怪獣と魔法少女が戦う世界に人型機動兵器を持ち込んだヤツ 作:⅔夜城
「見て見て!これ可愛い!」
「あなたこれで4着目だけど…?」
食事を終えた後、俺と2人は再び買い物に戻っていた。
ここも先ほどと同様、女性物の衣服店だが…なんだか若い客が多いせいで余計に浮いている気がする。
「どっちが良いと思う?」
「右かしらね?左は若干あなたの髪色とミスマッチな気がするわ」
「おっけー♪」
なお俺の心労など知る由もない2人は、至極楽しそうに過ごしている。
…と、椅子に座りつつ、そんな様子を眺めている俺に話しかける声があった。
「あら?ルカくん?」
「っ…日野原さん」
「え、悠ちゃん!?偶然だね!」
「偶然ねぇ〜」
曲がり角から姿を現したのは、目元が髪で隠れた魔法少女。日野原悠。
次いで、彼女の背後から3人の少女達が出てきた。
「あン?オメェらも来てたのか」
「紅ちゃん…あれ、もしかしてアカツキの皆んな居るの?」
「あァ、今日の担当は百里の連中だからな。全員休日だ」
アカツキ……橘さん率いるコトノハ隊と対をなす厚木基地所属の魔法少女達だ。
隊長は確か———
「へェ、アンタも居るのか。未来から来た軍人さんよ」
「俺を知ってるのか」
「そりゃアな。あれだけ俺の部下が騒いでれば嫌でも耳に入るさ。……〈
そう言って、目の前の赤髪の少女は口角を吊り上げるのだった。
「ハハハッ!じゃあアンタ、美桜に引きずられてここに来たのか?」
「そういうわけじゃ無いけどな…」
流石にあのまま店内で話し続けるのも迷惑なので、屋外のベンチへ移動した俺達。
幸いお昼時の時間ということもあり、席を見つけるのに苦労することはなかった。
そして現在、橘さんや赤雛さんは食後にも関わらずドリンクを注文しに行っており、ベンチには俺と東雲さんだけという状況である。
ちなみに先ほどから彼女の質問に答えているだけではあるが、俺が答えるたびに彼女は豪快に笑い、更なる質問を重ねてきていた。
「いやァ面白ェなアンタ。てっきりもっとお堅い奴かと思ってたんだけどな。やっぱ、実際に会って話すに限る」
「面白いか…?」
「面白いさ、なんせ————」
その時だ。ポケットに入れておいた端末から通知が届いたのは。
「ん?」
「なんだ?」
《東京湾沖合においてレイダーと交戦発生 目標は30m級 関東管轄の魔法少女は警戒されたし》
東京湾沖合……ならば俺が先ほど目撃したF-35がこれの初期警戒に出撃していたのか。
少し気掛かりだったが、敵が30m級ならば3個基地のどれか一つで充分対応できるだろう。
これで心置きなく……なんだ?
通りの向こうで人だかり…いや、何かから逃げているのか?
《緊急通達 指示変更 東京都23区内部に小型レイダー多数を感知 現地付近の魔法少女は直ちに対応せよ》
「なッ…」
「はぁ?なんで…ッ!?上だ!!」
東雲さんの叫びに反応して、俺は咄嗟に身を投げ出す。
一瞬の間を置き顔を上げると、俺達が今しがた座っていた場所に紅い光条が着弾。
紫の爆光と共に、炸裂した。
「グッ…!? オイ大丈夫か!?」
もうもうと立ち昇る煙の向こうから、東雲さんの声が聞こえる。服装も先ほどまでのものと異なり、魔法少女のそれへと変貌していた。
……そこへ、巨大な人型の影が差す。
同時に俺の前方にあった巨大な掌がどかされ、
「来たな、相棒」
-
-
俺の腕に内蔵されたビーコンから、電子音声が発せられる。また、淡い蒼に染まった視界からは、煙の中で驚愕の表情を浮かべた東雲さんの顔が見て取れた。
そういえば、まだ彼女はコイツを見たことが無いんだったか。まぁ良い。それに丁度周囲の視界も遮られている、絶好のチャンスと言えるだろう。
-
告げられる電子音声と同時、目の前に佇む南極星が片膝を突き、コックピットハッチが解放される。
すぐ様乗り込みシートに腰を下ろすと、ハッチが閉じられ機体のオートモードが解除。
メインディスプレイに周囲の景色が映し出される。
-当機周辺索敵完了 猟兵飛翔型16体 強襲飛翔型4体捕捉-
「猟兵型か…」
俺達へ砲撃してきたの強襲飛翔型に対して、対人に特化した猟兵空翔型は全長が2mと小型だ。南極星の武装では過剰火力である上、積極的に人間を襲う猟兵空翔型を撃てば周辺に居るであろう人々を巻き込みかねない。
元の世界では随伴機動歩兵が排除するんだが……こちらの世界には魔法少女が居る。人々の守りは彼女らに任せて、俺は迅速に強襲空翔型を撃破すべきだろう。
…呑気にしていたら、
そう判断した俺は直ちに通信回線を開き、
「ハイドよりコトノハ及びアカツキ。時間が無いため手短に伝える。敵は2m級レイダー16。10m級レイダー4。なお分かっているとは思うが、2m級は対人特化型だ、攻撃の際には十分注意しろ。…これより当機は目標10m級レイダーに対応する」
『こちらサクラ! アカツキの子とそっちに向かってます!ルカさんはすぐに逃げ————』
「その必要はない」
言葉と同時。
晴れ始めた煙の向こうで、群衆に襲い掛からんとする猟兵空翔型へと急速接近。何も持たせていない右手を繰り出し、空中でその胴体を捕える。
身長に対して、空を飛ぶために軽量化された胴体はかなり細く、全高が12mの南極星が掌で容易に掴める太さだ。
……そのまま力を込めて、握り潰す。
『…さん!ルカさん!』
『オイオイ……マジかよ』
「ハイドよりサクラ。現在俺は南極星に搭乗している。心配する必要も俺に退避を促す必要もない。詳しい説明は後に」
とだけ言い、俺は通信を切る。
-通信終了-
よし、説明不足なのは百も承知だが、必要最低限の情報は伝達出来たはずだ。
…始めるとしよう。
思い、俺は高度を上げつつ再度レーダーで周囲の敵影を探る。機体搭載のエーテルセンサーでは敵の数と大まかな方角しか探知出来ないためだ。
今回はそれに加えてビル群でレーダー波が遮られて…ッ!
-後方警戒 後方警戒-
咄嗟に上体を捻った俺の頭上を、紅い光条が掠めていく。
振り返ると、先遣飛翔型をより大柄な体格にした様なシルエットの
強襲飛翔型がこちらを睨み据えていた。
「……誘引出来るか?」
呟き、機体を飛行形態へ変形。
機首を斜め上に向け、上空へと駆け上がりながら海上へのルートを取った。
一瞬あの場で交戦する選択肢も頭に浮かんだが、この真下は人口密集地。避難シェルターが多数配備されてるとは言え、まだ避難が完了していない場所は多数あることだろう。
また、撃破したレイダーが爆発せず死骸が落下した場合、どれだけの被害が出るのか想定出来ない。
ならば、余計なリスクは取るべきではないだろう。
-当機後方300 強襲飛翔型4 誘引成功-
電子音声に告げられ視線だけ向けると、後方から追従してくる4体のレイダーが目に入る。無事こちらの狙いに引っかかってくれた様だ。
それに、この反応で一つ考察出来る事がある。
離脱する直前、あの場の真下にはシュカ始め、何人もの人間が居た。にも関わらず、強襲飛翔型達は俺を追跡する事を選んだ…
俺が誘引という手段を取るに至った要因にして、前の世界で提唱されていた、中型以上のレイダー、否、アグレッサーは人間の兵士よりセンチネルを狙うという説。
結局実証実験の結果を俺は知る前にこちらに来てしまったが、もしこれが真実ならば、南極星はこの世界に於いて人的被害を減らす一助になるかもしれない。
-後方警戒 高エネルギー反応感知-
………だが先ずは、コイツらを片付ける。