いつものように先生にからかわれたケイ。
思わず『先生を殺して私も死にます』と叫び、じゃれるつもりで先生を軽く殴った。
だが、彼女は力加減を間違えてしまった。

ケイの一撃で気絶する先生。
運悪くその様子をミカに見られてしまう。

「『先生を殺して私も死ぬ』ってどういうこと?」

先生をケイが殺したと勘違いしたミカは、ケイ本気で殺そうと追い回す。
かくして、ケイの絶望的な逃走劇が始まる。


本作は完全なコメディ作品です。
軽い気持ちで読んでいただけます。

最後のオチも工夫してみました。
よろしければ最後まで読んでいただけるとうれしいです。


※本作はpixivにも同じ内容のものを投稿しています。

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第1話

【DU地区:シャーレ執務室】

「~~本当にこんなことしてくれるなんて。」

「ケイちゃんかわいい!」

 

いつものようにケイをからかう先生。

『ケイちゃんかわいい』と付け加えることも忘れなかった。

普段通りの日常の光景。

 

「もう~『ケイちゃん』って呼ぶのやめてください!」

「それにまた私を辱めて......今度こそ『先生を殺して私も死にます!』」

 

おふざけのつもりで、ケイは先生を軽く殴った。

だが、運悪く力加減を間違えてしまった。

 

 

「グハッ」

 

「先生、ふざけるのはいい加減......先生? 起きてください先生!」

 

ケイの一撃で気絶した先生は、その場に倒れ伏してしまった。

突然の出来事にケイの頭は真っ白になった。

 

 

不運は続く。

執務室のドアが吹き飛ばされて、一人の生徒が入ってきた。

 

「嘘......嘘......じゃんね。」

「あなた......なんてことしてくれたの......」

 

白い翼とピンク色の髪。

先生に若干依存気味の生徒、聖園ミカがそこにいた。

足下には、手土産と思われるお菓子が入った袋が落ちていた。

 

「天童ケイだっけ?私の王子様になんてことしてくれたの!!」

「それに、『先生を殺して私も死にます』ってどういうこと?」

「あなた、先生の後を追うつもりなんだよね? その望み......叶えてあげるじゃんね!先生の仇!」

 

「待ってください!これは......誤解なんです!」

 

「ごかい?『五回』も殴ったのね!?」

 

「違います!『誤解』です!」

 

「やっぱり『五回』も殴ったんだ。」

「へえ~そっか......そこまでして先生を殺したかったんだ。先生を血の海に沈めるなんて、ひどいことしてくれたね。」

「もう、あなたを殺すしかなくなっちゃったよ。」

 

 

ケイは必死になって弁明をした。

しかし、邪悪な魔女と化したミカの誤解を解くことはできなかった。

そんなケイにミカの怒りの弾丸が降り注ぐ。

 

ダダダ!

 

「ひいー!」

 

悲鳴を上げつつ、ケイは銃撃を紙一重で回避する。

彼女に当たるはずだった銃弾が、執務室の壁に多数の穴を開ける。

 

(何ですかあの無茶苦茶な威力。あんなのが直撃したらまずいです!)

 

「へえー、あれを躱すなんてなかなかやるじゃんね。」

「でも次はないよ!」

 

(このままでは......こうなったら!)

 

意を決したケイ。

先ほどの銃撃で開いた穴に飛び込んで、執務室から脱出する。

 

 

「どうにか逃げられ......あ、ここ高層階でした......」

 

重力には逆らえず、そのまま地面へと落ちていく。

ケイは、かろうじて受け身を取ることに成功した。

 

「なんとか......なりました。」

「キヴォトス人に近い身体になっていて助かりました。」

「何が何でも生き延びてやります!!」

 

 

 

 

【DU地区:シャーレビル前の大通り】

「はあ......はあ......ここなら、ひとまずは大丈夫でしょう。」

「でも、次見つかったら......今度こそやられます。一体どうしたら......」

 

追っ手を一時的にまいたケイ。

全力疾走で逃げ続けた疲労で、その場にへたり込んでしまう。

そんな彼女に救いの手が差し伸べられた。

 

 

「あなた大丈夫?ずいぶん怯えているようだけど。」

「それに、どうしたのその腕。赤く染まってるじゃない。」

 

(これは......先生の血?それにしては少し違和感があります。)

(いや、まずはミカさんから逃げないと!)

 

「ヒナさん!助けてください。追われているんです!」

「まだ死にたくありません!!」

 

「ずいぶん深刻な状況みたいね。」

「いいわ。私に任せなさい!ところで誰に追われているの?」

 

「白い羽がは」

 

 

ケイが説明しきる前に、近くの住宅街から轟音が鳴り響く。

 

すさまじい勢いでこちらに近づいてくる轟音。

ひときわ大きな音が鳴り響き、ケイたちの周囲に土煙と住宅の壁だった物体がまき散らされる。

そして、一人の少女が住宅だったがれきの山から歩み寄ってくる。

 

「ねえ、あなたを追いかけ回している生徒って......」

 

「あはははは!やっと見つけた!」

「もう逃がさないじゃんね。天童ケイ。」

 

シャーレから最短経路で追いかけてきた魔女は、邪悪な笑みを浮かべていた。

ケイを守るべく、ヒナはマシンガンの銃口をミカに向けた。

 

「何があったか知らないけど、あなたを止める!」

「この子に手を出すのはやめなさい。」

 

「ふーん、あなたも先生を殺すつもりだったんだ。」

「いいよ、そこの白い髪の子と一緒にあの世に送ってあげる。」

「二人とも折るね☆」

 

「......待ちなさい。『先生を殺すつもり』ってどういうことよ。」

 

「そのままの意味じゃんね。その子が『先生を殺して私も死にます!』って言ってるところ聞いちゃったもん。その直後に先生を殴り殺してるのも見たよ。」

「その子をかばう気なら、あなたにも消えてもらうよ。」

 

「......聖園ミカ。それは確かなんでしょうね。」

 

「その子の腕、先生の血で赤く染まってるじゃんね。」

「まだ疑う気なの?」

 

「確かにあの子の腕は赤く染まってたわね。」

「ケイ、ちょっと腕見せてくれる?」

「あれ、いないわね。逃げたってことは......本当に先生を殺したみたいね。」

 

「いいわ。あなたに協力する。先生を殺したやつは許さない。地獄の果てまで追ってやる!」

「ケイだったかしら。覚悟してちょうだいね。」

 

救いの手を差し伸べたはずのヒナは、復讐に燃える悪魔と化してしまった。

そんなヒナにミカはつぶやいた。

 

「ゲヘナと共闘するのは癪だけど、今回だけは例外じゃんね☆」

 

 

 

 

【DU地区:シャーレ執務室】

「いてて。ケイちゃんやり過ぎだよ。」

 

目が覚めた先生は、頭をさすりながらつぶやく。

服が真っ赤に染まっていることに先生は顔をしかめた。

 

「あーあ、やっちゃたよ。」

「袋が無かったから、上着の中にトマトたくさん入れてたの忘れてた。」

「せっかくフウカからもらったのに、台無しだよ。それに、クリーニングにも出さないとだ。」

 

「それに、誰か暴れたみたいだな。執務室がボロボロだ。」

「執務室が壊れるのはいつものことだけど、リンちゃんにまた怒られちゃうよ。」

「ここから入れる保険ってないのかな?」

 

 

「おーい、ケイちゃーん。ちょっと手伝ってー」

 

先生はケイを呼んだが、返事はなかった。

 

 

「帰っちゃったのかな?」

「片付いたら、またケイちゃんをからかうつもりだったのに。」

 

ケイが必死に逃げていることを知らない先生。

のんきなことばかり口にしていた。

 

 

 

~~~~

なんでモモトーク送らないんですか、先生?

このままじゃ私が危ないんですよ!

早くなんとかしてください、先生!!

 

 

 

【DU地区:中心街】

「早く誤解を解かないと。でも、どうすれば。」

 

遠くから轟音が鳴り響く。

どんどん近づいてくるその音にケイは焦りを募らせる。

 

「やばい!追いつかれる!」

「なんとかしないと。でもどうしたら。」

 

そんなケイの目の前を一人の生徒が通りかかった。

便利屋68のアル社長だ。

 

「はあー。今回の依頼もなんとか達成したけど、報酬額が低すぎるわ。」

「こんな調子じゃ食べていくのがやっとだわ。もっと報酬がいい仕事ないかしら?」

 

(あれは、アウトローで有名なアルさん!)

(確かお金を払えば大抵のことはやってくれるんでしたよね。お金に困っているようですし......協力してもらいましょう。)

 

 

「すみません!火急の依頼があります!報酬もはずみます!」

 

ケイはアルに叫んだ。

その手には、どこからともなく取り出した札束が握られていた。

 

「今払えるのはこれだけです!うまくいったら、もっとあげます!」

「とにかく私を助けてください!この札束は前金です!」

 

「こんなに!?百万円以上あるじゃない!!いくら何でも多過ぎじゃない?」

「ひとまず受けるわ。で、何をすればいいの?」

 

「やることは簡単です。まずは」

 

説明の途中で轟音が鳴り響き、土煙が辺りに立ちこめる。

土煙とともにこちらに歩み寄る二人の生徒。

焦りながらも、ケイは彼女たちにこう告げた。

 

 

「二人とも聞いてください!」

「全部この人の命令なんです!脅されて仕方なくやったんです。それに......成功報酬とか言って、この札束を渡してきたんです!」

 

「え?え?ちょっと何言ってるのよ?これは私への報酬よね?」

「もしかして、あなた私を身代わりにする気!?」

 

(この子本気で言ってるの?それに......なんで風紀委員長とティーパーティーの偉い人がいるの?一体全体この子何をしでかしたの?)

(このままじゃ、この二人を相手取ることになるわ!?)

 

「無理無理無理!!化け物二人に勝てるわけないわ!あなた一体何をしたの!?」

 

 

「「あなたが黒幕だったのね。」」

 

突然、最強格二人ににらまれるアル。

突如として流れ出す『Unwelcome School』

唐突にそれまでのシリアス展開が消えて、コミカルな世界観に変わった。

 

「「許さん!許さんぞ陸八魔アル!」」

「「殺してやるぞ!覚悟しろ陸八魔アル!」」

 

「ななな!なんですってー!」

「私が何をしたって言うのよー!」

 

例の顔でアルは叫ぶ。

ひとまずその場を逃げ出そうとし

 

 

~~~~

【現実世界:ゲーム開発部部室】

「んあー!何ですかこのクソゲー!」

「却下!却下です!こんなの世に出すわけにはいきません!」

 

モモイの作成したシナリオにぶち切れるケイ。

手に持っていたゲーム機のコントローラーを投げ捨てて、モモイに怒鳴る。

 

「駄目だったかな?私にしてはいいシナリオが書けたと思ったんだけど。あと、途中で投げ出すのやめて。」

「それに、今回はケイちゃんが主役なんだよ、うれしくない?」

 

「うれしいわけありません!なんで私が追い回されてるんですか?」

「こんなクソゲー最後までやりたくありません。シナリオが酷すぎます!」

「先生も薄情すぎです。あの人ならちゃんと助けに来るに決まってます!先生の行動がおかしすぎて、途中でツッコミ入れちゃいましたよ!」

 

息を荒げながら怒鳴り散らすケイ。

途中の不自然なモノローグは、ケイによるツッコミだったようだ。

 

 

「はあ......はあ......それと、ゲヘナとトリニティの偉い人を敵に出すんじゃありません。これじゃ外交問題になりますよ!それに、私は他人に罪をなすりつけたりしません!モモイは私の何を見てきたんですか!」

「ノベルゲームなんだから、もう少しまともなシナリオにしてください!このゲームは作り直し、作り直しです!」

「あなたたちに全部任せるんじゃありませんでした!これからは全てのゲームを私が監修します!」

 

 

「お姉ちゃん。やっぱりこのシナリオはよくないよ。ケイちゃんもこういってることだし、一旦作り直そ。」

 

「ええーせっかく作ったのに。支離滅裂なシナリオよりはよくない?」

「それに、別にケイの監修なしでもよくない?」

 

 

不服そうな顔で返事をするモモイ。

ケイはそんなモモイに畳みかける。

 

「よくありません!そもそも支離滅裂な話を作っちゃ駄目です!」

「変なキャラ付けをするのもやめてください。ミカさんは『~じゃんね』なんて口癖じゃないですよね。なまものを扱うなら、もう少し登場人物の解像度上げてください!」

「アルさんの扱いもひどいです。もう少し敬意を持ってください。」

「モモイ!お説教の時間です!」

 

「あっやばい。こうなったら......戦略的撤退だー。」

 

「待ちなさいモモイ!」

 

 

いつも通りの騒がしさ。

ゲーム開発部の部室は今日も平和だった。

彼女たちの青春の一ページはこうして綴られていく。

 

モモイを追いかけながら、ケイはふと思った。

 

 

(『先生を殺して私も死にます!』って言葉を使うのは少し控えましょう。)

(あのクソゲーみたいな展開になるのは嫌ですし。)

 

 

 

おしまい


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