もふもふをひろったら家がダンジョンになりました   作:一宮 千歳

19 / 19
19話

さて、ダンジョン構造を微調整しなきゃな。

通路作成1DP-維持費0.1DPとある。

これを使って、五つの部屋を再配置して、ちょっとした迷路を作りながら部屋を繋げる。

できた。そして通路にもアロマディフューザーを置く。

だって受けるダメージがいきなり増えたら怖いもんね、お互いに。

 

維持費はそこそこになった。ワンフロアでこれ、となるとちょっと運営的に厳しい。

 

「中村。一度に二、三人入れたいんだけど」

「なら部屋数は増やすしかないだろ。モンスターは死んだりしてないから、治癒さえすれば数は足りると思うんだが……」

 

治癒、ねえ。

 

「リカバリーウンディーネとか言うのがいるんだけど。治癒できそう」

「野良でいたら一気に一級難度になるな」

「マジで?」

「治癒は人間には許されてない高等魔法、ってことになってる。あと精霊の類だろ? 魔法剣でないと切れない」

「はあー」

 

ぽち。

 

- ぴろん -

- リカバリーウンディーネ3体と雇用契約を結びました -

 

支払い30DP、維持費は18DP。コボルドとリザードマンと変わらないお値段。

 

「3人雇った」

「お前、もしかしなくてもバカ?」

「人型だし! 従業員にもなるかと思って!」

 

ぽふん。

煙と共に現れたのは、少女型、大体高校生ぐらいの青く透き通った体をしたモンスターだった。

 

「こんにちはこんにちは!あなたが私の雇い主!?」

「はい、そうですが」

「おじさんだー!」

「あたしの趣味じゃなーい」

「フヒ……仕事と称して何かされちゃうのかな……」

「一人解雇でいい?」

「ヒー! すみませんすみません! 陰キャになんか手を出しませんよね……」

 

困るなあ。ここははっきりさせておかないとな。

 

「いやそういうの目的で呼んでないから。純粋に能力を必要としてのことだから」

「ワタシの力が必要……?キュン……♡」

 

するとシャルロッテがやってきた。

 

「あれ、店開けていいの」

「何か良からぬ気配を感じまして。教育します」

 

妄想癖ウンディーネを連れて地下へ行ってしまった。

 

「グレーターデーモンに連行されちゃった。助からないね」

「なむなむ」

「そんなことはないはずだ……たぶん」

 

ほどなくして妄想癖ウンディーネは戻ってきた。後ろにシャルロッテ。

 

「フヒ……お姉様……お姉様のために働きます……♡」

「理解したならよろしい」

「シャルロッテ何やったお前」

「教育ですが?」

「……深くは追求しないでおくね」

 

なんか深淵に足を踏み入れそうだ。

 

「ウンディーネたちには地下の、裏の休憩所で傷ついたコボルドとリザードマンの治療をお願いするよ。あと、一人はダンジョン入口受付兼、怪我した人間の治癒担当で」

「けがしたにんげんの」

「ちゆ」

「ですか?」

「あー、言ってないけど、これ真面目なダンジョンじゃなくて人間、探索者の訓練施設なんだ。だから、怪我して帰る、じゃなくて治療して帰る形にしたい」

「「「わかりましたー」」」

 

聞き分けがいいな。たすかるぜ。

 

「おい真野、ちょっと」

「何?」

「お前人類史に革命起こしたぞ」

「あれ、そんなヤバいことした?」

「世界中から人が来ちまう」

「じゃあひっそりやろう」

「お前なあ……」

 

わるいことしてないもん。

 

「で、テストプレイは?」

「攻撃力50%減を舐める奴はいるかもしれないが、まあ及第点じゃねえか?」

「やった」

「……ウンディーネのこと喋らない口の固い奴を呼ぶようにするからな」

「あいあい」

「わかってんのかほんとに」

「客がいっぱい来るなら歓迎。キャパは少ないから、ほどほどでいいけど」

「お前なあ……」

 

中村ばっかり構っていたので店の方にも顔を出す。

 

「いらっさいませー」

「おう、なんか車庫でドタバタしとったが、なんじゃ?」

「ああ、ちょっとした作業ですよ」

「ほーん」

 

店内を見回すと、じいさんたちは思い思いに過ごしている。なんか飯を頼んでない人が目立つ。

 

「みんななんも食ってないすね」

「昼は家で済ませてから来とるの。有料になるんじゃろ?」

 

つまり、休憩所扱いだ。別に飲食で利益を出す必要はないのだが、食べてもらえないとなるとまた複雑な感情が湧いてくる。

 

「3月1日からはシャルロッテのお給料になるので……」

「おお、そりゃ悪いことしたの。3月からはなんか頼むことにしよう」

「助かります」

 

枝豆とビールでもいいから頼んで欲しい。廃棄を増やしたくないのでおにぎりもどんどん食べて欲しい。

 

……つまり飲食店として老人だけ、12から18時の営業に無理があるのか?

くっ、気づきたくなかった。

 

しかし営業時間を延ばすには従業員が少なくとももう一人いる。その調達が難しい。なぜかって。友達がいない。(どーん)

 

どうするかなあ、求人情報誌に依頼する?

あと柳瀬さん。柳瀬さん今いるし、聞いてみるか。

 

「柳瀬さーん」

「おう、真野くん。どうした」

「従業員を募集したくて」

「従業員か……若い子がいいか?」

「いや、若くなくてもいいです。若くない方がいいです」

「そうか、それなら心当たりは山ほどいるぞ」

「よかったです……」

 

若い子なんて雇ったらご近所からの噂が大変だからな。いや、若い子は悪くないんだけど。

 

----

 

営業が終わり、おじいちゃんたちが帰っていく。

 

『まのー』

「おう、なんだポテト」

『かまえ』

 

ひし、と抱きついてくる。器用な前足だな、と思いながら撫でてやる。

 

『んー』

「寂しかったか?」

『さびしくないもん』

 

こりゃ寂しがらせちゃったな。

 

『かまえないなら、ていあんがあります』

「ん、なんだ」

『しるきーをやとおう』

「シルキー」

『これできょじゅうすぺーすのきゅーおーえるばくあがり』

「語彙が」

『だいじょうぶだ、もんだいない』

「それ大丈夫じゃない奴な」

 

シルキー。確かイングランド民話由来の家事をしてくれる妖精。人間に姿を見せないが、埃一つ残さずきっちり掃除してくれる家事のエキスパート。ミルクと砂糖を好む、だったか。

 

カタログを見てみる。一体で維持費6DP、雇用費…300DP!?

いま2000DPあるが、結構持ってかれる。

そもそも維持費が日に120DPを超えそうでヤバい。じいさんが増えるか探索者が増えるかしないと赤字だ。

 

「どうした真野」

「中村。いや、ポテトがシルキー雇えっていうんだよ」

「シルキーねえ」

「どう思う?」

「良いんじゃないか。数日赤になるかもしれんが、ウンディーネがいればそのうち取り戻せるだろ」

「ほんとかなあ」

 

ポテトのお願いは叶えるに限る。

 

「じゃあ、このあとシルキー呼ぼうか」

『わーい。これでまのとしゃるろってのふたん、へる?』

 

ええ子や。ポテトはええ子や。

ぽち。

 

- ぴろん -

- シルキー1体と雇用契約を結びました -

 

ヒラヒラと紙が落ちてきた。

そこにはこう書いてある。

 

(せつ)は妖精シルキー。日本で働くのであれば、ミルクと砂糖ではなく甘茶と和菓子を希望します。ご検討くださいませ」

「「ええ……」」

 

中村とハモった。

 

「シルキーに相談があるんだが、日中にメルカリの配送準備はやってもらえるか?」

 

またヒラヒラと紙が落ちてくる。どこから。

 

「拙はあくまで家事妖精ですので、他のものに頼んでください」

「だめかー」

「ダンジョン家具販売、なかなか軌道に乗らねえな」

「家具売りがちゃんと出来れば無料飲食もできるんだがな……」

 

手先が器用で段ボールを積める種族、なかなかおらん。

……やっぱり悪魔とかになるのかなあ?

 

「悪魔は働くのに向いてませんよ。堕落します」

「そうかあ」

「おすすめは天使ですが、わたしを見てなんというか」

「シャルロッテ、グレーターデーモンだもんなあ」

 

悪魔が天使をお勧めするの、なかなか面白いな。

 

「とりあえずダンジョンを営業させてから考えよう」

「そうだなー」

「ですね」

『ひと、もっといっぱいくる?』

 

そういうことになった。

 

----

 

日曜、翌朝。早くも、「中村さんの紹介で」と三級冒険者の男の子がやってきた。高校生っぽい。

 

「ようこそようこそ。コボルドとリザードマンしかいないダンジョンです」

「うわあ、緊張するなあ」

「まー、リラックスしてね。死ぬことはないと思うから」

「はい、攻撃力減が効いてるって聞いてます」

 

中村、あらかた説明したらしい。

 

「まーそういうことで。料金とかはとってないから、ほぼフリーインフリーアウトだよ」

「はい、よろしくお願いします」

「なにー?おきゃくさんー?」

 

ウンディーネが反応した。男の子、ドギマギしてる。そうか、女慣れしてないか。

でもざんねん、助け舟は出さない。

 

「おひとりさま?怪我してない?」

「し、してないです!」

「そーかそーか、気をつけて頑張ってねえ」

 

にこにこと笑うウンディーネにてれてれする男子。

性癖が捩れる音が聞こえた気がしたが気のせいだろう。

 

「昼過ぎたらタダでご飯出せるから、お腹空いたらお店の方も来てよ」

「はい、ぜひ!」

 

今10時。昼までなら2時間は居座るはず。つまり120DPゲットだ。維持費が120を超えた都合、この収入はでかい。ここにおじいちゃんたちの分の収入がのるから、まるまる黒字と言っていい。よし、いけそうだ。




感想、評価、お気に入り、ココスキお待ちしております。励みになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

限界社畜おじさんが、猫耳Vtuberになって世界をかわいく征服する(作者:双葉鳴)(オリジナル現代/コメディ)

目が覚めたら病院の一室。お見舞いに来ていた大学時代の後輩から事の顛末を聞いた槍込ヒジリ(30)は、自身が会社の業績低下の皺寄せをくらったてクビを切られたことを知り、途方に暮れる。▼しかしそんなヒジリに朗報。後輩の望月ヒカリが独立して後続の錬金術師に向けた初心者育成錬金配信をする。その専門的アドバイザーとしてヒジリを抜擢。▼こうして始まって初心者向け錬金チャン…


総合評価:224/評価:6/連載:103話/更新日時:2026年09月19日(土) 07:15 小説情報

ドロップ率SSRの俺、姫騎士まで拾う(作者:銀髪爆乳ムチムチ教)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

スライムにも勝てない最弱キャラに転生した俺。▼――けどドロップ率はSSRなアイテムでも引き放題。▼だからって姫騎士まで拾うことはないだろ!!


総合評価:43/評価:-.--/連載:7話/更新日時:2026年06月23日(火) 10:26 小説情報

[一部完結]戦闘不能のD級覚醒者、ダンジョンで198円のバジルを育てる 〜能力は「土いじり」だけ。10センチの土壁で推し(苗)を守る配信が、疲れた世界をそっと癒やしていく〜(作者:AI teller)(オリジナル現代/冒険・バトル)

D級覚醒者・柏木ハルのスキルは《土壌操作》。できることは、土のpH値を整え、水分量をいじり、高さ十センチの土壁を作ることだけ。▼スライム一匹倒せず、適性テストでは「農業に向いてる」と目を逸らされた。攻撃スキルがもてはやされる配信界隈では完全に“ハズレ”扱いで、手元に残ったのは事務職の給料と月額三千円の手当てだけ。▼そんなハルが諦め半分で始めたのは、ダンジョン…


総合評価:79/評価:6/連載:11話/更新日時:2026年05月14日(木) 18:19 小説情報

前世が大魔道士だった俺、宇宙戦艦を魔改造して銀河を成り上がる 〜退役寸前のゴミ艦隊ですが、魔法で動かせば最強です〜(作者:オカノヒカル)(オリジナルSF/戦記)

魔力がない?▼なら、宇宙に満ちているものを使えばいい。▼撃てない旧式主砲?▼なら、砲身そのものを巨大な魔導杖として使えばいい。▼退役寸前の旧式戦艦?▼使えるものは残して、魔法で組み直せばまだ戦える。▼魔力が枯れゆく世界で生涯を終えた大魔道士レオンは、宇宙戦艦が星々を渡る銀河世界へ転生した。▼そこは恒星間航行も艦載AIも当たり前の、高度な科学文明の世界。▼ただ…


総合評価:211/評価:7.25/連載:35話/更新日時:2026年09月18日(金) 20:13 小説情報

“のじゃロリ”が体に住み着き、TS魔法少女に……!?(作者:雪山崇一)(オリジナル現代/冒険・バトル)

 魔王と相討ちになった筈が――女の子として生まれ変わった俺の『中』にはその魔王がいて!?▼ 魔法少女が活躍する現代――“のじゃロリ魔王”にイタズラ心で魔法少女の服を着させられたりと、羞恥心を覚えたのも束の間、▼「かなりの魔力を消費したからな……さて――どう吸ってやろうかのう♡」▼「え――? いや、ちょ!? ま、待ってぇええええ!!」▼ ――ドSのじゃロリ魔王…


総合評価:318/評価:7.38/連載:24話/更新日時:2026年09月05日(土) 12:23 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>