えーほんと?
こちらはPixivに投稿済みの同タイトルの作品に一部加筆修正をしたものになります。
今回のはこれでした。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=27816575
妹いろPのお帰りなさい
(廊下を歩く音)(10秒まで)
(鍵を開ける音)(ドアの開く音)(続けて閉まる音)(鍵をかける音)
(スリッパで廊下を歩く音)(5秒まで)
「お帰り、兄さん/姉さん。今日もお仕事おつかれさま。上着預かるね」
(遠ざかる足音)(近寄る足音)
「今日のお仕事はどうだった? そっか、最近ずっと忙しそうだね。そろそろ休み取ったら? 私? んー、兄さん/姉さんが休んでくれるなら、その日に合わせようかな。ごはんは? 食べてきた? そっか」
(少し間)(3秒程度)
「寂しい? 別にそんなことは。ただ最近夕食一緒に食べられないなって思って。忙しいの知ってるんだけどさ。一緒にゲームしたりもさ、あんまりできてないじゃん? 寂しくはないけど、遊びたいなって。寂しくはないけど」
(少し間)(3秒程度)
「ちょっと、笑わないでよ。はいはいそうです、寂しかった。少しだけ、ほんの少しだから。あーもう怒ったから。許さないよ。だーめ謝っても遅い」
(少し間)(5秒程度)
「え! 休み取ってくれるの? ホント? じゃあ、許してあげようかな」
(少し間)(3秒程度)
「ドライブとかいいよ。家で一緒にだらだらしよう? 一緒にご飯食べて、ゲームして、兄さん/姉さんの好きな耳かき、してあげるよ」
(ごく短い間)(1秒程度)
「今日してほしいの? すっごい食いつきよかったな……いいよ、耳かき持ってくるから待ってて」
(遠ざかる足音)(物を探す音、ここから)(マイクから少し離れた位置で)
「えーっと、確かこのあたりに……あったあった」
(物を探す音ここまで)(近づく足音)(マイクの位置を戻して)
「はい、膝に頭乗せて。どっちの耳からする? まず右? わかった。動かないでね」
(耳かき開始)(外側から順に)
「どう? くすぐったい? ちょっとがまんしててよ。兄さん/姉さんすぐくすぐったがるから危ないんだって。そうそう、いい子いい子」
(耳かき継続)(少しずつ内側に向かう)
「このへん気持ちいいでしょ。兄さん/姉さんここ好きだもんね。今度私にもやってよ」
(耳かき継続)(穴の浅いところまで)
「痛くない? このあたり敏感だもんね。ちょっと力入れると痛いからさ、優しくするね。私にするときも優しくしてね」
(耳かき継続)(穴の中ほどをぐるっと一周して)
「はいおしまい。あ、今のいやだった? え? 良かった? じゃあもう一回」
(同じ動作をもう一度)
「兄さん/姉さん、顔すごいよ。うん、お見せできない感じになってる。大丈夫だって私しか見ないから。じゃあこれでおしまいね」
(耳かき終了)(耳かきをゆっくり抜いて)(マイクに近づいて)
「ふぅーっ……あはは、今びくってした。びっくりした? ごめんって、そんなにびっくりすると思わなかったから。もうしないから……ふぅーっ……あははは、またびくってした」
(少し間)(3秒ほど)
「わかったって、次にやるときは声かけるから。あーあ、せっかく面白かったのに。え? 何も言ってないよ。はい反対側ね」
§
「だあああああっっっ!!!」
イヤホンをぶん投げた。ASMR用のワイヤレスイヤホン、安くはないものだけど、投げざるを得なかった。言うわけないだろ! 酒寄彩葉が! こんなこと! 言ってるんだよなぁ。
「どうどうどうはじめ? 面白かった?」
この音声ファイルを持ってきたかぐやちゃんはにっこにこ。てめぇこの宇宙人め、許さねえぞありがとう。
「面白かったもなにも、事前に何の説明もなくこれ聞かされた私の気持ちを説明してよ100文字以内で」
「えー? かぐやちゃん最高! いいもの持ってきてくれてありがとう、推しちゃう。大学生の彩葉めーっちゃかわいいね! 兄さん/姉さん呼びされたい欲満たされちゃう!」
「0点だ馬鹿!」
うそです100点です。かぐやちゃんに照れ隠しのヘッドロックをかましながら困った笑顔をこちらに向けている所長を睨む。なんで私、この人の前でこんな音声聞かされてるの。どんな羞恥プレイ?
「なんでこんなん作ったんですかっ」
「ちょっと研究資金が足りなくて」
「資金繰りのために売っていいものと悪いものがありますよね?? 誰ですかこの台本書いたのっ」
「乃依くん」
「ギリ許せる人きたな……」
「乃依くんがね、彩葉ちゃんに兄さん/姉さん呼びされたい層は一定数いるから狙い撃ちしようって」
「それで年上の義妹の声を売る年下の義兄がいるもんか」
「いるんだよねぇ」
「いましたねぇ……で、なんで私に聞かせた馬鹿金髪ギャル宇宙人」
「えー、面白そうだったから?」
「ゆるさねぇ」
自分の楽しみのために私を使うんじゃねえよこのクソガキ。いいもの聞かせてくれてありがとうなっ推しの供給は無限にあっていいからさ。でもそれはそれとして許さん。
「でもでもでも、ヤチヨのと、真実のと、芦花のもあるから。あと帝のも!」
「なんであるんだよ」
「あのときみんなで研究の資金繰りなんとかしてくれたんだよねー」
「まあなんて麗しい友情と兄妹愛なんでしょうってやかましいわっ」
「で、どうするはじめ? 聞く?」
かぐやちゃんはにこにこしながら私にUSBを差し出した。期待されてる、これらを聞いたらさぞかし私が面白い反応をするんだろうって。無下にするのは簡単だ、断ればいい。もう二度と研究所にこんないかがわしいもの持ってくるなって叱ればいい。
でも、ちらりと所長を見る。新しく肉体を得てもりもり動き回るかぐやちゃんを、嬉しそうに見つめる慈愛に満ちた表情。あぁもう、わかったよ、わかりますよ、喜ばせたいですよね、このかわいらしいお姫様。
ぶんなげたイヤホンを拾った。
「聞いてやりますよ」
あーあ、私の耳壊れちゃうな。
§
帝お兄様のよしよしひつじかぞえ歌
(スズムシの音)(音量控え目、10秒まで)
(畳の上を近寄ってくる足音)
「入るぞ」
(ふすまの開く音)
「まだ起きてたのか。根詰めるのもいいけど、寝ないと身体に毒だぜ。布団、敷いてやるからもう寝ろ」
(ふすまの閉じる音)(移動する足音、正面から右側へ)(右側から押し入れを開く音)
(布団を出す~敷く音ここから)(マイク右側から)
「うっしょ……ったく世話のやける妹/弟だ」
(布団敷く音ここまで)(マイク右側から)
「おい、もう寝る時間だ、こっち来い」
(立ち上がる音)(畳の上を歩く音)(布団をめくる音)(布団に横になる音)
「そうそう、そうやって大人しく寝りゃいいんだ。無理すんなよ。そんじゃ俺も」
(布団をめくる音)(布団に横になる音)
「ん? ほらお兄様も添い寝してやるから寝ろ。逆に寝れない? 何言ってんだか、小さい頃はいつもこうやって寝てたろ、お兄ちゃん一緒に寝ようって」
(少し間)(3秒程)
「もうそんなガキじゃないって? 寂しいこと言うなよ、お兄ちゃん泣いちゃうぜ。まあほら、最近がんばってんだろ。たまには甘えなあかんよ」
(布団を優しく叩く音)(ここから)(音量控え目に)
「ええこやな。でもがんばりすぎや、たまには休み? お兄ちゃんが羊数えたるから目ぇ閉じ。よしよしもしたる」
§
イヤホンを外して深呼吸。これ真実さん聞いて狂ったのでは?
「帝のどうだった?」
「正直に言うんで所長席外してもらっていいっすか?」
「あ、はい、じゃあかぐや、満足したらおしまいにしてね」
「はーい」
所長が実験室を出て行ったのを確認してから言った。
「妹にやってあげたいことを視聴者にやるのは不器用すぎる」
「わかるー。かぐやもそう思った。はい次」
「えっまだやるの?」
§
まみまみと一緒にごはん
(茶碗をテーブルに置く音)(2回)
(汁椀をテーブルに置く音)(2回)
(大皿をテーブルに置く音)(1回のみ)
(小鉢をテーブルに置く音)(2回)
(取り皿をテーブルに置く音)(2回)
(箸をテーブルに並べる音)(2回)
(しばらく間)(3秒程)
「はーい、洗濯物たたみ終わったからいくよー」
(近付いてくる足音)
「おぉー、今日もごちそうだねぇ。別に普通? そんなことないよ。いつも手間かけてくれてありがとうね」
(椅子を引く音)(座る音)
「じゃあ、いただきまーす。今日のメイン、鯖味噌? うん、大好き。おいしいよねー、魚はふわふわで、味噌はちょっとしょっぱくて甘くて、生姜の香りがきいてて。え? バター少し入れるの? へーすごい、それでこんな味になるんだ」
(汁椀を持ち上げる音)(飲み込む音)(汁椀をテーブルに置く音)
「お味噌汁おいしい! だしの素と味の素? いいじゃーんおいしいんだから。大切なのはおいしいことと、気持ちでしょ。ワカメ入ってるの嬉しいなー」
(小鉢を持ち上げる音)(飲み込む音)(小鉢をテーブルに置く音)
「ほうれん草のおひたしっていいよねー、すぐできておいしい。これすっごく、好きだよ、ありがとう」
§
ため息をつきながらイヤホンを外した。いやあの、胸焼けする。
「あれはじめ、まだ半分だけどもうやめるの?」
「これ真実さんちの幸せな食卓じゃん……てか旦那さんよくこれ売るの許したね」
「結婚する前だったからねー。というかー、真実の旦那さんこれ聞いて『この幸せな食卓を守りたい!』って結婚決めたんだって」
「ド甘すぎる。おまけに飯テロ。鯖味噌食べたい」
「食堂のAセット鯖味噌だったよ。じゃあ次いこっか」
「はーくそ、どんどんこいやっ」
§
あなたに特別な感情を持ってる親友と、図書館で自習
(絨毯の上を歩く音)(10秒まで)
(椅子を引く音)(鞄を机に置く音)
「お待たせ。ごめんね、思ったより長引いちゃって。待たせたよね」
(少し間)(3秒程)
「待ってない? またまたー、気を遣わなくていいよ、特に私にはさ。むしろもっと甘えてほしいなー、なんてね。何の課題やってるの? あ、共通科目の。私もそれやろうかな」
(鞄から物を取り出す音)(ファスナーを開ける音)(ノートを開く音)(シャープペンをノックする音)
「これさー、ちょっと難しくない? 何か参考になるものある? あ、見つけてるんだ、どれどれ」
(マイクに近づいて)
「へー、それ使うんだ。うんうん、なるほどね。確かにこのあたりとかそれっぽ……あ、ごめん、近かったね」
(マイクから離れて)
「参考書は使い終わってから貸してくれたらいいよ、それまで別の課題やるからさ」
(ペンでノートに書き込む音)(5秒まで)
「んー……これは、ここと繋がってるから、こうで」
(ペンでノートに書き込む音)(5秒まで)
「あ、ちょっと違うかも。こうかな」
(少し間)(3秒程)
「え? 違うの? これはこっち……あー本当だ、あっという間にできた。ありがとう。かわいい上に天才。はなまるあげる」
(少し間)(3秒程)
「大げさって、別に褒めすぎたりもしてないって。がんばり屋さんの君のことはどれだけ褒めても足りないから。もっと褒めさせて?」
(少し間)(3秒程)
「ならもっと褒めてみろ? 言いますねぇ~。じゃあまず、そうだね。いつもがんばっててえらいよ。ちょっと休んでほしいくらい。勉強教えてくれるの助かってる。ありがとう。参考書探すの上手なのすごいね。それから、字がきれいなの、好き。好きだよ」
(少し間)(5秒程)
「字が、きれいなとこがね」
§
「しんどい!!」
勢いよくイヤホンを引き抜いた。耳の中擦り傷できたかも。いやでもさぁ、なんなの、芦花さんって自傷癖でもあるのか? 自分の身を鰹節みたいに削って出汁取るのやめて?
「芦花の良かったでしょ? はじめこういうの好きだよねー」
「嫌いじゃないけど、音声の宛先のツラが見え隠れすんのは萎える」
「あ、やっぱ気付いてる?」
「これ気付いてないの所長本人だけでしょ、あのクソボケ、芦花さんスポンサー様だからね?」
「まー彩葉だからねー。じゃ次で最後ね」
「なんでもこい、負けねえ」
§
なんでも教えてくれるyachi8000
§
「待て音声止めろ」
「えー?」
「タイトルでオチてる」
「まあまあ座って聞いてよ」
§
「ヤオヨロ~! みんな生きるのはどうですか? 良いことあった? それとも泣いちゃいそう? よしよし、全部大丈夫。どんなに孤独な道のりでも、ヤオヨロ構文のせいでライブのアーカイブがギャグに見えるって言われたヤッチョよりはマシだよ。じゃ、早速シャンプーしよっか。脈絡? そんなの必要かにゃー? 君はヤッチョにいいこいいこされて気持ちよーくなってればいいんだよ。はい頭洗うよ!」
(シャワーの音)(5秒まで)
(マイクから少し離れて)(泡立てる音)(5秒程かけてマイクに近づける)
「ではヤッチョが頭を洗ってしんぜよう~」
(マイク中央、上気味)(泡立てながら洗う音)
「おきゃくさま~かゆいところはありませんか? ない? これあるって言われたらどうしたらいいんだろうね。せっかくだからおしゃべりしようか」
(泡立てながら洗う音)(マイク周辺を近い距離を保ちつつ少しずつ移動させながら)
「邪馬台国って知ってる? 知ってるよね。あれの正確な場所ヤッチョは知ってるんだよねー。だから歴史学者さんが色々言ってる時に素人質問したいなーって思うんだけど。あ、だめ? やめた方がいい? そうだよねー」
(泡立てながら洗う音)(マイク右側に寄せて)
「あとねー、みっちーが裏切った理由なんだけど。聞きたい? あれ、聞きたくないの? なに? 深淵を覗きたくない? えー覗いてほしいんだけどなぁ」
(泡立てながら洗う音)(マイク左側に寄せて)
「今度徳川埋蔵金取りに行こうね。ちゃんと場所覚えてるから。そしたら大金持ちだねー、お城に引っ越しちゃおうか。はいおしまい」
(シャワーの音)(5秒まで)
「さっぱりした? さっぱりしたねー。じゃあ乾かすのは、かぐやに代わるね」
§
背筋に悪寒が走った。そうだ、この宇宙人が何もなくこんな音声を聞かせてくるわけがない。今までのは全て囮、本命はここから。所長が大学生だったとき、ヤチヨがかぐやちゃんを呼ぶわけがない、つまりこの音声は、新作。
イヤホンから逃げるのがほんの少し遅れた。それは敗北を意味した。
「かぐやっほーーーーー!!!!!! 月から来たかぐやだよっ☆ はーいじゃあサイッキョーのかぐやちゃんがBAKUONドライヤーしてあげちゃうぞっイエーイフルパワーだZE!!!!!!!」
震える手でイヤホンを外した。鼓膜ないなった、マジ、マジふざけんな、このオチは読めてたのになんで逃れられなかった。
「どう? びっくりした? かぐやもASMR出したかったから作ったんだー。買ってね」
「ぜったい、やだっ!」
買います。
第二部はこんな感じにやります。
これシリーズとして分けた方がいいのかな、どうなんだろ?
それではまた明日。