こちらはPixivに投稿済みの同タイトルの作品に一部加筆修正をしたものになります。
今回のはこれでした。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=27818343
かぐやちゃんとヤチヨのパラメータが安定してきたため、週に何日かは所長の家で過ごしてもらっている。研究所で過ごしてもらう方が不測の事態に対応できるんだけど、私たちが目指している「生活させること」はこの研究所の籠の鳥にすることではない。二人が好きなように好きなところで過ごし、好きなことをできることが一番良い。そういうわけで、今月から所長の家でお留守番を実践している。
こうなると日常生活が段々濃密になる。まあ要するに……
「ちょっと、多いんじゃないかなって、思うんですよ。どう思われますか所長?」
「なんのはなしかな」
「こっち見て話ししましょうか稀代の大天才。えぇ確かに英雄色を好むとは言いますが」
「誤解だって」
「今週、かぐやちゃんの股関節、何回メンテしたと思いますか?」
「う」
「うじゃねーんじゃ色ボケ」
お父さん、お母さん、研究所の上司がお盛んで困ってます。推しと推しの性事情、知りたくなかったなー。
「ちょっと最近頻度が高いです。余計なこと言いたくはないですし、こういうのよくわかんないですけど、何か心境の変化でもありましたか? もしくはストレスでもたまってますか? 根を詰めすぎているならちょっとリフレッシュしてください。所長が一週間くらい休んでもなんとかなるんで」
「あー……いや……その……」
「言いづらいなら言わなくてもいいですよ。言って楽になること、聞かなかったことにしてほしいことならしゃべっていいですから」
所長は視線を泳がせ、考え込むようなそぶりをした。それから小さくため息をついて、決心に満ちた瞳でまっすぐ私を見据えた。うん、うっかり惚れそう、惚れないが。
「聞いてほしいんだけど」
「はい」
「最近かぐやがかわいくて」
「クソがよぉ! 真面目に聞こうとして損した!」
「でも聞いてほしい! 惚気だけど聞いてほしい!」
「わーったよ聞きゃいいんだろはいはい聞きますよ聞くって言ったの私ですからね! ええはい二言はないですよその前にクソまずいブラックコーヒー持ってきますからそこで待ってろ色ボケ所長!」
私はクッソまずいインスタントコーヒーを大きめのタンブラーに入れて所長の前に座った。こんなまずいものをいれられてタンブラーがかわいそうだ。
「で、なんですか、その……どこがかわいいんですか、かぐやちゃんの」
「かぐやがさ、ごはんつくってくれて、いつも私の好きなものばっかりで」
「所長結構子ども舌ですもんね。コーンスープとか好きですよね」
「そうそう。そういうのさ、楽しそうに作ってくれて、鼻歌うたいながら。それ見てると、あー幸せだなって思っちゃって」
「かぐやちゃん、お料理好きって言ってましたよね」
「ヤチヨと並んで料理してるのが、たまらなくかわいくて」
「あーなるほど。ちょっとコーヒー飲みますね」
「ヤチヨはお酒作ってくれるんだよね。マドラーで丁寧に混ぜてから出してくれてさ」
「ほーん、それはえr……うん、いいですね」
「それで二人でさ、にこにこしながら今日あったこととか話してくれて。すごく楽しそうで、かわいい」
「……このコーヒー無糖ですよね、おかしいな」
「それから」
あ、まだ続くんすか。このままじゃ私のクソまずいコーヒーがマックスコーヒーになっちゃう。まぁでも、所長の惚気を聞いて満足感を与えるのも私の仕事だな、きっと。いや、でも、待てよ、この人ヤチヨと並んで料理してるのがって、言ったな。おい酒寄、マジか。
「すみません所長、つかぬ事をうかがうのですが」
「うん?」
「ヤチヨもかわいいって思ってます?」
「当然」
「……」
「……」
「ヤチヨのメンテもやります、股関節の」
「あ」
「ついでに、あなたは両手首にサポーターしてください、腱鞘炎になるぞ」
もうやだこの人。
§
「彩葉に勝てない!」
「エッチな話禁止」
久々に研究所に来たかと思えば私の仕事を邪魔してこんなことをのたまう弊研究所の姫。なんて話するのかぐやちゃん。
「だってさぁ、彩葉に触られるたびにひゃーってなっちゃうんだもん」
「だからエッチな話禁止」
「かぐやも彩葉に勝ちたい!」
「じゃんけんでどっちやるのか決めて」
「てことでこれつけてほしいのっ」
渡されたスケッチになんとなく目を走らせた。相変わらずの画伯画力。えーっとなになに、棒状で先端が丸くて下腹部……まてまてまてまて!!
「あの、かぐやさん、これ」
「〇ん〇んつけてほしい!」
「ち〇ち〇言うな! つけるかバカっ!」
スケッチを投げ返した。マジ何考えてるんだ、何考えてるんだこいつ。つけるわけないだろこんなの、所長になんて説明すればいいんだよ。あなたに勝ちたいと言われたのでつけましたって言えばいい?
「じゃあどうやったら勝てる?」
「一服盛ったら?」
「そんなのだめでしょ」
「盛るのがだめでアタッチメントがいい理由がわからん。四十八手学んで来い」
「よく知ってる!」
「お、おう、そうか」
「知っててもさぁ、全然ダメなんだよね……」
あ、なんかしょぼしょぼモードになったな。ちゃんと聞いてやるか。
「どうダメなの?」
「嬉しくなりすぎちゃって、何もできなくなっちゃう」
「ちょっと待ってね、タンブラーにクソまずいコーヒーいれてくるね」
「あのね、彩葉に内緒にしててほしいんだけど」
「うん」
「すっごく、わーってなっちゃって、いろいろ考えてるのにすぐおしまいになっちゃって」
「そっか、このコーヒークソ甘いな」
「もうだめだーってなってるのに、彩葉が止めてくれなくて」
「そら所長が悪いね」
「でもやじゃなくて」
「そっかぁ。コーヒーから砂糖の味しかしなくなった」
真っ赤になってうつむいてしまったかぐやちゃんの頭をわしわし撫でた。赤面する機能、ちゃんと動いてるね。とてもかわいく見える。
「私はこういうこと興味ないし、経験もないからよくわからないけど、多分かぐやちゃんはそのままでいいんだと思うよ。今は気持ちが先に行こうとしてうまくいかないから困ってるだけで、享受する方に考え方をシフトすればいいんじゃないかな」
「いいのかな?」
「所長はその方が嬉しいと思う」
所長がかぐやちゃんとヤチヨをかわいいかわいい言ってたことは今は内緒にしといてあげよう。そんなの言ったらもっと嬉しくなってしまって、かぐやちゃんの「好きな人に対して能動的に何かしたい」という気持ちを消してしまいかねない。それをさせるのは私の役目じゃないだろう。
「はじめはさぁ、優しいよね」
「そうでしょうそうでしょう」
「なんでモテないんだろね」
「表出ろ宇宙人」
台無しだよおバカ。
§
所長がかぐやちゃんとヤチヨと交際してることは今のところ表沙汰にしていない。わかってる人はわかってるだろうし、かぐやいろPチャンネルの視聴者は察してると思う。でも、察してない人ってのは結構いるもんで。
腕がプルプルするくらいの量の釣書が来てる。めんどくせえなんで研究所に見合いの申し込みに来るんだ、ここは結婚相談所じゃねーんだぞっ!
「ごめんねいつも」
「そう思うなら1/3くらい運ぶの手伝ってください」
妙齢の女性がいつまでも独り身でいたらこうなる。おまけに稀代の大天才ときたもんだ、そらお嫁にほしいでしょうとも。私はいらないが。
「私にこんだけ来てるってことは芦花のとこにもきてるのかなー」
「どうですかね、仕事の内容が違いますから。芦花さんは華やかなモデル、所長は功績は派手だけど仕事の内容は地味な研究。どっちの方がワンチャンありそうだと思われるかって話ですよ」
「君なにか怒ってる?」
「怒ってないです。所長を軽んじる奴は頭かち割って実家の裏山に埋めてやろうって思ってるくらいです」
「それ怒ってるって言うんだよ」
そりゃ怒るさ、所長は所長で幸せに生活してるのに、他人が自分の物差しで所長の幸せを推し量って踏み込んで来ようとするのは、不快だ。
「でもさすがにね、ちょっと量が多すぎて困る。断ってるんだけど次から次から新しいとこが送ってきて」
「学会でるといろんな人と会いますもんね。どうしたもんかな、また来週学会ですし」
なんかこう、もうちょっとわかりやすいものがないもんか。首から「結婚相手は間に合ってます」って札でも下げるか?
「所長そのブレスレットっていつもつけてますよね」
「あーこれ、かぐやからもらって」
「ほーん。あ」
ひらめいた、これじゃん。
「所長、今すぐかぐやちゃんとペアリング買ってきてください」
「え? あ、あーそっか、確かに、わかりやすい記号になるか」
「しっかりしたものはまた次の機会ってことにして、お守りとして買ってきてください。そろそろこの山盛りの釣書は仕事の邪魔になります」
「でもこういうのって、給料の三か月分とか」
「そんなの考えてる場合かっ学会は来週ですよ来週、今すぐなんとかして、学会に来てるものわかりの悪いジジババに見せびらかしてきてください」
「言い方言い方」
「いいじゃないですか、私は怒ってるんですから」
「やっぱり怒ってるんじゃん」
「怒ってますね」
「芦花にもお勧めしとこ、君がいいこと教えてくれたって」
「それは、やめてください、スポンサー様ですよ。てか私の名前を出さないでください」
私を巻き込まないでくれ、後生だから。
危うく投稿忘れて寝るところでした、覚えててえらい!
それではまた明日!
ところで、名前変換機能つけてる小説とかってどう投稿するんだろうか?
あとゲームブック的に選択肢があるやつとか。
ハーメルンの機能、何も理解してないな……