Blue Archive Fam-made Gamebook ゲーム開発部と未完成のゲーム 作:瑠璃色ゲンソウ
古い筐体の中で、モモイのキャラクターが穴へ落ちた。
モモイ「いま橋があったじゃん!」
ミドリ「あっ、ごめん! 私がスイッチから離れたから、そっちの橋が消えちゃった!」
画面の左右には違う地形が映っている。片側のスイッチが、もう片側の足場を動かす仕組みだった。
アリスが二つの画面を交互に見た。
アリス「モモイの画面からでは、橋の先が見えません! ミドリ、そちらからはどうですか?」
ユズは攻略を言いかけて、やめた。ミドリが筐体の向こうのモモイを気にしている。次はどちらが先に押すか、二人とも同じことで迷っていた。
残り一回。追加のコインを出せるほど財布は重くない。
ミドリ「台を交代しよう。そっちだとどう見えるか、知りたい」
モモイ「でもいまなら、動く順番は覚えたよ。私が数えるから、一気に行けるって!」
ミドリがボタンの上に指を置いた。どちらにも、クリアできそうな手応えはある。
筐体の上では、名前も知らない二人組が交互に手を振っていた。宣伝用の映像では息ぴったりだったのに、実際に遊ぶと、同じ場所で何度も足が止まる。
モモイ「これ、絶対ボタンが遅れてる!」
ミドリ「さっきは押すのが早すぎるって言ってたよね」
ユズは画面をよく見ていた。入力自体は遅延なく受け付けられている。攻略法も見えている。口に出そうか迷っていると、モモイがこちらを振り返った。
モモイ「ユズ、もしかしてもう分かってる?」
ユズ「う、うん……でも、いま答えを言ってもいいのかなって」
アリス「アリスも考えたいです! パーティーは、まだ負けたままでは帰れません!」
遊んでいないアリスまで、ずいぶん悔しそうだった。モモイはその顔を見て、もう一度レバーを握った。
モモイ「よし。ヒントはまだなし!」
ミドリが片方のスイッチを押すと、モモイの画面の橋に明かりがついた。次の瞬間、別の足場が動く。周りから見ている二人には両方分かるが、操作している二人にとっては自分の画面が全てだ。
アリス「モモイ、右です! あ、ミドリも右に……いえ、ミドリから見ると……!」
モモイ「あれ? 右ってどっちだっけ!?」
アリス「す、すみません! アリスの説明では、分からないですよね……」
ユズが二つの画面の間を指した。中央に、相手の位置を示す小さな矢印がある。モモイは初めて気づいたように目を丸くした。
モモイ「あ! こんなとこにヒントがあったんだ!」
ミドリ「私も気付かなかった……画面はよく見てたつもりだったんだけど……」
次に落ちた時は、誰もボタンのせいにはしなかった。二人の操作をする側と見ている側とで、分かることがこんなにも違う。
ユズはポケットの小さなメモ帳を開いた。攻略手順は書かず、二人が声をかけた場所にだけ丸を付ける。驚いて叫んだ時と、相手の返事を待った時とでは、同じ協力でも手触りが違っていた。
ミドリ「入れ替わったら、さっきお姉ちゃんが何に困ってたか分かるかも」
モモイ「それはそうだけど、せっかく覚えたんだよ? 次ならいけるって!」
どちらも、今度こそ最後まで行きたかった。ヒントをみて手順をしっかり理解したはずだ。相手の画面から何が見えるかは、まだ知らないが。
アリスは画面の残り時間を見て、二人の肩越しに身を乗り出した。
アリス「次できっとクリアできます! アリスはもっとふたりを応援します!」
その申し出にミドリが笑い、モモイも少し肩の力を抜いた。
▶ 左右を交代し、相手の画面を体験する [NODE 028]
▶ 覚えた手順で、息を合わせてクリアを狙う [NODE 021]