いつものように先生にからかわれたケイ。
思わず『先生を殺して私も死にます』と叫び、じゃれるつもりで先生を軽く殴った。
だが、彼女は力加減を間違えてしまった。

ケイの一撃で気絶する先生。
運悪くその様子をミカに見られてしまう。

「『先生を殺して私も死ぬ』ってどういうこと?」

先生をケイが殺したと勘違いしたミカは、ケイ本気で殺そうと追い回す。
かくして、ケイの絶望的な逃走劇が始まる。


本作は完全なコメディ作品です。
軽い気持ちで読んでいただけます。

最後のオチも工夫してみました。
よろしければ最後まで読んでいただけるとうれしいです。


※本作はpixivにも同じ内容のものを投稿しています。

1 / 1
第1話

【DU地区:シャーレ執務室】

「~~本当にこんなことしてくれるなんて。ケイちゃんかわいい!」

 

いつものようにケイをからかう先生。

『ケイちゃんかわいい』と付け加えることも忘れなかった。

普段通りの日常の光景。

 

「もう~『ケイちゃん』って呼ぶのやめてください!それにまた私を辱めて......今度こそ『先生を殺して私も死にます!』」

 

おふざけのつもりで、ケイは先生を軽く殴った。

だが、運悪く力加減を間違えてしまった。

 

 

「グハッ」

 

「先生、ふざけるのはいい加減......先生? 起きてください先生!」

 

ケイの一撃で気絶した先生は、その場に倒れ伏してしまった。

突然の出来事にケイの頭は真っ白になった。

 

 

不運は続く。

執務室のドアが吹き飛ばされて、一人の生徒が入ってきた。

 

「嘘......嘘......じゃんね。あなた......なんてことしてくれたの......」

 

白い翼とピンク色の髪。

先生に若干依存気味の生徒、聖園ミカがそこにいた。

足下には、手土産と思われるお菓子が入った袋が落ちていた。

 

「天童ケイだっけ?私の王子様になんてことしてくれたの!!それに、『先生を殺して私も死にます』ってどういうこと?あなた、先生の後を追うつもりなんだよね? その望み......叶えてあげるじゃんね!先生の仇!」

 

「待ってください!これは......誤解なんです!」

 

「ごかい?『五回』も殴ったのね!?」

 

「違います!『誤解』です!」

 

「やっぱり『五回』も殴ったんだ。へえ~そっか......そこまでして先生を殺したかったんだ。先生を血の海に沈めるなんて、ひどいことしてくれたね。もう、あなたを殺すしかなくなっちゃったよ。」

 

 

ケイは必死になって弁明をした。

しかし、邪悪な魔女と化したミカの誤解を解くことはできなかった。

そんなケイにミカの怒りの弾丸が降り注ぐ。

 

ダダダ!

 

「ひいー!」

 

悲鳴を上げつつ、ケイは銃撃を紙一重で回避する。

彼女に当たるはずだった銃弾が、執務室の壁に多数の穴を開ける。

 

(何ですかあの無茶苦茶な威力。あんなのが直撃したらまずいです!)

 

「へえー、あれを躱すなんてなかなかやるじゃんね。でも次はないよ!」

 

(このままでは......こうなったら!)

 

意を決したケイ。

先ほどの銃撃で開いた穴に飛び込んで、執務室から脱出する。

 

 

「どうにか逃げられ......あ、ここ高層階でした......」

 

重力には逆らえず、そのまま地面へと落ちていく。

ケイは、かろうじて受け身を取ることに成功した。

 

「なんとか......なりました。キヴォトス人に近い身体になっていて助かりました。」

「何が何でも生き延びてやります!!」

 

 

 

 

【DU地区:シャーレビル前の大通り】

「はあ......はあ......ここなら、ひとまずは大丈夫でしょう。でも、次見つかったら......今度こそやられます。一体どうしたら......」

 

追っ手を一時的にまいたケイ。

全力疾走で逃げ続けた疲労で、その場にへたり込んでしまう。

そんな彼女に救いの手が差し伸べられた。

 

 

「あなた大丈夫?ずいぶん怯えているようだけど。それに、どうしたのその腕。赤く染まってるじゃない。」

 

(これは......先生の血?それにしては少し違和感があります。)

(いや、まずはミカさんから逃げないと!)

 

「ヒナさん!助けてください。追われているんです!まだ死にたくありません!!」

 

「ずいぶん深刻な状況みたいね。いいわ。私に任せなさい!ところで誰に追われているの?」

 

「白い羽がは」

 

 

ケイが説明しきる前に、近くの住宅街から轟音が鳴り響く。

 

すさまじい勢いでこちらに近づいてくる轟音。

ひときわ大きな音が鳴り響き、ケイたちの周囲に土煙と住宅の壁だった物体がまき散らされる。

そして、一人の少女が住宅だったがれきの山から歩み寄ってくる。

 

「ねえ、あなたを追いかけ回している生徒って......」

 

「あはははは!やっと見つけた!もう逃がさないじゃんね。天童ケイ。」

 

シャーレから最短経路で追いかけてきた魔女は、邪悪な笑みを浮かべていた。

ケイを守るべく、ヒナはマシンガンの銃口をミカに向けた。

 

「何があったか知らないけど、あなたを止める!この子に手を出すのはやめなさい。」

 

「ふーん、あなたも先生を殺すつもりだったんだ。いいよ、そこの白い髪の子と一緒にあの世に送ってあげる。二人とも折るね☆」

 

「......待ちなさい。『先生を殺すつもり』ってどういうことよ。」

 

「そのままの意味じゃんね。その子が『先生を殺して私も死にます!』って言ってるところ聞いちゃったもん。その直後に先生を殴り殺してるのも見たよ。その子をかばう気なら、あなたにも消えてもらうよ。」

 

「......聖園ミカ。それは確かなんでしょうね。」

 

「その子の腕、先生の血で赤く染まってるじゃんね。まだ疑う気なの?」

 

「確かにあの子の腕は赤く染まってたわね。ケイ、ちょっと腕見せてくれる? あれ、いないわね。逃げたってことは......本当に先生を殺したみたいね。」

 

「いいわ。あなたに協力する。先生を殺したやつは許さない。地獄の果てまで追ってやる! ケイだったかしら。覚悟してちょうだいね。」

 

救いの手を差し伸べたはずのヒナは、復讐に燃える悪魔と化してしまった。

そんなヒナにミカはつぶやいた。

 

「ゲヘナと共闘するのは癪だけど、今回だけは例外じゃんね☆」

 

 

 

 

【DU地区:シャーレ執務室】

「いてて。ケイちゃんやり過ぎだよ。」

 

目が覚めた先生は、頭をさすりながらつぶやく。

服が真っ赤に染まっていることに先生は顔をしかめた。

 

「あーあ、やっちゃたよ。袋が無かったから、上着の中にトマトたくさん入れてたの忘れてた。せっかくフウカからもらったのに、台無しだよ。それに、クリーニングにも出さないとだ。」

 

「それに、誰か暴れたみたいだな。執務室がボロボロだ。執務室が壊れるのはいつものことだけど、リンちゃんにまた怒られちゃうよ。ここから入れる保険ってないのかな?」

 

 

「おーい、ケイちゃーん。ちょっと手伝ってー」

 

先生はケイを呼んだが、返事はなかった。

 

 

「帰っちゃったのかな?片付いたら、またケイちゃんをからかうつもりだったのに。」

 

ケイが必死に逃げていることを知らない先生。

のんきなことばかり口にしていた。

 

 

 

~~~~

なんでモモトーク送らないんですか、先生?

このままじゃ私が危ないんですよ!

早くなんとかしてください、先生!!

 

 

 

【DU地区:中心街】

「早く誤解を解かないと。でも、どうすれば。」

 

遠くから轟音が鳴り響く。

どんどん近づいてくるその音にケイは焦りを募らせる。

 

「やばい!追いつかれる!なんとかしないと。でもどうしたら。」

 

そんなケイの目の前を一人の生徒が通りかかった。

便利屋68のアル社長だ。

 

「はあー。今回の依頼もなんとか達成したけど、報酬額が低すぎるわ。こんな調子じゃ食べていくのがやっとだわ。もっと報酬がいい仕事ないかしら?」

 

(あれは、アウトローで有名なアルさん!確かお金を払えば大抵のことはやってくれるんでしたよね。お金に困っているようですし......協力してもらいましょう。)

 

 

「すみません!火急の依頼があります!報酬もはずみます!」

 

ケイはアルに叫んだ。

その手には、どこからともなく取り出した札束が握られていた。

 

「今払えるのはこれだけです!うまくいったら、もっとあげます!とにかく私を助けてください!この札束は前金です!」

 

「こんなに!?百万円以上あるじゃない!!いくら何でも多過ぎじゃない?ひとまず受けるわ。で、何をすればいいの?」

 

「やることは簡単です。まずは」

 

説明の途中で轟音が鳴り響き、土煙が辺りに立ちこめる。

土煙とともにこちらに歩み寄る二人の生徒。

焦りながらも、ケイは彼女たちにこう告げた。

 

 

「二人とも聞いてください! 全部この人の命令なんです!脅されて仕方なくやったんです。それに......成功報酬とか言って、この札束を渡してきたんです!」

 

「え?え?ちょっと何言ってるのよ?これは私への報酬よね? もしかして、あなた私を身代わりにする気!?」

 

(この子本気で言ってるの?それに......なんで風紀委員長とティーパーティーの偉い人がいるの?一体全体この子何をしでかしたの?このままじゃ、この二人を相手取ることになるわ!?)

 

「無理無理無理!!化け物二人に勝てるわけないわ!あなた一体何をしたの!?」

 

 

「「あなたが黒幕だったのね。」」

 

突然、最強格二人ににらまれるアル。

突如として流れ出す『Unwelcome School』

唐突にそれまでのシリアス展開が消えて、コミカルな世界観に変わった。

 

「「許さん!許さんぞ陸八魔アル!殺してやるぞ!覚悟しろ陸八魔アル!」」

 

「ななな!なんですってー!私が何をしたって言うのよー!」

 

例の顔でアルは叫ぶ。

ひとまずその場を逃げ出そうとし

 

 

~~~~

【現実世界:ゲーム開発部部室】

「んあー!何ですかこのクソゲー!却下!却下です!こんなの世に出すわけにはいきません!」

 

モモイの作成したシナリオにぶち切れるケイ。

手に持っていたゲーム機のコントローラーを投げ捨てて、モモイに怒鳴る。

 

「駄目だったかな?私にしてはいいシナリオが書けたと思ったんだけど。あと、途中で投げ出すのやめて。それに、今回はケイちゃんが主役なんだよ、うれしくない?」

 

「うれしいわけありません! なんで私が追い回されてるんですか? こんなクソゲー最後までやりたくありません。シナリオが酷すぎます! 先生も薄情すぎです。あの人ならちゃんと助けに来るに決まってます!先生の行動がおかしすぎて、途中でツッコミ入れちゃいましたよ!」

 

息を荒げながら怒鳴り散らすケイ。

途中の不自然なモノローグは、ケイによるツッコミだったようだ。

 

 

「はあ......はあ......それと、ゲヘナとトリニティの偉い人を敵に出すんじゃありません。これじゃ外交問題になりますよ!それに、私は他人に罪をなすりつけたりしません!モモイは私の何を見てきたんですか! ノベルゲームなんだから、もう少しまともなシナリオにしてください!このゲームは作り直し、作り直しです! あなたたちに全部任せるんじゃありませんでした!これからは全てのゲームを私が監修します!」

 

 

「お姉ちゃん。やっぱりこのシナリオはよくないよ。ケイちゃんもこういってることだし、一旦作り直そ。」

 

「ええーせっかく作ったのに。支離滅裂なシナリオよりはよくない?それに、別にケイの監修なしでもよくない?」

 

 

不服そうな顔で返事をするモモイ。

ケイはそんなモモイに畳みかける。

 

「よくありません!そもそも支離滅裂な話を作っちゃ駄目です!変なキャラ付けをするのもやめてください。ミカさんは『~じゃんね』なんて口癖じゃないですよね。なまものを扱うなら、もう少し登場人物の解像度上げてください!アルさんの扱いもひどいです。もう少し敬意を持ってください。」

「モモイ!お説教の時間です!」

 

「あっやばい。こうなったら......戦略的撤退だー。」

 

「待ちなさいモモイ!」

 

 

いつも通りの騒がしさ。

ゲーム開発部の部室は今日も平和だった。

彼女たちの青春の一ページはこうして綴られていく。

 

モモイを追いかけながら、ケイはふと思った。

 

 

(『先生を殺して私も死にます!』って言葉を使うのは少し控えましょう。)

(あのクソゲーみたいな展開になるのは嫌ですし。)

 

 

 

おしまい

 


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

SCP-001-KV(作者:SCP-001-KV)(原作:ブルーアーカイブ)

その世界では、神秘とSCPが融合していた。▼【欄外】▼本作品はブルーアーカイブとSCPの二次創作ガイドラインに則り作成しています。▼また、本作品はCC BY-SA 3.0/4.0に基づいています。


総合評価:350/評価:7.62/連載:37話/更新日時:2026年11月01日(日) 18:22 小説情報

能力だけのコミュ障なんです(ガチ)(作者:枕オバケ)(原作:ゼンレスゾーンゼロ)

転生してアニメのキャラの能力を使えたため強かったけど、メンタルは貧弱でコミュ障な主人公が勘違いされたりする話。▼「本当にコミュ障なだけなのに……能力が強いだけなのに……絶大な期待をされてる…」▼「はぁ……辛い。嫌われてたらどうしよう……あぁ、辛い」▼↑こんな感じです▼


総合評価:936/評価:7.35/連載:10話/更新日時:2026年10月31日(土) 00:44 小説情報

救護騎士団副団長ですが、幼馴染に性教育ビデオの教材にされた挙句、責任を取ることになりました。(作者:オーバジン)(原作:ブルーアーカイブ)

思いついたからね、仕方ないね。▼安易に幼馴染を生やしてみました


総合評価:400/評価:6.71/短編:5話/更新日時:2026年10月19日(月) 13:14 小説情報

お前のミスでした―――。(作者:とっとこ馬鹿野郎ッ!!)(原作:ブルーアーカイブ)

散々生徒と先生、ついでに私の脳を焼いたくせに、このままフェードアウト出来ると思ったんですか?このクソボケが。▼現在、原作最終章後のストーリーとそれ以前のストーリーの両方を更新しています。▼この小説においては最終章後が本編、最終章前が前日譚のようなものです。▼どちらから読み進めても大丈夫です。


総合評価:1855/評価:7.05/連載:18話/更新日時:2026年09月01日(火) 23:37 小説情報

ブルーアーカイブ ゲヘナ食堂いらっしゃいませ! 〜人型パンちゃんに転生した私、ゲヘナ給食部でパンちゃんたちを従えて無双…?〜(作者:Di Gi O)(原作:ブルーアーカイブ)

ブラック企業で過労死…でもなく。▼夜道で不幸にも暴走トラックに轢かれた…訳でもなく。▼大好きなパンケーキを自宅でたらふく食べていたら喉に詰まって窒息死したアホな現代女性。▼転生したのはキャラクターとシナリオが人気、しかし鬼畜な世界観が目立つ作品、ブルーアーカイブの世界だった。▼ただの生徒ではなく、牛牧ジュリの生み出す怪物『パンちゃん』の突然変異体、人型パンち…


総合評価:1429/評価:8.51/連載:15話/更新日時:2026年11月02日(月) 14:37 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>