時に悪意がこの2人に向けられるなら全力を持って排除する決意をこっそり固めつつ今後もこの
◯【蛭紋皮袴 ドランクリーチ】
(@_@)<6匹の蛭の紋柄は《血戦覚醒》のストック数を表しておりストックが空いていれば白、ストックが溜まれば赤色になり使えば白くなる
(@_@)<スキル《血戦覚醒》は貯めるのに時間が掛かり効果時間が短い割にステータスの上昇度合いが微妙に見えるが実は再生能力重視のスキル
(@_@)<特に傷痍系状態異常の回復能力が高く流れた血で傷を塞いで治すので多少の【出血】は即時回復、時間を掛ければ部位欠損も治せる
(@_@)<【ドランクリーチ】を倒す時に腕部を欠損させた兄にアジャストして蓄積分による回復と強化のスキルが統合されて出来た装備スキル
(@_@)<【ドランクリーチ】の潜在能力から逸話級にしてはスキルがちょっと強め
◯兄
(@_@)<超シスコン
(@_@)<自分がやりたい事、夢や目標と言える様な事を探しつつ妹達の面倒も見る
(@_@)<デンドロは今までのトラブルと違って自分の才能で活躍出来る環境なのでやり甲斐を感じている
(@_@)<尚、知人達からは『常識人ぶってるけどいざとなったらアイツが一番ヤバいよな』と思われてる模様
◯妹・末妹
(@_@)<持ち得た才覚に心がついて来れていない天災児達
(@_@)<ちなみにミメーシスは兄妹の話を邪魔しない様に末妹と同じサンドイッチを黙って食べてた