こんな展開読みたい的な妄想(SAOP 星なき夜のアリア)

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3年ぐらい前に思いついた、明日奈への憑依転生モノの残骸。
モチベーションがガス欠状態なので供養投稿。

※注:ミトのキャラがブレてます。ご注意ください。


こんな展開読みたい的な妄想(SAOP 星なき夜のアリア)

 

「…………はぁ…………はぁ……」

 

 身体は震え、呼吸が乱れる。両手に握った大鎌が、カタカタと音を鳴らしていた。

 主力武器である大鎌——《アイアン・サイズ》——を握りしめて震える少女ミトは、視線を左上に向ける。

 そこには、自身とその下に小さくパティーメンバーである細剣使いの少女——現実世界でも親友で、この世界に囚われてからはずっと一緒にいた——アスナのHPゲージが確認できる。その色はどちらも、危険域を示す深紅に染まっていた。

 HP(ヒットポイント)が0になる。つまり、アバターの命が潰えた瞬間、現実世界でも命を落とす『デスゲーム』となった『ソードアート・オンライン(略称SAO)』において、HPゲージが紅く染まるということは、可視化された命の残量の減少。すなわち、死へのカウトダウンを意味する。そんな命の危機が、自身と親友に降りかかっていた。

 本当なら、今すぐに駆けつけたい。駆けつけて、親友を襲っているであろうモンスター達を蹴散らして、安心させてあげたい。——なにより、アスナを失いたくない……。

 だが、現実はあまりにも無情だ。ミトはトラップにより崖下へと落とされ、アスナとは分断されている。彼女の元へ戻るには、落ちた崖を登るか、脇の坂道を上るしか無い。

 しかし、坂道からはウツボカズラのようなモンスター——通称《ネペント》——が押し寄せている。時間を掛ければ突破は可能だろうが、その前にアスナ、もしくは、既に回復アイテムを使い切っているミト自身がHPの全損、つまり『死』を迎えることになるだろう。

 ならば——、と右手に聳え立つ崖を見やるが、それを登るのも現実的では無い。その崖にはトラップが無数に仕掛けられており、アスナと分断されて焦ったミトは崖を登ろうとして、既に1度、——最初に落ちたのも含めれば2度——大きくHPを減らしている。

 それの示すところは——詰み。打つ手なし。

 彼女の頭は、その無情なる事実を理解していた。して、しまっていた。

 あるいは、危機的状況に思考を鈍らせ、ガムシャラにでも特攻を仕掛けるなり、トラップにかからない事を祈り崖を登るかしていれば、万に一つ、億が一にでも、奇蹟は起こり得たかもしれない。

 けれど、ミトはわかっていた。定期テスト学年順位で常に1位をキープする優秀な頭脳が、『ソードアート・オンライン クローズドβテスト』での経験を元に、「この状況は打破できない。詰みだ」と、残酷な答えを弾き出してしまった。アスナとミト、そのどちらかは、あるいは2人共が、死ぬ。

 その事実を認識した瞬間、ミトを襲ったのはネペント攻撃……ではなく、自身の内から湧き上がる言い知れない感情の本流だった。

 自分が死ぬことへの恐怖。親友を失うことへの恐怖。そして、アスナへの罪悪感。

 そもそも、デスゲーム開始が宣言されたあの日、右も左もわからないビギナーである彼女の手を引いて、常に死のリスクが付き纏うフィールドへと連れ出したのはミトなのだ。

『MMOはプレイヤー同士のリソースの奪い合い。《はじまりの街》付近は、今ここにいるプレイヤー達に借り尽くされ、1つレベルを上げるのも儘ならなくなる。だから、今のうちに次の街へと移動しよう』と言って——。

 本当に彼女のことを思うなら、ゲーム解放されるまで、安全な街の中で過ごす選択肢もあったはずだ。街中ではシステム的に保護されているため、基本的にHPが減ることは無い。すなわち、命の危険に晒されることもないのだ。——それを、自分が連れ出した。安全な街の中に居れば、死の憂き目に合うことも無かったはずだ。そんな罪悪感がミトの思考を支配する。

 そして何より、このゲームに彼女を誘ったのはミトだ。当時の自分が「《SAO》がデスゲームになる」だなんて知る由もないが、それでも誘ったのはミトなのだ。

「もし、自分がアスナを誘わなければ、彼女は巻き込まれずに済んだのではないか?」

 今となっては全く意味を成さない問いかけに、答える声があるはずもなく、空回った自問自答を繰り返し、取り留めのない罪悪感に押し潰されかけた。次の瞬間——恐怖が彼女を駆け巡る。

 それは、重責への恐怖。このままでは、親友の命を、死を、背負わなければならない重責への恐怖。あの日、自分が手を引いて連れ出した時に背負った、大好きな親友の命。その重さを、今、正しく認識した。ようやく、実感した。

 それは、今となっては遅すぎて、そして、15歳の少女が背負うには、あまりにも、重すぎた。

 

「あぁ…………あぁ……‼︎」

 

 うつむき、顔を顰める。その小さな両肩に背負った命の重さに耐えきれず、苦悶の声を漏らす間にも、視界左上に表示されたアスナのHPは減り続け、既に1割を切っており、今もなお、減り続けている。

 

(——こわい、いやだ、みたくない‼︎)

 

 ぎゅっ、と両目を閉じたところで、表示されたUIは、消えてはくれない。

 ミトにとって、アスナはただの親友ではない。幼少の頃、ゲームが上手すぎて孤立していたミト——兎沢深澄——は学校やクラスメイトの前では、自身のゲーム趣味を隠し、周囲とも距離を取っていた。そんな彼女にとって、アスナ——結城明日奈——は初めてできた、自分を偽る必要の無い友達だった。

 始めはゲームセンターで遊んでいた所を偶然見られただけだった。深澄と明日奈が通う私立エテルナ女学院は所謂『お嬢様学校』で、ゲームの話が出ることは一切ない、少々お堅い学校なのだ。そんな環境で「ゲームセンターで遊んでいた」という噂が広まるのはよろしくない。なので翌日、屋上へ呼び出し、「昨日の事は黙っていて欲しい」とお願いした際、「それじゃあ、わたしにもゲームを教えて?」と言われたのが、2人の馴れ初めだ。

 以来、明日奈は、深澄になかなか勝てないことに可愛らしく冗談めいて拗ねる仕草を見せながらも、ゲームの上手い下手、強い弱い関係無く、一緒にゲームを楽しめる友達で、唯一無二の親友で、そして、この世界での相棒で心の支え。

 そんな彼女が今、死にかけている。ミトの迂闊な行動で、命を落としかけている。

 

(あぁ……こんなことなら、《スプリー・シュルーマン》に気を取られなければ……)

 

 《スプリー・シュルーマン》。SAOの舞台となる全100層からなる《浮遊城アインクラッド》第1層におけるレアモンスター。これを倒せば、細剣のレア装備《ウィンド・フルーレ》が手に入る。ミトは、これをアスナにプレゼントしたくて、《スプリー・シュルーマン》を追ったのだ。

 

(——ッ‼︎ それで、アスナを失ったら何も意味ないじゃない‼︎)

 

 《ウィンド・フルーレ》は守備良く入手できたものの、急いで戻った時には、アスナが、目の前に居るネペントの真後ろに陣取り、アスナの死角に入り込んでいた《実つき》のネペントに気づかずに、細剣用ソードスキル《リニアー》を発動するところだった。

 《実つき》は攻撃すると、周囲のネペントを呼び寄せる効果のある煙を爆散させる。だから、2人共、細心の注意を払っていたが、合流できた安堵から油断し、気付くのが一拍遅れた。

 気づいたミトが慌てて声をかけ、アスナが咄嗟にモーションをキャンセルしようとするも、既に発動したソードスキルは止まらず、手前にいたネペントを貫通し、奥の《実つき》にあたり、周囲のネペントを呼び寄せる結果となってしまった。

 集まったネペントにより崖側に追い詰められたミトはトラップを踏んで崖下に落下し、今に至る。

 過去を反芻する行為に意味はない。それで現実が変わる訳ではないのだから。これは単なる現実逃避だ。受け入れ難い現実からの逃げだ。そうこうしている間にも、アスナHP残量は全体の5分を切っている。

——もう、助からない。

 

(——ごめん、あすな…………やくそく…………まも、れない…………)

 

 目の前に迫る絶望と、親友の死を背負う重圧が、少女の心を押し潰し、色を映さない瞳から、雫がひとつ、またひとつと溢れ出す。

 力無く宙を彷徨う左手が、メニューウィンドウを呼び出し、受け入れたくない現実から一時でも逃れるために、アスナ死を目にしたくない一心で、パーティー離脱処理を完了しようと伸ばした指が……

 

『アスナは絶対死なせない。私が、必ず守るから。だから、一緒にこの世界から帰ろ?』

 

寸でのところで、ピタリ、と止まる。

 脳裏に映るのは《はじまりの日》、街から出て、狼型モンスターに襲われ、恐怖と混乱で錯乱する彼女を抱きしめて、誓った言葉。

 

『絶対に死なせない』

『必ず守る』

 

「……私は、いま……なにをしようとした?」

 

 崩れかけた少女の心に、激情が迸る。それは、心の内には留まり切らず、激昂となって表出する。

 

「お前はッ……! いまッ……! なにを……! しようとッ……! したッ……!」

 

 色を失った瞳が激しく燃え上がる。

 

「お前はッ‼︎ いまッ‼︎‼︎ 何をしようと‼︎‼︎‼︎ しやがッた⁉︎⁉︎⁉︎ 兎沢深澄ィッ‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 メニューウィンドウを消し去って、大鎌の柄を握り直す。

 

「ふざけるなッ……ふざけるなッッ、ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなッッッ‼︎‼︎‼︎ あァ……巫山戯るなよ‼︎ お前! 何が死なせないだ⁉︎ 必ず守るだ⁉︎ 出来もしない事言いやがッて! 簡単に見捨てよォとしやがッて‼︎‼︎‼︎」

 

 行手を阻む、ネペントの群れを睨みつける。

 

「そンなのは“ミト”じゃないッ! 兎沢深澄でもないッ! ただの臆病者だッ! 負け兎だッ!」

 

 無理にでも笑みを張り付けて、震える心を叱咤する。

 

「兎が兎らしく、脱兎の如く逃げる訳にはイカねーンだよッ! わかってンだろーがッ!」

 

 張り付けた笑みは引き攣って、見るものに獰猛な印象を与えるが、臆病な自分を騙すには丁度いい。

 

「親友をッ! アスナをッ! 見捨てて逃げてッ! お前はッ! それで満足かッ⁉︎ お前はッ! その程度のクソッタレかッッ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

 乱暴な言葉で理性による恐怖を、憤怒の感情で塗り潰す。

 

(構えろ、兎沢深澄。お前は何故武器を取る?)

 

 自分で自分に問いかける。答えはもう決めていた。

 

「アスナを……守るため……」

 

(答えろ、兎沢深澄。お前は何故闘いを選ぶ?)

 

 自分で自分に問いかける。答えはすぐに見つかった。

 

「アスナを……死なせないためッ……」

 

(今、この両手は何のためにある?)

 

 自分で自分に問いかける。震えはもう、止まっていた。

 

「不安になっているはずのアスナを、抱きしめるため……!」

 

(その足は、何ためにある?)

 

 自分で自分に問いかける。覚悟はもう、決まっていた。

 

「アスナの元に、駆けつけるためッ!」

 

 宣言と共に、地面を蹴る。全身を使って推進力を利用する。一気にトップスピードへと到達し、ミトにできる最速でネペントの群れに突っ込んでいく。

 当然ネペント達が蔓を伸ばして迎撃してくるが、その悉くを大鎌でもって斬り払うが、死角から伸びてきた1本に気づかず、鎌の柄に巻きつかれる。

 

「邪魔を、するなッ……! アスナの、元に、行くんだッ!」

 

 巻きつく蔓は2本、3本と増えていく。

 

「邪魔をォッ! するなァァァぁぁぁあああああああああああああああ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 怒りに任せて引きちぎり、武器を奪い返す。周囲のネペントを滅多刺しにしてポリゴンへと還し、前へ前へと駆けていく。

 大鎌を回転させ、あるいは、振り下ろし、横薙ぎに回転して、モンスターすらも、足場にして、彼女の元へとひた走る。しかし、そんなミトを嘲笑うかのように、次から次へとネペントが湧いてきて取り囲まれる。チラリと確認したアスナのHPは4分を切っていた。

 

「チッ——」

 

 ネペントの包囲網から幾本もの蔓が伸びてくる。前後左右、まともに回避できる隙間はない。

 

(アスナ——ッ)

 

 だが、こんなところで止まる訳には行かない。絶体絶命なんて、今のミトを止める理由にはならない。

 極限状態故なのか。視界がスローモーションになり、体感速度が引き延ばされる。全ての蔓を見切り、見出した活路は——、下。すぐさま屈み、両手用鎌の範囲系ソードスキルを繰り出す。

 

「はァッ!」

 

 気合い一閃。システム外スキルによる最大限にブーストされたソードスキルは周囲のネペントを一撃の元に削り切る。

 爆散するポリゴンには目を向けず駆け出すが、少し走れば、すぐに別のネペントが行手を遮る。

 

『——————ッ!』

 

 見える範囲で13匹。威嚇音を上げでにじり寄ってくる。しかし、そんなものは驚異にならない。今のミトはアスナの元に駆けつけることしか考えていない。それを邪魔するものは、何であれ蹴散らすのみ。愛鎌を的確に振り回し、即座に3匹を葬る。

 

「邪魔ッ!」

 

 続いて2匹、5匹と数を減らす。残り7匹。死角に4匹隠れていたらしい。

 

「そこをォ! どけェェェぇぇぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッッッッッッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 素早い大振り。ソードスキルと見紛う程に鋭く速い通常攻撃。踊る様に繰り出されたそれが、7匹同時に絶命させる。アスナのHPはジリジリと削れ、残り2分。

 

「アスナッ!」

 

 すぐさま周囲を探り、戦闘音のする方へと駆け出す。途中、前方にネペントが2匹確認できたが、背後から横薙ぎのソードスキルを放ち、弱点クリティカルものせて一撃で屠る。

 止まることなく走り続け、開けた場所までたどり着く。そこには、ジャイアントアンスロソーという、恐竜のような頭を持った青いゴリラのようなモンスターにアスナが今にも噛み砕かれんとする光景が目に入る。

 

「——ッ、アスナァァァぁぁぁあああああああああ‼︎‼︎‼︎」

 

 全力のソードスキルをジャイアントアンスロソーの鼻面に叩き込み、ノックバックさせる。

 視界左上に視線をやるとアスナのHPは残り数ドットまで削れていた。




それなりに上手く書けたと自惚れているけど、どうやってこんな文章書いたんだろうか、当時の私……。

続きません。

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