吾輩は本である。 ~狐耳少女と行く、コミュニケーション縛りの冒険譚~ 作:鏡路の一般兵(喰い断Ⅸ)
ズンッ、という、巨体が大地を踏みしめた時特有の音が鳴る。
見たことのない魔物、ゴブリンの群れを従えていた漆黒の怪物と、サイクロプスと戦った時のように巨大化したクロちゃんの対峙。
クロちゃんの方はあれだけ大きくなったのにも関わらず、まったく音が出ないのが不思議ではあるけれど。
二つの黒い巨体は真っ向から対峙する。
先手を取ったのは怪物の方。
しなりをつけて右の触腕を振るって襲い掛かる。
鞭のように放たれるそれは素早く、単純に見てからの反応では追いつかないほどである。
それに対するクロちゃんが選択したのは意外にも受け止めること。
戦い慣れしていないのであれば、痛い思いをしたくないと回避を選択しそうなものだが、黒い巨体は素人丸出しの動きでありながらも前に出た。
あれで意外にも戦闘の勘というか、センスはあるのかもしれない。
触腕の先端にある矢じりのような外骨格で殴られることも厭わず、クロちゃんは両方の腕で抱きかかえるようにして怪物を強引に拘束する。
それを見て、切り落とせるかどうかを軽く考える。
拘束された右の触腕、それは受け止められると思っていなかったらしく無防備に伸ばしきられており、一目見る限りでは剣を当てることさえ出来れば断ち切ることも容易に思える。
だが、何事も難しいのは攻撃を当てることの方だ。
クロちゃんが抑え込んでくれたのは右の触腕だけであり、左の触腕は自由であるし、拘束された右腕を自由にしようとぶんぶんと振り回して攻撃を仕掛けている。
そんな風に触腕が鞭のように振り回されている中にあーしが飛び込んで拘束された側を切り落とせるかと言えば……。
まあ、無理だろう。
クロちゃんが触腕を両脇に抱え込んでくれるならいけるだろうが、明らかに戦い慣れていないこの謎の巨人にそういう事は恐らく期待できない。
両脇に抱え込もうとした途端、今は抑え込めている右の触腕の拘束が緩み、結果として両方が自由になる姿があーしには容易に想像できる。
そう考えると、狙うべきはクロちゃんが拘束していない左の触腕。
自由に動かすことはできているがクロちゃんの拘束から逃れようと単調に暴れるだけになっている方を狙い、返す一撃で残った方も切り飛ばす。
これだけで、あの化け物の脅威は一気に低下する。
あの手の触腕や触手を持つ魔物はリーチの長さが脅威ではあるが、それと同時にその触腕が最大の弱点でもある。
なにせ、鞭のようにしならせて攻撃に使うという構造上、腕全体を硬い外骨格で覆われて継ぎ目の部分にしか攻撃が通らない魔物や、手で何かを握って使い捨てができる武器で対抗してくる魔物に比べると、柔軟性に優れた触手というのはどうしても切るという行為に弱くなっている。
切った触手を片っ端から再生される場合は厄介ではあるが、あの見た目なら流石に再生はしないだろうなと、あーしは触腕の先っぽについた矢じりのような外骨格に目を向ける。
魔物の一部には切っても切っても無限に触手を再生させてくるようなタイプもいるが、そういった魔物は共通点として「触手の構造がシンプル」というものがある。
触手が切られ、切られた所を伸ばして再生……なんてことを行う時、触手の先にあんなものがあれば、切られた所から新たに触手を伸ばして元通りというわけにはいかない。
あーいう外骨格は蟹の爪や足のように、再生するには脱皮のような工程が必要になるものなのだ。
ともかく、クロちゃんがいつまで持つか分からない以上。仕掛けるのは早い方がいいのは間違いない。
今は巨体同士の戦いもあってゴブリンは逃げることもなく、遠巻きに眺めているだけだが、いつあの怪物から命じられて死地に足を踏み入れるかもわからない以上、あーしのタイミングで仕掛けられるのは今だけだ。
「クロちゃん! 抑えてない方の触腕を狙う!!膝を借りるから、もうちょっとだけそのまま頑張って!!」
『え!? 抑えてる方じゃないの!?』
だから、最低限の連係として、あーしは自分の狙いとクロちゃんにやって欲しい事を伝えて駆けだした。
答えは無い。
巨人は音も無く戸惑った様子を見せているが、その戸惑っている様子こそがあーしの意思が伝わっている証拠であると今は割り切っておく。
拘束から逃れようとクロちゃんを狙って振り降ろされる触手を切り落とすために必要な高さにはあーしの跳躍力では届かない。
触腕の根本……怪物の肩のあたりを狙うのであれば届くだろうが、そうなるとある程度近づいてから飛ぶ必要があり、それはそれでリスクがある。
なにせ、あの怪物の下半身には不自然に細い足を補うためか、スカートのように大量の触手が生えているのだ。
触腕と比べると個々の長さも太さも大した事がないとはいえ、それでも近づき過ぎれば攻撃を仕掛けてくるのは想像に難くない。
下半身の触手を狙うのは厄介な触腕を切り落とした後にするべきだと改めて考えをまとめ、触腕が振り降ろされるタイミングとあーしが跳躍するタイミングを合わせ……。
「ハイッ!!!」
「ぐぅぅぅっるっううううぅ!!!!」
『おおおおおお!?』
ズバンッと下から迎撃する様に一閃。
あーしが振り上げる力だけではなく、怪物が振り降ろす勢いを乗せて自由に動かされていた方の触腕を断ち切る。
残念ながら触腕が断ち切られた痛みにより、怪物が絶叫を上げながら大きく暴れてしまったことで返す一撃でもう一方の触腕もとはいかず、クロちゃんも思わず手を離してしまっていたがまずはこれで十分。
この手の魔物から遠距離攻撃の選択肢を減らしたというだけでも初手としては大戦果だ。
故にあーしはこの戦果をより確実なものにするべく行動を続ける。
「クロちゃん!これ、踏み潰して!!」
『!? 分かった!!』
怪物が痛みに悶えている間に、切り落とした後もビタンビタンと動き回る触手を更に四分割。本来は触手だけで動いてきたりしないように細切れにしたり、植物系なら燃やしたりするものなのだが、クロちゃんのような巨大な味方がいるなら踏み潰して貰うのが一番。
原型が残らない程にぺしゃんこにしてしまえば、触手側だけでも再生するタイプの魔物だったとしても安心である。
「ぐぐぐぐぐぐ……」
「ギャギャッ」
「ギャー!!」
そして、安心できる材料はそれだけではない。
あーしの言葉に従ってクロちゃんが切り落とした触手にも油断なく迅速に対応した姿を見て、戦局が不利と判断したゴブリンたちは逃げ腰となっている。
あと一押し、何かもう一手があれば群れが瓦解すると確信できるほどに明確に統率を失っているのだ。
少し不利になっただけでこの有様というのはなんともお粗末な連携、ずさんな信頼関係ではあるものの、これはゴブリンリーダーやゴブリンキングといった同種ではなく、異種族によって従えられた群れであることが幸いした。
今回遭遇したゴブリンの群れは同種特有の信頼関係や本能によって構成されたものではなく、異種族が力によって従えたものであったが故に、その規模と危険度に反して群れの統率が甘くなっていたのだ。
「ギャギャイ!ギャイ!」
「ギャーギャー!!!」
「ぐるるるうううううう!!!!」
事実、まだゴブリンたちはギリギリで逃げ出してはいないとはいえ、怪物に対して積極的に協力する気はなくなっているようで、あーしたちに襲い掛かってくる様子はない。
つまり、このまま有利に戦いを進めることができれば、残ったゴブリンは戦力として計算しなくて済むということだ。
「あーしは残った触手を切り落とす!クロちゃんは……巻き込まれないように!」
故に、ここで重要なのはまだ余裕があると見せること。
怪物とクロちゃんが互角なのはそのサイズ感からしても当然のこと、しかし、あーしのような人間の小娘が怪物に対して有利に事を進めればその衝撃は大きい。
なんだ。強いから言うことを聞いていたけど、あんな小さい奴にやられるのか。
そう思わせることができればこちらの勝ち、それだけでゴブリンたちの士気は崩壊する。
ゴブリンの士気が崩壊すれば怪物と戦っている時の横やりを気にする必要もなくなるし、片方の触腕を失った怪物相手であれば、討伐も進めやすくなるというわけだ。
ビュン、ビュンと。
縦に振られる触手はステップで、横に振られる触手は縄跳びの容量で縦に飛んで回避しながら距離を詰める。
これが2本残っているのであれば絶え間ない連撃で近づくことも難しかったかもしれないが、一本だけならば話は別、容易く避けられる。
反撃を入れられるとは言わないが、回避に徹していればそう簡単に当たるものではない。
時折しなりを生かして飛んでくる矢じりのような外骨格を剣でいなしつつ、触手を断ち切るタイミングを計っていると、手元からピシリと嫌な音が鳴った。
「うっそでしょ」
思わず、素の声が出る。
今日、今朝買い直したばかりの剣、その刀身に罅が入っていた。
★
スミスのおっさん、粗悪品を掴ませやがって。
なーにが店に置いてある中で一番良い奴だよと。
最初に思ったのはそんな気持ち。
しかし、今はそんなことを考えている場合ではないと思い直し、即決で触腕を断つために剣を振るう。
今の状況はこのままタイミングを待っている間に更なる破損が起こるか、それとも致命的な破損が起こる前に隙を見つけられるかの2択。更なる破損を引き起こす前に残った触腕を切り落とせる可能性も決して低いものではない。
だが、既に片方の触腕を切り落とされて慎重になっている怪物を相手に、低いものではない程度の可能性を通せるかと言えば……多分、通せない。
飛んだり、跳ねたりするだけでは回避できない攻撃というのはどこかのタイミングで必ず飛んでくるものだ。
それを剣無しで全ていなせというのは流石に無理がある。
回避主体の立ち回りは自分が攻撃できてこそ、回避できない攻撃が飛んできそうな時は、それを防ぐために踏み込む必要があるとパール婆ちゃんも言っていた。
こうなった以上は仕掛けは最速、早ければ早い方がいい。
だから、あーしは剣を振る。
最速最短、これ以上の攻防を拒絶する一撃。
「せいっ!!」
「ぐるるぅぅっ!?」
駄目だった。
とにかく速度を優先していたとはいえ、甘い体勢で振るった一撃は触腕の中ほどまで刀身が喰い込んだ後、バキィという音と共に剣がひび割れから砕け、へし折れる。
幸いだったのは今まであーしが無傷で攻撃をいなし続けていたこともあってか、怪物にとっても武器が突然へし折れたのは予想外だったこと。
思わずあっけにとられる怪物を視界の端に置きながら、あーしが距離を取る間も追撃らしい追撃はこなかった。
『ぶ、武器が……』
「ごめんクロちゃん。やらかしちゃった。」
剣が折れた事に音も無く困惑してあたふたとした様子を見せるクロちゃんの前で何でもないように振舞い、まだ余裕があるように見せかけながらあーしは不良品を掴まされた怒りを内心に押し込めながら考える。
魔物との戦いで武器が壊れること自体は決して珍しい事ではない。
買ったその日に破壊されるのが予想外なだけで、自分よりも遥かに大きな魔物を相手に挑む以上、むしろ、壊されない方が珍しいというのは知識としてわかっている。
幸い、あーしは生まれてからついこの間まで戦闘中に武器が破損することは経験していなかったが、この状態で壊れるかと思ってしまう。
残った刀身は3分の2ほど、根元から圧し折れてはいないので最悪というほどの状態ではない。
しかし、最悪ではないというだけで、分厚い肉と皮を持つ魔物を相手に武器が破損するというのは単純にリーチが短くなる、武器と体で重さのバランスが崩れるという以上の問題点がある。
しなやかな動きができる太さの触腕はともかく、問題となるのはぶっとい怪物の首。
そんなものを相手にしようとすると、折れて短くなった刀身では表皮から少しの所に届かせるのが精一杯であり、物理的な急所にまでは攻撃が届かないと言わざるを得なかった。
あーしは生まれながらの亜人であり、人間離れした魔力を持っている。
しかし、それでも素手で魔物を仕留められるかと問われれば正直厳しい。
相手が逃げ出さず、無防備でいてくれるならばなんとかだと答えざるを得ない。
一応、格闘術自体はそれなりに収めているのだが、対魔物戦においてはお遊戯よりはマシという程度。よほど有利な状態でなければ接近戦は挑みたくないというのが実情だ。
「ぐううううるぅうううううう!!!」
「ギギギギー!!!!」
「ギャヤヤー!!!」
それ故に、武器が破壊されたことで生まれた両陣営の僅かな硬直。
この硬直を打破するため、先に動いたのは怪物の方だった。
大地に響くような咆哮を上げると同時に、多数のゴブリンがこちらに走り出す。
あーしの武器が折れ、それと同時にクロちゃんが困惑、若干の放心状態となったことで戦局が変化、怪物がゴブリンの統制を取り戻したのだ。
「ったく!面倒な!!」
『う、うおおおお!? なんだ!? さっきと全然違うぞ!?』
残された触腕が振るわれ、それをクロちゃんが受け止めようとする所にゴブリンが群がる。
消極的な動きになっていたはずのゴブリンたちがいきなり積極的になったことに虚を突かれたのか、ゴブリンごと触腕に薙ぎ払われた黒い巨人が地に伏せた。
『まてまてまて!!なんだお前ら!?』
四肢にゴブリンが群がり、抑え込んだ上から触腕が幾度も叩きつけられる。
まずい。
このままクロちゃんがやられれば、そのまま怪物とゴブリンの目があーしに向くのは明らかだ。
しかし、武器が折られた状態ではゴブリンはともかく、あの怪物に勝利することは難しい。
最適解はこの場から逃げ出すことではあるが、あーしを助けるために戦ってくれたクロちゃんを置いていくというのはありえない。
クロちゃんはまったくよく分からない存在で、魔物か精霊かも分からないような不思議生物だが、それでも村で一冬を過ごした仲間であり、それなりに愛着も沸き始めている。
言葉を話さずとも、必死に動きで意志を伝えようとして、意思が伝わらなければがっくりと肩を落とすような仲間を見捨てるわけにはいかない。
「ならば――!」
あーしは素早く周囲を見渡すと、最初に戦ったゴブリンの遺骸を確認。
彼らが持っていた古びたぼろ剣――そのなかでもまだまともそうな物を拾い、折れた剣と合わせて二刀を構え、ゴブリンに圧されるクロちゃんの元へと向かう。
振るわれる触腕は折れた剣で強引に受け流し、ゴブリンはぼろ剣で切り払う。
ぼろ剣の切れ味は見た目通りにあまりよくないとはいえ、個々の強さは大したものではないゴブリンを仕留めるのにはこれで十分。
重要なのはクロちゃんを解放することだ。
『わ、わざわざごめん! さっさと源影を消して出し直せばよかった!』
「大丈夫大丈夫! 気にしないで!またさっきみたいになったら助けるから!!」
『いや、ええと……。そういう意味じゃないんだけど……』
ともかく、クロちゃんの救援自体は問題無く成功する。
クロちゃんはいつものように言葉一つ発さずに申し訳なさそうな様子をしているが、申し訳ないのはあーしの方。
あーしが剣を折られていなければ、先ほどのような事態はそもそも発生しなかったのだ。
武器の良し悪しがあるにしても、それを振るう前に気が付けないのは使い手の問題。問題無いと思っていた武器がへし折られた時点でこちらに落ち度があったのは間違いない。
だからこそ、この失態を挽回するためにも、この状況をどうにか打開したいのだが……。
この状態は手詰まりなんだよなぁと、あまり褒められたことではないけど、ノーザンヒルの近場に引っ張って、援護を受けられるようにするべきかと考えた所で――。
ドオンという轟音と共に、あーしたちの背後から飛んできた何かが怪物の胸の当たりで爆発を起こした。
『なんだぁ!!』
「ぐうううぅぅうおおおおおぉぉお!!!!」
「ぎゃい!?」
一瞬、周囲の動きが止まる。
怪物は悲鳴を上げ、クロちゃんとゴブリンは困惑をする。
この場において動けるのは、何が起こったのか、誰がその爆発を引き起こしたのか分かっているあーし1人。
「――仕事が早いね、やるじゃん」
周囲が状況を理解する前にあーしは飛び、先ほど断ちきれなかった触腕の残りへと折れた剣を振るって残された部分も切り落とす。
本当なら首を狙いたい所だがまだまだ下半身の触手は無傷でもあるし、折れた剣でというのが流石にリスクがある。
今はこれが最低限の仕事として、下がるのがベターな選択だ。
「クロちゃん!まだまだ追撃がくるよ!離れて離れて!!」
『み、味方?』
まだ呆然としているクロちゃんに声をかけ――、いや、より正確にいえば、あーしの声に反応しているクロちゃんは味方だと攻撃の主に知らせるために声を張り上げる。
果たして、あーしの指示に従った黒い巨人への攻撃は飛んでこず、二度、三度と触腕を失った漆黒の怪物を狙う爆発音が続く。
「ギギギギー!!!」
「ギャッッギャイ!!!」
「ぐうううううう……!!」
そうなると、もう駄目だ。
一時的に盛り返していたとはいえ、早々に怪物が片方の触腕を失った時点で逃げ腰だったゴブリンは耐えきれず、謎の砲撃に怯えて離散していく。
怪物もそれを留めようとしているようだが、自分も爆発による攻撃を受けていることもあってか少しずつではあるが森の奥へと退き始めた。
逃がしたくはないけれど、仕留めきれないだろうなと、あーしは自分の心を落ち着ける。
対大型魔物戦の基本は足を崩せるかどうかだ。
大型の魔物は一歩で大きな距離を移動できる分、人間や小型の魔物と比較して圧倒的に動きが早い。
傍目ではゆっくり歩いているようであっても、人間が走っているのと同じかそれ以上の速度で動いているというのも珍しくはない。
しかも、その巨体に応じたスタミナがあるのだから猶更だ。
安易に追撃を行えば、走って疲弊した分でスタミナが逆転、魔物の反撃で全滅ということも当然のように起こる。
流石に
触腕を先に狙った判断は間違っていなかった。
ブレトンで戦っているのであれば、あーしが触腕を切り付ける間に村の皆が足を狙ったり、パール婆ちゃんがまとめて燃やすという芸当も不可能ではなかっただろう。
ゴブリンの群れを抑えるだけの人員もいただろうし、一度の戦いで狩ることも不可能ではなかったはずだ。
だが、戦えるのがあーしとクロちゃんだけの状態で足を狙って逃さず狩るなど高望みも甚だしい。
対魔物戦の基本は生き残ること、強大な魔物を逃がしたくないからとして無理をして戦力を削るなどあってはならない。
つまり、これは最善手だったと、そう納得するしかないのが現実。
怪物が山の奥へと消えて見えなくなった頃。
ドオン、ドオンと断続的に遠くから放たれていた砲撃の音が止む。
ダイヤさんにお礼を言わないといけないな。
そんな事を考えながら、あーしはいつのまにか元のサイズに戻っていたクロちゃんが引きずるように持ってきたポシェットを背負うと、あーしは小走りでノーザンヒルへの街へと戻る。
恐らく、ノーザンヒルの城壁の上あたりにいるであろう砲撃魔法の使い手、兎耳のギルド長に話すべき内容を考えながら。