もふもふをひろったら家がダンジョンになりました 作:一宮 千歳
さて、ダンジョン構造を微調整しなきゃな。
通路作成1DP-維持費0.1DPとある。
これを使って、五つの部屋を再配置して、ちょっとした迷路を作りながら部屋を繋げる。
できた。そして通路にもアロマディフューザーを置く。
だって受けるダメージがいきなり増えたら怖いもんね、お互いに。
維持費はそこそこになった。ワンフロアでこれ、となるとちょっと運営的に厳しい。
「中村。一度に二、三人入れたいんだけど」
「なら部屋数は増やすしかないだろ。モンスターは死んだりしてないから、治癒さえすれば数は足りると思うんだが……」
治癒、ねえ。
「リカバリーウンディーネとか言うのがいるんだけど。治癒できそう」
「野良でいたら一気に一級難度になるな」
「マジで?」
「治癒は人間には許されてない高等魔法、ってことになってる。あと精霊の類だろ? 魔法剣でないと切れない」
「はあー」
ぽち。
- ぴろん -
- リカバリーウンディーネ3体と雇用契約を結びました -
支払い30DP、維持費は18DP。コボルドとリザードマンと変わらないお値段。
「3人雇った」
「お前、もしかしなくてもバカ?」
「人型だし! 従業員にもなるかと思って!」
ぽふん。
煙と共に現れたのは、少女型、大体高校生ぐらいの青く透き通った体をしたモンスターだった。
「こんにちはこんにちは!あなたが私の雇い主!?」
「はい、そうですが」
「おじさんだー!」
「あたしの趣味じゃなーい」
「フヒ……仕事と称して何かされちゃうのかな……」
「一人解雇でいい?」
「ヒー! すみませんすみません! 陰キャになんか手を出しませんよね……」
困るなあ。ここははっきりさせておかないとな。
「いやそういうの目的で呼んでないから。純粋に能力を必要としてのことだから」
「ワタシの力が必要……?キュン……♡」
するとシャルロッテがやってきた。
「あれ、店開けていいの」
「何か良からぬ気配を感じまして。教育します」
妄想癖ウンディーネを連れて地下へ行ってしまった。
「グレーターデーモンに連行されちゃった。助からないね」
「なむなむ」
「そんなことはないはずだ……たぶん」
ほどなくして妄想癖ウンディーネは戻ってきた。後ろにシャルロッテ。
「フヒ……お姉様……お姉様のために働きます……♡」
「理解したならよろしい」
「シャルロッテ何やったお前」
「教育ですが?」
「……深くは追求しないでおくね」
なんか深淵に足を踏み入れそうだ。
「ウンディーネたちには地下の、裏の休憩所で傷ついたコボルドとリザードマンの治療をお願いするよ。あと、一人はダンジョン入口受付兼、怪我した人間の治癒担当で」
「けがしたにんげんの」
「ちゆ」
「ですか?」
「あー、言ってないけど、これ真面目なダンジョンじゃなくて人間、探索者の訓練施設なんだ。だから、怪我して帰る、じゃなくて治療して帰る形にしたい」
「「「わかりましたー」」」
聞き分けがいいな。たすかるぜ。
「おい真野、ちょっと」
「何?」
「お前人類史に革命起こしたぞ」
「あれ、そんなヤバいことした?」
「世界中から人が来ちまう」
「じゃあひっそりやろう」
「お前なあ……」
わるいことしてないもん。
「で、テストプレイは?」
「攻撃力50%減を舐める奴はいるかもしれないが、まあ及第点じゃねえか?」
「やった」
「……ウンディーネのこと喋らない口の固い奴を呼ぶようにするからな」
「あいあい」
「わかってんのかほんとに」
「客がいっぱい来るなら歓迎。キャパは少ないから、ほどほどでいいけど」
「お前なあ……」
中村ばっかり構っていたので店の方にも顔を出す。
「いらっさいませー」
「おう、なんか車庫でドタバタしとったが、なんじゃ?」
「ああ、ちょっとした作業ですよ」
「ほーん」
店内を見回すと、じいさんたちは思い思いに過ごしている。なんか飯を頼んでない人が目立つ。
「みんななんも食ってないすね」
「昼は家で済ませてから来とるの。有料になるんじゃろ?」
つまり、休憩所扱いだ。別に飲食で利益を出す必要はないのだが、食べてもらえないとなるとまた複雑な感情が湧いてくる。
「3月1日からはシャルロッテのお給料になるので……」
「おお、そりゃ悪いことしたの。3月からはなんか頼むことにしよう」
「助かります」
枝豆とビールでもいいから頼んで欲しい。廃棄を増やしたくないのでおにぎりもどんどん食べて欲しい。
……つまり飲食店として老人だけ、12から18時の営業に無理があるのか?
くっ、気づきたくなかった。
しかし営業時間を延ばすには従業員が少なくとももう一人いる。その調達が難しい。なぜかって。友達がいない。(どーん)
どうするかなあ、求人情報誌に依頼する?
あと柳瀬さん。柳瀬さん今いるし、聞いてみるか。
「柳瀬さーん」
「おう、真野くん。どうした」
「従業員を募集したくて」
「従業員か……若い子がいいか?」
「いや、若くなくてもいいです。若くない方がいいです」
「そうか、それなら心当たりは山ほどいるぞ」
「よかったです……」
若い子なんて雇ったらご近所からの噂が大変だからな。いや、若い子は悪くないんだけど。
----
営業が終わり、おじいちゃんたちが帰っていく。
『まのー』
「おう、なんだポテト」
『かまえ』
ひし、と抱きついてくる。器用な前足だな、と思いながら撫でてやる。
『んー』
「寂しかったか?」
『さびしくないもん』
こりゃ寂しがらせちゃったな。
『かまえないなら、ていあんがあります』
「ん、なんだ」
『しるきーをやとおう』
「シルキー」
『これできょじゅうすぺーすのきゅーおーえるばくあがり』
「語彙が」
『だいじょうぶだ、もんだいない』
「それ大丈夫じゃない奴な」
シルキー。確かイングランド民話由来の家事をしてくれる妖精。人間に姿を見せないが、埃一つ残さずきっちり掃除してくれる家事のエキスパート。ミルクと砂糖を好む、だったか。
カタログを見てみる。一体で維持費6DP、雇用費…300DP!?
いま2000DPあるが、結構持ってかれる。
そもそも維持費が日に120DPを超えそうでヤバい。じいさんが増えるか探索者が増えるかしないと赤字だ。
「どうした真野」
「中村。いや、ポテトがシルキー雇えっていうんだよ」
「シルキーねえ」
「どう思う?」
「良いんじゃないか。数日赤になるかもしれんが、ウンディーネがいればそのうち取り戻せるだろ」
「ほんとかなあ」
ポテトのお願いは叶えるに限る。
「じゃあ、このあとシルキー呼ぼうか」
『わーい。これでまのとしゃるろってのふたん、へる?』
ええ子や。ポテトはええ子や。
ぽち。
- ぴろん -
- シルキー1体と雇用契約を結びました -
ヒラヒラと紙が落ちてきた。
そこにはこう書いてある。
「
「「ええ……」」
中村とハモった。
「シルキーに相談があるんだが、日中にメルカリの配送準備はやってもらえるか?」
またヒラヒラと紙が落ちてくる。どこから。
「拙はあくまで家事妖精ですので、他のものに頼んでください」
「だめかー」
「ダンジョン家具販売、なかなか軌道に乗らねえな」
「家具売りがちゃんと出来れば無料飲食もできるんだがな……」
手先が器用で段ボールを積める種族、なかなかおらん。
……やっぱり悪魔とかになるのかなあ?
「悪魔は働くのに向いてませんよ。堕落します」
「そうかあ」
「おすすめは天使ですが、わたしを見てなんというか」
「シャルロッテ、グレーターデーモンだもんなあ」
悪魔が天使をお勧めするの、なかなか面白いな。
「とりあえずダンジョンを営業させてから考えよう」
「そうだなー」
「ですね」
『ひと、もっといっぱいくる?』
そういうことになった。
----
日曜、翌朝。早くも、「中村さんの紹介で」と三級冒険者の男の子がやってきた。高校生っぽい。
「ようこそようこそ。コボルドとリザードマンしかいないダンジョンです」
「うわあ、緊張するなあ」
「まー、リラックスしてね。死ぬことはないと思うから」
「はい、攻撃力減が効いてるって聞いてます」
中村、あらかた説明したらしい。
「まーそういうことで。料金とかはとってないから、ほぼフリーインフリーアウトだよ」
「はい、よろしくお願いします」
「なにー?おきゃくさんー?」
ウンディーネが反応した。男の子、ドギマギしてる。そうか、女慣れしてないか。
でもざんねん、助け舟は出さない。
「おひとりさま?怪我してない?」
「し、してないです!」
「そーかそーか、気をつけて頑張ってねえ」
にこにこと笑うウンディーネにてれてれする男子。
性癖が捩れる音が聞こえた気がしたが気のせいだろう。
「昼過ぎたらタダでご飯出せるから、お腹空いたらお店の方も来てよ」
「はい、ぜひ!」
今10時。昼までなら2時間は居座るはず。つまり120DPゲットだ。維持費が120を超えた都合、この収入はでかい。ここにおじいちゃんたちの分の収入がのるから、まるまる黒字と言っていい。よし、いけそうだ。
感想、評価、お気に入り、ココスキお待ちしております。励みになります。