ギャグ時空で脳を空っぽにしてお読みください。キャラ崩壊しています。
知らないキャラが出てもそうかそうか君はそういうやつなんだな、でお許しください。
実在の人物、団体、公式とは一切関係ありません。
MCUとは異なる独立した世界観・独立時空を舞台とし、作者による独自解釈および独自設定を含みます。
個人による趣味の創作であり、商業利用を目的としたものではありません。
AIの使用:キャラ設定・能力・歴史・地理・誤字脱字チェック
掲示板等で有名な改変系なのでネタが被った文章があるかもしれません。
pixivにも後で投稿します。
原作:太宰治 走れメロス
ハルクは激怒した。
必ず、かの
ハルクには政治がわからぬ。
ハルクは、科学の人である。
ガンマ線を研究し、自身の怪物化と戦ってきた。
けれども怒りに対しては、人一倍に敏感であった。
きょう未明ハルクはブルース・バナーの姿で隠れ家を出発し、野を越え山越え、遥か離れた
ハルクには父も、母も無い。女房も無い。
アラサーの、奔放な
この従妹は、ジョン・ジェナ・ジェイムソン3世に、近々、花嫁として嫁ぐ事になっていた。
結婚式も間近かなのである。
ハルクは、それゆえ、自分の衣裳やら祝宴の祝儀やらを整えに、はるばる街にやって来たのだ。
先ず、その品々を買い集め、それから街の大路をぶらぶら歩いた。
ハルクには鉄火場をともにした戦友があった。
アベンジャーズである。
今は此のニューヨークの街で、ヒーローをしている。その戦友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。
久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。
歩いているうちにハルクは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。
もう既に日も落ちて、まちのネオンの明るいのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、街全体が、やけに寂しい。
慎重なハルクも、だんだん不安になって来た。
夜でも皆が出歩いて、まちは賑やかであった
若い衆は、首を振って答えなかった。
しばらく歩いてスティーヴン(ドクター・ストレンジ)に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。
スティーヴンは答えなかった。
スプリームの仕事が忙しい。
ハルクは心拍数を抑えて、両手で魔術師のからだをゆすぶって質問を重ねた。
スティーヴンは、サンクタムをまた壊されてはかなわんと、諦めて答えた。
「ヴィラン連合マスターズ・オブ・イーヴィルが正面から攻めてくる。」
「そんなばかな。ソーはどうした。」
「ロキが絡んでいる、グラビトン、スーパー・スクラルも加わった悪心しかない布陣だ。」
「たくさんの被害が出たのか。」
「いや防いだ、はじめは陰謀と策略を。それから、罠を。それから、魔術を。それから、力業を。それから、何でもありを。これから、全面衝突を。」
「おどろいた。ボスのバロン・ジモは乱心か。」
「いや、乱心ではない。戦力を、信ずる事が出来る、という事だ。このごろは、集団の心をも、掌握し、少し派手な行動をしている者には、自重させアベンジャーズを倒すためと命じている。」
ブルースの心拍数が上がってきた。
「命令を拒めばロキに操られる、利用されて使い捨てだ。今、どうなってるかはわからないが。アボミネーションも当然参加だ。」
聞いて、ハルクは激怒した。
「呆れた話!生かして置けぬ!」
変身したハルクは、単純な男であった。
買い物を、サンクタムに放置したままで、のそのそアベンジャーズ・マンションにはいって行った。
たちまち彼は、スティーブ(キャプテン・アメリカ)に捕縛された。
調べられて、本物ハルクだと証明されてからは歓迎されたので、騒ぎが大きくなってしまった。
ハルクは、皆の前に引き出された。
「今日は何をしにきたか。答えてくれ。」
スティーブは静かに、けれども威厳を以て問いつめた。
その男の顔は真剣で、
「街をヴィランから救う。」
とハルクは悪びれずに答えた。
「おまえがか!」
スティーブは、歓喜した。
「仕方の無いやつだ。おまえには、天才の苦悩がわかるはずもない。」
トニー(アイアンマン)が口をはさむ。
「当たり前!」
とハルクは、いきり立って口にした。
「仲間の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。天才は、精神操作されていないか疑って居られる。」
クリント(ホークアイ)が軽口をたたく。
「疑うのが、正当の心構えなのだと、私に教えてくれたのは、おまえたちだ。」
皆が顔を見合わせた。
「人の心は、あてにならない。人間は、もともと
天才は落着いて呟き、ふっと溜息をついた。
「私だって、信頼を望んでいるのだが。」
「オレの調査結果、何のため!」
こんどはハルクが嘲笑した。
「天才の調査、何が真実!」
「だまれ、筋肉バカ。元の姿に戻って話せ。」
天才は、さっと顔を挙げて報いた。
「口では、どんな清らかな事でも言える。私には、ロキの魔術の奥底が見えておらぬ。おまえだって、いまに、暴走してから、泣いて詫びたって聞かぬぞ。」
ハルクからブルースに戻り、
「ああ、トニーは天才だ。自惚れているほうがよい。私は、ちゃんと共に戦う覚悟で居るのに。暴走など決してしない。ただ、――」
と言いかけて、ブルースは足もとに視線を落し瞬時ためらい、
「ただ、私に情をかけたいつもりなら、作戦までに数日間の日限を与えて下さい。たった一人の従妹の結婚式に出席したいのです。即座に、私はロサンゼルスで結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来ます。」
「ばかな。」
と天才は、呆れた声で高く笑った。
「とんでもない事を言うな。3900kmをどうやって?飛行機もとまっているぞ。」
「そうだ。帰って来る。」
ブルースは冷静に言い張った。
「私は約束を守ります。私を、結婚式の間だけ許して下さい。従妹が、私の出席を待っているのだ。」
クリントが妙案とばかりに言い放った。
「そんなに信じられないならば、いいだろう、賭けでもしようぜ。俺たちの無二の友人だ。俺は決着がつく前に帰ってくる方にベットする。」
今まで静観していたナターシャ(ブラック・ウィドウ)が静かに一言。
「私も帰ってくるほうに」
「……帰ってくる。皮肉にもな。」
トニーのベット。計算は冷徹だった。
「それでは賭けが成立しないな。俺が、帰ってこない方にまわろう。」
高潔なる戦士、マイティ・ソーが高らかに宣言した。
「私が間に合わず、決着まで、ここに帰って来なかったら、私を殴るといい。たのむ、そうして下さい。」
ブルースが冷静を
それを聞いてソーは、清々しい気持ちで、そっと
どうせ余裕をもって帰って来るにきまっている。
だが、この自分の言葉で、猛り狂うだろう。
そうして煽り、速度を上げるのも気分がいい。
戦友は、これだから信じられると、俺は真顔で、その男を信頼してやるのだ。
世の中に、ハルクとかいう常識を覆す男をうんと見せつけてやりたいものさ。
「賭けは、成立した。あれ?帰って来なかったら、俺らが、殴られる。マジで?絶対早く戻って来い。俺の命が、天に召されないために。」
クリントに冷や汗が流れた。
「なに、何を言っているの?」
ナターシャが平静を装う。
「はは。いのちが大事だったら、マズターズ・オブ・イーヴィルに挑むものか。おまえ達の心は、わかっているぞ。」
ブルースは自信をもって、発言した。そうとも言いたくなった。
偉大なる戦友、アベンジャーズは、深夜、決戦の地に赴く。
ブルースは、スティーヴンに一切の事情を語った。
彼はいやいや
友と友の間は、それでよかったかはわからない。
アベンジャーズは、アッセンブルした。
ブルースは、すぐにロサンゼルスについた。初夏、満天の星である。
その夜、一睡もせず従妹のもとへ到着したのは、日付が変わる少し前だった、
従妹はねむっていた、起こされてキレられた。
ブルースのアラサーの従妹ジェニファーも、きょうも激務で疲れていた。
覚悟を決めて歩いて来る従兄の、発するエネルギーを感じて驚いた。
そうして、うるさく従兄に質問を浴びせた。
「色々あった。」
ブルースは説明を省こうと努めた。
「ニューヨークに用事を残して来た。またすぐ街に行かなければならぬ。あす、おまえの結婚式を挙げる。早いほうがよかろう。」
ジェニファーは顔を真っ赤にしてブチきれた。
「うれしいか。土産と祝儀もたくさん持ってきた。さあ、これから行って、花婿に知らせて来い。結婚式は、あすだと。」
ブルースは、また、よろよろと歩き出し、隠れ家へ帰って情報端末を操作し、ニューヨークの街を探ると、
間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。
眼が覚めたのは朝だった。ブルースは起きてすぐ、花婿の家を訪れた。
そうして、少し事情があるから、結婚式を明日にしてくれ、と頼んだ。
ジョンは驚き、それはいけない、こちらには未だ何の仕度も出来ていない、
10、いや9月まで待ってくれ、と答えた。
ブルースは、待つことは出来ぬ、どうか明日にしてくれ給え、と更に押してたのんだ。
花婿の宇宙飛行士も頑強であった。
なかなか承諾してくれない。
夜明けまで議論をつづけて、やっと、どうにか花婿を論破し、圧をかけて、説き伏せた。
結婚式は、真昼に行われた。
新郎新婦の、神々への宣誓が済んだころ、黒雲が空を覆い、ぽつりぽつり雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。
披露宴に列席していた関係者たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、
高層ビルの中で、キャンドルライト、お色直し、馴れ初めをうたった。
ブルースも、満面に喜色を湛え、しばらくは、怒りを忘れていた。
祝宴は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになり、人々は、外の豪雨を全く気にしなくなった。
ブルースは、2人の未来に幸あれ、と思った。
この佳い人たちと生涯暮して行きたいと願ったが、
いまは、自分のからだで、自分のものでは無い。
ままならぬ事である。ブルースは、わが身に鞭打ち、
ついに出発を決意した。
決戦の決着までには、まだ十分の時が在る。
ちょっと腹を満たして、それからすぐに出発しよう、と考えた。
その頃には、雨も小降りになっていよう。
少しでも永くこの場所に
ブルースほどの男にも、やはり未練の情というものは在る。
今宵キレながらも、歓喜に酔っているらしい花嫁に近寄り、
「おめでとう。私は腹がへったから、ちょっとご免こうむって食事をとりたい。食べ終わったら、すぐにニューヨークに向かう。」
こいつ披露宴の料理を食べつくす気じゃないだろうな、花嫁は疑惑の目をむけた。
「大切な用事があるのだ。もともと私がいなくても、決して寂しい事は無い。おまえの従兄の、一ばんきらいなものは、人を疑う事と、それから、嘘をつく事だ。おまえも、それは、知っているね。」
知ってるわけないだろ。
花嫁は内心殴ってやろうかとすら思ったが、披露宴をだいなしにするわけにはいかない。
「亭主との間に、どんな秘密でも作ってはならぬ。おまえに言いたいのは、それだけだ。おまえの従兄は、たぶん偉い男なのだから、おまえもその誇りを持っていろ。」
うるせえ、黙れいい加減、手が出かけたその時
ブルースは花婿のもとに移動し、それから彼の肩をたたいて、
「色々あるのはお互さまさ。私には何も無い。ただ、ハルクの親戚になったことを誇ってくれ。」
花婿は複雑な表情をして、顔をしかめた。
ブルースは笑って参加者たちにも会釈して、宴席から食糧の大半を食べて立ち去り、
隠れ家にもぐり込んで、死んだように深く眠った。
眼が覚めたのは翌る日の日の出前の頃である。
ブルースは跳ね起き、オーマイゴッド。
寝過したか、いや、まだまだ大丈夫、
これからすぐに出発すれば、最終決戦までには十分間に合う。
きょうは是非とも、あの戦友達に、人の信実の存するところを見せてやろう。
そうして笑って敵を全員スマッシュしてやる。
ブルースは、悠々と
雨も、いくぶん小降りになっている様子である。身仕度は出来た。
アボミネーションへの怒りが彼を
さて、ハルクは、ぶるんと両腕を大きく振って、雨中、矢の如く跳び出た。
ハルクは、今宵、悪を全員ぶちのめす。ぶちのめすために跳ぶのだ。戦い続ける戦友を救う為に跳ぶのだ。
バロン・ジモの
跳ばなければならぬ。
そうして、奴らは打ちのめされる。どんな時も世界を守れ。一時、さらば、理性。
キレたハルクは、止まらなかった。
幾度か、障害が見えた時。ウオオオ、ウオオと大声挙げて大跳躍した。
ロサンゼルスを出て、道路を横切り、森を飛び越えなぎ倒し、次の都市に着いた頃には、雨も止み、跳躍しやすくなってきた。
ハルクは体から蒸気を噴き上げながら、ここまで来れば大丈夫、もはや到着するのに障害はない。
従妹たちは、きっと佳い夫婦になるだろう。
私には、いま、なんの気がかりも無い筈だ。
まっすぐにNYに行き着けば、それでよいのだ。
もっと急ぐ必要がある。
もっと跳ぼう、と持ちまえの脳筋さを増幅させ、
好きな小歌を怪物的発声で歌い出した。
ガチで跳躍して20キロ行き、30キロ行き、そろそろ全里程のいくらかに到達した頃、
降って湧いた災難、
ハルクの足は、はたと、とまった。
見よ、前方のコロラド川を。
きのうの豪雨で山の水源地は氾濫し、
猛勢一挙に橋を破壊し、どうどうと響きをあげる激流が、木葉微塵に
彼は茫然と、立ちすくんだ。あちこちと眺めまわし、
このままでは水害が起こる、流れはいよいよ、ふくれ上り、海のようになっている。
ハルクは川岸に水路を掘りはじめた、文句をオーディンにたれながら。
「息子をひいきするな!」
怒りが増した。完全な八つ当たりでぬれぎぬである。
時は刻々に過ぎて行きます。水路を掘った後、地面を割り一時的な湖を作った。
「これで水害平気!」
濁流は、ハルクの力技でおさまっていった、ますます濁流は静まっていく。
さあハルクも再出立の時。飛び越える以外無い。ああ、神々もみてやがれ!
濁流に負けるわけないパワーと偉大な怒りのパワーを、いまこそ発揮して見せる。
ハルクが、飛ぶ寸前、まだ濁流と呼べる河岸から伸びた手に足をつかまれ水中にひきこまれた。
必死の闘争を開始した。
対するはタイガーシャーク。水中戦が本領のヴィラン。
満身の力を腕にこめて、水中から脱しようとするもひたすらに時間を稼ぐ動きに邪魔される。
なんのこれしきと掻きわけ掻きわけ、めくらめっぽう獅子奮迅の緑の巨人の姿には、
神は見向きもせず、ついには自分の怒りがすべてを解決してくれた。
体に傷をおいつつも、見事、対岸の空の彼方まで虎鮫を投げ飛ばす事が出来たのである。
うざってえ!
ハルクは馬のように大きな胴震いを一つして、すぐにまた先きを急いだ。
一刻といえども、むだには出来ない。
邪魔が入るということは友はまだ戦っている。
ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠を跳び越え、ほっとした時、
突然、目の前に天敵が躍り出た。
「待て。」
アブソービングマン。様々な性質と力を吸収するヴィラン。
「お前か!ハルクは街に行く!どけ!」
「どっこい通さぬ。能力を再び吸われて力尽きろ。」
「今のハルクの怒りを吸ってただで済むと思うか!この怒り。お前に抱えることはできぬ!」
「その、怒りが欲しいのだ。」
「ロキだな!ここでハルクを待ち伏せさせたのは!貧弱神め!」
アブソービングマンは、ものも言わず吸収しにかかった。
ハルクは正面からうけとめ、怒りゲージがさらに上昇、
知ったことかと憤怒の化身の如く敵を殴った。
その怒りを奪い取って、アブソービングマンは自らを強化しようとしたが、
制御できなかった。
「気の毒だが正義のためだ!」
と猛然一撃、たちまち、吸収能力ごと殴り倒し、
倒れたヴィランを峠のほうに投げ捨てた。
ひとっ跳びに峠を越したが、流石に腹が減り、折から戦闘が続いて、かっとなって暴をふりまわしたせいで、ハルクは幾度となく眩暈を感じ、
これではならぬ、と気を取り直しては、よろよろ二、三歩あるいて、
ついに、がくりと膝を折った。
立ち上る事が出来ぬのだ。
天を仰いで、腹の虫が泣き出した。
ああ、あ、水害を抑え込み、ヴィランを二人も撃ち倒し脳筋、ここまで突破して来たハルクよ。
真の勇者?、ハルクよ。
今、ここで、腹が減って動けなくなるとは情無い。
信ずる戦友は、おまえを信じたばかりに、やがてスマッシュされねばならぬ。
おまえは、稀代の不信の人間、まさしくソーの思う壺だぞ、と自分を叱ってみるのだが、全身萎えて、
もはや緑の芋虫ほどにも前進かなわぬ。
腹が減れば、怒りも薄れそうになる。
もう、なんなんだこのクソが、
勇者?に不似合い?な
オレは、これほど努力したのだ。
約束を破る心は、みじんも無かった。
神は照覧するわけがない、ハルクは精一ぱいに怒って来たのだ。動けなくなるまで跳んで来たのだ。
オレは不信の
けれどもオレは、この大事な時に、腹が減ったのだ。
ハルクは、よくよく不幸な男だ。
オレは、きっと笑われる。
ハルクの従妹も笑われる。私は戦友を欺いた。
中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。
ああ、もう、どうでもいい。
これが、ハルクの定った運命なのかも知れない。
アベンジャーズよ、ゆるしてくれ。君達は、いつでも私を信じたっけか?
ハルクも君達を、欺かなかったかどうかは忘れた。
私たちは、本当に佳い戦友と戦友であったのだ。
いちどだって、暗い疑惑の雲を、お互い胸に宿したことは無かった気がする。
きっと、そうだと思いたい。
いまだって、君達は私を適当に待っているだろう。
ああ、待っているだろう。
くそったれ、アベンジャーズ。
よくもオレを賭けのネタにしてくれた。
それを思えば、たまらない。
戦友と戦友の間の信実は、この世で一ばん誇るべき怒りなのだからな。
アベンジャーズ、オレは全力で跳んだのだ。
君達を欺くつもりは、みじんも無かった。信じろ!
ハルクは急ぎに急いでここまで来たのだ。濁流を解決した。
ヴィランの襲撃からも、暴力で一気に蹴散らして来たのだ。
ハルクだから、出来たのだ。ああ、この上、私に望み
どうでも、いいのだ。
オレは負けたのだ。だらしが無い。笑うな。
ソーはハルクに、ちょっとおくれても問題ない、
と耳打ちした。
おくれたら、賭けに負けたメンバーを殴って、
ハルクを祝福してくれると約束した。
ハルクは敵の卑劣を憎んだ。けれども、今になってみると、ハルクはアベンジャーズの言うままになっている。
オレは、おくれて行くだろう。
皆は、賭けに負けた事から逃げて、そうして事も無くハルクを追放するだろう。
そうなったら、ハルクは、怒髪天。
ハルクは、永遠に人間に戻れない。
地上で最も、驚異的な災害だ。
アベンジャーズよ、敵は死ぬぞ。君達と一緒に殴らせてくれ。
君達もアボミネーションも逃がさない。
いや、それもオレの、ひとりよがりか? ああ、もういっそ、悪徳者として暴れ散らかしてやろうか。
家は無い。家族もいない。従妹夫婦は、絶縁するだろう。
正義だの、信実だの、愛だの、考えてみれば、くだらない。
敵を殴ってハルクがスカッとする。
それがマーベル世界の定法ではなかったか。
ああ、何もかも、ばかばかしい。
ハルクは、醜い脳筋だ。どうとも、勝手にするがよい。
やんぬる
うとうと、まどろんでしまった。
ふと耳に、うっすらと、エンジン音が聞えた。
そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。
向こうの道路から、トラックが来るらしい。
よろよろ起き上って、見ると、でかいコンテナ。
何か重く響きながらこちらに向かってくるのである。
そのトラックに吸い込まれるようにハルクは身を乗り出して停止させた。
トラックの中身の冷凍肉を両手にもって、
ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。
支払いはトニー・スタークに全部つけておいてくれ。
跳べる。行こう。空腹の回復と共に、すさまじい怒りが生れた。
義務遂行の怒りである。
わが身を燃やして、名誉を守る怒りである。斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。
日没までには、まだ間がある。ハルクを、待っている人達があるのだ。
すごく疑って、色々期待してくれている人達があるのだ。
ハルクは、信じられているかはわからない。
問題ではない。
殴らないなどと気のいい事は言って居られぬ。
ハルクは、信頼に報いなければならぬ。
いまはただその一撃だ。
走れ! ハルク。跳ぶな!
ハルクは信頼されている。
先刻の、あの悪魔の囁きは、あれはロキだ。
悪い幻術だ。
忘れてしまえ。
腹が減っているときは、ふいとあんな悪い夢を見るものだ。
ハルク、おまえの恥ではない。
やはり、おまえは真の勇者だ。
再び立って跳べるようになったではないか。
ありがたい!
オレは、暴力と怒りの化身として暴れる事が出来るぞ。ああ、陽が沈む。ずんずん沈む。
それがどうした、神々よ。
私はガンマされた時からパワーな男であった。
悩み続ける男のままだ。
街行く人を押しのけ、ちょっとだけ跳ねとばし、
ハルクは緑のスーパーボールのように跳ね回った。
野原でバーベキューの、その宴席のまっただ中を駈け抜け、仰天させ、大岩を蹴とばし、大河を飛び越え、
少しずつ沈んでゆく太陽の、速度をものともしない程に跳んだ。
一団の旅人と
不吉な会話を小耳にはさんだ。
「いまごろは、あのアベンジャーズも、追い詰められているよ。」
ああ、その戦友、そのアボミネーションを殴るのためにオレは、いまこんなに跳んでいるのだ。
その戦友を死なせてはならない。
急げ、ハルク。おくれてはならぬ。
怒りと暴の力を、いまこそ知らせてやるがよい。
風態なんかは、どうでもいい。
ハルクは、いまは、ほとんど全裸体であった。
呼吸も余裕、二度、三度、口から蒸気が噴き出た。
見える。はるか向うに小さく、ニューヨークの街の
塔楼は、夕陽を受けてきらきら光っている。
「ハルク様。」
機械音声が、横から聞こえた。
「誰だ!」
ハルクは跳びながら尋ねた。
「スターク製ドローン通信装置です。アベンジャーズの連絡用です。」
そのドローンもハルクの後について飛びながら淡々と音声を出した。
「もう、駄目でございます。戦線がもちません。」
「いや、ハルクが行く!」
「ちょうど今、アベンジャーズは負けるところです。ああ、あなたは遅かった。どこで道草くってやがったんだ!」
「まだ間に合う!」
ハルクは胸に近年最大の怒りが燃え上がった。
世界を引き裂く力が、赤く大きい夕陽すら捻じ曲げた。
跳ぶ他ない。
「やめて下さい。跳ぶのは、走ってください。いまは世界法則が大事です。世界が持ちません。」
跳ばざるを得ない。
「あなたを信じて居りました。苦境に立たされても、平気を装っていました。ヴィランが、さんざん煽っても、ハルクは来ます、とだけ答え、強い信念を持ちつづけている様子でございました。」
「それだから、跳ぶ!怒り狂ってるから!間に合う!関係ないのだ。世界法則も文脈も問題でないのだ。オレは、オレの為に跳ぶ!ついて来るな!クソドローン。」
「ああ、あなたは気が狂ったか。それでは、勝手にしろ。もはやどの展開も意味をなさない。」
言うにや及ぶ。パワーは負けぬ。
最後の死力を尽して、
ハルクは次元を跳躍した。
ハルクの頭は、からっぽだ。何一つ考えていない。
ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて跳んだ。
決戦が終末を迎える、まさに最後の一片の希望の光も、消えようとした時、
ハルクが空から降ってきた、戦場に突入した。
間に合った!
「ハルク・スマッシュ!!」
と大声で戦場のヴィランにむかって叫んだ、もはや言葉にならぬ、
轟音。
物理法則がつぶれて空間が悲鳴をあげるばかり。
ヴィラン達は、ひとりとして何が起こったかわからない。
すでにアベンジャーズは終わったはずだ、
徐々に立ち上がり始めるアベンジャーズ。
ハルクはそれを目撃して最後の勇、先刻、物理法則を物理で割ったように敵を蹴散らし突破口を開いた。
「アボミネーション!追加でスマッシュされるのは、お前だ!オレは、ここにいる!」
と、声ですらない声で周囲の聴覚を破壊しながら叫び、ついに戦場に戻り、窮地の戦友の心を奮い立たせた。
ヴィランは、どよめいた。あっ、はい。
ゆるせ、と口々にわめいた。
アベンジャーズの縄は、ほどかれたのである。
彼らの勝利で決戦は終わった。
「ハルク。」
ソーは
「俺を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。賭けは俺の一人負けだ。殴れ。」
ハルクは、すべてを察した様子で
空間いっぱいに鳴り響くほど音高くソーの顎をアッパーで殴った、
天高く雷神が吹き飛ばされていった。
しばらくして、戻ってきた。
「本気で殴るバカがどこにいるんだ!頬って言ったろ!」
ソーは全力でハルクの顎を同様に殴った。
天高く緑の巨人が吹き飛ばされていった。
しばらくして落ちてきた。
「やりやがったな!」
いつもの喧嘩が狼煙をあげた。
アベンジャーズの中からも、笑いの声が聞こえた。
天才トニー・スタークは、群衆の背後から二人の様を、まじまじと見つめていたが、
やがて静かに二人にドローンを飛ばし、顔をしかめて、こう言った。
「これ以上被害を増やすな。おまえらの望みは叶ったぞ。後この肉とトラック修理の請求書データ、破壊した街、道路損害、つけで済むと思うなよ。バカ野郎」
どっと群衆の間に、更なる笑いが起こった。
「アベンジャーズだなあ。」
クリントが遠まきに呟いた。
ナターシャがいつもの唄でハルクをブルースにもどすと、衣服をブルースに投げつけた。
ブルースは、威風堂々としていた。ソーは、気をきかせて教えてやった。
「ブルース、君は、またもや、まっぱだかじゃないか。早く服を着ろ。女性陣が全員目を背けていることに気づけ。」
ブルースは、一切動じなかった。