〜特級裨益呪霊〜 黄昏の福音 作:楓舞星
「ようテラス……久しぶりだな」
現れたのは、宿儺であった。
「おっと……とんでもない覇気……あの時とはまるで違う……」
「今の俺は、指15本あるからな。当然だろう」
「ああ、そう、前まで5本だったのに、随分な成長っぷりじゃん」
(まずいな……何故虎杖が乗っ取られている……?いや、そんなことはどうでも良い。今この状況で、暴れられたら、私でも止められるかわからない……)
……テラスは考える……この状況をどう切り抜けるか。もしも宿儺が暴れようとしたら、己には止められるか。特に、領域を展開されたら、どれほどまでの死人が出るのかわかったものじゃない。
だから、
「……閃……まだ契約って施行できる?」
「えっ、ああ、いいけど……」
テラスは一瞬にして漏瑚の中心を細かく寸断した。手刀で。
漏瑚はバラバラになったが、死にはしなかった。しかし、存在感の様なものが強烈に静まった気がする。
「閃、お前は『私に協力しろ』。一緒に宿儺を押さえつけるぞ。漏瑚に関しては、人を殺す様であれば一瞬で飛んで駆けつけて、縛りでもなんでも破って殺してやる。今は経過観察だ。精々人を殺さないように見守るんだな」
「ありがとう、テラス……」
「お前の為じゃねえ。私のためだ。そこら辺、勘違いしないでよねっ!」
テラスはそう言ってから、宿儺と相対する。同時にナイフフォルダーから、とあるナイフを取り出した。
それは、呪いの武器。
その呪いは単純。装備したら身体から離れないことと、自身の体力を吸って出力に変換すると言うありきたりな呪具だ。
そんなある種、もっとも呪いらしい呪いの、普遍的な武器だからこそ、テラスが五条に依頼したらすぐに届いた。
テラスは、その真っ黒な刀身をしていて、刃渡り60センチ程のナイフを、握りしめる。
その呪具の名前を、テラスはもう名前名付けてある
「いくよ。
その呪具を握りしめると、テラスの鼻から血が流れてくる。さらに強く握りしめると、頭が混沌としてきた。今にも昏睡しそう。
1%
だが、
「もっと……もっとだ……お前が図虚空と名を付けられたからには、更に多くの負荷を、私に与えろ……」
10%
そうして、テラスの身体能力は底上げされていく。その代わりに失っていくのは全身の瑞々しさや健やかさ。それを使えば使うほど、頭はイカれ壊れていく。
20%
だが、『人間』であるテラスはこのぐらいしないと天井との戦いにはついていけないのだ。それに……
30%
「もうとっくに私の頭はぶっ壊れてんだからさっさと奪い、吸い取れ、図虚空ーーさて、それじゃあ、いくよ」
50%
宿儺は構えた。
「いくぞテラス、お前は確か……
「閃。覚悟はいいか?私は出来てる」
「勿論!」
初手、宿儺が繰り出すのは、天井に向けての解。それでの天井の崩落を目指してのものだ。
天井が雪崩のごとく崩壊するが、身体能力の底上げがされているテラスは一瞬にして宿儺との距離を詰め、
「一閃」
「解」
テラスの一閃に対して宿儺は解にて答える。
更に、近づいてきたテラスに対して、
「蜘蛛の糸」
足元を崩す一撃を放つ。
それで一瞬グラついたテラスに宿儺は一撃をお見舞いしようとするが、
「貴様も神闘という武術を使うのか!」
「私の前で、人は殺させない!」
「はっ!」
閃の言葉に宿儺は鼻で笑いながらも、その殴りに受け止める。だが、
「っ!これはーー」
「実は練習していた逆気閃拳!!」
宿儺はピヨつき、その場でスタンする。
「ついでに練習していた深淵閃風!」
「ついでのついでに練習していたーー
ーー龍閃崩拳!!」
「がはっ!!」
宿儺はその言葉とは裏腹に、あまりに重い拳に、逆気閃拳以上にピヨつきながらくらい、つい吐きかけるが我慢する。
「神速一閃!」
その間に足元を立て直したテラスが戦線復帰し、閃光の如くな一閃を喰らわせる。
「くっ!」
宿儺の腕は斬られるが、すぐさま反転術式で再生させ、一閃への対応をする。
「今だけは、『私』に戻ったつもりでやってあげる!」
「神闘、
それは神闘の型唯一の、神闘の真髄の中で、相手を模倣するという過程を辿る技。テラスがこの神闘の型を使うことが最終盤以外なく、閃自身も練度が低いとはいえ、その神闘の型の随の一部を流用することでセンテラスとの連携を更に強固にする。
そうして、宿儺を追い詰めていく。
いつの間にか、宿儺の蹴りや殴りを閃が受け止め、
「絶華一閃!」
テラスが攻撃する。そんな形になっていっていた。
宿儺はジャンプし、天井に張り付くと、
「捌」
更に天井をぐちゃぐちゃにし、テラスたちをどんどん地上付近へと押し上げていく。このままでは地上付近で戦うことになり、死者が出る可能性がある。埒が明かないと思ったテラスは、
「図虚空ぅぅ!!倍プッシュだぁ!!」
100%
図虚空の黒い刀身が禍々しく、紫に染まっていく。そして、新たな能力……と言う訳ではないが、
「解!」
「一閃!」
「ほう!そちらも飛ぶ斬撃を出せるようになったか!」
テラスの距離をあけた一閃は、解を弾き飛ばし更に奥の宿儺に攻撃が当たり、頬を裂く。
そうして、テラスと閃が優勢に事を進めていた時だった。
「「っ!」」
「ほう……」
3人は驚異的な何かを感じ取る。
テラスはその圧倒的気配に、
宿儺はその圧倒的呪力に
閃はその圧倒的不気味さを感じ取り、
そうして、
「おい!お前は地上を見て来い!私は宿儺の相手をする!」
「いや、テラスじゃ、宿儺の領域に対処できない!私が宿儺の相手をする!」
「オーケーガッテム!私が外のバケモンをぶっ倒してくる!」
そう言うと、テラスは閃に宿儺を任せ、血を撒き散らしながら階段を人外の膂力で登って行った。
「あの相手をテラスに任せて大丈夫なのか?閃よ」
「わからない!けど、やるしかない!」
「そうかそうか、では、俺も全力を出すとするか」
宿儺は印を組む。閻魔天印の手印だ。
それに、カウンターをするように、閃は阿弥陀如来を表す手印、阿弥陀定印を組む。
「「領域展開」」
「伏魔御厨子」
「
宿儺と閃の領域が現実に色を塗る。そうして、現れるのは太陽と屍。
前代未聞の、閉じない領域同士の対決。
「私は!絶対に死者を出さない!この身にかけて!!」
「ふははは!騒げ騒げ!!今日は宴だぁ!!!」