もふもふをひろったら家がダンジョンになりました 作:一宮 千歳
土曜。
朝ごはんを食べながら相談。
今日も朝は納豆ご飯。
「そういや探索者資格いつ取りに行こう、来週かな」
「明日でいいんじゃないですか」
「明日ぁ?……あ、予約取れるな」
「鉄は熱いうちに打て、とか、思い立ったが吉日、という言葉もありますし、どうですか?」
「そうだなあ、行くか」
『まの、べんきょうは?』
「試験勉強か……パソコンで過去問触っとくか」
「えー」
「えーじゃない、パソコン使えないのが嫌なだけだろアニメ中毒」
そして過去問を解こうとしたら、意外とわからない。
「ダンジョン内ですれ違ったときは右側歩行?左側歩行?とか知らねえよ」
「そんなところまでルールにしてあるんですねえ」
「と思うじゃん? どちらでも良いが正解だった」
「なんですかそれ」
「ダンジョン、奥が深い」
「所有してる人が五級問題でなんか言ってる……」
あとは買い出しが結構負担だなーと感じる。BtoB業者に頼んで持ってきてもらうのも手か。
テレビの業務用契約もやってない。
あと、コックも雇わないと。
ふれあいスペースの相談も弁護士さんとしないと。
「んー、やること、考えることがそこそこあるな」
『びんぼうひまなし?』
「どこで覚えてきたんですかねえ?」
シャルロッテを見ると、口笛を吹いている。とぼけるのが下手か。
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日曜の試験、同年代はいなかった。目立つのは小学生っぽいのがいた。明らかにちっちゃい。
他にも高校生と思しき連中がちらほら。男子が固まって馬鹿話してる。
まあ、別に知り合いなんていなくても簡単なテストだ。チャチャっと受けて終わりにしよう。
第一問。ダンジョンで倒したことのないモンスターと遭遇した。モンスターは攻撃姿勢をとっていない時、どうするべきか。
これ、思いっきりシャルロッテから聞いた問題だな。
第四問。ダンジョンで負傷者を見つけた。どうするべきか。
見捨てる、が選択肢にある。でもこれ見捨てるだけが間違いなんだよな。
第十二問。ダンジョンで友好的なモンスターを見かけたとき、どうするべきか。
連れて帰っても良い。よな?
……
百問ほどの五級試験、結果は合格だった。まあそりゃね、この歳で常識はずれな回答はできないからね。
ちなみに高校生の一人は落ちたらしい。どうやって?と思うが、見るからにダンジョン、いや人生舐めてそうだったので、やむなしかもしれない。
一方で小学生は受かっていた。迎えに来た母親に褒められて嬉しそうだった。そして親が見るからに同年代だったのが心にちくっときた。
親かあ。元カノに振られてなかったら子供もいたのかな。
まあいいか、帰ろう。合格祝いになんか買お。ぶろろろろ。
『まのー!おかえり!』
「ただいま〜。合格した」
「まあ当然ですよね、真野様なら」
「わふ!」
当然みたいなことだって褒められればうれしい。
「今日の夕飯は合格祝いでステーキだ! 高い肉だし、とりあえず付け合わせを先に焼いて……」
『まのー。にくまだー?』
「早い早い。待ちなさい」
待てなかった。生で齧った。
「ウワー!?」
『にくー!うまー!』
- ぴろん -
- マスター【ポテト】が『生牛肉』を摂取しました -
- 【変異ツリー:荒ぶる毛玉(野生属性)】が解放されました -
- 野生属性変異可能性の開放により、野生属性家具・アーティファクトの設置が可能になりました -
なんだよ野生の家具って。見ねえぞ。
「こら、ポテト、食べるのをやめなさい」
『えー。でもこれぼくのおにく……』
「めー」
『はぁい……』
一人前、300グラムの肉は半分ほど齧られた。うーん、焼く前に食うとは、流石に読めなかった。
フライパンによだれつき食べかけ肉を置くのはちょっと躊躇われる。ポテトの分を焼くのは最後だな。
じゅうじゅうと付け合わせを焼く。少量のサラダ油でピーマン、コーン、もやし。ガーリックチップと塩コショウで味付け。
……サラダ油で焼くの失敗だったかな。油も高いの使えばよかった気がしてきた。
野菜の水分が出たら皿に分ける。で、本命の肉を焼く。
じゅわあ。あっ、これ絶対美味いやつ。
「真野様、まだですか」
「きゅうん」
シャルロッテとクロもソワソワしながらキッチンにやってきた。最近俺の飯に慣れて呼ぶまで居間にいるのに、ステーキはやはり違うらしい。
足元でウロウロするけもの二匹。横から執拗に覗いてくる悪魔一匹。ええい気が散る。
「まあレアで良かろう」
ぽん、と皿の上に乗せる。
「シャルロッテ先食ってろ」
「では、いただきます」
かちかちとナイフが皿に当たる音がする。
「ん」
「どうした」
「食レポするのが勿体無いです。食べるのに集中します」
「どんだけだよ」
「そんだけです」
さよか。
「じゃあつぎ、クロ」
「……」
皿によそったら無言で食ってる。どんだけだよ。
「次ポテト」
『ねー。ぼくのちっちゃい』
「さっき食べたでしょ」
『うー』
ちっちゃいのは当然だ。で、味は?
『まのー』
「なんだ」
『ごくじょうのあじわい』
良かったよ。
最後に自分の分を焼いて、食う。
ああ、うめえわ。
たべたあとには後片付けがある。
綺麗に舐め取られたけものの皿と、何も残さず食べたシャルロッテと俺の皿を洗う。
「なーシャルロッテ」
「なんです? 急に」
「ポテトとクロ、俺がいないときも楽しそうか?」
「楽しそうですよ」
「そうか。それならよかった」
「ただ、真野様とも話したがっておられます」
「ん。まあ、3月になればもう仕事は行かないからな。いやでも一緒にいるぞ」
「いやでもなんて、そんな」
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中村とLINE。
「五級取った」
「なんの? そろばん?」
「アホか。探索者だよ」
「おー。デビューすんの?」
「いや、家がダンジョンだからさ。一応?」
「なるほどね。まあおめでとう」
「ありがとよ」
「んで最近どうなの?」
最近って言われてもなあ。
「ステーキ食った。んまかった」
「んだよ俺にも食わせろよ あとはー?」
「いや、なんもねー」
「茶飲み場、接客大変そうだけど、愚痴が出ねえな」
「そうなんよ。意外に」
「合ってんじゃない?逆に」
「そうかなあ」
「人が苦手なくせに他人好きだろ、お前」
「えー? うそだあ」
「ホンマホンマ。じゃあなんでポテト拾った?」
……何故だろう? 答えられない。
LINEは既読をつけたまま途切れた。
一応は、きゅうきゅう鳴いてて気になったから、だ。
でも、なんで気になった?住居不法侵入に問われるかもしれなかったのに?
なんだろうな。寂しかったのかもしれない。それで寂しそうにきゅうきゅう鳴いてるポテトを同一視して?
「……うあー」
なんか猛烈に恥ずかしいやつだぞ、俺。
ごろごろ転がって、寝た。
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