ユニバース戦士補ジュウ計画~THE AFTER UNIVERSE~ 作:TELTELボーズ
および「真っ赤な太陽!永久に叫べ、ナンバーワン!」https://syosetu.org/novel/374798/77.html
の後日談です。
「まったく貴様と言う男は熱海常夏総理大臣!一国の代表がやすやすと死地の最前線に斬り込むんじゃあない!」
決戦時空から帰還した常夏を、眉間にのみシワを一層深く刻んだ堅物の強面が出迎えた。
「はーっはっは!そういう貴方もこちらの世界を守るために力を尽くして戦ったのではないかな藤鷹与一議員!」
藤鷹の手の甲や頬にところどころガーゼや擦り傷が覗いているのを認めた常夏はその奮闘を慮る。
「この程度、痛くもないわ。それに今回の尽力は国民の目にも届いた。相応の利があったのだ、損な役回りばかりと哀れまれる筋合いなどない」
しかし当の彼はそれをフンと一蹴する。そんなわけはない。戦士たちの大半が強敵揃いのズカモトキセの分身体を各個撃破するために編成され、残された彼ら防衛戦力の負担は負けず劣らず過酷だったことは想像に難くない。更に藤鷹は“降着”の能力で得た高所からの視点を一般市民の迅速な避難の為に使い、泥沼の如き水際作戦の大半は目撃者なき闘争となっていた。
「藤鷹議員、今回の戦いで貴方の強さが分かった気がしますよ。誰に非難されることも厭わずに言うべきと信じたことを言い、やるべきと信じたことをやる、これが存外難しい。貴方のその強さ、まるで私の自慢のサンシャインベストフレンドのようだ!」
「…ああ、あの目つきの悪い若造のことか」
やり直しの争奪戦で先日藤鷹が戦った男を思い出した。目つきの悪さはむしろ藤鷹の方が酷いことはこの際置いておこう。
「彼奴も貴様を“ダチ”と称していたな。計算や打算で付き合うような相手でもあるまいに、よほど意気投合したと見える。…それとも、彼奴だけが貴様と対等な高みに並んだか」
常夏が留守にしていた世界を高みから守り、常夏は初めて、自らが立つ高みの隣に並び立つ者がないことを恐怖した。降りることのできない高み、誰も対等な足場に並ぶことのない高み、速く飛ぶことも何者を睨むこともなくただそこに立ち尽くす空は、あまりにも広すぎるように感じた。そんな時に、多少…まあ多少、多少空気の合わない相手でも同じ高さにいることが、存外心強いことを初めて知った。
「せいぜい安心していろ熱海常夏総理大臣。今に我々超軼絶塵党は、貴様らキビダンゴ党に並び、否、超えて良き政治を敷いてみせるわ!2年以内に首相官邸を引っ越す支度でもしていることだな!」
常夏は柄にもなくポカンと口を開けてしまった。その闘志溢れる眼光は、彼が先の争奪戦で藤鷹を下して以降失われていたはずの鋭いものであった。だが放心はほんの刹那に、常夏はふっと笑う。
「それは頼もしい!ではこちらも全力で善政を敷いて突き放させていただこうではないですか!」
「フン、むしろ手を抜かれる方が困る。国民も私もな」
この2年後には残念ながら与野党の交代はなかったが、それより後の一期のみ、超軼絶塵党による藤鷹与一政権が発足することになる。それは国民からの好感度は微妙なものであったが、政治評論家や経済学者、後世の国民からは「やるべきことを恐れずにやりきった善政である」と評価されたという。
「ところでこの後の党首会談の食事に天ぷらがつくようですが、藤鷹議員は天つゆはどのように付けるのが好みですか?私はヒタヒタ派です」
「…フン、珍しく気が合うな。私も芯の髄までヒタヒタに浸す派だ」
〈了〉