「キミが、これ以上罪を犯す前に」
「【死んで】」
桜羽エマは魔法少女である。
固有魔法は【魔女殺し】
魔女たちを救済する存在だ。
――お菓子の魔女、こと『シャルロッテ』。
小さな人形のような姿をしたその魔女と対峙するは、黄色い特徴的な縦ロールの魔法少女、巴マミ。周囲に黄色いリボンを漂わせ、手にはマスケット銃を携え、毅然と佇む姿からは、歴戦の実力者としての自信が感じられる。
「――折角のところ悪いけど、一気に決めさせてもらうわよ!」
巴マミが、異常に高い椅子に乗っていたシャルロッテを跳ね落とす。落下してきたそれをバットのように持った銃身で殴りつけ、放った弾丸を解いて生み出したリボンで拘束していく。手慣れた動作だった。
彼女の手に持ったマスケット銃が、光を帯びて巨大化する。
「ティロ・フィナーレ――!」
砲身と化した銃口から、無数のリボンが放出されてシャルロッテを縛り付ける。
――その瞬間、巴マミは油断してしまった。
一度の瞬きの間に、巨大な蛇のように変貌したシャルロッテが彼女の眼前に迫っていた。巴マミは反応できず、立ち尽くしている。
「あっ――!」
陰から見ていた鹿目まどかと美樹さやかが、悲鳴を漏らし、目を覆う。この先起こるであろうことは、まだ戦場に出ていない少女たちにも分かってしまえた。
―――しかし。
「――不意打ちとは、正しくないな」
突如、シャルロッテの巨体が巴マミの眼前から消えた。……いや、真横へと吹き飛ばされた。
「……え?」
今起こったことを理解するより早く、巴マミの前に、ひとつの影が降り立つ。
「……無事か?」
凛とした立ち姿。風に靡く、赤みがかった艶やかな黒髪。纏う衣装は、髪と同じ赤の差し色が入った黒いワンピースに、花柄があしらわれた腕章、大きな花の髪飾り。瞳はこれまた情熱的で、それでいて静かさを湛えた深紅。
片手には先が鎌の刃のように尖った、細い金属の棒が握られており、それで魔女を殴り飛ばしたのだろう、切っ先には魔女の一部らしき黒い皮が引っかかっていた。それを見て、巴マミの顔が蒼白に染まる。
「……大丈夫ではなさそうだな。無理もない。危うく君は、魔女に食われて死ぬところだったのだから」
さらりと少女が口にしたことに、巴マミの表情が更に強張った。そうか、目の前の彼女に助けて貰わなかったら、自分は今頃――
「――ヒロちゃんっ!」
身を震わせる巴マミの耳に、先程とは別の少女の高い声が届く。顔を上げると、赤い少女の元に駆け寄ってくる少女の姿があった。
桜の花弁のように白からピンクへとグラデーションが掛かった短髪に、黒い上着とベレー帽を身に着け、その所々に桜のような花をあしらった姿の少女。髪の毛先と同じ桜色の瞳が、ヒロと呼ばれた少女を咎めるように吊り上がる。
「なんで怖がってる子に更に不安にさせるようなこと言っちゃうの!? この子真っ青になってるよ!」
「……ああ、すまない。事実を述べただけのつもりだったんだが…」
ヒロが桜色の少女から目を逸らす。毅然と勇ましかった姿から一転し、目の前の少女に頭が上がっていない様子だった。
「事実を言っちゃうのが駄目なのに……」
桜色の少女はため息を吐きつつ、ヒロの隣に並び立った。
「……今は目の前の魔女に集中しようか」
「そうだね…『あの子』を倒した後に、ちゃんと謝ってあげてね」
「分かっている」
赤色の少女はその細い金属棒を一振りすると、巴マミに背を向ける。
「あとは私に任せて、君は休んでいるんだ。あの魔女は私たちで片付ける」
「安心して、ボクたち負けないから!」
片方は綺麗に、片方は暖かく微笑むと、2人は身を起こしつつあるシャルロッテへ向かって走り出した。
「覚悟しろ!」
赤い少女が不気味な大地を踏み締めて高く飛び上がり、細い金属棒を振り上げる。
ゴッ、と重い音を立て、棒先が魔女の首元に沈み込むが、致命傷に至っている様子はない。しかしそれでも、彼女は素早い身の熟しで魔女の噛み付きを躱しながら、的確に攻撃を打ち込んでいく。
やがて一際強い一撃が決まったのか、シャルロッテの身体が大きく傾いた。ヒロの口元に笑みが浮かび、鋭い声が飛ぶ。
「今だ――エマ!」
ヒロが視線を向けた先は……結界内の、遥かに高い天井付近だった。
そこにひとつの人影が浮かび上がる。背に白く細い筋で構成された羽を広げた、桜色の少女の影が。
「――ありがとう、ヒロちゃん」
エマ、と呼ばれた桜色の少女が、高みからシャルロッテを見下ろす。倒れ伏して藻掻く魔女に向けて、ひどく静かに凪いだ声で語りかけるように言葉が紡がれる。
「――今まで、苦しかったよね」
それはまるで、桜の妖精のように。
又は救済をもたらす天使のように。
「でももう大丈夫。キミはもう、苦しむ必要なんてないよ」
シャルロッテへと、細い指先が向けられる。
「これ以上罪を犯す前に――」
「―――【死んで】」
その言葉が紡がれた瞬間、魔女の身体に変化が起こった。
糸が切れたように、魔女の巨体が動きを止める。そして全身から瘴気のように黒い何かが抜け出ていき……
そのまま、シャルロッテの肉体も消滅してしまった。
「……な、何が起こったの……?」
鹿目まどかは困惑していた。魔女の不意打ちを前に立ち尽くす巴マミを見て、自分は思わず目を覆ったはずだ。しかし、次に目を開けば彼女は生きていて、その前には2人の少女が居た。
片や赤い少女は軽い身のこなしで魔女を翻弄して鎮圧し。
片や桜の少女が何かを呟いたと思えば、魔女が跡形もなく消えてしまった。
鹿目まどかと美樹さやかが呆然としている間に、桜の少女は地面に降り立ち、赤い少女と共にこちらへと駆け寄ってくる。
「大丈夫!? 怪我はない?」
「……一般人も居たのか? 全く、戦う力もないのに結界内に入るなんて正しくない」
心配げに眉尻を下げる者と、自分たちをじとりと睨む者。
「……そ、その。助けてくれて、ありがとうございました!」
鹿目まどかはその2人に礼をする。その横で美樹さやかも慌てて頭を下げる。
桜の少女は笑って首を振る。屈託のない笑顔に、視線が釘付けになった。
「良いんだ。キミたちを助けられて良かった」
桜の少女が、ぱんと手を叩く。
「自己紹介がまだだったよね。ボクは
「私は、二階堂ヒロだ」
名乗った2人の少女に倣って、鹿目まどかと美樹さやかも自己紹介をする。
「私、鹿目まどかです」
「美樹さやか…です」
「あの、エマさんとヒロさんも、魔法少女なんですか?」
鹿目まどかは思い切って訊く。桜羽エマと二階堂ヒロの装いは、普段着というにはファンシーで、巴マミの衣装に近い雰囲気が感じられた。そして先程の身体能力に、大きな羽。答えが分かりきった問いをした気持ちだった。
桜羽エマは意味深に微笑んだ。今さっき見せた、花咲くような笑顔とは違う、どこかミステリアスさを秘めた表情で。
「ふふっ……うん、ボクたちは魔法少女だよ」
「キミたちが知ってるのとは、ちょっと違うけどね」
ふと検索したらハーメルンには無いことが判明した、まどマギ×まのさばのクロス二次。
なら俺が先駆者になってやらァ! ってことで勢いで書いたやつです。まのさば作品が2作もあるのに何してるんですかね私は。
一応この先の展開もうすぼんやーりと考えてはあるんですが、こっからは反響があれば書こうと思います。他の作品もあるのでね。
ちなみに私はまどマギ未視聴、ストーリー大筋はなんとか知ってる、反逆も以下同文、廻転は全く知らん。状態です。
まあどうせもしこれが続くとしたらオリ展開パレードだから問題ないな! はっはっは!
……本家設定と矛盾しないように設定だけでも調べておこ。