#### 第一章:次元の亀裂と、威圧する巨獣
「……おいおい、嘘だろ。ダンジョンを出た瞬間にこれかよ……?」
黒鉄の重扉を開け、眩しい地上の日光に目を細めた瞬間、ムコーダ(向田剛志)は心底胃が痛くなるような感覚に襲われた。
無事にダンジョン攻略を終え、地上へ帰還した解放感に浸る暇すらなかった。目の前の広場に、見慣れない……しかし一目で「只者ではない」とわかる一団が立ち尽くしていたからだ。
その中央に立つのは、重厚な鎧に身を包んだ金髪の男。その後ろには、大きな杖を構えて目を見開くハーフエルフの少女、警戒した様子で短剣に手をかけるハーフフットの男、そして……長く立派な髭を蓄え、巨大な包丁と大鍋を背負ったドワーフの老戦士。
「な、なんだあの生物は……! 狼……いや、ただの狼じゃない! あの毛並み、あの圧倒的な魔力量……! 新種の巨大魔物か!?」
金髪の男――ライオス・トーデンは、驚愕に顔を歪ませながらも、その瞳に妖しいまでの「ギラつき」を宿していた。恐れというよりは、強烈な好奇心と観察欲望。それが、ムコーダの従魔たちの逆鱗に触れた。
『ぬぅおぉぉぉぉぉぉおん……!!』
地響きのような低音が、周囲の空気を激しく振動させる。
ムコーダの第一従魔であり、伝説の神獣フェンリルのフェルが、その巨躯を低く沈め、鋭い犬歯を剥き出しにして威嚇を開始したのだ。背の毛が逆立ち、一触即発の殺気が充満する。
『ぬぅ、なんだあの人間は! 我をまるで『食材』を見るような目で見つめおって……! 無礼千万! 一撃で噛み殺してくれようか!』
『フェル兄ちゃん、スイもたたかうー? スイの酸で、あの変な服のひとたちを溶かしちゃうー?』
フェルの足元から、ぽよんと跳ね上がったのはぷにぷにの特殊スライム・スイだ。可愛らしい声とは裏腹に、その体内にはどんな金属も瞬時に溶かす恐ろしい酸液が蠢いている。
『へっ、あのトカゲみたいな匂いのする奴ら、俺のスピードについてこられるかな! 一突きで仕留めてやるぜ!』
さらに頭上からは、小さなピクシードラゴンのドラちゃんが猛スピードで旋回し、鋭い爪を光らせて臨戦態勢をとった。
「ひ、ひえぇぇぇっ!? ちょっと待って! フェル、スイ、ドラちゃん! 落ち着いて! 争うつもりはないから!!」
ムコーダは泡を食って両手を広げ、従魔たちとライオス一行の間に飛び出した。冷や汗が滝のように背中を吹き出す。もしここでフェルが本気を出せば、この広場どころか周囲の街ごと消し飛んでしまう。
「ライオス、下がりなさい! あの狼……フェンリルよ! 間違いなく伝説級の神獣! それにあのスライムもドラゴンも、タダモノじゃないわ! 刺激しちゃダメ!!」
ハーフエルフの魔術師・マルシルが顔を蒼白にして叫び、ライオスの鎧の裾を引っ張る。
「落ち着け、マルシル。あんな毛並みの神獣、滅多にお目にかかれるもんじゃない。……一体どんな味がするんだろう? 硬い肉なのか、それとも神聖な味がするのか……」
「今すぐその思考を捨てろライオス!! 死ぬぞ!!」
ハーフフットの鍵師・チルチャックが呆れ果てたように叫び、頭を抱えた。しかし、ドワーフのセンシだけは、じっとフェルたちを見つめたまま、顎髭を撫でて呟いた。
「むぅ……魔物にしては毛並みが良すぎる。しっかりと手入れされ、良いものを食っておる顔だ。そこの若者……お主、これらの魔物を従えているのか?」
#### 第二章:冷や汗のネットスーパーと、灼熱のタマリンド
「は、はい……一応、僕の従魔たちでして……」
ムコーダは引きつった笑顔で頷いた。
しかし、周囲の空気は一向に緩まない。フェルは依然としてライオスを睨みつけ、ライオスはライオスで「どんな内臓をしているのか」と言いたげな瞳でフェルを観察している。このままでは、フェルの忍耐が限界を迎えて爪が振り下ろされる!
(くそっ、どうする!? 何か……何か奴らの気を逸らすもの、あるいはこの張り詰めた空気を和らげるものは……!!)
焦破したムコーダは、頭の中で一瞬で自身の固有スキル『ネットスーパー』を起動した。目の前に現れたホログラム画面を光速で操作する。
(冷たいもの……後味が爽やかで、一気に気分を変えられるようなドリンク……! あ、これだ!!)
ムコーダが瞬時にカートに放り込み、精算を済ませたのは――『タマリンドジュース』の缶とペットボトル、そして氷が入った紙コップのセットだった。
果実の甘酸っぱさと、東南アジア風のエキゾチックな香りが特徴の、あの独特な清涼飲料水である。
光の粒子とともに、ムコーダの手元に現れたキンキンに冷えたタマリンドジュース。
「ま、まあまあ皆さん! 暑い地上に出てきたばかりですし、喉が渇いているでしょう! これを飲んで落ち着いてください!」
ムコーダは手際よく氷を入れたコップにタマリンドジュースを注ぎ、ライオス一行に差し出した。
「ん……? 見たことのない液体だな。赤褐色で、少し甘酸っぱい香りがする……」
ライオスが興味津々にコップを受け取り、一口喉に流し込む。
「――っ!? なんだこれは……!? 酸っぱい!? いや、甘い! なんだこのコクは! まるで熟した果実とコクのある黒糖を合わせたような……喉を通り抜けた瞬間に、体に溜まったダンジョンの湿気と疲労が吹き飛んでいくようだ!!」
「えっ、本当!? ライオス、毒じゃないでしょうね……? ……んぐ。……んぁっ!? なにこれ、すっごく美味しい!! 甘酸っぱくて、後味がすごくさっぱりしてる! 何この果実、見たことも聞いたこともないわ!」
マルシルが目を丸くして感嘆の声を上げる。チルチャックもゴクゴクと飲み干し、ふぅっと息をついた。
「へえ……ダンジョン探検の後にこの酸味は効くな。疲れが一気に吹き飛ぶぜ。……おい、お兄さん、これ一体何のジュースだ?」
「た、タマリンドっていう果物のジュースですよ……」
ムコーダが安堵の息を漏らしたのも束の間。
『ムコーダ! 我にもそれを寄こせ! 我だけ省くとはいい度胸だな!』
『スイもー! 甘いの飲むー!』
『俺にもくれよ!』
「はいはい! フェルたちのもあるからね!」
ムコーダは大きめのボウルにタマリンドジュースを注ぎ、従魔たちに与えた。フェルは勢いよく舐め取り、その耳をぴくぴくと動かした。
『む……酸っぱいが、悪くない。肉の脂っぽさを流すのに丁度良さそうな味だな』
『甘くて美味しいー! スイ、これだーい好き!』
神獣たちが美味そうにジュースを飲む姿を見て、緊張感はすっかり瓦解した。……しかし、問題は別の場所で発生していた。
「おい……あいつら、何かもの凄く旨そうなものを飲んでないか……?」
「おいおい、あの伝説のフェンリルがおとなしく飲んでるぞ……」
「なんだあの果物の香りは……? 俺たちにも飲ませてくれよ!」
ダンジョン出入口周辺にいた他の冒険者や商人たちが、ふらふらと引き寄せられてきたのだ。異世界の殺伐とした地上広場で、突如として始まった「謎の極上ドリンク試飲会」。
「あ、ちょっと待ってください! 順番に……あーもう! ネットスーパーで追加購入だ!!」
ムコーダは泣く泣く銅貨と銀貨を消費し、大量のタマリンドジュースを買い占めては配る羽目になった。
#### 第三章:センシの眼光と、出された条件
「……ふむ」
大喧噪となった広場の片隅で、ドワーフのセンシだけは、タマリンドジュースのコップを片手に持ったまま、静かにムコーダの動きを観察していた。
「素晴らしい飲料だ。疲れを癒やす酸味、体に力を満たす糖分。ダンジョン探索者にとってこれ以上の補給食はあるまい。……しかし、お主」
センシがズシリと重い足取りでムコーダに歩み寄る。その巨大な包丁が日光を浴びてギラリと光り、ムコーダは「ヒッ」と声を上げて身を縮めた。
「は、はいっ!?」
「お主、手際が良いな。そして、その『召喚』の術……ただの魔法使いではない。食べ物の貴重さ、そしてそれを美味しく提供することの意味を分かっておる」
「えっ……あ、まあ、一応自炊は得意というか……従魔たちが大食いなもので……」
センシは満足そうに頷くと、自らの背中から巨大な両手鍋と包丁を下ろし、地面にドンッと置いた。
「決まりだ。これほどの男と出会えたのも何かの縁。ダンジョンを攻略し、地上へ帰還した我らと、お主たちの出会いを祝し……『宴』を催すぞ!」
「ええっ!? 宴!?」
「そうだ。我ら『ダンジョン飯』の探究者と、お主ら異世界の食通……いや、神獣を従えし料理人! 互いの技と食材を持ち寄り、極上の宴のメニューを作り上げるのだ!」
「いやいやいや! 僕はただの冒険者(兼商人)で、料理人じゃ――」
『ふむ、宴か。悪くないな!』
ムコーダの言葉を遮ったのは、ジュースを飲み終えたフェルだった。
『ムコーダ! あのドワーフの言う通りだ! ダンジョンを出た後の祝い飯は重要だからな。我は最高級の肉を所望するぞ!』
『スイも、美味しいご飯いっぱい食べたーい!』
『俺もがっつり肉がいい!』
「お前たちまで乗り気にならないでよー!!」
ムコーダは頭を抱えた。
ライオスは「ダンジョンの魔物食材も使いたい!」と目を輝かせ、マルシルは「もう変な魔物は嫌だ、普通の美味しいものが食べたい!」とムコーダに泣きつき、センシは「バランスの取れた栄養と、豪快な肉料理が必須だ」と腕を組んでいる。
(どうする……!? ライオスたちの持ち込む魔物食材と、フェルたちが要求する超絶大盛りの肉料理……これらを同時に満足させ、なおかつ大人数の宴を切り盛りするなんて、普通の調味料と食材じゃ追いつかないぞ……!?)
ムコーダの脳裏に、絶望的な調理プロセスが駆け巡る。
フェルたちの底なしの胃袋を満たす超巨大な肉塊。センシのこだわりを満たす圧倒的なコクと深み。マルシルたちを満足させる、洗練された「安全で美味い」惣菜や肉のクオリティ。
(普通のスーパーのラインナップじゃ、仕込みに時間がかかりすぎる……! もっとこう、豪快で、安くて、圧倒的なボリュームがあって、一級品に美味い肉や惣菜が手に入れば……!!)
#### 第四章:切り札降臨!『ロピアコーナー』オープン!
その時だった。
ムコーダの視界の隅で、固有スキル『ネットスーパー』のホログラム画面がピコーンと高い電子音を鳴らし、眩しい光を放ち始めた。
『システムメッセージ:ユーザーのレベル上昇および特定の条件達成により、ネットスーパー内に新たな専門提携テナントが開放されました』
(え……? テナント開放……? イオンや洋服店以外に、また新しい店が入ったのか……!?)
ムコーダが焦りながら画面をスクロールすると、そこにデカデカと踊る、見慣れた鮮やかな赤いロゴマークとインパクト抜群のキャッチコピーが目に飛び込んできた。
**【祝・新規オープン! 肉の専門店・食のテーマパーク『ロピア(LOPIA)』コーナー!】**
「――っっっ!?!?!?」
ムコーダは思わず目を剥き、二度見した。
「ロ、ロピアぁぁぁぁぁぁっ!??!?」
ロピア。それは日本の食生活を支える、圧倒的肉の品揃えとデカ盛り惣菜、そして高品質かつリーズナブルな価格で知られる最高峰のスーパーマーケットチェーンである!
画面をタップすると、そこには魅惑的な商品ラインナップがずらりと並んでいた。
* **『みなもと牛』超極厚切りサーロインステーキブロック(規格外サイズ)**
* **ロピア名物! 自家製超ビッグハンバーグ&特大ミルフィーユローラー**
* **肉屋が作る本気の極太自社製ソーセージ&巨大ピザ**
* **秘伝の特製焼肉のたれシリーズ(モンスターサイズ)**
「これだ……!! これしかない!!!」
ムコーダは拳を強く握りしめた。
肉の質、圧倒的ボリューム、仕込みの手間を劇的に減らす完成された大容量惣菜と特製調味料。センシの厳しい目をも唸らせ、ライオスの食欲を完璧に満たし、フェルたちの底なしの胃袋を黙らせることができる唯一無二の切り札!
「センシさん! ライオスさん!」
ムコーダはビシッと指を立て、自信に満ちた(しかし内心は冷や汗ダラダラな)笑みを浮かべた。
「宴のメインメニュー……僕に案があります! 異世界の『肉のテーマパーク』の真髄、見せてあげますよ!!」
「ほう……! 『肉のテーマパーク』とな!?」
センシが目を輝かせ、ライオスが喉を鳴らし、フェルが「ほう、面白い」とニヤリと笑った。
ダンジョン飯一行と、とんでもスキル一行。
二つの異世界食文化が交差する伝説の宴が、今まさに幕を開けようとしていた――!
### 第五章:開幕! 異世界×ロピアの豪華絢爛大宴会
「よし、それじゃあ宴の準備にとりかかるぞー!」
ムコーダの声が広場に響き渡る。
先ほどオープンしたばかりの『ネットスーパー』内「ロピアコーナー」から取り寄せた食材と調理器具が、次々と広場の一角に並べられていった。
センシは腕を組み、ムコーダが取り出した見慣れない食材や調理器具を食い入るように見つめている。
「むぅ……これは驚いたな。見たこともないほど新鮮で上質な肉、そして色鮮やかな野菜の数々……。お主、ただの商人ではないな? これほどの食材を瞬時に一揃えしてみせるとは」
「ははは、まあ僕の『スキル』のおかげですよ。……さあ、今回は僕たちの世界の最高峰の食材と、ロピアの自慢の商品を惜しみなく使って、最高の宴にしますからね!」
ライオスは目を輝かせ、食材に手を伸ばそうとしてはチルチャックに「勝手に触るな!」と手を叩かれていた。マルシルは未知の食材に少し怯えつつも、漂う芳醇な香りに鼻をひくひくさせている。
「じゃあ、一品目からどんどん作っていきますよ!」
#### 1. 北海道男爵いものカマンベールチーズ入りいももち
最初にムコーダが取り出したのは、北海道産の男爵いもをふんだんに使い、中に濃厚なカマンベールチーズを抱き込んだ「いももち」だ。
「まずは前菜代わりにこれです。『北海道男爵いものカマンベールチーズ入りいももち』!」
大きめの鉄板を熱し、バターをたっぷりと溶かす。ジュワッという快音とともに甘く芳醇な香りが立ち上り、丸く整えられたいももちが並べられた。表面がこんがりとキツネ色に焼き上がると、特製の甘辛い醤油タレを回しかける。タレが焦げる香ばしい煙が広場いっぱいに広がった。
「うわぁぁっ! なにこの甘辛くていい香り! 我慢できないわ!」
マルシルが真っ先に手を伸ばし、焼き立てのいももちを一口かじる。
「はふっ、はひふ……っ!? んん~っ!! なになにこれぇぇっ!?外側はサクッとしてるのに、中はもっちもち! しかも中からトロッと濃厚なチーズが溢れてくるわ!」
「どれ……ふむ。いもの甘みとタレの香ばしさ、そして濃厚なチーズのコクが完璧に調和しておる。酒の肴としても極上だな」
センシも満足そうに頷き、大杯の酒をグッと煽る。チルチャックも無言で2個目に手を伸ばしていた。
『む、この『いももち』というやつ、もちもちしていて美味いではないか。もっと寄こせ!』
『スイもこれだーい好き! ちーずがトロトロ~!』
フェルとスイも大絶賛で、あっという間に第一陣のいももちは完食された。
#### 2. 夏野菜のマーラータン刀削麺入り
「次は、ピリッと辛いスープで胃袋を温めましょう!『夏野菜のマーラータン刀削麺入り』です!」
ムコーダは大鍋にロピア特製の麻辣スパイスとじっくり煮込んだ高湯(上湯スープ)を注ぎ入れる。鮮やかな赤いスープがぐらぐらと煮立ち始めると、ズッキーニ、パプリカ、ナス、ナスなどの彩り豊かな夏野菜、そしてモチモチの極太「刀削麺」を投入した。
山椒のシビれる香りと唐辛子の刺激的な香味が空気を支配する。
「おぉ……! これはまた刺激的な香りだ! ダンジョンの深い層にある火山地帯の料理を思わせるな!」
ライオスがフーフーと息を吹きかけながら、刀削麺をすする。
「んむっ! ……かるっ!? いや、旨い! 噛み応えのある太麺に、痺れる辛さと深い旨味のスープが絡みついて……うわっ、汗が吹き出してきた! でも手が止まらない!」
「辛いーっ! 辛いけど美味しいーっ! 野菜がシャキシャキしてて甘いから、辛さと絶妙に合うわ!」
マルシルは汗をかきながらもスープまで飲み干さん勢いだ。
『ふむ、この辛味……体に熱が漲るな! 我はこの麺とやらの食感が気に入ったぞ!』
フェルもフーフーと鼻息を荒くしながら、大盛りのマーラータンを平らげていく。
#### 3. のどぐろの炭火焼き
「お肉の前に、極上の白身魚をどうぞ。『のどぐろの炭火焼き』です!」
ムコーダが取り出したのは、白身のトロと称される高級魚「のどぐろ」。ロピアの鮮魚コーナーから仕入れた一品で、丸々と太り、脂が乗りきっている。
竹串に刺したのどぐろに粗塩を振り、炭火の上でじっくりと焼き上げる。ジワジワと脂が皮目から溢れ出し、炭に落ちて香ばしい煙を上げる。
「これは……! 見事な魚だ。炭火でじっくり焼くことで、自身の脂で皮がパリッと揚がったようになっているな」
センシが感心したように見つめる。焼き上がったのどぐろを差し出すと、チルチャックが一口身を解して口に運んだ。
「……っ! おいおい、マジかよ……。口に入れた瞬間に身がフワッと解けて、甘い脂がじゅわっと広がるぞ……! 白身魚でこんなに脂が乗ってるやつ、食べたことない!」
「うわぁ……皮はパリパリで身はジューシー……。シンプルなのに、なんて贅沢な味なの……」
マルシルもその上品かつ濃厚な味わいにうっとりと目を細めた。
『ほぅ、この魚は良いな。骨まで柔らかく焼き上がっておる。噛むほどに旨味が溢れ出すぞ』
魚好きのドラちゃんも大喜びで、頭から豪快にかぶりついていた。
#### 4. 半熟ウフマヨネーズとベビーリーフの無限ネギンジャーサラダ
「さあ、ここからお肉ラッシュに入りますから、お口直しと栄養バランスのためにサラダを挟みますね!『半熟ウフマヨネーズとベビーリーフの無限ネギンジャーサラダ』です!」
新鮮で柔らかいベビーリーフを山盛りに盛り付け、その上に絶妙な半熟に茹で上げた玉子(ウフ)を乗せる。そこへ回しかけるのは、ロピアで大人気のオリジナル調味料「ネギンジャー(ネギと生姜の旨味オイル)」と特製マヨネーズを合わせた濃厚ソースだ。
「サラダに半熟卵と濃厚なソース……! センシ、いつも食べてる野草サラダとは全然違うよ!」
ライオスが卵にフォークを入れると、とろ〜りとした黄身が溢れ出し、ネギンジャーソースと混ざり合う。
「うわっ、生姜とネギの香ばしさにマヨネーズのコク、そして卵のまろやかさがシャキシャキの葉っぱに絡んで……これ、いくらでも食べられるぞ! まさに『無限』だ!」
「野菜のビタミンと卵のたんぱく質……理にかなった素晴らしい一品だ。この『ネギンジャー』という調味料、万能だな……」
センシも感心しきりで、自家製の木彫り皿に盛り付けたサラダを綺麗に平らげた。
#### 5. みなもと牛のサーロインステーキ・ほりにしのスパイスで
「さあお待たせしました! ロピアが誇る自慢のブランド牛『みなもと牛』の極厚サーロインステーキです! 味付けはアウトドアスパイス『ほりにし』で仕上げます!」
ムコーダが取り出したのは、見事なサシが入った厚さ5センチはあろうかという巨大な牛肉のブロックだ。
「な、なんだあの肉はーーーっ!?!?!?」
ライオスとセンシ、そしてフェルたちの目が一斉にギラリと光った。
熱々の鉄板に牛脂を馴染ませ、肉塊を投入!
「ジュワワワワワァァァァッッ!!!」
猛烈な旨味の煙と香りが広場全体を包み込む。表面をガツンと焼き固め、万能スパイス「ほりにし」を豪快に振りかける。ガーリック、醤油、塩、そして数々のハーブが混ざり合った香味が、肉汁の香りと合体して圧倒的な破壊力を生み出す。
『ぬおぉぉぉぉん!! これだ! 我の求めていたものはこれなのだ!!』
我慢しきれないフェルが肉に飛びかからんばかりの勢いで迫る。ムコーダは手際よく削ぎ切りにし、大皿に盛り付けた。
「さあ、召し上がれ!」
ライオスが大きな肉片を口に放り込む。
「―――ッッッ!!!!(絶句)」
「ラ、ライオス!? 大丈夫!?」
「う……旨すぎる……っ!! 肉質が信じられないくらい柔らかい! 噛むたびに溢れる極上の脂と肉汁……! そしてこの『ほりにし』というスパイス、和風の旨味とスパイスの刺激が肉のポテンシャルを極限まで引き出している……!!」
「柔らかぁぁいっ! お肉が口の中で溶けるみたい! こんなの、王様のお屋敷でも食べられないわよ!?」
マルシルが頬を押さえて悶絶する。
『むぐむぐ……美味い! 実に美味いぞムコーダ! この塩加減と香ばしさ、我が食してきた肉の中でも一、二を争う旨さだ!』
フェルもスイもドラちゃんも、山盛りのステーキを凄まじい勢いで平らげていく。
#### 6. かごしま黒豚のシカゴバーベキュー
「まだまだ肉は終わりませんよ! 次は『かごしま黒豚のシカゴバーベキュー』です!」
ロピア直送の「かごしま黒豚」のスペアリブを、秘伝のシカゴ風BBQソース(スモーキーで甘辛い濃密ソース)に漬け込み、炭火でじっくりと照り焼きにした一品。
甘くスモーキーな香りが鼻腔をくすぐる。骨の周りの一番美味い肉が、柔らかくホロホロに煮込まれて焼き上がっている。
「手で持って、豪快にかぶりついてください!」
チルチャックが大きな骨付き肉を両手で持ち、かぶりつく。
「ッ……! 香ばしい……! この甘辛いソースが豚肉の旨味と脂にめちゃくちゃ合う! 骨の周りの肉が一番美味いって本当だな……酒が、酒が足りねえ!」
「うむ! 豚肉の旨みをスモーキーな香りで閉じ込めておる。じっくりと火を通したことで脂がしつこくなく、実にジューシーだ!」
センシも骨までしゃぶる勢いで喰らいついている。
『うむ! 牛肉も良いが、この脂の甘い豚肉も甲乙つけがたいな! ソースの味が濃厚で癖になるぞ!』
#### 7. 奥久慈しゃもの北京ダック風炭火焼き
「次は鶏肉です! 日本の高級ブランド鶏『奥久慈しゃもの北京ダック風炭火焼き』!」
引き締まった肉質と深い旨味が特徴の奥久慈しゃも。これを丸ごと一羽、特製の甜麺醤(テンメンジャン)タレを塗りながら炭火で皮がパリパリになるまでじっくりと焼き上げた。
薄く焼き上げたパオズ(皮)に、パリパリのしゃもの皮と肉、ネギ、キュウリを挟み、濃厚な甘辛タレをかけて手包みでいただく。
「皮を巻いて食べる……? 変わった食べ方だな」
ライオスが半信半疑で一口かじる。
「――っ!? 皮がパリッパリだ! そして噛むとしゃもの旨味が弾け飛ぶ! 甘いタレとシャキシャキの野菜、もちもちの皮が一体になって……なんだこの洗練された旨さは!?」
「美味しい~っ! 鶏肉の皮ってこんなに香ばしくて美味しかったの!? ネギのさっぱり感と甘いタレが絶妙だわ!」
マルシルも夢中になって何個も包んで食べている。
『ほう、鶏肉か! 噛み応えがあって旨味が濃いぞ! 皮の香ばしさがたまらん!』
ドラちゃんも小さなお手製パオズを嬉しそうに口へ放り込んでいた。
#### 8. 秋の味覚・松茸ごはん
「締めのご飯ものです! 日本の秋の味覚の王様『松茸ごはん』です!」
ムコーダが大きな土鍋の蓋を開けた瞬間――。
「「「「〜〜〜〜っっっ!?!?」」」」
その場にいた全員(そして従魔たち)が息をのんだ。
土鍋から立ち上ったのは、これまで体験したこともないような、豊潤で、気品に満ちた、秋の森そのものを凝縮したような芳醇な香り!
「な、なんだこの香りは……!? キノコ……? キノコの香りなのか!?」
キノコに人一倍うるさいライオスとセンシが、土鍋に吸い寄せられるようににじり寄る。
「これは『松茸』という日本の高級なキノコです。出汁と醤油で炊き込みました」
ふっくらと炊き上がったお米の中に、たっぷりと敷き詰められた松茸の削ぎ切り。ムコーダがお椀に盛り付けて手渡すと、センシは震える手でお碗を受け取った。
「……いただきます」
センシが一口、松茸ごはんとキノコを口に含む。
「……………………………………!!!」
センシは静かに目を閉じ、涙をひとしずく流した。
「素晴らしい……。我は長年ダンジョンで様々なキノコを調理してきたが……これほど気高く、深い香りを持つキノコに出会ったことはない……。お米一粒一粒にキノコの旨味と香りが染み込んでおる……。これはまさに、大地の恵みそのものだ……!」
「うわぁぁぁん! 香りだけで幸せになれる……! お出汁の味が優しくて、お腹がいっぱいなのにいくらでも入っちゃうよ〜!」
マルシルもお碗を両手で抱え、幸せそうに頬張る。
『む、このキノコのご飯……香りが素晴らしいな。肉の後の締めに最高ではないか』
フェルも品良く(しかし大盛りで)松茸ごはんを味わっていた。
#### 第六章:大混乱! ロピアのニューヨークチーズケーキを巡る死闘
「ふぅ……食べた食べた! もうお腹いっぱいだぞ!」
ライオスが満足そうに腹を叩き、チルチャックも倒れ込むように草の上に転がった。フェルやスイ、ドラちゃんも満腹感に満たされ、心地よさそうに目を細めている。
「いやあ、喜んでもらえて良かったです。……あ、そうだ。甘いものは別腹って言いますし、最後にデザートを出しますね」
「えっ!? まだ何かあるの!?」
マルシルがガバッと起き上がる。
ムコーダがネットスーパーのロピアコーナーから取り出したのは――『ロピア名物! 濃厚自家製ニューヨークチーズケーキ』であった。
ずっしりとした重みのある、美しい焼き色のついた特大サイズのチーズケーキ。クリームチーズを贅沢に使用し、低温でじっくりと焼き上げたロピアの大人気スイーツだ。
「最後のデザート、『ロピアのニューヨークチーズケーキ』です!」
ムコーダが包丁で切り分け、人数分+従魔たちの分のお皿に盛り付ける。
「わぁ……綺麗……! なんだか凄く濃厚そう……」
マルシルがフォークでひとすくいし、口へ運ぶ。
「――っっっ半端ないイぃぃぃぃぃっっっっ!!!???!?」
マルシルが突然叫び声を上げ、立ち上がった!
「な、なにこれぇぇぇぇっ!?!? すっっっっごく濃厚!! クリームチーズの甘みと酸味が滑らかに溶けて、下のクッキー生地が香ばしくて……なにこれ、なにこれぇぇぇっ!? 私、こんなに美味しいケーキ食べたことないっっ!!」
「えっ、マルシルそんなに……? ……うわっ! 本当だ! 濃厚だけどしつこくない! うまい!」
ライオスも一口食べて目を丸くする。
『ぬ……!? この黄色い菓子……甘くて酸っぱくて、なんという濃厚さだ! ムコーダ、我はこれが気に入ったぞ!』
『スイもー! これすっごく美味しい! もっと食べたいー!』
『おいムコーダ! 俺の分、もう無くなっちゃったぞ!おかわり!』
「あ、ちょっと待って! ケーキはホールで2個買い足してあるから……」
ムコーダが予備のチーズケーキを取り出した瞬間――。
「ちょっと待ちなさいムコーダ!!!」
突如、マルシルが鬼のような形相でムコーダの襟首を掴み上げた!
「ひ、ひえっ!? マルシルさん!?」
「このケーキ……! このケーキ、まだあるのね!? 全部……全っ部私に渡しなさい!!」
「えぇぇっ!? いやいや、みんなで分ける分ですし、フェルたちもおかわりを――」
「駄目ぇぇぇぇぇっ!! フェンリルもスライムもドラゴンも、あんなにたくさんお肉を食べたでしょう!? 私は魔法使いなのよ!? 頭を使ったから糖分が必要なの! このケーキは全部私のものよぉぉぉっ!!」
マルシルの目が完全に血走り、なりふり構わずムコーダに迫ってくる!
「おいマルシル、落ち着け! 見苦しいぞ!」
「そうだよマルシル、俺にももう一口頂戴よ!」
「うるさーい! ライオスもチルチャックもすっこんでて!! ムコーダ! そのネットスーパーとかいうやつで、このケーキをあと10箱……いや、100箱出しなさい!! 出さないと爆破魔法(爆破呪文)をぶち込むわよ!!!」
「ヒィィィィッ!? 暴君! 暴君がいるーーーっ!?」
『ぬ、おい人間! 我らのケーキを独り占めしようとはいい度胸だな!』
『スイのケーキ取らないで~!』
「フェル! スイ! 助けてぇぇぇぇっ!!」
「逃がさないわよムコーダぁぁぁぁっ! チーズケーキを出しなさぁぁぁぁいっ!!」
髪を振り乱したマルシルが、杖を構えてムコーダを追い回し始める!
それを阻止しようとライオスとチルチャックがマルシルに飛びつき、センシは「落ち着け! 甘味も栄養バランスが大事だ!」と叫び、フェルとスイとドラちゃんも「おかわり!」を求めて大騒ぎ!
「誰か……誰か助けてくれぇぇぇぇっ! ロピアのチーズケーキが美味すぎるのが悪いんだよぉぉぉぉっ!!」
ダンジョンの出入口広場に、ムコーダの絶叫と、大混乱の宴の歓声(?)がいつまでも響き渡るのであった――。
(おわり)