2日(土) IH予選一日目。常波戦、伊達工戦。
3日(日) IH予選二日目。青城戦、泉石戦。
4日(月) IH予選最終日。準決勝 和久谷南高校戦敗北。ベスト4入り
5日(火) 影山飛雄と買い出し
6日(水) 梟谷グループでの合宿が正式に決まる
9日(土) 2年が田中宅で勉強会。
10日(日) 東京IH予選1日目。1年は猫又家で勉強会。
12日(火) 谷地仁花勧誘。
13日(水) 谷地仁花達3人が仮入部に来る。変人速攻の強化プランを考え出す。
14日(木) 扇西高校と練習試合。谷地仁花、ポスター作成を円(母親)に伝える。
16日(土) 武田一鉄、烏養繋心、谷地クリエイトで交渉。
17日(日) 東京IH予選2日目。音駒、井闥山に負けてベスト8。
22日(金) ポスター完成。
23日(土) 牛島若利と遭遇
25(月)~ テスト1週間前
~梟谷学園 ベンチメンバー~
監督 夜中司
コーチ 滝沢良文
マネージャー 雀田かおり 白福雪絵
02 鷲尾辰生
03 猿杙大和
04 木兎光太郎
05 赤葦京治
07 木葉秋紀
08 片桐蒼太
10 穴掘秀一
11 小見春樹 リベロ
12 尾長渉
14 夏目信典
※
①1、6、9、13番は省略
②庵里中出身
3年 猿杙大和 木葉秋紀
2年 片桐蒼太
1年 穴掘秀一 尾長渉 夏目信典
~スターティングオーダー
4 木兎光太郎 7 木葉秋紀 2鷲尾辰生
12 尾長渉 5 赤葦京治 3 猿杙大和
~森然高校 ベンチメンバー~
監督 笹川良樹
コーチ 荒川新平
マネージャー 大滝真子
01 小鹿野大樹
03 名栗翔太
06 島府典明
07 千鹿谷栄吉
08 児玉勝
11 赤谷勇 リベロ
12 吉川和孝
※2、4、5、9、10、13、14は省略
~スターティングオーダー
1 小鹿野大樹 6 島府典明 12 吉川和孝
7 千鹿谷栄吉 8 児玉勝 3 名栗翔太
~生川高校 ベンチメンバー~
監督 中崎純一
コーチ 秋田洋介
マネージャー 宮ノ下英里
01 強羅昌己
02 芦谷洋平
04 七沢健吾
05 仙石伸吾
07 伊勢原裕次
09 湯河浩二
12 中川俊美 リベロ
※3、6、8、10、11、13、14は省略
~スターティングオーダー
9 湯河浩二 7 伊勢原裕次 2 芦谷洋平
4 七沢健吾 5 仙石伸吾 1 強羅昌己
※音駒高校は割愛
7月に入って期末テストも終わった。
全教科95点以上穫れたからハッピーハッピー。この調子で2学期以降も頑張っていこう。推薦取れるように頑張らないとな。
そして、翔陽と影山も人生で一番手応えを感じていたらしく、割と楽勝モードだった。……そう、〝だった〟だ。
「ぷっ、あはははは!!
〝強豪校待ってろ!〟さんに〝小野妹子影〟さん! 今時名前間違えるって! チョーウけるんですけど!!」
「「…………」」
翔陽は英語、影山は国語で名前を間違えて無事補習確定。ちなみに70点は取れてたっぽい。この2人本当に裏切らないな。
珍しく月島が大爆笑して、部室中が笑い声でカオスな事になってる。あー、横っ腹痛くなってきた。
一頻り笑ってスガ先輩が2人の肩に手を置いた。
「まあ、これが学校のテストで良かったって思うしか無いな。遠征は今後もあるだろうし今回は――」
「繋護ー! なんとかならない?」
スガ先輩が最後まで言い終わる前に翔陽が俺に助けを求めてきた。俺は何でも屋じゃねえっての。あとそういう所だぞー。
「スガ先輩の話まだ続いてたぞ、翔陽」
「えっ、あっ、すみません!」
「……まあ、そそっかしいからこうなってんだけどな。ホント気を付けろよー」
「「…………ウッス」」
4月からある程度経ってきて、お互いに慣れてきたのもあってスガ先輩はさらっと毒吐いてくるようになってきた。怒らせないようにしよ。
あとは「なんとかしろ」ってオーダーねー。……うーん。
「とりあえず、烏野から音駒まで新幹線使えば3時間半て所かな。東京まで行けば父さんに音駒までの送迎頼める、かも?」
「「っ! じゃあ!」」
「でも2人が一緒に新幹線使うの超不安! 東京駅で迷子になりそうだし。……そもそも仙台駅まで行ける?」
「こちとら宮城県民だぞ! 馬鹿にしすぎだ!」
「じゃあ新幹線のチケット買えるんだな?」
「……………………多分」
「間が長い!」
新幹線のチケット買うのも慣れてないと大変だしな。自由席と指定席で値段も変わってくるし。いやー無理じゃねー。っていうか皆さん笑ってないで助けて下さいよー。外から清水先輩とやっちゃんも笑ってるし。
「ま、今回は諦めろ」
「ヤダ!」「嫌だ!!」
「えー」
でもどうすっかな。んー。
「……武田先生と烏養コーチに相談してみよう」
「説教覚悟しとけよ、日向、影山」
「「……ウス」」
問題児過ぎだろ、この2人。父さんに送迎お願いできないか聞いておこう。
思った通り烏養コーチのお説教が始まった。
「……何か言うことは?」
「「すみませんでした」」
「ん。これが受験とか就活とかじゃなくて良かったな。これから履歴書みたいな重要な書類を書くことって増えてくると思うんだよ。そんで、その時に自分の名前を間違えるってことがあれば、どんなに内容が凄くて一発で落とされる。気を付けろよ」
「「はい、すみませんでした」」
伝えたいことは終わったって感じで、烏養コーチの雰囲気が柔らかくなる。
「でもどうすっかな、2人。
……繋護、おじさんは何か言ってたか?」
「東京駅まで来てくれたら音駒まで送迎するよって言ってくれてます」
「そうか。じゃああとは新幹線か。お前ら仙台駅までは行けるよな?」
「「……多分」」
おい、さっき行けるって言ってたじゃんかよ。
「多分かー。……うーん、どうせなら誰かに車で送迎して貰いてえな。……繋護」
母さんに頼みたいって事でしょうが、残念ながら。
「3人とも七夕祭りに参加するので都合つかないです」
「……そうか。仙台駅まで行けるか分からねえとなると。……あ、お前ら新幹線のチケット買ったことあるか?」
「「……いえ」」
「マジかよ。……今回は留守番――」
最後まで言い終わる前に、翔陽と影山はくい気味に「お願いします! 合宿に参加させて下さい!」って頭を下げた。
気持ちは分かるんだけどー。
「どのみち駅に着く時間も分からないからチケット買えねえしよー。……良し、こっちで考えておくから一旦部活に集中しよう」
「……あの、そのことなんすけど」
お? こういう時は基本茶化してる田中先輩が珍しく話し始めた。
「なんだ、田中?」
「ウチの姉貴に頼めばなんとかなるかもしんねえっす」
「おおっ、冴子姐さんか!」「「っ!!」」
田中先輩ってお姉さんいたのか。2年生も知ってるみたいだし。
「もうお願いしてんのか?」
「……いえ、まだっす」
「じゃあ聞いてみてくれ。俺の方でも当たってみるから。おし、切り替えて部活に集中しろ!」
「「「はい!」」」
よーし、部活じゃあー!
◇
部活から帰ってきた田中龍之介は椅子に座っている姉の田中冴子の顔を見た瞬間土下座した。
「姉貴、頼みがある!」
「……いきなり何? まず風呂入ってきな、汗臭い」
しかし田中龍之介は必死に頭を下げ続ける。
「頼む! 後輩を仙台駅まで連れて行ってくれ!」
「……はぁ? なんであたしが?
……ああ、また見栄張ったのか。そういうのさー辞めた方が良いんじゃない? いっつもそうじゃん。出来ないことは出来ないって言いなさいよ。潔さって言うのも大事でしょうが。結局こうやって自分の首締めてんじゃん」
「分かってる! でも頼む! 勉強苦手な後輩が必死こいて勉強してたんだ、なんとかしてやりてえ! 頼む!」
「いや、そんなのあたしに関係ないし」
取り付く島もなく田中冴子は田中龍之介の要求を拒み続け、遂には鬱陶しくなってきたため自室に戻ろうかと立上がった瞬間、田中龍之介が「……俺の小遣いで東京の美味い酒を注文していいから!」と言った。
その言葉を聞いて、田中冴子は話でも聞いてやるかと居住まいを正す。決して良い酒を飲みたい訳では無い。
「龍、話だけでも聞いてやるよ」
「お、おう……!」
7日と8日に東京遠征があること。後輩2人が期末テストで名前を間違えて7日の午前中に補習があること。遅れてでも参加したいと新幹線に乗って現地で集合するつもりでいること。故に仙台駅までの送迎と新幹線のチケットを購入するところを見てて欲しいこと。
そう言った内容を田中龍之介は伝えていった。
「……なるほどねー、話は分かったよ」
「頼む! 後生だ!」
田中冴子は自分の予定を確認しながら携帯電話を操作して、上京している友人にメールを送っていき、友人の1人から【あ、じゃあ私の家来て良いよ! 飲もうぜ!】といった内容のメールが返ってきた。
田中冴子の気持ちが固まっていく。
「なあ聞いてるのか!?」
「それが人にものを頼む態度かい? ……あたしも東京行くよ、送ってってやる」
「っ!? かたじけねえ! 宜しく頼む!」
「ん? ほら、財布出しな。約束だろ?」
「……おっす」
そのまま田中龍之介はカツアゲされた。1万円ほど失ってしまう。
◇
田中先輩の説得は成功したらしく、田中先輩のお姉さんが補習終わりの翔陽と影山を仙台駅まで送迎、かつ新幹線のチケットも一緒に買ってくれるらしい。
あと田中先輩のお姉さんは東京に上京した友達と遊ぶ算段って聞いてる。どうにか翔陽と影山も合宿に参加出来るみたいだ。到着は15時くらいかな?
「では影山君と日向君は補習が終わったら田中君のお姉さんと合流して下さい。田中君のお姉さんが仙台駅まで送って下さります。
そして新幹線で東京駅まで行き、その後は猫又君のお父さんに音駒高校まで送迎して頂きます。皆さん宜しくお願いいたします!」
『はい』「任せて下さい!」「「はい!」」
武田先生、影山と翔陽と田中先輩のお姉さん、父さんは電話からって感じで予定を確認している。俺達は合宿の準備。
烏養コーチ、月島と山口は車でテーピングとかの買い出しに行ってる最中でまだ帰ってきてない。
『じゃあ田中さん、出発時間と新幹線の名前が分かり次第伝えて下さい』
「任せて下さい」
『僕もホームで2人を出迎えるから、影山君と日向君は新幹線を降りて待ってて下さい。勝手に出歩かないようにね。あと、僕の連絡先は繋護から伝えられてるね?』
「「はい!」」
何事も無く合流できると良いなー。
「猫又さん、ありがとう御座います!」
「いえいえ、普段何も出来ないからこれくらいさせて下さい。到着は15時半くらいかな? 適宜連絡を入れていきますね」
「宜しくお願いします!」
新幹線の遅延とか発生しませんように。
真夜中に烏野を出発してサービスエリアで休憩を挟みつつ、朝には勝手知ったる音駒高校に到着した。回数としては烏野より格段に多い。文化祭とかにも来てたし。
簡単に言えば俺の庭だ。近所のコインランドリーやら美味しいご飯屋さん、告白スポットなんかも網羅してる。イェイ。
バス移動だったからちょっと身体に違和感が。こりゃ念入りにストレッチしないとなー。そして、音駒での開催と言うことで黒尾先輩と海先輩に出迎えられた。
「おっ、そこにいるのは猫又さん家の繋護君じゃああーりませんか。どうよ? 転校しない?」
「「っ!! 駄目だ!」」
「さーむら君とスガ君は何? セコムなの?」
「「ガルルルル!」」
繋心兄ちゃんが「音駒以外の3校からスポーツ推薦貰ってたみたいだからひょっとすると『転校しない?』って引き抜かれるかもなー」って言ったせいでガルガルしてるんだけど。なーにしてくれてるんですかねー。
「……一つ良いか?」
「どうぞ」
「人足りなくね? 具体的にはあの変人コンビ」
「あいつら名前間違えて補習受けてる。日向は〝強豪校待ってろ!〟さんで、影山は〝小野妹子影〟さん」
「「ぶはっ、マジか!?」」
「「「マジです」」」
遅れて出迎えに来た山本先輩とか他のメンツも一斉に笑い出した。ほんとさー、あいつらさー。横っ腹つりかけて黒尾先輩が涙目になってる。
「あー、笑った。あの2人やべー。
とりあえず烏野に割り当てられてる教室で準備してくれ。女子2人はマネージャーで1つの教室使ってるからそっちも案内する。あと貴重品も持ってけよ」
「おう、ありがとな」
「負けてスゴスゴ帰らないと良いな」
「「「ああん?」」」
煽るの好きだねー。黒尾先輩。
準備して体育館に行くと「こいつらが烏野かー」ってガン付けられる。あと「……〝庵里の化け猫〟だ」って声もちらほら聞えてきた。ハロハロー。
体育館に2面張ってあって、入口側のコートに音駒と森然、ステージ側のコートに生川と梟谷がそれぞれ片面ずつでアップを取ってた。
……お、秋紀先輩がこっち見た。大和先輩とか蒼太先輩、渉に俺がいるって声かけてる。取り敢えず会釈しとこ。
そんな俺に山口が声をかけてきた。
「同中の人?」
「そうそう」
「森然と生川には?」
「なんとなーく顔知ってる人いるかなって感じ。あそこら辺」
「めっちゃガン付けられてんじゃん」
「ねー」
郡内中の奴も何人かいんじゃん。はんっ、この機会にぼこしてやろ。
アップをして今からでも動けますよって具合になったら全体集合がかかった。
ホワイトボードの隣の先生方とマネージャーの皆さんと向かい合うように、右から生川、森然、梟谷、音駒、烏野の順で各校左側が奇数列、右側が偶数列の2列で並ぶ。
音駒がホストってことで黒尾先輩が号令をかけた。
「気を付けー、礼!」
「「「お願いします!!」」」
体育座りをして猫又先生の説明を聞く。
「音駒高校の猫又だ。各学校アップも取り終えたことだし、烏野さんに伝えるから改めて説明に入ろう。このホワイトボードを見てくれ。
入口側が梟谷と烏野、ステージ側は生川と森然、ウチが審判で1セット毎に練習試合を開始する。そして、試合が終わったら時計回りにコートを移動して、入口側は生川と梟谷、ステージ側はウチと烏野、森然が審判をする。試合が終わったらまた移動。
そんな感じで時間まで試合を進めていく予定だ。あと負けたらペナルティでフライングな。まあ、やれば分かるだろう。
7月に入って気温も高くなってきているから体調が悪くなったらすぐ周りに伝えること。怪我の無いように気を付けていこう。無理するなよ」
「「「はい!」」」
パパッと立上がって、また黒尾先輩が号令を掛けた。
「気を付けー! 礼!」
「「「ありがとうございました!!」」」
ちらっとだけホワイトボードの各試合順を確認する。
1試合目
入口側 梟谷と烏野
ステージ側 生川と森然
審判 音駒
2試合目
入口側 生川と梟谷
ステージ側 音駒と烏野
審判 森然
3試合目
入口側 音駒と生川
ステージ側 森然と梟谷
審判 烏野
4試合目
入口側 森然と音駒
ステージ側 烏野と生川
審判 梟谷
5試合目
入口側 烏野と森然
ステージ側 梟谷と音駒
審判 生川
簡単に纏めると、1試合目は梟谷、2試合目は音駒、3試合目は審判、4試合目は生川、最後に森然と対戦する。これを時間までひたすらやるってことだ。
入口側のコートに移動していくと秋紀先輩達に捕まった。
「よっ、繋護」
「「「オッスー」」」
「皆さんお久しぶりでーす」
秋紀先輩、大和先輩、蒼太先輩、秀一、渉、信典の順でハイタッチ。
「試合には出るのか?」
「2巡目以降だと思います」
「オッケーオッケー、久しぶりに揉んでやるよ」
「いやいやー、ウチが勝ちますよー?」
「楽しみだなー」
それだけ言ってコートで別れた。その優劣は試合で決めれば良いんだよね。……まあ1巡目は出ないと思うけど。
「スパイクー!」
「「「いよーっし!!」」」
梟谷の4番が声を張り上げてスパイク練習に移る。相変わらず元気だな。
スガ先輩と梟谷の5番がネット際まで行って、ウチがレフト側、梟谷がライト側に並んでスパイクを打っていく。リベロ陣は向かい側のコートで球拾いだ。
2巡目までセミクイックでフェイント、3巡目以降から本格的にスパイクを打つって流れでスパイク練習が始まった。
梟谷がレフト側でウチがライト側に入れ代わってスパイク、その後サーブをやってそれぞれのベンチでミーティングに入る。
「初っぱなからインターハイ進出を決めた梟谷との対戦だ。特に4番の木兎光太郎は調子が良ければあの牛島若利にも匹敵する。つまり良い練習台だ。使えるものは何でも使っていこう。
あと、試合の勝ち負けももちろん大事だが、〝どういう風に勝ったのか、どういう風に負けたのか、今何が足りないのか〟っつうのも大事だからな。頭使いながらバレーやっていけ!
全員出すからな! 準備しとけよ!!」
「「「はい!」」」
武田先生、烏養コーチ、清水先輩、やっちゃん、選手11人で円陣を組む。
「烏野ー! ファイ!」
「「「オォーッス!」」」
1巡目は相手高校の分析だ。やっていきますよー。
「じゃあ仁花ちゃんは私とバレーの勉強だね。2階行こうか」
「シャチ!」
清水先輩とやっちゃんはビデオカメラ係兼バレーの勉強ってことで、2階のキャットウォークに向かっていった。2階の方が涼しいし、試合を見るなら上で見た方が分かりやすいと思う。ということでマネージャー兼アナリストです。
キャプテン、スガ先輩、東峰先輩、田中先輩、成田先輩、月島とノヤ先輩がコートの中に入っていく。
◆
一方、梟谷学園高校男子バレー部一同もミーティングを行っていた。監督の夜中司とコーチの滝沢良文が中心となってミーティングを進めている。
「インターハイ本番までもう1ヶ月を切ってる。全国制覇するんならまだまだ足りてないところが多いのはお前らも分かってることだろう。
井闥山とか稲荷崎、狢坂、白鳥沢……、優勝するんなら全国の学校を倒さないといけないんだ。1分1秒でも無駄にはできないぞ。分かってるな?」
「「「はい!」」」
「情けないプレーしたら即交替だからな。気合い入れてけ」
「「「はい!」」」
選手14人とマネージャー2人が円陣を組み、木兎光太郎が口を開いた。
「目指せノーペナルティーだかんな! 全勝するぞ!!」
「木兎もしょぼくれモード発動するなよー」
「分かってるよ! 行くぜおまえら!」
「「「オォーッ!!」」」
鷲尾辰生、猿杙大和、木兎光太郎、赤葦京治、木葉秋紀、尾長渉、小見春樹がコートに向かっていき、途中で赤葦京治が庵里中学校出身の3人に声をかけた。
「猫又君出ないんですか?」
「2巡目以降に出るってよ。あいつ確実に分析してくるから注意しとけよ。猫又監督の孫だけあって分析めっちゃ得意だから」
「注意もクソも無いけどなー」
「敵に回すとホント厄介なんです。いつの間にか癖読まれてるし」
「じゃあ交替すっか?」
「いいえ!」
それはそれ、これはこれだ。
一人宮城県に行ってしまったため、連絡は取り合っていてもなかなか会えていなかったので一緒にバレーボールをできる楽しさも同時にあった。
「ウチ蹴ったこと後悔させてやろうぜ」
「おう」「ウイッス!」
烏野高校と梟谷学園の練習試合が始まる。
◆
背番号とポジション確認に入る。ちなみにサーブは相手からで、サーバーは大和先輩。
梟谷
4 木兎先輩 7 秋紀先輩 2
12 渉(リベロ) 5 3 大和先輩
烏野
11 月島 3 東峰先輩 2 スガ先輩
1 キャプテン 5 田中先輩 6 成田先輩(ノヤ先輩)
攻略の鍵はいかに木兎先輩を乗せないか、だと思ってる。「ヘイヘイヘーイ!!」とか「俺サイキョー!!」とか言い始めたらまずい。
「「「サル! 1本ナイッサー!!」」」
「1本集中!」
「「「オォーッス!」」」
試合が始まる。
試合が終わった。【25-19】でウチの負け。
「フライングー!!」
「「「オォーッス」」」
ペナルティのフライングをサイドラインからサイドラインまで2往復して試合の振り返りに入る。勝った梟谷はミーティングをしてスリーメンを始めてた。
「梟谷もミスがあったし、こっちの攻撃が通用してなかった訳じゃねえ。単純に地力の差だ。もっと上手くならねえといけねえな」
「「「はい!」」」
「スパイカー陣は木兎を見て学べよ。優秀なお手本だ」
「「「はい!」」」
「隣のコートの試合が終わるまで俺達もスリーメンやるか、試合に出なかった奴優先でコート入れ」
「「「はい!」」」
縁下先輩、木下先輩と俺からだ。よーし。
ステージ側の生川と森然の試合が終わって5校が同時にローテーション。次は音駒だ。
……おっと? 犬岡と芝山が9番と11番を連れてやってきた。チラッと見てたけどやっぱり11番は渉と月島よりでかいな。
「おっすー、2日間よろしくー」
「「おっすー」」
「ホントに猫又監督にそっくりだ! 俺灰羽リエーフ! ロシア人のミックスだ! 宜しく!」
「手白球彦。宜しく」
ほーん? ロシア人だって?
「Приятно познакомиться, я Нэкомата Цунаго.」
「「「っ!? 何語!?」」」
ロシア語で「はじめまして、猫又繋護です」って言ったら4人とも驚いた。何だよ、灰羽ロシア語話せないのか。つまんね。つまんねー。
「えっ!? なっ!? えぇっ!?」
「……そんな驚かなくても。ロシア語も勉強しろよー。ちなみに今のは『はじめまして、猫又繋護です』って意味ね。昼休憩にでも話そうぜ」
「お、おう!」「負けないよ!」
「んー」
まあ1巡目出ないんですけど。まず灰羽と手白の分析だな。
インターバルを挟んで2試合目が始まる。
「ゴールデンウィークの練習試合から2ヶ月。ウチが練習していたように音駒も練習してきてるから別チームに進化してると思っていけ。特にあの新顔の11番な。
動きは初心者っぽいけど、身長と最高到達点は馬鹿にできねえ。気を引き締めていけよ!」
「「「はい!」」」
「ブロッカーとして黒尾は群を抜いていると思う。ブロックのお手本として見ていけよ!」
「「「はい!」」」
15人で円陣を組んで、スタメン6人がコートに向かっていく。
◆
一方、音駒高校男子バレー部一同もミーティングを行っていた。監督の猫又育史とコーチの直井学が中心となって進めている。
「さっきの試合見たとおり、9番と10番なしで梟谷から19点獲ってる。5月から約2ヶ月。烏野は確実に成長しているからな。油断するなよ」
「「「はい!」」」
「ん。じゃあ今日も自分達のバレーをしてきなさい」
「「「はい!」」」
選手20人強が円陣を組んで気合いを入れ、スタメンである黒尾鉄朗、海信行、夜久衛輔、山本猛虎、孤爪研磨、福永招平、灰羽リエーフの7人がコートに向かっていった。
◆
背番号とポジションの確認に入る。
音駒
4 山本先輩 11 灰羽 5 孤爪先輩
2 海先輩 1 黒尾先輩(夜久先輩) 6 福永先輩
烏野
11 月島 3 東峰先輩 2 スガ先輩
1 キャプテン 5 田中先輩 6 成田先輩(ノヤ先輩)
犬岡がスタメンから外れて灰羽が入ってる。翔陽と同じで初心者だけど守備はリベロに任せて前衛を任せるタイプだ。ただ、ブロックの補強って面もありそう、身長あるし。練習積んだら脅威だなー。
サーブは音駒からで福永先輩がサーバーだ。
「「「福永1本ナイッサー!」」」
「1本集中!」
「「「オォーッス!」」」
音駒との試合が始まる。
試合が終わった。【26-24】で負け。
「フライングー!」
「「「ウィーッス」」」
パパッとペナルティを熟してミーティングに入る。
「音駒はレシーブが安定してるからバタバタすることが無く持久戦に持ち込まれやすい。
音駒の連中のレシーブの体勢をよーく見とけよ。足腰と体幹がしっかりしてるからあんな風に安定してるんだ。嫌がられるくらい観察しとけ!」
「「「はい!」」」
「じゃあ次は審判だ。全員最低1回以上は主審副審ラインズマンをやること。余裕があれば記録もな。
選手だけやってれば良いって訳じゃねえぞ。審判をやって学べる事もあるんだからな! しっかりやれ!」
「「「はい!」」」
「谷地は清水と一緒に行動して勉強してってくれ。マネの仕事優先で構わねえから。清水頼むぞ」
「「はい!」」
1つのコートに主審1人、副審1人、ラインズマン4人(2人でも出来なくは無い)、得点板2人(1人でもなんとかなる)、つまり合計8人いる。記録を入れると3人加算。
今のウチは11人だから2コートの審判をフルでやろうとすると足りてない。ま、しょうがないね。
他の4校がコート使うから邪魔にならないように移動して打ち合わせをしていく。
「1年から主審副審やるってことでいいな?」
「「「はい」」」
話し合って、俺は入口側のコートで行われる音駒と生川での試合の主審をやることになった。移動して審判台の近くでぼけっとする。……ん?
なんか見られてると思ったら郡内中の同学年がいた。去年の関東大会でコートにいたと思う。取りあえず会釈しとこ。さーて観察観察ー。
音駒と生川の試合が終わった。ちなみに【24-26】で生川の勝ち。
「フライングー!」
「「「ウィーッス」」」
音駒の皆さんがフライングしてるところを横切ろうとして、そういえば猫又先生と直井先生に挨拶してないことに気が付く。ちょこっとだけ話しとこ。
邪魔にならないように近付いていくと2人とも気が付いた。
「よっ、元気そうだな」
「はい」
「あとで分析したのこっちにくれ」
「えっ」
「お互いに高めあっていこうって考えの強化合宿だからな。相手から見た弱点とかは今後の課題になる」
「そういうことなら……?」
良いのか? ……まあいいか。
「後で持ってきます」
「おう、宜しく」
……体よく使われてる? まあ良いか。
簡単に挨拶して、次の生川戦に備えて身体を暖めていく。
生川との練習試合が始まる。
「生川の戦術はサーブ&ブロック、つまり強いサーブで攻めてブロックで仕留めるのが基本だ。簡単に言えば伊達工みたいな感じだ。
ただ、レシーブも良いから伊達工よりも戦いにくく感じると思う。1本目を丁寧に、そしてブロックアウトなんかのテクニック方面をやっていこう。
毎度言うけど考えてバレーしろよ」
「「「はい!」」」
円陣を組んでスタメンがコートに入っていった。
◆
一方、生川高校男子バレー部一同もミーティングを進めていた。監督の中崎純一とコーチの秋田洋介が中心となっている。
「相手のセッターは堅実ってタイプだ。1本目を崩せば大抵レフトにトスを上げることが多かった。
どんどんサーブで攻めてブロックで仕留めるウチのバレーをやっていこう。特に3番と5番のスパイクには2枚以上付くようにな」
「「「はい!」」」
選手14人とマネージャーの宮ノ下英里の15人が円陣を組んだ。
「生川ー! ファイ!」
「「「オォーッス!」」」
1番の強羅昌己、2番の芦谷洋平、4番の七沢健吾、5番の仙石伸吾、7番の伊勢原裕次、9番の湯河浩二、リベロの中川俊美がコートの中に向かっていく。
◆
背番号とポジションの確認に移る。
烏野
11 月島 3 東峰先輩 2 スガ先輩
1 キャプテン 5 田中先輩 6 成田先輩(ノヤ先輩)
生川
9 7 2
4 5 1
サーブは生川から。……キャプテンじゃんけん弱いな?
「「「強羅1本ナイッサー!!」」」
「1本集中!」
「「「オォーッス!」」」
そして生川との練習試合が始まった。
生川との試合が終わる。【25-27】で負け。
「フライングー!」
「「「ウィーッス」」」
パパッと終わらせてミーティングに入る。
「やってもらって分かるけど、やっぱり強いサーブで圧かけてブロックで仕留める戦術ってシンプルで強いんだよな。この夏サーブの強化に力を入れていこう。全員ジャンフロかジャンプサーブを打てるようにな」
「「「はい!」」」
「生川スパイク練習やるみたいだからウチも混ざるぞ、準備しろ!」
「「「はい!」」」
隣の森然と音駒の試合がまだ終わってないからスパイク練習か。球拾いだー。
入口側のコートに移動して森然戦のミーティングに入る。
「森然だが、Aとセミみたいなコンビの他にシンクロ攻撃を組み入れてるチームだ。ウチでもインハイ予選後から練習してるな。
まずはシンクロ攻撃がどんなものなのかを体感しろ。その上で自分達のバレーにどう取り入れるかを考えよう」
「「「はい!」」」
「相手は影山と日向みたいに変人速攻使ってくるわけじゃねえからな。選手じゃなくボールを見て落ち着いて対処していくように」
「「「はい!」」」
「よし、じゃあ行って来い!」
円陣を組んで、スタメンがコートの中に入っていく。
◆
一方、森然高校男子バレー部一同もミーティングを行っていた。監督の笹川良樹とコーチの荒川新平を中心に注意事項を話していた。
「1本目が乱れても積極的にコンビ使っていけ。この夏の目的を忘れるなよ。コンビの練度を上げていくぞ」
「「「はい!」」」
選手14人とマネージャーの大滝真子が円陣を組んで、1番の小鹿野大樹、3番の名栗翔太、6番の島府典明、7番の千鹿谷栄吉、8番の児玉勝、リベロの赤谷勇、12番の吉川和孝の7人がコートに向かっていく。
◆
背番号とポジションの確認に入る。
烏野
11 月島 3 東峰先輩 2 スガ先輩
1 キャプテン 5 田中先輩 6 成田先輩(ノヤ先輩)
生川
1 6 12
7 8 3
そしてサーブは森然から。キャプテンじゃんけん弱すぎ………………。
「「「名栗1本ナイッサー!」」」
「1本集中!」
「「「オォーッス!」」」
森然との練習試合が始まる。
森然との練習試合が終わった。【22-25】でウチの負け。
「フライングー!」
「「「ウィーッス」」」
パパッとペナルティを熟してミーティングに入る。
「対峙して分かったと思うけど、シンクロ攻撃って結構脅威だと思う。『ボールを見て対応しろ』って簡単に言えるけど、どうしても相手のコートの選手の動きに惑わされるよな。
攻撃5枚を活かせるシンクロ攻撃は絶対に通用する。この夏でシンクロ攻撃をものにするぞ」
「「「はい!」」」
「そんで、梟谷、音駒、生川、森然とタイプが違う強豪と試合をしてボッコボコにされてる。4校とウチの大きな違いは自分達のバレーを確立させてるって所だ。色んな学校の良いところを吸収して自分達のバレーを作り上げる。その為の東京遠征だぞ。
この夏は個人のレベルアップと烏野高校ってチームを作り上げるってのが目的だからな!」
「「「はい!」」」
日頃から言ってる基礎能力はここに繋がってくる。基本的なことができればできるだけいろんなことを試していけるようになるし、相手が変わったことをしてきても対応できる。やっぱり基礎力って大事だ。
……まあ? 他の4校がどんな感じなのかって言うのは見せて貰ったから逆襲していける。2巡目頑張っていくぞー。
「良し、じゃあスパイクレシーブと二段トスやるぞ!」
「「「はい!」」」
ステージ側の梟谷と音駒の試合が終わってないからレシーブ練習になった。時間も12時15分前だ。もう1セットやるのかな? 分かんね。
とりあえず今はレシーブ練習に集中しよう。
◇
武田一鉄と若林智子、他の顧問の説得により補習を始める時間が予定より早くなり、補習を終わらせた影山飛雄と日向翔陽は校門前で軽トラックで待機していた田中冴子と合流した。
「おー、補習ボウズ共。乗りな」
「「冴子姐さん!」」
田中冴子は武田一鉄と猫又明育に【2人と合流しました。今から烏野を出ます】とメールを送って、2人を乗せた軽トラックを運転していく。目標は仙台駅だ。
「ど、どのくらいで東京に着きますか!?」
「んー、遅延も発生してないし、順調にいけば2時位じゃない?
あ、2人はお昼どうすんの? あたしは駅弁買うつもりだけど」
「若林先生から軽食貰ってます」
田中冴子は〝若林先生〟人物を記憶の中から引っ張り出して、在学中に家庭科の授業でお世話になった若林智子に行きつく。
「智ちゃん烏野に戻ってきたのか。……あたしもお願いすりゃ良かったな。智ちゃん良い先生だよなー」
「若林先生の授業分かりやすいですよね!」
「あと料理が美味いっす」
「あたしらの時もそう。家庭科の授業楽しかったなー」
烏野高校を卒業した田中冴子と現役生である影山飛雄と日向翔陽の3人は仙台駅まで雑談を楽しんでいく。
仙台駅に到着し、代表で田中冴子が3人分のチケットを購入して、新幹線の中の適当に空いている席に座って駅弁やらを広げる。ただ、運悪く3人席には座れずに三角形になるように1人ずつ座るような形になるようになってしまった。
「これで東京まで約2時間さ。つーわけであたしは寝る」
「「冴子姐さんあざっす!」」
移動時間は極力体力温存しとくようにな、と烏養繋心に日頃から言われていたため、影山飛雄と日向翔陽の2人も目を瞑る。
「寝過ごすなよ」
「おめーもな!」
朝から早目に来てトレーニングをしていた2人もすぐ眠りについた。
約2時間の新幹線の旅が終わって、3人は東京駅のホームに降りた。通行人の邪魔にならないように移動してキョロキョロ見渡していると、手を振りながら猫又明育がやってくる。
「あっ、繋護のお父さんこんにちはっす!」
「こんにちは!」
「にゃんこのお父さんちわっすー」
「影山君日向君、あと田中さんも東京にいらっしゃい。無事に合流できて良かったよ。ここまで大丈夫だった?」
「「はい!」」
何事もなく安心した猫又明育は親指を立てて田中冴子に向き直る。
「田中さんもありがとね」
「いえいえ。あたしも予定空いてたんで!」
「これから友達と遊ぶ、で良いんだよね?」
「そうですね! ダチの家で飲む予定です! 新幹線の改札口で合流するのでそこで別れますね」
「オッケー。じゃあ武田先生と繋心に連絡するから写真撮って良い?」
「「「はい!」」」
猫又明育は【東京駅】の駅名標をバックに3人の写真を撮って、【たった今3人と合流しました。これから音駒に向かいます】と言うメールを武田一鉄と烏養繋心に送信する。
「じゃあ行こうか。土曜日で人多いからしっかり着いてきてね」
「「はい!」」
そして4人は歩き出す。
◇
午前中最後の梟谷と音駒の試合は【25-21】で梟谷が勝った。
キリが良いから昼休憩になって、1時間位を目処に休み時間。簡単にストレッチをしたら食堂で補食のおにぎりとフルーツポンチを食べていく。
席を探していると庵里出身の秋紀先輩達に捕まって強制的に椅子に座らされた。
「まずはお礼を。牛タン美味しかった。家族で堪能させて貰ったわ。ありがとな」
「俺も。ありがとう」
「美味しかったでしょう? 今度宮城に遊びに来て下さい」
中3の卒業式が終わって宮城に来てから「お金渡すからさー、牛タンお願いして良いか?」って頼まれて母さんと一緒に送ったお礼だ。前も電話でも貰ったけど、今も律儀にお礼を貰った。
そして、ちょうど通りかかった木兎先輩に聞かれたみたいだ。一気に食堂が騒がしくなる。
「えっ、何々!? 木葉とサル牛タン食ったの!? いつ! いいなあ!! 俺も食いたい!」
声通るなー。すげー。
「~~っ!? うっるせえ!! 鼓膜破れるわ!」
「烏野に行った後輩から送って貰ったんだよ!」
そこで木兎先輩と視線が合う。するとすげー驚かれた。
「っ!? 音駒の先生が若返ってる!?」
「「ちげえわ!」」
そう来るのかー。去年の部活見学会と全然変わらないな、木兎先輩。というか覚えられてないし。ウケる。
何を言って良いか分からなかったから黙ってると、遅れてきた梟谷の5番に「うるさいですよ、木兎さん」って小言を貰ってる。
「赤葦赤葦赤葦! 音駒の監督、アポ、アポ? ……アポなんちゃら飲んで若返っちゃってる! 黒尽くめの組織にやられたんだ!」
…………。子供っぽいなー翔陽とか灰羽、犬岡とかと相性良さそう。
「……そうですよ、木兎さん。夜とか気を付けて下さいね」
「分かった!」
諦めた? 説明に諦めたっぽい。
そのまま木兎先輩と5番も椅子に座って昼食を取り始めた。
「って違う! 俺も牛タン食べたい!」
「ふるさと納税でもやれば?」
「俺も宮城行ってみたい!」
「人の話聞けよ!!」
なんというかこのマイペース、弟っぽい。中2の時「同期がやべーのよ」とか言ってたけど、その様子が目に浮かぶ。
「今度烏野行きてえな! 監督に相談してみようぜ!」
「夏とかはいいかもな。こっちよりは涼しいんだろ?」
「そうですね。結構過ごしやすいと思いますよ。……遊べるところ少ないですけどね」
少なくともゲーセンとかは絶対に少ない。仙台の方に行かないと無いし。あと虫が凄い。ミヤマクワガタとかアカアシクワガタ今年も見たし。
そこで今度は遅れてきた黒尾先輩が席に座る。
「牛タン美味しかったぞ~。あと空気が美味い」
「……そっか! 音駒は行ったのか! ズリイ!」
「こればっかりはな。監督に相談しねえと」
「良いなー! ……あっ、じゃあ俺達が全勝したら牛タン奢ってくれ!」
……待て待て待て。どのくらい費用かかると思ってるんだ、この人は。っていうか別にお金渡してくれれば送るし。
「おっ、いいねー。音駒もそうして貰おうかな」
「ん? おまえらウチに負けてんじゃん」
「はあっ!? これから勝ちますー、負けませんー」
そのまま黒尾先輩と木兎先輩はワーワーギャアギャア始めた。俺達は素知らぬ顔で自分達の会話に入る。
「まあ、また頼むわ」
「ええ、母に頼みます」
それで話は一段落。大和先輩がタイマーを20分にセットして中学の慣習のお昼寝タイムだ。机に突っ伏してスヤァ。おや……………………。
神奈川県郡内中学校 猫又繋護達の引退試合になった対戦校 モデル校 西中原中学