もふもふをひろったら家がダンジョンになりました 作:一宮 千歳
『ひろーい』
「敷地面積分って言われるとピンと来ねえけど、これは思ったより広いな」
ダンジョン地下フロアができた翌日朝。
いま俺たちはその地下フロアに来ている。
天井が高く、10mはありそうだった。一フロアで3階くらいあるぞ。
その地下フロアへの入り口は車庫にできていた。
一応、これも申請しないといけないんだろうなあ。
「ダンジョンとしてはそんなでもないですけどね?」
「なんかじわっと傷つく」
作ったはいいが、用途がない。
ポテトとクロはぐるぐる走り回っているが。
「しばらくこのままかなあ」
「メルカリ在庫置き場で良いんじゃないですか」
「そんないっぱい出したつもりは無いし、DPがなくなるでしょうが」
しかしこの地下フロア、照明が付いてたり、なんというか……
「シェルター?」
「ダンジョンとしては珍しいですね。普通照明は付いてないものですが」
「あ、やっぱりそうなの?」
「ええ」
シャルロッテ曰く、ダンジョンは暗いものだと。
「じゃあこれはなんなんだろうね?」
「さあ……」
「ま、物置だな。今のところ何も置かないけど」
とりあえず、月曜なので、仕事だ。
出社よー。
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「雇い止め?」
「そうなりそう。ごめんね真野さん」
「いやあ、会社の決定ならしょうがなくないすか」
「そう言ってくれるけどねえ……」
三浦さんから、3月31日で雇い止めになる、という話が来た。
まあ、なかばわかってたことではある。5年目という状況で、勤怠は普通だが、仕事内容はちょっと暇してる。
理由なく切る事もできるし、理由なく無期雇用にする事もできる。会社は前者を選んだ、というだけで。
自宅に電話を入れる。ぷるるるる。
『はい、真野ですが』
「あ、シャルロッテちゃん? 一月半後には仕事なくなりそう」
『あら。ダンジョン業に専念せざるを得なくなりましたね』
「ははは。そうだね。だから地下フロア、モンスター置こうか」
『……良いんですか?』
「前に中村から聞いたことがあってさ。駆け出し探索者が気軽に行ける、ほどほどに弱いダンジョンって今富山にないらしいんだよね」
『ふむ』
「マスターが倒される心配がなくて、人間による制御が効くダンジョン、ワンチャンあると思わない?」
『まあ、勝算があるのであれば……私は止めませんが』
そういうことになった。
社食で食べる昼ごはんも、後一月半。
同僚とも、後一月半。
けせらせら。
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『おかえりー!』
「うん、ただいま。どうだった?」
『ひまだった……』
「そうかあ。ごめんな」
『ううん!いいよ!』
DPは1800。
これを使って地下フロアの改装、進めなきゃな。
「ポテトはさ、探索者がいっぱい来たらうれしいか?」
『うーん。DPはほしい。けど、さくらぎみたいなのがふえると、やだ』
めっちゃ嫌われてるな桜木ちゃん。
「じゃあどんな探索者がいいのかな」
『なかむらー!なかむらはなんか、あんていしてる。がつがつしてない』
よかったな、中村好かれてるぞ。
しかし問題がある。中村は二級で、二級クラスはそこまで数が多くないらしい。しかも狙いの「駆け出し探索者」とは真っ向から反発する。
「二級狙いのちょっとしたダンジョンかー」
『まの、むずかしい?』
「いや、やってみるよ。ポテトのお願いだもんな」
「真野様はマスターに甘いですねえ」
「かわいいからな」
『むー、ぼくかっこよくなりたいのに……』
「おっと、すまんすまん」
撫でてやるとすぐ機嫌が治った。ちょろい。
中村に「二級のソロってどんなダンジョンに行くんだ?」とLINEする。
「何?なんか興味でも出たわけ?」
「いや、うちのダンジョンを二級か、二級に届きそうな連中向けに訓練施設にでもしようかなと」
「なんか変なもんでも食ったか?」
「割とガチな相談なんだが」
「んー。じゃあ二級が行くようなダンジョンのトラップを見つける練習になるとか、モンスターと模擬戦できるとかできねえ?」
「おー。それっぽい」
「それっぽいじゃなくて二級だっつの」
「んじゃ具体的には?」
「トラップは落とし穴は定番だな。落ちたら危ないやつ。あとは毒矢とか」
「うわあ、お前そんな怖いところ職場にしてるの」
「今更すぎねえ!? ちなみに一級から五級は全部国家資格だけど、国や県から仕事が来るのは二級からだぜ」
「知ってるよそれは。お前が散々自慢しただろ」
「わはは」
昼休みの時間が終わるので、LINEは一旦中断。
しかし昼休みを超えても暇だった。geminiにダンジョン探索者国家資格のことでも聞くか。
「gemini、ダンジョン探索者国家資格について教えて」
「五級:ダンジョンに入るための筆記試験。CBTでいつでも受けられる。足切り。
四級:ダンジョンに慣れてきた初心者向けの筆記試験。年二回。
三級:ダンジョンによく潜る中級者向けの試験。筆記と実技。年二回。
二級:国や地方自治体から依頼を受けられる立場。実技。年一回。
一級:世界レベルのダンジョン探索者である証明。実技。二年に一回。
五級から一級までの目安を提示しましたが、他に知りたい情報はありますか?
試験内容についてご提案できます」
ふむふむ。
「二級の試験内容について教えて」
「二級の試験内容は、国や地方自治体がある程度の安全を確認できているダンジョンで、指定されたモンスターを撃破することが条件です。よく試験題材になるモンスターは、コボルド、リザードマンの二種で、武器を持っている、知性があるモンスターの連携への対処が鍵となります。一対複数の戦いを強いられるので、ここで躓く冒険者も多くいます。
試験に使われたダンジョンを知りたいですか?」
なるほど。知性ある、武器持ちか。
「ありがとう」
「どういたしまして。質問があれば、いつでも聞いてください」
そのまま仕事は終わった。マジで暇なんだよな。天職だと思ってたんだけどなあ。
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「探索者資格も取っておこうと思う」
「本気ですね」
今日のご飯はすき焼きだ。
職場から家とは逆方向のデパ地下で買ってきた高級割下とブランド和牛だ、ポテトとクロもうまそうに食べている。
属性は文明開化属性が生えた。なんでだよ。
「いやあ、ダンジョンのこと何も知らないからな。筆記試験だけでも受けとかなきゃと思って」
「ネットに転がってる試験問題を見ましたが、常識テストでしたよ?」
「へえ、どんな?」
「ダンジョンで倒したことのないモンスターと遭遇した。モンスターは攻撃姿勢をとっていない時、どうするべきか。
1、まっすぐ逃げる。
2、周りの助けを借りる
3、声をかけて友達になる」
「常識的には3はねえな」
「真野様はマスターに3をやってますけどね」
「うぐっ」
「さておきこの問題、1か2なら正解らしいです」
「択一じゃないんだ」
「ダンジョンでは何が正解かはっきりしない事もありますからね。これがドラゴンだったら逃げるのが正解ですが、スケルトンあたりなら一度倒してみる2が正解です」
「はー、なるほど」
そのあと、シャルロッテに試験問題を出されながら飯を食った。
「最終的に、コボルドとリザードマンを呼ぼうと思う。カタログに居るし」
「いいんじゃないですか。間取りはどうします?」
「地下フロアに地上と似た間取りで部屋を作る。んでトラップ解除と模擬戦に専念してもらう形だな。ゴールは俺の寝室のあたり」
「結構空間が開きますが」
「そこはモンスターの控え室だな」
「いいと思いますよ、それで」
いま、DPは1795。
これで内装(部屋)ガチャを5つほど回せば地下フロアは一応の形になる。
「内装ガチャ、回すんですか」
「人為的に部屋作るのなんて疲れちゃうよ。プリセットで楽する」
内装(部屋)ガチャのMサイズを5回回す。それでDPは5消費。やすい。
- がちゃん -
★1 ふつうの部屋(Mサイズ)(維持費/0.5DP)
★1 ふつうの部屋(Mサイズ)(維持費/0.5DP)
★1 落とし穴の部屋(Mサイズ)(維持費/1DP)
★1 ふつうの部屋(Mサイズ)(維持費/0.5DP)
★2 いい感じの部屋(Mサイズ)(維持費/1DP)
ふむ。ぽちぽちと配置する。ふつうの部屋が続いた後に落とし穴の部屋、その後ふつうの部屋、ちょっといい部屋、でゴール。
ついでに文明開化属性も見てみる。どうやら今回、家具に限らないらしい。
【文明開化属性】カステラ(1DP/消耗品)
・効果:ふわふわのカステラ。おいしいよ。
【文明開化属性】ダンスホール(15DP/内装/維持費:1日1DP)
・効果:シャンデリア付きのダンスホール。優雅な午後のパーティに。
【文明開化属性】こわれない!14型ブラウン管テレビ(5DP/家具/維持費:1日0.5DP)
・効果:地デジは映らない。レトロゲーム用。
oh...なんだこれ。
「なんだこれ」
「ざっくり明治ですね」
「ざっくりすぎる」
でもブラウン管テレビはちょっとうれしいかも。維持費0.5DPか……。
「よし、2階にブラウン管テレビを置く」
「なんかやるんですか?」
「ニューファミコンがあるからな」
「カステラ、ゴールに置きます?」
「いやなんでだよ」
「ほどほどの達成感が実感できる品物があった方がいいかと」
「……それもそうか?」
コボルドとリザードマンは後日呼ぶことにした。DP出費が大きいのが原因だ。
「ローテーションで働いてもらうとして、6匹を二セットだと120DP、維持費も72DPだからなあ」
「まあ、中村が来たら1日で稼げますけどね」
「とはいえ収入が中村頼りは厳しいだろ」
維持費DPが大幅に増えるのはでかい。流石に12匹も増えるとそいつらには飯は出せないし。……いや。調理場を使うか?
「真野様に考えがあるならそれでいいですが……」
「あと、役所にも申請出さないといけないからな」
「役所とかどうでも良くないですか」
「これだから悪魔は……」
まあその悪魔がいてくれて助かってるところもあるんだが。
「まあまだ茶飲み場計画が始まってもいませんよ、気長に行きましょう」
そうだな。ちょっと気が急いてるかもしれない。
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