烏野高校の猫又君   作:青黄紅白

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2012年7月②

 仮眠から起きて歯磨きとかしたら午後の部。アップをして2巡目が始まる。初っぱなの相手は梟谷。

 入口側のコートのベンチサイドでミーティングを始めていく。

 

「おーし、じゃあ午後の部だ。1回戦ってどんなチームかって言うのを何となく分かってきただろうからどんどん食らいついていこう。絶対に勝てないチームって訳では無いぞ。

 あと木兎を乗せると手が付けられなくなる。圧かけて機能不全にしていこう」

「「「はい!」」」

「お前らから何かあるか?」

 

 烏養コーチが俺達の所感を求めてきたから、手を挙げて思ったことを伝えていく。

 

「性格的にも熱くなりやすいタイプだと思うので積極的に難しい1本目を4番に取らせても良いと思いました。フロントゾーンとかライン際ですね。

 あと、決まったコースに打ち続ける傾向が高いので、ブロックでそっちのコースに打たせ続けて最後にドシャット、なんかは有効的だと思います」

 

 そう言うと、烏養コーチは何回か頷いて「狙えるんなら狙っていこう」って言った。他にはいないから取りあえずそんな感じ。

 

「頭使って考えるバレーやっていけよ!」

「「「はい!」」」

 

 円陣を組んでノヤ先輩の替わりに俺がコートに向かう。

 

◆

 

 一方、梟谷学園男子バレー部一同もミーティングを行っていた。

 

「午後一発目、集中していこう。それで猫又君も出るんだな?」

「はい、2巡目は出るって言ってました」

 

 尾長渉が夜中司の問いに答えると、夜中司は数回頷く。

 

「尾長達から何かあるか?」

「……そうですね。繋護、あ、13番です。13番はセッター経験者でもあるのでセッターの2番が触っても強気で速攻とか使ってきます。ツーセッターみたいな感じになりそうなので気を付けて下さい」

「あと音駒の夜久みたいな感じだから。ケロッと拾ってくるぞ」

 

 木葉秋紀も猫又繋護対策に続く。

 

「まあリベロだから攻撃に加わることは無い。ま、いつも通り自分達のバレーやっていけ」

「「「はい!」」」

 

 円陣を組んだらスタメンの7人がコートに向かっていった。

 

◆

 

 背番号とポジション確認に入る。

 

梟谷

4 木兎先輩 7 秋紀先輩 2 鷲尾先輩

12 渉(リベロ) 5 赤葦先輩 3 大和先輩

 

烏野

11 月島 3 東峰先輩 2 スガ先輩

1 キャプテン 5 田中先輩 6 成田先輩(俺)

 

 サーブはウチからだから成田先輩のサーブから。仮のウォーミングアップゾーンで声かけからスタートだ。

 

「「「成田1本ナイッサー!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッ!!」」」

 

 主審の笛が鳴って、成田先輩がサーブを打つ。狙いはレフトのサイドライン。

 

「「「木兎!」」」「「「アウト!」」」

「……いーや!」

 

 アウトっぽかったけど木兎先輩がオーバーで処理して、ボールが後衛スタートでネット際まで走って行った赤葦先輩へと返っていく。

 

「赤葦! トスくれ!」「センター!」「ライト!」

「木兎さん!」

 

 そしてオープントスがレフトの木兎先輩へ上がる。

 ライトのスガ先輩にセンターから月島が合流してブロックに付いた。

 

「「せーのっ!」」

「「「ブロック2枚!」」」

「……ォラ!」

「「ノー!」」

 

 木兎先輩のスパイクは月島の左手側を通ってこっちコートのレフトのアタックラインとサイドラインの交差する所に落ちた。いわゆるインナーコースだ。まず梟谷に先制点が入る。【1-0】。

 

「くう~っ! やっぱり俺サイキョー!!」

「「「木兎ナイスキー!」」」

 

 木兎先輩がやべえってのは重々承知してる。だって今のウチは自力が無くて勝ち目が薄いチームだし。だから練習してるんでしょうがってやつだ。

 

「切り替えていけよ! 上手いのはわかりきってるんだからな!」

「「「はい!」」」

 

 そしてサーブが終わった成田先輩とサイドラインで入れ替わる。

 

「頼むぞ、ねこ」

「はい!」

 

 何のためにここにいるんだって話ですよ。コートに一礼して、そのままライト側まで向かっていく。

 前衛のスガ先輩の分前にも行けるように注意してバックライトでサーブレシーブに備える。

 

「「「鷲尾! 1本ナイッサー!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 主審の笛が鳴って、鷲尾先輩がジャンフロを打ってくる。狙いは田中先輩。

 

「「田中!」」

「オラ!」

 

 田中先輩がアンダーで返球。ちょっと短いか。

 スガ先輩がボールの落下地点まで走って行って東峰先輩にトスをあげる。他の4人はセンター側に集まってブロックフォローに回った。

 

「「「3番!」」」

 

 ライトの秋紀先輩とレフトの木兎先輩がセンターの渉に合流して3人がブロックに付いてきた。

 

「「「せーのっ!!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

「ッシ!」

「ノー!」「ワンチ!」「ワンチ!」

 

 渉の左手と木兎先輩の右手に当たってドシャット。ボールがこっちのコートに返って来るから、素早くボール下に入り込んで思いっきりボールを高く上げた。

 

「「「ナイスカバー!」」」

「スガ! もう1本!」

 

 ボールが上がってる間に態勢を整えて、次に備える。次も東峰先輩だろう。ボールが落ちてきて、もう1回スガ先輩がセンターの東峰先輩にトスを上げる。

 

「……旭!」

「「「もっかい3番!!」」」

 

 さっきと同じようにブロックが3枚付いてきて、東峰先輩もジャンプした。

 

「「「せーのっ!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

「ッシ!」

「ワンチ!」「ノー!」「ノー!」

 

 東峰先輩のスパイクは秋紀先輩の右手の先に当たって吹飛んでいく。でもリベロが追いついてボールを返球した。ボールが上がっている間に全員ポジションを移動して、俺はバックレフトに移動する。

 

「ライト!」「センター!」「赤葦!」

 

 赤葦先輩は後衛だからツーはない。秋紀先輩のCクイックか渉のAかBクイックか、またまた木兎先輩へのオープントスか。

 チームを盛り上げるためにも木兎先輩に上げる気がするけど。

 

「……木兎さん!」

「「「4番!」」」

 

 レフトにアンテナまで伸びていくオープントスが上がって、ライトのスガ先輩にセンターの月島が合流してブロックについた。

 東峰先輩が下がってインナーを警戒する。

 

「「せーのっ!」」

「「「ブロック2枚!」」」

 

集中力を引き上げて木兎先輩のモーションをよく見る。

 

 助走――クロス。

 身体の向き――クロス。

 視線――月島の左手を見た。

 スイング――クロス。

 ⇒ブロックアウト!

 

「オラ!」

「ワンチ!」「ノー!」

 

 1歩下がってブロックアウトに備えると、予想通り木兎先輩のスパイクは月島の左手に当たって俺の方に大きく吹飛んできた。

 サイドラインを向くようにターンして走る。走って走ってなんとか落ちる前にボールに触れた。思いっ切りコートに向かって打ち上げてフライングで着地する。

 

「「「ナイスカバー!」」」

 

 素早く起きてコートに戻る。ボールはアタックラインの上に落ちるような軌道を取っていて、スガ先輩がボールの落下地点で待っていた。

 

「スガー! もう1本!」

「旭!!」

「3番来るぞ! レフトマーク!」

 

 スガ先輩から東峰先輩にトスが上がって俺もそのままブロックフォローに入る。

 ライトの秋紀先輩にセンターの渉とレフトの木兎先輩が合流してブロックに付いた。

 

「「「せーのっ!」」」

「「「ブロック3枚!」」」

「ふっ!」

「ノー!」「ワンチ!」「ノー!」

「ぐっ……!」

 

 東峰先輩のスパイクは渉の両手の手首に当たってドシャット。ボールが東峰先輩の左肩に当たってサイドライン側に落ちていく。

 

「猫又!」「「「ねこ!」」」

 

 ……いける。

 パパッと左斜めにサイドステップをしてボールの落下地点に素早く入り込んだらセンターに上がるように打ち上げた。膝をつくだけで済ませる。

 

「月島! ラスト!!」

「「「11番!」」」

 

 急いで立上がって今度はセンターのブロックフォローに。秋紀先輩達は3人揃ってセンターまで移動してた。

 月島が助走してジャンプする。そして強打に見せかけてフェイントにしていくとそれすらも見破られてバックライトの赤葦先輩とバックレフトの大和先輩が若干前に詰めてきた。

 月島がレフトのフロントゾーンにフェイントすると大和先輩が突っ込んでくる。

 

「赤葦! 頼む!」

「はい!」

 

 大和先輩がボールを高く上げてあっちのターン。ラリー続くなぁ……!

 

「ライト!」「センター!」「赤葦! 寄越せ!!」

「木兎さん!」

 

 赤葦先輩がレフトにオープントスを上げて、ライトのスガ先輩にセンターの月島が合流する。

 

「「せーのっ!」」

「「「ブロック2枚!」」」

 

 木兎先輩のモーションをよく見る。

 

 助走――ストレート。

 身体の向き――ストレート。

 視線――こっち見た。

 スイング――クロス。

 ⇒クロス!

 

「オラ!」

「「ノー!」」

 

 木兎先輩のスパイクは月島の左手の横を通って俺の右の方に真っ直ぐ飛んでくる。パパッと移動してアンダーの構えを差し伸べると、すっげえ衝撃が両腕に伝わってきた。アームスリーブが無かったらやばかった。

 

「「「ナイスレシーブ!」」」

 

 我ながら良いレシーブ。……と思ったら主審が笛を吹いた。どうやら木兎先輩がネッチしたらしい。

 

「だあっ!? スマン!!」

「熱くなりすぎるなよ!!」「ドンマイドンマイ!」

 

 何はともあれこっちの点だ。【1-1】。

 コート中央に集まってペチペチハイタッチ。

 

「粘っていけば勝機有るからな! 気持ち切らすなよ!」

「「「はい!」」」

「旭、折れるんじゃねえぞ。これも練習だ」

「……おう」

「ねこもナイスカバー」

「はい!」

 

 集中力やらスタミナやら切らした方が負ける。食らいついてはいるんだ。後は粘っていくだけ。このローテの始まり方東峰先輩の負担やばいな。

 ローテーションが1つ回ってスガ先輩がサーブだ。

 

「「スガ! 1本ナイッサー!」」「「「1本ナイッサー!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッ!」」」

 

 ポジショナルフォールトに気をつけて田中先輩と向かい合って、主審の笛とスガ先輩のジャンフロのモーションに合わせてバックレフトに移動した。スガ先輩の狙いは渉と赤葦先輩の分穴になってるレフト側。

 

「「「サル!」」」

「ッケ!」

 

 大和先輩が難なく拾ってボールが赤葦先輩に返っていく。

 

「A!」「赤葦!」「ライト!」

 

 レフトから渉がAクイック。センターの木兎先輩はセミかオープン。秋紀先輩は平行か?

 3人がトスを呼んでどう来るか分からない。赤葦先輩は後衛だからツーは考えなくて良いのが救いだ。

 

「尾長!」

 

 赤葦先輩がジャンプトスで渉にトス。キャプテンと月島がブロックに跳ぶけど、完成前にキャプテンのブロックの上から打たれてこっちコートのライト側に落ちた。相手の点数だ。【2-1】。

 

「良し!」

「「「ナイスキー!」」」

 

 相変らず高えなー。あれだけ上手くいかれたらしょうが無い。

 

「悪い!」

「ドンマイ!」「ドンマイっす!」

 

 コート中央に集まってハイタッチ。はい、切り替え。

 そして相手のサーバーは秋紀先輩。ジャンフロもジャンプサーブも出来るから何で来るのか分からない。

 

「「「木葉1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 前衛の月島とバックライトのスガ先輩の分も警戒してバックライト寄りのバックセンターでサーブレシーブに備える。

 ……あ。眼が合って笑った。こっち打ってくるな。

 

 

 梟谷との試合が終わった。【25-21】でウチの負け。

 前衛に上がってきたキャプテンと山口が交替して高さの補強、サーブを打ち終わった田中先輩と縁下先輩が交替して守備強化、成田先輩のサーブの時に木下先輩と交替してピンサーってやったけど完敗。

 

「フライングー!」

「「「ウィーッス」」」

 

 パパッとフライングを終わらせてミーティングに入る。

 

「悪くは無かった。粘れてたしな。ただ、地力で負けた。

 サーブ、レシーブ、トス、スパイク、ブロックともっと上手くなるしかねえぞ。相手の方が上手えもん。もーしょうがない。

 この2日間は俺達の弱さを受け入れる時だ。へこんでる暇があったら何か一つでも学べ。いいな!」

「「「はい!」」」

「梟谷がサーブやるっていうから混ざろう。やってこい!」

「「「はい!」」」

 

 隣の生川と森然の試合がまだ終わってないからサーブ練習だ。俺も打っとこ。

 

 

 【28-26】で生川が勝って、全校でローテーション。音駒の皆がアップを取る時間を取ってから試合が始まる。

 

「じゃあ音駒だな。お前らも分かってるだろうが、繋ぎのバレーをしてくる。そんで11番の灰羽が加わって高さも補強されるようになってる。気を付けろよ。

 でも初心者だから1本目を取らせるようにすれば案外崩しやすい。5番の孤爪と11番の灰羽を積極的に狙っていこう」

「「「はい!」」」

 

 円陣を組んでコートの中に向かう。

 

◆

 

 一方、音駒高校男子バレー部一同もミーティングを行っていた。

 

「9番10番がいないから変人速攻は無い。が、孫が入ってツーセッターみたいな感じになるから注意しとけよ。1本目を2番に取らせてもコンビあるからな」

「「「はい!」」」

 

 円陣を組んで、スタメンの7人がコートに入っていく。

 

◆

 

 背番号とポジションの確認に入る。

 

音駒

4 山本先輩 11 灰羽 5 孤爪先輩

2 海先輩 1 黒尾先輩(夜久先輩) 6 福永先輩

 

烏野

11 月島 3 東峰先輩 2 スガ先輩

1 キャプテン 5 田中先輩 6 成田先輩(俺)

 

 音駒は1試合目と同じ。キャプテンがじゃんけんで負けたから音駒からサーブだ。つまり福永先輩から。

 サイドラインで成田先輩と入れ替わる。

 

「頼むぞ」

「はい!」

 

 コートに一礼してそのままライト側へ移動。スガ先輩の分前も警戒しつつバックライトでサーブレシーブに備える。

 

「「「福永、1本ナイッサー!!」」」

「1本集中するぞ!」

「「「オォーッス!」」」

 

 音駒との試合が始まる。

 

 

 音駒との試合が終わった。【29-27】でウチの負け。

 

「フライングー!」

「「「ウィーッス!」」」

 

 パパッとペナルティを終わらせてミーティングに入る。

 

「音駒の黒尾と夜久みたいに、ブロックでスパイクの誘導をしてレシーバーに取らせるって言うのをこの夏でもっと洗練させていきたい。音駒の黒尾と夜久はこの4校の中でもすげえ。ちゃんと見とけよ!!」

「「「はい!」」」

「隣のコートはもう終わってるから次審判な。暑いから大丈夫だと思うけど身体冷やすなよ。あと水分補給しっかりな」

「「「はい!」」」

 

 梟谷の皆さんがこっちコートに移動してくるのが見えたから、邪魔にならないように端に移動して審判をどうするから決めていく。俺は森然と梟谷のラインズマンになった。この分だと次は副審かな?

 

「にしても強いっすね、シティボーイ連合」

「全敗は避けよう」

「旭と田中に任せきりになっちまうからセンター線ももっと使えるようにしないと」

「……そういう個人の課題も見つけていかないとですね」

 

 烏養コーチも言ってるけど、ただ勝ちましたー、負けましたーじゃなくてその内容が大事だと思うんだ。せっかくのこの機会に盗めるものは盗んでいこうってね。

 ……まあ? 負けっ放しで帰れるかっての。

 ステージ側のコートの審判台にあるフラッグを1本取って指定の位置に行く。……お。やっちゃんも清水先輩と一緒にラインズマンやるっぽい。ガンバ。

 

 

 森然と梟谷の試合が終わった。【22-25】で梟谷の勝ち。

 森然の皆さんがペナルティを熟してる所を見つつ、烏野は烏野で集まって簡単にアップを取っていく。気温が高くなってきてるからちょっと動くだけでも問題なかった。対人パスとサーブをして試合を始める時間になった。

 

「おーし。生川とだな。まずサーブに気を付けること。全員強いサーブ打ってくるからよ。暑くなってきて集中力とスタミナ持ってかれるけどそういう練習だぞ。丁寧を心がけろよ」

「「「はい!」」」

 

 今度は武田先生が。

 

「猫又君のお父様から連絡があって、少し前に東京駅に到着してここまで向かっているようです。2人が到着する前に1セットでも取っていきましょう!」

「「「はい!」」」

 

 ってことは到着は15時前か。思ったよりも早かったな。

 ま、今は試合に集中しよう。円陣を組んでコートに向かっていく。

 

 

 生川との試合が終わった。【26-24】でウチの勝ち。やっと勝ったぜい。

 生川の皆さんがペナルティをし始めている間にミーティングをする。

 

「やっと1セット取ったな。自分達の土俵に引きずり込めば勝機はあるんだ。ただやるんじゃなくて、〝どんな風に〟って言うのをきちんと考えていけよ」

「「「はい!」」」

「自重トレーニング出来てないから俺達も手押し車でもやるか」

「「「お、おす」」」

 

 マジかー。

 11人だから、烏養コーチとペアを組んで手押し車を熟す。「あれ? 烏野勝ったんじゃ無いの?」って声が聞えてきた。勝っても負けてもペナルティ。はぁ。

 隣の森然と音駒も終わったから荷物を持って入口側のコートへ移動。ボールを使う時間も無かったって事みたいだ。なるほどなー。

 森然のコーチがこっちまで来て「スパイクやっても良いですか?」って武田先生と烏養コーチに聞いていて、どうやらスパイク練習になるっぽい。

 

「あっ」

「「「ん?」」」

 

 球拾いに入ろうと思ったら、烏養コーチの素っ頓狂な声が聞えてきた。

 烏養コーチが見ている方を見ると、入り口に翔陽と影山、父さんがいる。3人の両手にはエコバッグがあった。つまり合計6つ。……ドリンクの粉か? 粉っぽい。

 時間も15時手前。予定通りだ。

 

「センセ、おじさん達到着したわ。ちょっくら挨拶してくる」

「僕も行きます!」

「じゃあ澤村。森然の笹川先生の指示に従ってスパイク練習やっといてくれ。すぐ戻るけどよ」

「分かりました!」

「猫又は影山と日向の教室への案内頼む。着いてこい」

「はい」

 

 翔陽と影山のシューズとかウェアは昨日の夜に預かってたから、2人とも着替えられないんだよな。森然との試合はお預けか。

 武田先生と烏養コーチと一緒に入り口の3人の所に向かって、父さん達と合流する。

 

「武田先生、繋心君お疲れ様です。繋護も元気そうで何よりだ」

「猫又さん! ありがとうございました!」「おじさん、助かったわ。ありがとうございます」「ん」

「いえいえ。普段はお手伝い出来ないですしね」

 

 父さんからエコバッグを差し出されたからそのまま受け取る。予想通り中身はドリンクの粉だった。……結構重量有るな。あって困るものでは無いからすげー有り難い。

 

「影山君も日向君も無事合流できて良かったです!」

「猫又に案内させるから準備とアップしてこい。外でボールも使っていいって話ついてるから。

 あと焦らなくて良いぞ、念入りにな」

「「はい!」」

 

 じゃあ早速案内したいんだけど、ドリンクの粉はどうすりゃいいんだ? エコバッグだって使うだろうし。

 

「烏養コーチ、差し入れ。……差し入れ? どうすれば良いですか?」

「マネージャー捕まえとくから先に2人案内してこい」

「分かりました」

 

 2人一緒にそこら辺の机の上にエコバッグを置いて「じゃあ行くぞー」って歩き始めようとする。

 

「あっ。繋護のお父さんありがとうございました!!」

「ありがとうございました!!」

「名前の書きミスには気を付けるんだよ。さ、頑張っておいで」

「「はい!」」

 

 2人がお辞儀してる間にシューズから内履きに履き替えて、3人で校舎に向かって歩き出す。

 

「新幹線と電車の旅どうだった?」

「人多くて疲れた」

「あー、しょうが無いね」

 

 電車に慣れてないからやっぱり気疲れしてるか。まあ、しゃーない。

 

「戦績は?」

「7セットやって1セットだけ勝ってる。敵わないって感じでは無いけどな」

「……早くバレーしてぇ」

「俺も!」

「アップはちゃんとしろよ?」

「分かってるって!」「おう!」

 

 「早く行こうぜ!」って翔陽に背中を押されて、早歩きで烏野に割り当てられてる教室に向かっていく。

 

 

 翔陽と影山が着替えて、外でのアップを終わらせて体育館に戻ってくると森然との練習試合が終わってた。点数を確認すると【27-25】で勝ったっぽい。

 森然の皆さんがペナルティを始めたのを見ながらミーティング終わりの烏野の皆に合流する。

 ちなみに父さんは都内で行われる花火大会に行くらしいから祖父ちゃん家に行った。祖母ちゃんだけになっちゃうしね。姉ちゃん達も行ってるらしい。

 もしかしたらこっからでも夜花火を見られるかもしれない。

 

「「遅れました! すみません!」」

「おー、影山と日向無事に到着したか」

 

 翔陽と影山の2人がキャプテンとかスガ先輩にもみくちゃにされて、烏養コーチが「影山と日向対人してこい」って命令したらコートに向かっていった。

 

「2巡目が終わってキリ良いから次の試合から影山と日向を出そうと思う。一旦菅原は休憩な。でも要所要所で出すぞ、いつでも出られるようにしとけ」

「はい!」

「成田と月島もスタミナ削られて動き鈍ってきたから一旦休憩。山口、ミドルで出られるな?」

「はい!」

 

 3巡目だから俺はお休みの可能性が高い。いーなー。

 

「縁下も出すぞ。準備しとけ」

「はい!」

「良し。じゃあ隣のコートが終わるまでスパイクレシーブと二段トスの練習やるか。東峰、球出せ」

「はい!」

 

 隣の梟谷と音駒の試合はまだ終わってない。

 

 

 梟谷が勝って全校一斉にローテーション。3巡目に入った。

 スパイク練習をするためにリベロ組はこっち側、セッターとスパイカー組はネットを挟んで移動していると、早速木兎先輩が影山と翔陽を見つけた。

 

「おおっ!? 新顔だ!」

「烏野高校1年の影山です! 宜しくお願いします!」

「影山ずりい! 1年の日向翔陽です! よろしくお願いします!!」

「梟谷学園3年の木兎光太郎だ!! 今俺達全勝してんだ! 負けねえぞ!」

「「っ!! 俺達も負けません!!」」

 

 単純な3人だから相性良いと思ってたんだよね。一気に賑やかになった。

流石エースだけあって木兎先輩全然疲れて無いのな。すげー。

 

「あの2人が黒尾達が言ってる超人コンビ?」

「そうです」

「どんな選手なんだよ?」

「試合中のお楽しみってことでお願いします」

「ほーん?」

 

 梟谷の小見先輩に話し掛けられて軽く雑談。でもスパイク練習が始まったから別れた。初見殺しってことで1セット取れそうだけど。

 

 

 準備が終わってミーティングに入る。

 

「影山と日向が来たから再確認な。

 今回の2日間では勝敗以上に試合の内容をより重視してる。個人とチームのレベルアップにはこれからどんな風にしていかないといけないのかって奴だ。カッコよく言うと今の自分の弱さを確認して夏の課題を見つけていこう。

 あとだんだん疲れも溜まってきてパフォーマンスも落ちてきてると思う。その時にどう踏ん張れるかって言うのも勝ち上がって行くには大事なことだ。

とは言え無理はするなよ。怪我をしてバレーをできなくなる方が痛手だからな。ということで集中していこう」

「「「はい!」」」

 

 円陣を組んでスタメンの6人がコートに向かっていく。そして背番号とポジションの確認だ。

 

梟谷

4 木兎先輩 7 秋紀先輩 2 鷲尾先輩

12 渉(リベロ) 5 赤葦先輩 3 大和先輩

 

烏野

9 影山 10 翔陽 5 田中先輩

3 東峰先輩 12 山口(ノヤ先輩) 1 キャプテン

 

 梟谷は変わらずか。そして翔陽が前衛ってことであっちのコートがざわつきつつも観察してる。

 そしてサーブは梟谷から。

 

「「「サル! 1本ナイッサー!!」」」

「1本集中!」

「「「オォーッス!」」」

 

 梟谷との練習試合が始まる。

 

 

 試合終了。【28-26】でウチの負け。

 

「フライングー!」

「「「ウィーッス」」」

 

 パパッとペナルティを熟してミーティングに入る。

 

「……そうだな。影山と日向の意見から貰おうか。2人はどう思った? まず影山から」

「梟谷は全員ハイレベルで、全国で勝ち抜いて行くには烏野ももっと上手くなっていかないとって思いました。特に赤葦さんみたいにキャッカンセー? を身につけていきたいと思います」

 

 客観性な、客観性。

 

「もうちょい詳しく」

「サーブだったら威力と精度。レシーブなら次触る人が取りやすいような柔らかいボール。スパイクならコースの打ち分けとか威力とかっす」

「うんうんうんうん、だな。

 改めて味方がやりやすいようなボール、相手が嫌がるボールって言うのを考えていこう。

 そんで、菅原にも当てはまるけど、セッターって言うのはやっぱり客観性が求められる。プレーしながら、仲間の5人と相手の6人の様子を外からも見る動画みたいなのをイメージできるようになっていけると良い。

……なんつーんだ? 将棋とかチェスみたいに対局してるようなイメージ」

「コートを俯瞰的に見る、でしょうか? 烏養君」

「そうそう。自分も駒として扱いつつプレーしてるって言うか。言いたいこと分かるか?」

「はい」「なんとなくっす」

 

 自分の感覚器官から入ってくる情報を整理してゲームメイクをしていくって事だと思うんだけど……。まあ言いたいことは分かる。

 

「梟谷の赤葦とか音駒の孤爪なんかはそういうイメージを具体化してんじゃねえかな。ツーとかセッティングが的確だしよ。

 そんな訳で、菅原と影山は特に出来るようにな。難しいと思うけど、ブロックが誰を警戒してるのかだったりが分かるようになると思うから」

「「「はい!」」」

 

 まあ、慣れれば出来るようになると思う。続いて翔陽の意見発表だ。烏養コーチが話すように促す。

 

「慣れてこられるとギュンの方の速攻が通用しなくなってきたので、自分で打てるようにしたいです」

「だよな。

 身体の向きだったりスパイクのスイングの方向、最高打点なんかでスパイカーがどこに打ってくるっていうのを上手いレシーバーは一瞬で判断してる。

 今の試合でもブロッカーで誘導してレシーバーが対応ってされてきたから、やっぱりネタが分かると打ち分け出来ない分応用力に欠けると思うんだよ。体格もあって日向のボールって軽いし」

 

 一呼吸置いて、烏養コーチが続ける。

 

「影山にも言うけど、あの変人速攻を打ち分け出来るような練習をしていった方が良いと思う。

 普通の速攻と変人速攻、強化版変人速攻の3種類を使いこなせれば日向はポイントゲッターとしてのレベルが上がると思ってる。この夏で変人速攻を強化していこう」

「はい!」「はい」

「おーし、隣のコートが終わるまでスパイク練習だ」

「「「はい!」」」

 

 空き時間を使って梟谷がスパイク練習を始めていたからそれに混ざる。

 

 

 音駒戦は【27-25】で負け。生川戦は【25-23】、森然は【25-22】で勝ち。2巡目の分森然戦で試合にでた。

 中途半端な時間になったから15点マッチ、デュース無しで4巡目をやった。

 梟谷には【15-14】で負け、音駒には【15-13】で勝ち、生川には【15-14】で勝ち、森然は【14-15】で負け。

 16セットやって、勝ったのは6セットで負けたのは10セットで1日目が終わった。

 

「気を付けー! 礼!!」

「「「お願いします!」」」

 

 朝と同じように集合して全体で締めに入る。

 

「合宿1日目お疲れ様、諸君。

 どの学校も夏に向けての課題が見つかったことだろう。梟谷はインターハイ、他の4校は春高予選に向けてどんどん成長していこう。

 これから夕飯なりシャワー、フリー時間とするがまだ他の生徒や先生方がいらっしゃるから羽目を外しすぎないようにな。

 それでは今日はここまで。明日に向けてしっかり休むこと」

「「「はい!」」」

「あと、20時から花火大会があるから見られるかもしれないぞ。ただ、節度は持てよ」

 

 どよめきが溢れる。部活ばっかだでこういうの全然出来てないもんなー。

 黒尾先輩が号令をかけて挨拶したら今日の練習は終了した。

 

「キャプテンしゅーごー! 風呂の順番決めるぞー!」

「「「おー」」」

 

 戦績とかじゃんけんかな。早くお風呂入りたい。お腹も空いたし。

 

 

 夕ご飯とお風呂、洗濯して干したり、教室で軽く勉強して過ごしていると、打ち上げ花火のあの独特な音が聞えてきた。翔陽とか木兎先輩の「すっげー! 花火だー!!」って声も聞えてくる。

 ノソノソと立上がって教室の窓へと近付いていくとここからでも花火が見えた。おー。

 

「俺見てくる!」

「待てよノヤっさん!!」

「すげー、元気だなー」

 

 教室に残ってるのは東峰先輩と縁下先輩、成田先輩、木下先輩、月島と俺。お、「谷地さんすげーよ花火!」って聞えてきてどうやら合流したらしい。

 成田先輩と月島はもう眠そうで、船を漕ぎながら花火の音でハッと起きるってのを繰り返してる。

 

「そのまま寝ろー」

 

 縁下先輩が成田先輩を、木下先輩が月島を布団に転がすと、2人はすぐに寝息を立て始めた。

 

「バス移動もあって疲れましたね」

「だな。9時前に寝るとか何時ぶりだろ。俺も疲れたし寝よう」

「「「お休みなさーい」」」

 

 ……俺も寝よ。この眠いときに寝ないとなんだかんだで寝るタイミング逃すし。

 ということで布団に入って目を瞑る。一気に意識がなくな……………………。

 

◎

 

 音駒高校からは猫又育史と直井学、烏野高校からは武田一鉄と烏養繋心、梟谷学園からは夜中司と滝沢良文、生川高校からは中崎純一と秋田洋介、森然高校からは笹川良樹と荒川新平集まって、この10人は本日の振り返りと翌日の予定の確認を行っていた。

花火の打ち上がる音が聞こえてきて全員外を見ると、丁度花火が打ち上がって全員が感嘆の声を漏らす。

 

「いやー、今年も夏ですねー」

「そういえば宮城はこっちよりも涼しいんですか? すみません、行ったことがなくて」

「そうですね。夜は比較的過ごしやすいと思います」

「烏野の生徒さんも慣れない気候で大変そうでしたね。お二人は大丈夫でしたか?」

「団扇があって助かりました」「熱気が凄いです。暑いの何の」

「我々も熱中症に気を付けないといけないですからね」

 

 秋田洋介、荒川新平、武田一鉄、夜中司、武田一鉄と烏養繋心、直井学の順で話が進み、花火の感想を口々に言い合い始めては雑談の時間に移り変わってきた。

 更に、夜中司は猫又繋護が試合中に分析をした結果を見て一つ唸る。各学校の弱点や選手の癖などが赤裸々に記されているものだ。

 

「それにしても良い着眼点ですね、お孫さん。これからに活用させて頂きます。やっぱりウチで取りたかった」

 

 生川高校の2人と森然高校の2人、直井学も続く。

 

「相変らず良い選手です」

「ふふっ。褒めても何も出んよ」

「烏野が全敗すれば転校の申し出をしようかと思ったのですがね。残念です」

「っ! 駄目ですよ! 猫又君は烏野の生徒ですからね!」

「実はここに転入届が」

 

 梟谷学園の夜中司、生川高校の中崎純一、森然高校の笹川良樹、音駒高校の直井学の4人が転入届を武田一鉄に見せびらかす。

 

「……皆さんそこまで猫又君を買っているんですね」

「中学から目立ってましたからね」

「西谷君と影山君の3人はVリーグでも通用しそうですよ」

「Vリーグ! ……ええと?」

 

 バレーボールの勉強を始めて3ヶ月ほどの武田一鉄は〝Vリーグ〟なるものを理解しておらず、思わず烏養繋心にヘルプを出す。

 

「プロ野球みたいなもんだ。実業団同士の対戦だからプロ選手では無いんだけどな。企業の部活って感じだ」

「中にはプロ契約をしてる選手もいますけどね。まあ、日本国内は実業団、海外はプロ契約って考えて貰って大丈夫です。思った以上に複雑なので、おいおい知っていけば問題ないかと」

「ほえー。勉強しないとですね」

「未経験で顧問を引き受けるのは大変でしょう。何かあれば遠慮無く聞いて下さい」

「はい! お願いします!!」

 

 バレーボール未経験で経験者では「ああ、それね」という反応をしない武田一鉄に老婆心ながら色々話してしまう9人であった。

 

◎

 

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