Blue Archive Fam-made Gamebook ゲーム開発部と未完成のゲーム   作:瑠璃色ゲンソウ

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旧実習棟の教材は、思ったより小さかった。透明な箱の中に大小の歯車が並び、台の左右から二本の取っ手が伸びている。取っ手を動かすと箱の中の歯車がずれ、噛み合わせが変わる。いちばん力が伝わる組み合わせになると、台座の扉が開く。歯車で力の伝わり方を学ぶ、一年生向けの実習器具だ。

アリス「宝箱です!」

ミドリは台の側面に貼られた札へ目を落とした。

ミドリ「中には予備のねじが入ってるみたいだね」

ミドリが言っても、アリスの期待はしぼまなかった。

左の取っ手は重い。腕を伸ばしきるほど引かないと、大きな歯車は持ち上がらない。右の取っ手は逆に軽く、少し動かしただけで小さな歯車がすべっていく。噛み合う位置は狭く、手を離せばどちらもすぐ元へ戻ってしまう。

アリスは左を引ききったまま、右の取っ手へもう片方の手を伸ばした。届きはするが、両手が塞がると箱の中が見えない。

アリス「これなら、アリスは箱ごと持てます」

ミドリ「持ち上げても開かないよ、アリスちゃん。お姉ちゃん、説明書を押さえてて」

ミドリが右の取っ手へ手をかけた。

机の上には固定具らしきものがある。これを使えば、重い方の取っ手は留めておけそうだ。

ユズは仕組みより、アリスの差し出した手を見ていた。

 

教材の脇には、以前これを使った生徒の書き込みが残っていた。歯車の横に回す方向、その下には何度も引き直した矢印。扉のふちには、誰かが描いた小さな鍵の絵まである。モモイはその鍵を指でなぞってから、透明な箱の方へ視線を戻した。

モモイ「開けたら先に進める仕掛け、って考えたら分かりやすいよね」

ユズ「そ、そうだね。いまは力の伝わり方を見せる教材だけど……」

ミドリ「お姉ちゃん、そこに立たれると箱の中が見えない」

モモイ「あ、ごめん」

机を囲む位置を変えるだけで、見えなかった歯車の並びが見えた。ユズは入口から一番離れた椅子に座り、モモイから受け取った説明書を膝の上で広げ直した。

アリス「この歯車、ちっちゃくて、よく狙わないと噛み合わないです!」

ミドリ「ゲームなら、小さい人しか通れない道も作れるかも」

モモイ「じゃあ、大きい人は壁ごと壊せる!」

ミドリ「それだと仕掛けがいらないでしょ」

アリスは手を引っ込めた。実物を壊すつもりはなかったが、壁を壊して進むゲームも少し遊んでみたい。ミドリに顔を見られて、慌てて説明書へ目を戻す。

アリス「今回は、ちゃんと扉から進みます!」

ユズが小さく吹き出した。モモイも笑い、透明な扉の前へ指を立てる。

モモイ「扉は開けたい。でも二人とも、同じことはできない。そういうのにしようよ」

言葉にしてみると、さっきまでただの教材だった箱が違って見えた。重い取っ手を引く人は、箱の中を見ていられない。軽い方を合わせる人は、相手が引ききるのを待ってから動かす必要がある。

モモイは机の固定具を手に取った。説明書には、実験の条件をそろえるために使うと書いてある。これで重い方を留めておけば、一人でも噛み合わせを探せる。

モモイ「道具でずるするのも、それはそれで気持ちよくない?」

ミドリ「ずるって言っちゃったよ」

ミドリは透明な箱へ顔を近づけた。噛み合う位置は、思ったより手前にある。アリスの力なら重い取っ手を引き続けるのは簡単だろう。ただし、どこまで引けばいいかは、中を見ているミドリから伝えなければならない。

ユズ「どっちから試す? 記録は、わたしがするね」

アリス「お願いします、ユズ! 開いたところも、ちゃんと見ていてください!」

モモイは腕まくりをして、二人の横に立った。

 


 

▶ アリスが引き続け、ミドリが合図して歯車を合わせる [NODE 003]

 

▶ 固定具を使い、誰でも開けられる手順を調べる [NODE 037]

 

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