□■<フォスタ森林>
『KYUSYAAAAA!!!』
「AGIバフは俺が掛ける。《エンチャント・オール・アジリティ》」
「助かります、《オーバーライト・アビリティ》STR・AGI・END」
『了解! STR5238、AGI3577、END2667! 上書き開始!』
身に纏った血の義体《血戦躰》により得た四肢を動かし野獣の如く迫る【凝血蛭子 ドランクリーチ】に対し、まずレントがサブジョブの【
更に【ドランクリーチ】の強化されたステータスをミュウが自身に上書きし、バフを含めて上回ったAGIによって自身目掛けて振るわれた爪を回避してカウンターの拳を血に覆われた【ドランクリーチ】の本体に叩き込む。
ミュウは血でできた手足に打撃を打っても意味はないだろうと考えて本体部を狙って、かつ今のSTRであれば普通に殴るだけでも十分なダメージになると考えていたが、その拳は【ドランクリーチ】が纏っていた血の身体に当たるとまるで攻撃の威力を吸収でもされた様に止まってしまう。
『効かない!?』
「これはスライムを殴った時と同じ感触、物理攻撃無効ですか!」
『KYASYAAA!!!』
【ドランクリーチ】の血の義体《血戦躰》は血で出来た義体を纏い、基本はヒル故に低い自身の物理ステータスを強化しつつ手足による攻撃を可能にするスキルなのだが、義体は血という液体でもあるのでスライムの《液状生命体》に類似した物理攻撃無効の効果も有する。
冒険者ティアン達も魔法職が物理型の【
それでもミュウは反撃の噛みつきからの吸血攻撃を躱して離脱、追撃に放たれた血が液体である特性を活かした腕部分を変形・伸長させての爪撃も鋭い爪の側面を叩いて捌く事で凌いで見せる。
「《オーバーライト・インパクト》も物理攻撃力を強化するだけなので普通に使っても意味ないですね。本体部分は口以外全身血の身体で覆われてますし相性が悪い」
「じゃあ私の出番かな! お兄ちゃん援護よろしく!」
『KYASYAAAAAA!!!』
故にミュウの代わりに【ドランクリーチ】に迫るのは武器を【グレートアックス】に持ち替えたミカ、彼女の《
だが、それをむざむざと見るだけな【ドランクリーチ】ではなく再び腕部を伸長させて攻撃しようとするが、そこに接近していたレントの《ヒート・ジャベリン》による援護射撃が放たれたのをもう片方の手で防ぐ。
上級魔法の火力で幾らか《血戦躰》が蒸発するもその程度なら蓄積していた血液で補充すれば元通りであり、この程度の火力なら突破は出来ない……と【ドランクリーチ】が思った瞬間、炎の槍を目隠しにして死角に投擲された【ジェム】が血の身体に触れて電撃を発生させた。
『KYUGA……!?』
「その肉体は血液で出来ている以上“通電”もするみたいだな。流石に【麻痺】にはならんが一瞬動きが止まると」
「その隙貰ったぁ!」
電撃によって動きが止まった一瞬の間に懐に潜り込んだミカが大斧を振り下ろし、防御に回して血の腕の物理無効を貫通して破壊しながら【ドランクリーチ】本体を深く斬り裂き大量の血を噴出させた。
だが、ダメージを受けた【ドランクリーチ】は奇声を上げながらも蓄積した血液を消費して肉体を再生させるスキル《凝血再生》により【出血】を止めて、同時に破壊された《血戦躰》も血を消費して修復しつつ腕部を伸ばしてミカに反撃する。
『KYASYAAA!!!』
「うおっと! ダメージを与えても直ぐに回復されちゃうね。ENDは高くないけどHPが凄い多くて回復してる気がする!」
「ENDは物理無効なら低くても問題ないですからね。……露骨に中距離戦を主体にしてきましたか」
その反撃は“直感”で攻撃のタイミングを先読みしたミカに回避されたが【ドランクリーチ】はそのまま腕を伸ばして中距離からミカを攻撃し続け、更に臀部から線端に鋭い棘を持つ尻尾を生やしてそちらも伸長させる事で手数を増やして攻撃し続ける。
それも全て起動を先読みして回避していくミカだが単純なステータス、特にAGIの差もあって再び近付く事は難しく、加えて増えた手数で同じく接近して来たミュウにも物理無効を全面に押し出して口部による必殺の吸血を含めた近接攻撃を行う。
同時に脚部を伸長させてAGI以上の速度を出しながら移動する事によって、自分に攻撃が通るミカから離れつつ腕を伸ばしての遠距離攻撃で彼女を近付けない様に立ち回っている。
「……成る程、あの血の身体は肉体の一部と言うよりは“装備品”に近いのか。だからミュウちゃんがコピーしたENDより血の身体を破壊された本体は脆くミカの攻撃力であれだけのダメージになった。血の身体が物理攻撃無効の防御系スキルで作られてるから、2000程度のENDがあるにも関わらずミカの【ギガース】であっさり破壊出来た感じか? ……まだデンドロ歴が短いから読みが浅いな」
その光景を【ドランクリーチ】の攻撃に対応出来る位置まで下がったレントは見ながら敵の能力について考察しており、驚くべき事にその考察は大凡《血戦躰》の能力を言い当てていた。
実際《血戦躰》はHP・SP以外は亜竜級程度のステータスしかない【ドランクリーチ】の物理ステータスを引き上げる効果もあるが、メインは“物理無効能力と変形能力を持つ血の身体となる鎧を身に纏う”事であり、バフ効果は《血戦躰》を身に纏う事で発揮される効果故に何らかの方法でスキルを破壊されるとバフも一時的に機能しなくなるのだ。
「まあ肉体の一部でないからこそ再生も簡単で一部を破壊されても直ぐ再生するみたいだが。本体も血を使って傷を塞いだ上で回復させてるみたいだから、物理無効を含めて持久戦で相手を削りつつ吸血で仕留めるスタイル、いや“吸血”がヤツの行動パターンの中心だな。ミカも前戦った吸血能力持ちのモンスターは本能的に吸血を狙う立ち回りをすると言ってたし、さっきからミュウちゃんには積極的に近付いて吸血を仕掛けようとしてる」
「……よくこの短時間でそこまで分析出来るな」
「あっちの動きが早すぎて離れた場所からでも動きを追う事が精一杯なんだけど」
「俺はサブで【
そんなレントの考察を聞いていたアットとアオイはその観察力に驚いた様な視線を向けるが、元より本人の凡ゆる分野への才覚とと数多の才人を見られる環境が合わさって“人の才能を初見で見抜く”観察力を持っている彼にとってはそこまで難しい事ではない。
更にリアルでの“ジャンル違い”練中との接触・交戦経験も合わせれば、まだデンドロがリリースしたばかりで<マスター>としては初心者な現状でも奇々怪界な<
「ただ現状だとと先にこっちが息切れして負けるな」
「え、あの二人は【ドランクリーチ】相手に互角に戦ってる様に見えるけど」
「ミュウちゃんのスキルはMP消費が激しくてあっちは幾らでも再生可能だからな。コストはあるんだろうが多分吸血した血を使ってる可能性が高そうだ。あのティアン達もこの森のモンスターを狩り尽くしたと言ってたし、さっき本体の傷を治す時にも血を使って傷を塞いでたからな。能力は吸血と吸った血による肉体生成及び再生とかか?」
「最悪一つのフィールドのモンスター全てから吸った血を溜め込んでいると。どれだけあの戦闘中に消費しているのかは分からんが、持久戦なら先に力尽きるのはこっちか」
「まだ下級職が大半のこっちがユニークボスより長持ちするとは考え難いよね」
その上でこのままでは勝ちの目がないとレントは今まで得た情報から判断し、その考察からアットとアオイも納得した表情で【ドランクリーチ】相手に一進一退の攻防を繰り広げるミカとミュウを見た。
彼女達は事前にレントから渡されていた単体対象バフ魔法が込められた【ジェム】も使ってステータス差を埋めているが、それでも物理無効かつ変幻自在で破壊しても幾らでも再生する《血戦躰》に阻まれて本体に攻撃を通す事が出来ていない。
「とりあえずあの【ドランクリーチ】を倒すには血の身体を突破か破壊して本体に再生不可能なレベルのダメージを与えないといけないんだが」
「あ、アイツの口部分は血の身体に覆われてないからそこを攻めればいいんじゃない?」
「悪くない案だがミュウちゃんがあそこを狙った攻撃をしてないし、あの部分に下手に仕掛けると吸血でカウンターを喰らいそうだ。狙うなら血を吸われない武器か魔法だがアイツ頭もいいからそこが弱点だと分かって立ち回ってる。俺らの喋りに反応してないから人語は理解出来ん様だが、ミカを遠ざけてる辺り相手の能力を把握して対応するぐらいの知性はあるな」
「そもそも口部分が小さいから狙って当てるのも難しいぞ。速度に差があり過ぎる」
単に本能のまま暴れる訳ではなく縮小化からの奇襲や獲物の能力を見ながら立ち回る知恵があるのも【ドランクリーチ】の脅威度を上げているとレントは考えたが、同時にその行動パターンから一種の“クセ”の様なモノも彼の目には見え始めていた。
「アイツを倒す手段となると上手く動きを誘導して報酬で貰った上級魔法の【ジェム】と“あの杖”も使えばやり方次第ではってぐらいか。2人は何か火力出せる手札はないか?」
「私の<エンブリオ>はエネルギーを蓄積するから、今まで蓄積したのを全部使って魔法使えばワンチャンあればいいなぁって感じ。でもあれだけ動かれると当てられないかも」
「俺の<エンブリオ>【ティエンレンウーシュァイ】は状態異常対策だから火力は出せんぞ。覚えている魔法も下級のものだけだ」
「分かった、まずはアオイの最大火力をぶつける手で行くか。俺の奥の手はその後、二段構えで行こう」
そうしてレントは相手の能力と味方の手札から戦術を考え、その案にアットとアオイも同意した事で彼等は準備をしながらミカとミュウが押さえ込んでいる【ドランクリーチ】に仕掛けるのだった。
◇◆
『KYUSYAAAA!!!』
「だー! 近寄らせてくれない!」
「私の攻撃が効かないと分かってからこっちを態と近付けて露骨に姉様の方だけを警戒し始めましたね」
ミカとミュウが【ドランクリーチ】と戦い始めてから約2分、相手の物理無効を抜いてダメージを通せるミカは接近しようとしたがAGI差に加えて腕部や尾部を伸長させての攻撃に対応する為に足を止められて近付く事が出来ていなかった。
逆にステータスの上書きとバフによってAGIでは勝っているミュウは接近出来たが物理無効の鎧《血戦躰》相手にはどれだけ殴っても無意味であり、唯一《血戦躰》に覆われていない口部を狙うのは彼女自身の“戦いの才能”がそこを攻撃すれば死ぬと判断したので避けていた。
……実際【ドランクリーチ】の吸血スキル《血流収奪》は人間程度のサイズなら1秒に満たない時間で血を全て吸い尽くす事が出来て、仮に口部に素手で殴り掛かろうならそこに食いつかれて血を吸い出され敗北していただろう。
『KYASYASYASYAAAA!!!』
『《オーバーライト・インパクト》のストックは出来てるけど!』
「どれだけ攻撃力を上げても“物理無効”の理を突破出来る手段がなければ意味がありません。拳に属性攻撃を付加するか防御貫通のジョブスキルとか欲しいですね」
「だー! お兄ちゃんはまだなの!?」
「……呼んだか?《ブラック・シューター》!」
持ち前の“直感”を駆使して攻撃を凌いでいたミカがボヤいた丁度その時、接近したレントが放った黒色の弾丸が高速で【ドランクリーチ】へと迫り、それを払おうとした《血戦躰》を擦り抜けて本体にダメージを与えた。
彼が使ったのは【賢者】で覚える闇属性の弾丸を高速で発射する上級魔法、そして《血戦躰》は身体の中に流れる血ではなく“血という物質”であるが故に無生物を透過して生物のみを攻撃する闇属性魔法を防げなかったのだ。
「血は生物由来だから通るか通らないかは半々だったがな。……まずはアレの動きを封じる、近付け」
「オッケー!」
「了解なのです!」
『KYUSYAAAA!!!』
レントが来たのを見て『自分達の“兄”が【ドランクリーチ】を倒せる算段が付けた』と信頼をもって確信した2人はその指示通りに接近、それに対して【ドランクリーチ】はミカとレントに向けて両腕を伸長させて攻撃を行う。
それは自分を傷付けられる相手を優先的に狙うという判断から来る攻撃であり、ミカには先程と同じ様に接近を妨害する軌道で、そこまでAGIがないレントには急所を抉り確実に仕留める速度と威力の攻撃を放った。
「自分に攻撃を通せる相手を優先して攻める、読み通りだ」
『KYASYA!?』
それを読んでいたレントは伸長する爪の側面を剣で沿わせる様に受け流す事で攻撃を凌ぐ。確かにSTR・AGIでは大きく劣るが【ドランクリーチ】の攻撃パターンを把握した上で攻撃が来る方向とタイミングが読めれば一度ぐらい受け流すのは彼にとって難しくはない。
そして彼はただ攻撃を受け流すのではなくそれと同時に腕部分に【ジェムー《フロストブレス》】を押し付けながら起動、解放された冷気のブレスを放つ下級魔法が血という液体で出来た《血戦躰》を凍結させていく。
「液体である以上は凍結も有効か。まあ下級の魔法では少しの嫌がらせにしかならんだろうがな。……それで十分だ」
「はい、お陰で隙が出来ましたね」
『KYUSYAAA!?』
とは言え下級の魔法故に凍らせられたのは《血戦躰》の表面部分だけで【ドランクリーチ】は即座に凍結部分を排除、同時に血の腕を再構成しながらレントを攻撃するが冷気に巻き込まれない様に距離を取っていたレントには当たらず、その隙にミュウが懐まで潜り込んでいた。
それでも攻撃手段が物理しかないミュウならば脅威ではないと尾部を伸ばして攻撃しつつ吸血を狙う【ドランクリーチ】だったが、それがこれまで敢えて物理攻撃しかしなかったミュウの狙い通りだとは気付かなかった。
「物理攻撃しかしないと思い込んでいれば私を簡単に懐に入れてくれますよね。……所で【ジェム】って誰でも使えるんですよ?」
『KISI、KYASYAAAA!?』
尾による攻撃を躱したミュウは手に握り込んでいた【ジェムー《スタンボルト》】と【ジェムー《フロストブレス》】を投擲、狙い誤らず【ドランクリーチ】の身体に命中させたと同時にそれらの【ジェム】は起動して電撃を流し、その一部分を凍結させる。
物理攻撃が効かないスライム対策としてミュウも幾つかの【ジェム】を購入、或いはレントから貰う形で所持しており、自分が物理攻撃しか出来ないと思い込ませる為に敢えてこの段階まで温存していたのだ。
「そして凍結した部分に物理無効は働くのでしょうかね!」
『《オーバーライト・インパクト》!』
『KYUSYAAAAAAAAAAaaaaaa!!!』
思わぬ攻撃と電撃で一瞬だけ動きが止まった隙にミュウは懐に潜り込み、凍結した部分に向けて攻撃力を引き上げた拳を叩き込んで凍った《血戦躰》を粉砕しながらその内側にある【ドランクリーチ】の本体にまで拳を殴り抜いた。
この《血戦躰》の物理無効はスライムの《液状生命体》と同じく液体としての物理無効故に凍結すると機能しない、そしてスライムなら凍結して砕かれても再生可能かもしれないが《血戦躰》はあくまで本体を守る鎧、だからこそ凍った部分を突破して本体に攻撃を通す事は可能なのだ。
「このまま本体に「下がって!?」ッ!?」
『KYUKYUKYU……SYAAAAAAAAAA!!!』
そのまま《血戦躰》再生前に追撃を掛け様とするミュウだったが焦った様子のミカの声を聞いて即座に後退、その直後に身体から大量の血を沸き立たせた【ドランクリーチ】が血液操作能力を限界稼動、血液全てを鋭い棘状に変形させた上で超高速で伸長させ周囲一帯を貫いた。
これこそ【ドランクリーチ】の奥の手である《血戦躰》の応用技《血戦躰・総針》、奇襲吸血や直接戦闘でも倒しきれない程に敵の数が多い場合の全方位攻撃手段であり、通常の《血戦躰》程に自在な操作が出来ず多量の血液を消費する代わりに棘の伸長速度と攻撃力で上回る大技である。
「避けきれないので【救命のブローチ】受け!」
「《五体投地結界》!」
「チィッ!」
迫る無数の棘に対してまずミカは直感が赴くままに最も棘の密度が薄い場所に移動し、避けきれない物は敢えて急所で受けて【救命のブローチ】を発動させながら凌ぐ。
続いてミュウは距離が最も近かった事もあって避けきれないと即座に判断、地面に伏せて前方投影面積を縮小しつつ両手足を地に着いた状態で防御力を四倍化する【
そしてレントは一番距離が離れていた事もあって自分に一番速く迫ってくる棘を剣で受けつつ後ろに飛び、受け止めた衝撃を利用して距離を取る事でダメージを最小限に抑えつつ準備していた《グランド・ホールダー》を発動して【ドランクリーチ】に土の腕を絡めて動きを止めにかかる。
『KYUSYAAAA!?』
「手足が多少抉れたが魔法使用に問題はない。アット!」
「……ああ!《アイスバーン》!」
土の腕を壊そうとする【ドランクリーチ】だったが《血戦躰・総針》の反動で一時的に血液操作能力が低下していたので手間取り、その間に後方に下がりながら長時間の《詠唱》を重ねていたアットが地面を凍らせる氷属性魔法を使用。
使った魔法は地面を凍らせて相手の足を止める下級の氷属性魔法だが、<エンブリオ>の補正で高まったMPの大半を使う事で【ドランクリーチ】の足元から《血戦躰》の下半身部分までも凍結させていく。
これがレント達の策、【ドランクリーチ】の立ち回りから脅威度の低い相手に意識を余り割かないと読んでウィステリア三兄妹を囮にしつつ、これまでずっと後ろで見ていただけの2人が準備した魔法を撃ち込む戦術である。
「俺の全魔力を使った拘束魔法……まあ長くは持たんだろうが僅かに動きを鈍らせれば十分だろう」
「ええ、後は私がやるわ。《日天吸畜》全エネルギー解放!」
『KIKYUA!?』
そしてもう1人の<マスター>であるアオイも下級の火属性魔法の準備をしていたのだが、その手にはとても下級魔法とは思えない程のエネルギーが込められた火球が創り出されていた。
未だ下級職である彼女がこれだけのエネルギーを運用出来る理由はその<エンブリオ>【日天鎧皮 カルナ】、世にも珍しき
「喰らいなさい!《リトルフレア》!」
『KYASYAAAAAAAAAAAAAAaaaaaa──!!?』
そして彼女は今まで自分に火属性魔法を当てるなどして光熱エネルギー蓄積して来ており、その全てをコストにして強化された火属性魔法は
その炎を避ける事は多重の拘束で動きが鈍っていた【ドランクリーチ】には出来ず、慌てて離れたミカとミュウを熱波で焼く程の熱量で焼き尽くしていった。
「蓄積したエネルギーの全解放はやった事なかったけど思ったよりも威力が出たわね」
「だがこれ程の威力なら流石に……!」
「……いや、まだだ!」
『……KYASYA……AAA……!』
だが、それだけの炎を浴びせられても【ドランクリーチ】は全身に【火傷】を負いながらもまだ生きていた。【ドランクリーチ】は魔法が直撃する寸前に蓄積していた血液を大量に放出、それを《血戦躰》の応用によって全身を覆い被せて爆炎の熱量が本体まで届かない様に防御していたのだ。
火である以上は液体である血で守ればダメージは抑えられ、それでも負った【火傷】含めたダメージを【ドランクリーチ】は残った血液を使っての《凝血再生》で治療していく。
「嘘、まだ再生するの!? もう蓄積MPはないんだけど!」
「……2人は巻き込まれない様に下がっていろ。次は俺の切り札を使う」
『KYUSYAAAAAAAAA!!!』
既に吸血によって蓄積していた血液を相当量消費してしまっていた【ドランクリーチ】だったが、それでも《血戦躰》を即座に再構成して危険度が大幅に恒常したアットとアオイをまず抹殺して失った血を補充せんと突っ込んできた。
だが、“炎を防ぐ為に血が失われたなら補充の為にこっちを狙ってくる”と読んでいたレントは【ドランクリーチ】が動き出す前に走っており、それを見た【ドランクリーチ】はターゲットをレントに変えて腕を伸長させて爪を振り下ろす。
それに対してレントはこれまでの戦いで身体の伸長は出来ても手足の数や形状などは簡単には変化させられないと読んで、爪を受け流しつつ逆に懐に潜り込むが獲物がノコノコやって来た【ドランクリーチ】は大口を開けて剣を持っていない方の腕に噛み付いた。
『KYASYA!?』
「……ああ、懐に潜り込んだら吸血行動を優先する。ミカから聞いた話通りだから、対処法も真似させて貰う」
だが、それも読んでいたレントは逆に腕を【ドランクリーチ】の口部に突っ込み、そこから血を吸われる前にもう片方の手に持った剣で腕を斬り落とした。
奇しくもそれは以前にミカが血吸い虎相手に行った吸血に対するカウンターで、それを聞いていたレントは吸血系モンスターには有効な手段だとして同じ様に実行したが、彼は妹の用に義手ではないので腕を斬り落とすと言う荒技をやる羽目になったが。
そして嘗てのミカが相手の口に手を突っ込んだのは嫌がらせの為ではなく、当然レントも同じ様に突っ込んだ手には事前にクエスト報酬で貰った【ジェムー《ブリザード・カノン》】が握られて、腕を斬り落とした直後に【ドランクリーチ】の口内で炸裂した。
『KYASYAKISYASYASYAAAAAAAaaaaaa!!!』
「お前の力は液体を操るモノ、だから凍った血は操れずに溶かすのではなく切り捨てて再構成している。なら血液が全部凍り付けば血を操る事も出来なくなるんじゃないか?」
それは強力な冷気の砲撃によって射線上の物体を凍結させる氷属性魔法特化【
だが、それでも【ドランクリーチ】は今度は口内に血を溢れさせて冷気を防御、血液操作で血が凍結しないようにしながら嘔吐する様に【ジェム】と冷気を吐き出そうとした。
血を操る事に関して天性の才覚を持つ【ドランクリーチ】の応用力は高くここまでやっても尚的確に対処する……と、そんな【ドランクリーチ】の
「そしてここまでの会話話全て《詠唱》だ。《サクリファイス・マジック》《フロストブレス》!」
「KIISYAAAaaaa……!』
その杖は嘗てクエスト報酬で手に入れた【サクリファイス・ワンド】であり、その唯一の装備スキル《サクリファイス・マジック》を使い全HPをコストにし、更には《詠唱》を重ねて残り全MPまで注ぎ込んだ上で冷気を発射する氷属性魔法を使用した。
多重の強化によって下級氷属性魔法は上級魔法に匹敵する冷気となり、口内の【ジェム】を吐き出そうと足が止まっていた【ドランクリーチ】を直撃して《血戦躰》ごとその肉体を氷漬けにしていく。
その威力は至近距離に居たレントすらも凍らせる程であり、内側で炸裂した《ブリザード・カノン》と合わせて【ドランクリーチ】の肉体を血液の一雫まで完全に凍結させてしまった。
「お兄ちゃんまで凍っちゃったけど!? 仕方ないからお兄ちゃんの仇!」
「自爆戦術を躊躇なくやられると困りますよ兄様!《オーバーライト・インパクト》!」
そこに迫るのは武器をハンマーに持ち替えたミカとスキルで攻撃力を上げた拳を振りかぶるミュウであり、2人の攻撃は凍結した【ドランクリーチ】を容易く砕いて凍り付いた肉片へと変えてしまった。
その後も散々再生した相手なので大きめの肉片から徹底的に砕いていた彼女達だったが、直ぐにミュウのスキル《オーバーライト・アビリティ》が上書き対象の死によって解除された事で漸く【ドランクリーチ】が倒されたと判断した。
【<UBM>【凝血蛭子 ドランクリーチ】が討伐されました】
【MVPを選出します】
【【レント・ウィステリア】がMVPに選出されました】
【【レント・ウィステリア】にMVP特典【蛭紋皮袴 ドランクリーチ】を贈与します】
同時にそんなアナウンスが齎されたのでやはり<UBM>は普通のモンスターとは色々違うのだなとその場の<マスター>達は思いつつ、ただの採取クエストから始まったボスバトルが漸く終わった事に一息ついた。
ちなみにそのすぐ後にレントは蘇生可能時間が過ぎてデスペナルティになったので、蘇生手段がなかったから仕方ないとは言え微妙に気まずい雰囲気になったもののとりあえず王都に帰還しようという話に纏ったのだった、
◇◇◇
□地球・日本 加藤蓮
「……ふむ、デスペナするとこうなるのか。ちゃんとリアルには戻って来れるし、以降24時間はログイン出来ないと」
ベッドから起き上がった俺は初めてのデスペナと言う事もあって念入りに身体の調子を確認してみるが特に何かある訳でもなかった。まあデンドロが発売されてもう一週間以上経っているんだから、デスペナで何か問題があれば話題になるだろうが。
あの【サクリファイス・ワンド】の効果でHPゼロになった上で氷漬けだから蘇生可能時間が残らずデスペナだったんで、【ドランクリーチ】を凍らせてからどうなったまでは分からんが。
「昔暴走したスライム型の実験生物を液体窒素で凍らせた事を思い出すな。まあデンドロだと魔法が使えて死んでも問題ないから対処はあっちのが楽だったか。あそこまでやれば美希と祐美ちゃんならどうとでもするだろうし。……丸一日ログイン出来ん訳だから、今のうちに大学の課題と家事を済ませておくか」
最近割とデンドロ漬けだったから少し他のタスクが溜まってるな。一応リアルの生活に影響が出ない範囲でデンドロをやってるから本当に少しだが、とりあえず家の掃除でも先にやってしまうか。
「……お兄ちゃん、とりあえず勝ったよー」
「兄様はデスペナでしたが大丈夫ですか?」
「ああ、お帰り美希と祐美ちゃん、無事に勝てた様でよかった」
そうして暫く居間の掃除をしていると美希と祐美ちゃんが起きて来たので、とりあえずお茶を出してからデンドロでのその後を聞いてみると、どうやらあの後凍った【ドランクリーチ】を2人が叩き壊して肉片を潰していったら討伐出来たらしい。
それから残ったアット達と相談して疲れたので一旦ログアウトし、一服してから次のログイン時に王都のセーブポイントを設定したする事でファストトラベル的に帰還して魔術師ギルドに戻るのだそうだ
「<UBM>の討伐アナウンスもあったので確実にやったと思うよ。実は生きてましたって展開もなさそう」
「それとMVPは兄様が選ばれたみたいです。特定武具を贈与すると言うアナウンスもありました」
「やったねお兄ちゃん、ネトゲチートものお約束のユニークアイテムだよ」
「チート系はゲームバランスぶっ壊れるからあんまり好きじゃないんだが。まあデンドロにゲームバランスなんてものがあるかも怪しいけどな」
ユニーク要素な<エンブリオ>や<UBM>とそれに由来する特典武具、まだ話に聞いただけだが先着一名限定の
そもそも目玉がユニーク要素な<エンブリオ>だからな。ゲームバランスを重視しないとユーザーが離れる問題も完全なVRMMOがデンドロしかない以上は他所と競合自体が起きないだろうし今後も流行るだろうな。
「……それとお兄ちゃん、必要だったのは分かるけど自爆するなら事前に言っておいて欲しいんだけど? あの杖の事は聞いてたけど流石にびっくりしたよ」
「話している余裕はなかったしお前達なら言わなくても合わせられるだろうしな。氷属性奥義の【ジェム】だけだと対処されてたから、内と外からの両面凍結は必須だったし、どうせHPがゼロになるんだから逃げられない近距離で魔法使ってもいいかなって」
「理屈は分かりますしあの状況で勝つにはそれしかなかったのも事実でしょうけど、兄様が目の前で死ぬのはゲームだと分かっててもちょっと驚くのです。……兄様はよく変な事件に巻き込まれて怪我して帰って来ますし」
「……あーうん、そこは本当に済まないと思う。次からは自爆戦術を使わなくて済むようにするから」
一応現実では事件に巻き込まれたら自分の命最優先で動いているんだけど、結局ジャンルが違う連中と生身交戦をする展開になると言うか。2人には心配を掛けない様にしたいんだが何故か逃げられない事が多くてなぁ。
とりあえずデンドロでは死んだ後でも動けるスキルとか蘇生スキルを準備してから自爆戦術は使おう。あっちならトラブルに巻き込まれても現実では無事だから2人には心配かけ難いだろうし、暫くはデンドロだけでトラブルが起きて欲しい。
「待てよ、死んでもデスペナで済むデンドロでトラブルに巻き込まれておけば、現実でトラブルに巻き込まれる回数ストックが良い感じに消費されたりしないだろうか?」
「お兄ちゃんの巻き込まれ体質ってストック制だったの?」
「確かに数ヶ月に一度ぐらいのペースで変なトラブルになっている気もしますが」
俺が変なトラブルに巻き込まれやすい理由なんて俺自身にもさっぱりだからな。知り合いの巫女さんは『そういう因果を持つ人は稀によくいるわよ。でもあんな事件に巻き込まれてよく五体満足で生きてるよね、異能生存体か何か?』と言ってたが、失礼なヤツだ。
「まあデンドロでなら私達もお兄ちゃんの助けになれるし!」
「彼方でなら無力ではないので、確かにあっちでなら私達も兄様の力になれますから出来ればあっちでトラブルに巻き込まれて下さい」
「狙ってトラブルに巻き込まれるとかどうすれば良いのか分からんが、まあありがとうな」
これで<Infinite Dendrogram>も今後もやる理由が増えたな。この先どうなるか分からないがもう暫くはこのゲームを続けていく事になりそうだ。
◯【凝血蛭子 ドランクリーチ】
(@_@)<元は【ブラッディリーチ】と言う吸血ヒルのモンスターだったが落ちてた“何か”を食べて<UBM>になった
(@_@)<つい最近<UBM>になったのでステータスは低かったが知性と血液操作のセンスが高かったので純竜を狩れる程の戦術を編み出した
(@_@)<吸血奇襲が決まれば純竜でも血を吸い尽くして殺せるし《血戦躰》の物理攻撃無効により多くのモンスター相手に優勢に戦えた
(@_@)<血液操作はSPを消費して自分の肉体を拡張する方向性なので操作精度は高いが自分の身体から切り離して操れない制限がある
(@_@)<ただ奇襲が基本効かない上に物理無効を貫通出来る妹とステータスで優越する末妹と強力な魔法攻撃手段を持っていた兄達に敗北
(@_@)<だが短時間で血液操作の応用を編み出したりしているので放置してしていたら更なる成長を遂げていた可能性もあった模様
(@_@)<名前は『ドランク(飲んだ・酔っ払った)』と『リーチ(蛭)』に『クリーチャー』を掛けた感じ
◯兄
(@_@)<妹達にはクソ弱いトラブル巻き込まれ型シスコン
(@_@)<才能はハイエンドや技術系ジャンル違い程に出鱈目ではないが色々なトラブルに巻き込まれた経験のお陰で戦闘力と異能に対する理解力が高い
(@_@)<万能の才覚と“一族”の才人達に英才教育とジャンル違い関連の経験が合わさって“他者の才能を見抜く目”を獲得していたりもする
(@_@)<定期的にどっかの劇場版的なトラブルに巻き込まれてその端っこで変なやつと戦わされる目に遭うタイプ
◯妹・末妹
(@_@)<【ドランクリーチ】相手に2人で互角の戦いをして時間を稼いでいた今回の功労者
(@_@)<ただ与えたダメージが大体再生されていた事と最後は凍った相手を砕いただけな部分で功績点が下がってMVPには選ばれなかった
(@_@)<デンドロは普通にゲームを楽しみつつ自分の才能に踏ん切りを付ける為にやってるが兄の戦いを助けられる事も理由になっている