メルループ 傍から見なかったら孤独な戦い   作:haguruma03

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(詰んだ…)

火かき棒から手に伝わる鈍い感覚を感じると共に私は最悪の未来…既知の未来を予測する。

火かき棒を掲げ振り下ろす。そんなコンマ数秒の間に、突如頭痛と共に頭に入ってきたのは未知の情報だった。いや、未来の既知の情報だろうか?

そんな情報を認識すると同時に私は自らの終わりを認識していた。

理由は明白。
今の私は、火かき棒を振り下ろしているからだ。

だれに?...それはもう、看守…ホノカにだ。
私にボコボコに殴られたホノカの体に傷はない。
だが、ええ加減にしろとでも言いたげに鎌を持った腕が動き始めたのが見える。

今思い返せば、私はなぜこんなにも嬉々として火かき棒を彼女に振り下ろしていたのだろう。
取り憑かれたように、恍惚と、目の前の悪徒だと盲信した相手に暴力を振るう。
流石にまともな状態ではない、これが本来の私だと思いたくもない。魔女因子に侵食された影響だと思いたい。

だがそんな反省する時間はもうない。

この後、私がどうなるかはよく知っている。

私の首はコロコロと転がっていく事にだろう。

だが、まぁ、それでいいかもしれない。
私は半分諦めにも似た独白をする。

だってしょうがないだろう。

もうどうしようもない。
こんな事をすればどうなるかなんて、誰だって考えたらわかるものだ。
わかっていたのならこんなことはしない。
だが、それを認識できたのは、私が未来の情報を手に入れたのは、今この瞬間、いく数回ホノカに火かき棒を叩き込んだ後。

つまり私は、ほのかに火かき棒を叩き込んだ瞬間未来の記憶を獲得することができたのだ。

…流石にタイミングが悪すぎる。
もうすこし前に手に入れることはできなかったのだろうか?
動き始めたホノカの鎌をみて呆然と考える。

逃げたほうがいいのはわかる。だが体が動かない。
怯えてすくんでいるわけではない。ただ思考のスピードに体がついていないだけだ。

死ぬ直前に思考が高速化しているような状態、似たもので言えば走馬灯だろうか?


こうなってしまってはしょうがない。

このままいけば、私は死に戻りして、過去と同じ流れに持ち込める。
いや、同じにはならない。私が過ごした2週目を飛ばしすぐさま3週目の、ユキと決着を決めた状況に持ち込む事ができる。
なら、この週を捨ててもいいのではないだろうか?

そうすれば、より上手く物事を進めて...






いや、それは正しくない。

走馬灯の様に沸いていた諦めの気持ちが霧散する。

思い浮かぶのは、数多の悲劇、惨劇。
そして置いてきてしまったミリアとアリサ、2人の姿。

私が死んだ後、その世界線がどうなるのかは私にもわからない。だが、私が死んだ先にエマ達が苦しんだ世界は存在していた。

なら今、ここで私は死ぬわけにはいかない。

首を切られるわけには...いかない!

その決心と共に私は何とか鎌を避けようと体を捻る。

動き始めるホノカの腕。
状況は最悪。だが終わりではない
この鎌を避けきれればまだ挽回の余地はある。

不幸中の幸いで、牢で目を覚ましてから今の状況まで、わたしが手に入れた未来の状況とほぼ同じ様に進んでいる。
つまり、知っている未来が変わる様な変動要素は私しか存在したいという事だ。

このまま私のクビが転がれば完全に一周目と同じになるだろう。

つまり...私だけが、絶望の一週目を変える事ができる変動要素なのだ。

(だから...私が死ぬわけには...っ!)


必死に生にしがみつこうと体を動かす。
だがその動きは鈍い。
認識する速さと体動の速さに致命的な差が存在している。

(動け...避けろ...!)

悔やもうにも足掻こうにも現実は変わらない。ゆっくりとホノカの腕が動くのがわかる。
あの腕が振り切った時、無情にも私の首は……



「むぎゅッ!!」



...むぎゅ?






紫藤アリサの場合

 

 

 

 

 

 

「ほぇ…?」

 

そんなメルルの呆けた声が響いたのは、彼女がこの部屋に運ばれてから数十分経った後だった。

メルルの目の前に広がるのは見覚えのある天井。

ゆっくりベッドから身を起こし、メルルは周りを見渡した。

見覚えのある薬棚、ベッド、装飾品。

慣れ親しんだ医務室の光景が目に入った。

 

そして、薬棚から薬が入った瓶を取り出し眺めていた少女の姿にメルルは目を瞬かせる。

 

「アリサさん….」

 

黒と赤のフード付きの服を着た不良を絵に描いたような少女にメルルは戸惑いながら声をかけようとして

 

 

 

 

 

「…でした...よね?」

 

余計な一言を付け足した。

 

まるで出会ったばかりの人間に名前確認するかのように付け足したその言葉。

あなたと私は初めましてですよと主張する様な

あまりに露骨で不自然に付け加えられた言葉

長年牢屋敷のメンバーとして参加しながらも暗躍した黒幕らしからぬ不安を帯びた言葉。

 

知っている相手がいたから声をかけたはいいものの、相手を一方的に知っている現状を思い出し、誤魔化そうとしようにも誤魔化しすぎると今後の人間関係に不備が生じるかも知らないので、何とか当たり障りない言葉を付け足して誤魔化しました。

 

そう言い換えてもいいぐらいの、あからさまな余計な一言。

 

そんな察しのいい人間ならすぐに気がつきそうなメルルのセリフに対して、呼ばれたアリサはピクリと体を動かしながらメルルに体を向ける。

 

「…っ」

 

正面からアリサの表情を見たメルル驚いた。

アリサの表情は怒りも焦りもない、ただ淡々とした表情だった。

いつもの百面相のような表情変化が豊かなアリサではない。

クールと表現するような、そんな凛々しく、美しいその顔。

過去の、1日目のアリサはこんな表情ではなかった。

どのアリサもこんな表情をしている所をメルルは見たことがなかった。

 

「…氷上」

 

アリサの呼びかけがメルルの耳に入る。

 

メルルはゴクリ唾を飲み込んだ。

一体今のいつもと違うアリサからどんな問いかけがなされるのか

内心に沸いた怯えを隠す様にメルルギュッとシーツを握りしめて

 

 

 

 

 

 

 

「...だったよな」

 

同じだった。メルルと同じだった。

アリサの呼びかけに余計な一言が付け足された。

 

まるで出会ったばかりの人間に名前確認するかのように付け足したその言葉。

あなたとウチは初めましてだぞと主張する様な

あまりに露骨で不自然に付け加えられた言葉。

 

この不良少女もメルルと同じく。

知っている相手がいたから声をかけたはいいものの、相手を一方的に知っている現状を思い出し、誤魔化そうとしようにも誤魔化しすぎると今後の人間関係に不備が生じるかも知らないので、何とか当たり障りない言葉を付け足して誤魔化しました。

 

そう言い換えてもいい様な余計な一言を吐き出した。

 

現にクールの様に見えたその表情は、よく見ると視線の先が彼方此方に飛んでいき、証拠を突きつけられた犯人の様に泳いでいる。

 

そんなあからさまなアリサに...メルルもまた気が付かない。

 

何故アリサさんがここにいるのでしょう?

こんなアリサさん見たことありません

 

グルグルと頭の中で考え事が暴れ回りアリサと同じく視線がダンスする。

 

そしてそんなダンスに誘うように、メルルは混乱したままアリサに手を…声伸ばした。

 

「えっと…はい。氷上メルルです」

 

あまりにあんまりな返答。

コミュニケーション検定13級のようなメルルの返答に、アリサは無言で頷く。

そこから話の発展もなく、ただ無音で頷き、チクタクと時間が進んでいく。

 

 

どちらもコミュニケーション検定13級同士の会話劇。

楽しくもない静寂が医務室を包み…耐えきれなくなったのかアリサは口を開いた。

 

 

「体…大丈夫なのか?」

 

「え…?」

 

「いや、頭からぶつけてただろ….頭痛とか…頭がぼんやりするとか…あんだろ」

 

「だ、大丈夫です。問題ありません…?」

 

「そうか…」

 

「はい…」

 

「…」

 

「…」

 

 

すぐに会話が終わり、静寂が訪れる。

メルルはオロオロと視線を回し、アリサはメルルから視線を逸らし手に持った薬瓶を見つめる。

 

今度はメルルが口を開いた

 

「あ、あの…」

 

「なんだ…?」

 

「心配…してくれたん…ですか?」

 

「そりゃ….そうだろう」

 

「えっと….」

 

「…」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

「あぁ…」

 

「…」

 

「…」

 

 

すぐに会話が終わり、静寂が訪れる。

メルルはモジモジとシーツを弄り、アリサは手に持った薬瓶をくるくると回し手遊びを始める。

 

数刻の無言。

アリサの手遊びが止まり、視線を床に落としながらも再びアリサの言葉がメルルに向けられた。

 

「…ウチは紫藤アリサだ」

 

「えっと…はい、今お伺いしました」

 

「好きなことは….自販機の間に挟まること」

 

「…え?」

 

「魔法は…火を出すこと」

 

「え、え…っと…」

 

「氷上は…?」

 

「わ、私ですか…?」

 

「ああ…」

 

「私の魔法は………治癒です」

 

「治癒...」

 

「はい」

 

「…」

 

「…」

 

「…すげぇな」

 

「そ、それほどでもないです…」

 

「そうか…」

 

静寂が再び訪れる。

くるくるとありさの手の中で薬瓶が回る。

 

くるくる、くるくると、いく数回回った時

 

 

今度は2人とも口を開いた

 

「なぁ…」 「あの…」

 

言葉が重なる

 

「あ、すまねぇ…」「ご…ごめんなさい…!!」

 

謝罪が重なる。

 

「…」

 

「…」

 

無音が重なる。

 

 

 

 

 

 

もう、居た堪れない空気が嫌と言うほど蔓延していた。

 

互いにチラチラと互いを見て、口を開こうとして…閉じる。

 

そんな2人の姿が延々と医務室にて続いていく。

 

まるで、積極的でない2人が行うお見合いのような空気。

 

久しぶりに交流する親と子供のような空気

 

 

別にアリサは意図してこの状況を作り出したわけではない。

ただアリサにはわからなかったのだ。

 

アリサは知っている。メルルの所業も苦悩も。

そして、決して悪とだけ形容する人間ではないこと、アリサは知っている。

ゆえに、アリサは世話になったメルルにも生きてほしかった。

 

だからアリサは、希望の未来のためにも、メルルを知るためにも、メルルに声を向けたのだ。

 

だが、気軽に交流することはできない。

メルルも腐っては黒幕側の人間。

怪しすぎる行動や言葉を投げかけた時、その代償は命を持って支払う事になる。

そう、アリサは知っていた。

 

同時にメルルも知っていた。

アリサの優しさも、どんな人物なのかも。

だが、それゆえに、なぜ知っている未来とは違った姿を表情をアリサは現したのか。

さっぱりだった。

 

ゆえに発生した互いが互いの距離を測るようなジリジリとした、言葉の応酬。

 

この場にせっかちなものがいれば、むず痒くて叫んだだろう。

この場にこの空気を楽しむものがいれば、飲み物を用意してゆっくり観察を始めただろう。

 

一体、そんなこの場がいつまで続くのだろう。

誰も予想できないそんな状況下

 

 

 

 

現れたのはそのどちらでもなかった。

 

 

 

「あぁ!アリサちゃん!先にメルルちゃんと仲良くなってる!!」

 

 

そんな羨ましがるような大きな声と共に1人の少女が医務室に現れる。

その少女の手には、水差しと人数分のコップが握られていた。

 

「ちょっと探すのに手間取っちゃった」

 

少女はそう言うと、遠慮なく医務室を歩き、メルルがいるベッドの横に備え付けられた椅子に腰掛ける。

 

そして、少女は…桜羽エマはにこやかに笑い、2人にコップを差し出した。

 

「お水だけど…お茶会しようよ!」

 

その表情は、不安など何一つもない、明るい表情であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、先ほどまで騒動があったラウンジでは、一つの話が終わりを迎えていた。

 

 

「改めて、これで全員の自己紹介は終わったな」

 

話をまとめるように二階堂ヒロの声がこの場にいる全員の耳に入った。

メルルが運ばれて数十分。混乱した状況は落ち着き、ヒロの提案によって改めて自己紹介をし終わった少女達は、メルルが転んだ際に薙ぎ倒された椅子などが元に戻されたラウンジにて思い思いの位置に居る。

 

その数は10人。

先ほどまで13人いたが、メルルは看守に運ばれ医務室へ、それを追う様にアリサはラウンジを出ていき、エマも皆に自己紹介を再び行った後に医務室に向かっていった。

 

そんな残った10人、自らが何者なのか再度語った少女達の表情はさまざまだった。

思い詰める者、楽しそうな顔、無表情、ぼんやりした表情、Thinking Face。

10人と色の表情が、そこにはあった。

 

なお、そんな表情の裏で考えていることは同じであるものとする。

 

 

「まぁ、これで皆が何者かわかったと言うことだね!」

 

レイアのよく通る声がラウンジに響く。

その声に釣られて皆の視線が注目し、レイアは満足げに頷いた。

そんな彼女にソファーに深く座っていたココは手を上げた。

 

「はい、ココくん!」

 

「先生かよ」

 

呆れた目をレイア向けながらもココはながら訪ねる。

 

「自己紹介、2回もする必要あったん?ヒロっち」

 

「私対しての質問じゃないのかい!?」

 

レイアではなくヒロへの質問。

ココは半目細目になり、じっとりとヒロを見つめながら言う。

2回目の自己紹介、それは二階堂ヒロが促し行われたもの。

なぜ二度手間のような事をする必要があったのか、そんな疑問にヒロはすぐに答えた。

 

「最初に自己紹介をしてから色々ありすぎた…落ち着いてからもう一度することは必要だ」

 

「それなー。色々、ありすぎたしねー」

 

棒読みのようなココの声。

話の中心がそれた事にしょんぼりしているレイアを横目に、ヒロは眉を顰めながら尋ねる。

 

「…なにが言いたい」

 

「いや、何が言いたいも何も、あんだけハッスルしながら看守ぶん殴ってる奴がそのセリフ言うの違和感あるに決まってんでしょ」

 

呆れながら答えられたココの返答にヒロの表情は歪む。

自他共に認めざるおえない狂気を孕んだ表情で、看守に猪突猛進する姿は『色々』とだけ表現するには味が濃すぎる。

それを自覚しながらも、ヒロは苦々しげに口を開いた。

 

「…っ!あの時は…混乱していたんだ…」

 

「混乱して普通、化けも…看守をぶっ叩く?」

 

ココは言葉の途中ちらりと視線を横の人物に向け、言い換えながらヒロに返答する。

ヒロは言いづらそうにしながらも、こくりと頷いた。

 

「そういう時もある」

 

「いやねぇよ!」

 

ココは叫びながらソファーから立ち上がる。

そんな激しいリアクションをするココにヒロもまた、眉を顰めながら返答した。

 

「何だ?妙に私にこだわるじゃないかココ...だったか?」

 

「そうでーす。ココちゃんでーす!」

 

「無駄話をしている時間はないと思うが...何でそこまで私が仕切るのを嫌がる」

 

「嫌に決まってんじゃん。何か色々騒動起こしたやつがリーダーみたいにあてぃし達をまとめようとしてるんだしー」

 

「まとめようとしているんじゃない。まとめているんだ」

 

「だからそれが嫌なんだって」

 

「だからそれは何故だ」

 

「はぁ?だからさっきから言ってんじゃん。冷静ならまだしも、今の嬉々としてバール振り回すヒロっちの言葉なんて怖くて聞けねーっての」

 

「倫理的じゃないな。正しくない」

 

「正しくないのは今のおめぇだって」

 

「...なに?」

 

吐き捨てる様に、馬鹿にする様に、ニヤつきながら言ったココの言葉にヒロは表情を険しくして睨みつける。

 

今の自分は全てが正しい人間ではない。そうヒロは自覚している。

ゆえに自分が正しくないと指さされる事に昔ほどの抵抗感はヒロにはなかった。

だが、それでも、今のココの言葉を受け流すことはヒロにはできなかった。

 

今のココは悪い意味で調子に乗っている。

ヒロはそう結論を下した。

 

2週目の時のココならば自己紹介の際に容易に黙らせることができた。

だが、今回のココは違う。いくら言い返そうが不快なニヤケを崩さず反論してくる。

なぜそうなったのかはわからないが、既に現状、自分の知る未来と違っていると言うことは、メルルの大回転及び医務室連行で理解している。

だからココも、変わってしまったのだろうとヒロはまたもや早合点する。

 

こんなココを放置しては、私が皆を仕切ってもココは好き放題行動し始めるだろう。

その結果起こるのは、ココの死亡か、ココが魔女化することで起こる全滅かのいずれかだ。

それを避けるために…私が仕切らなくては

そう、ヒロは勝手に心に決め始める。

 

そんなヒロに対して、ココもまたそ怯えもせずニヤけた表情を顔に貼り付け真っ向から睨み返す。

 

(今のヒロっちに仕切らせるのはまじぃんだよなぁ…)

 

ココは先ほどの光景を思い返し、内心溢れかえっている不安を押し殺す。

ココは決してヒロが嫌いなわけではない。

むしろ牢屋敷での惨劇を解決する糸口を見つけて開いてくれた事に感謝をしている。

それにヒロが仕切った二週目は悪くはなかったと認識している。

そんな未来のココがヒロへと持っている感情の記憶が今のココにはある。

 

だが、それと同時にヒロの欠点も知っている。

その際たる例がヒロが体験した1週目と2週目のヒロ自身だ。

悪 即 斬 とでも表現するような悪を憎み、その悪の中心とでも認識しているエマを殺そうと虎視眈々と狙っている。

エマを恨むのは経緯を見ればしょうがないとはいえ、あまりにバイオレンスすぎる。

悪い意味でいつもとは違うヒロ、それがココの認識するヒロの欠点。

 

そして、今のヒロはそんな欠点状態のヒロである事を、先ほどのホノカへの乱舞でココは理解していた。

そんなヒロに仕切ってもらった場合、いつ…エマがヒロに殺されるのかわかったものではない。

(ヒロっちがエマっちを計画的に殺そうとしたのは、二週目のあてぃしが死んだ時前後…だから時間的余裕があるから、それまではヒロっちに仕切ってもらうのはアリなんだけどなぁ….でもさっきのがこえぇんだよなぁ…)

 

そう独白しながらココが思い返すのは、先ほどのエマの姿。

 

エマは自分の自己紹介を終えると

 

「ボクもメルルちゃんのことが心配だから医務室に行ってくるね!」

 

と言いラウンジを一足先に去った。

 

別に不思議なところはない。ココの知るエマならそうやって行動することは予想をつけることも可能だった。

 

だが予想外だったのは、ヒロの行動だった。

ヒロは、エマが自己紹介を終えて一言言った後、こう言ったのだ。

 

「私もエマと医務室に行こう」

 

正直ココはその言葉を聞いた時はドン引きしていた。

このセリフを吐いたのが未来のヒロならばまだわかった。

だが、このセリフを吐いたのは、つい今さっきまで、

「君のことが嫌いだ」だの

「君と分かりあうことはない」だの

エマに直接言っていたヒロだ。

 

そんなヒロが突然

 

「私もエマと医務室に行こう」

 

 

人が変わったかのような変貌。

あまりの代わりように、エマの表情も怯えていたのをココはしっかりと見ていた。

 

突然のヒロの変貌。

だが、それがなんなのかココは想像がついている。

 

それは、ヒロのセリフにヒントがあった。

「私もエマと医務室に行こう」

 

そのセリフは、こう言い換えることもできる。

 

「一緒にシャワーでも浴びに行かないか?(お前を計画的に殺す)」

 

 

もうココにはそれにしか聞こえていなかった。

ゆえに止めた。『一緒にシャワー(意味深)』を防ぐために、なんとかこのラウンジにヒロを押しとどめた。

ココ1人だけではなダメだったが、幾人かそれに手伝ってくれた。

 

(なんであてぃしの事を手伝ってくれたかわかんないけれど、他の奴らも今のヒロっちがおかしいってわかってくれたってことだよなぁー)

 

ココはそう早合点すると共に、考える。

 

ヒロは頭がいい。ゆえに知っている未来とは違う方法でエマを殺そうとするかもしれない。

すでに知っている未来とは大きく乖離し始めているのは、メルルが派手に転んだのを見た時にココは自覚している。

先ほどの「私もエマと医務室に行こう」もすでにエマ殺害計画を思いついたが故の行動の可能性がある。

 

そんな状況のヒロに仕切られてしまっては、エマの死期が早まってしまう。

 

ココはさらにそう早合点する。

 

(未来を唯一知ってるあてぃしが、エマっちを救わなきゃ…)

 

勘違いの積み重ねを確信と信じ、ココはそう心に決め、改めてヒロと正面から視線をぶつけ合う。

 

一触即発。

互いに譲れぬ勘違いをぶつけ合いそんな空気がひりつく。

 

 

そんな時、瞬時にラウンジに新たな声が響いた。

 

 

「ま、待とうよ!今は言い争うべきではないとおじさん思うな!?」

 

悲鳴と言い換えてもいい様な叫び声を上げながら2人に割って入った少女、ミリアは誰が見てもわかるように動揺しながらラウンジの真ん中に躍り出た。

 

新たな登場人物に場が、またもや混沌とし始める。

 

 

 

 






最初の方だけ、週2連載予定です。

基本週一連載ですので、よろしくお願いします。
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