ALO編では菊岡と協力しアスナとは会わないまま須郷をゲーム内と現実世界の両方から追い詰めたというご都合展開ということにしてください。
AI利用して書いてます。
雨上がりの夜だった。
病室でも自宅でもない、借り受けた小さなマンションの一室。
ノートPCの画面には、膨大なログデータが並んでいる。
《Kirito》
《Black Swordsman》
《Dual Blades》
他人の記録だった。
正確には、自分だった“らしい”人間の記録。
画面の中の少年は、誰かを守って、誰かを失って、必死に戦っていた。
笑っていた。怒っていた。泣いていた。
けれど、それを見ても胸は動かない。
ただ情報として理解できるだけだ。
脳を焼かれた後遺症。
医者は“奇跡的生還”と言った。
だが桐ヶ谷和人という人間は、あの日ヒースクリフと相討ちになった瞬間に終わっていたのかもしれない。
――それでも。
「……これで最後」
カーソルを動かす。
ALO事件の報告書。
須郷伸之の逮捕。
《オベイロン》討伐ログ。
菊岡とのやり取りも、これで終わりだった。
「助かったよ、桐ヶ谷くん」
そう言われても、彼は曖昧に笑うだけだった。
自分は桐ヶ谷和人なのか。
黒の剣士なのか。
あるいは、その残骸なのか。
もう分からない。
ただ一つだけ決めていた。
アスナには会わない。
病院の廊下。
遠くから、一度だけ見た。
仲間達に囲まれて笑う彼女を。
ログによれば、自分は彼女を愛していたらしい。
命を懸けるほどに。
けれど、その感情はもう自分の中には存在しなかった。
だから近づかなかった。
彼女がこちらに気付きかけた瞬間、踵を返して去った。
あれでよかったのだと思う。
“キリト”を期待されても、自分には返せない。
もう何も。
部屋の画面には、最後のフォルダが残っていた。
《KIRITO_backup》
ナーブギアの深層ログから復元された人格傾向、プレイ記録、思考補完データ。
限りなく《キリト》に近い残滓。
菊岡は保存を勧めた。
研究価値がある、と。
だが彼は首を横に振った。
「もう十分だろ」
呟きながら、削除画面を開く。
その時だった。
ふと、窓の外に視線が向く。
雨に濡れたガラス越し。
街灯の下に、黒いコートの少年が立っていた。
二本の剣を背負った、あまりにも見慣れた姿。
《黒の剣士》。
幻覚だとすぐに分かった。
疲労か、薬の副作用か。
あるいは脳のどこかに焼き付いた残像。
それでもその“キリト”は、じっとこちらを見ていた。
責めるでもなく。
怒るでもなく。
ただ、何かを言いたげに。
男は小さく息を吐く。
「何だよ」
沈黙。
「……もうゲームは終わりだ」
カーソルを動かす。
確認ウィンドウ。
《本当に削除しますか?》
一瞬だけ指が止まる。
窓の外の黒衣の剣士が、微かに目を細めた気がした。
だが。
クリック。
データが消えていく。
プログレスバーが静かに伸びる。
0%
23%
51%
100%
《削除完了》
窓の外には、もう誰もいなかった。
男はしばらく無言で画面を見つめる。
それからPCを閉じた。
部屋の電気を消し、鞄を持つ。
もうここに戻ることはない。
玄関を開ける直前、誰に向けるでもなく呟いた。
「これでサヨナラだ、黒の剣士」
返事はない。
当然だ。
《キリト》はもういない。
エレベーターが静かに下降する。
雨の匂いの残る夜の街へ、名前を失った青年は溶けるように消えていった。