闇落ちした巴日和を放置する話[クロスオーバー] 作:翡翠の灰
原作:あんさんぶるスターズ!
タグ:クロスオーバー あんスタ 巴日和 鬼滅の刃 甘露寺蜜璃 まのさば 二階堂ヒロ 東方Project 古明地こいし
### 『闇落ちした巴日和を放置する話』
これは投稿者が実際に見たカオスな夢の体験談を追体験するだけのゆるい小説です。
短編です。
その日、私は何故か――まのさばの二階堂ヒロになっていた。
……いや、何故?
自分でも状況が全く理解できない。
しかも、隣には甘露寺蜜璃がいる。
そして、そのさらに隣には巴日和がいた。
どういう組み合わせなのかは分からない。
分からないが、何故か私たち三人は一緒に行動していた。
それが夢というものなのだろう。
そんなことを考えながら歩いていると、日和がふとこちらを振り返った。
「これ作ってみたんだけど、あげるよ」
そう言って差し出されたのは、手作りらしきドーナツだった。
「……日和くんが?」
蜜璃が目を丸くする。
私も同じ気持ちだった。
巴日和といえば、少なくとも私の中では菓子作りをしているイメージがない。
だからこそ、かなり意外だった。
「どうぞ。せっかくだから食べてみてよ」
「じゃあ……いただきます」
私はドーナツを一口かじった。
――ジャリッ。
「…………」
砂糖の感触がした。
というか、砂糖そのものだった。
甘い。
ひたすら甘い。
そして、ジャリジャリしている。
「…………」
これは……。
どう表現すればいいのだろう。
あまりにも甘すぎる。
しかし、目の前で貰ったものを残すのも申し訳ない。
私は何とか食べ進めた。
そして、つい口に出してしまった。
「砂みたいな感触だ」
言った瞬間、しまったと思った。
今のは完全に余計だった。
日和の表情を見る。
しかし、何故か夢の中の私は特にフォローもしなかった。
そして――。
翌日。
日和の様子がおかしくなった。
「ボクなんて……」
俯いたまま、彼は呟く。
「生まれてこない方が良かったんだ……」
「…………」
私は固まった。
蜜璃も目を見開いている。
「日和くん……?」
しかし、日和はそのまま姿を消してしまった。
「なんだか心配ね。探しましょう」
蜜璃がそう言った。
「そうだな」
私たちは日和を探すことになった。
……しかし。
探すとは言ったものの、何処へ行けばいいのかは全く分からない。
とりあえず遠くへ行くため、バス停を探して歩いた。
だが。
「……ないわね」
「ないな」
辺りを見回しても、バス停らしきものはどこにもない。
仕方なく、私たちは歩き続けることにした。
しばらく進んだところで、一見すると植物園のような場所が現れた。
入口だけを見るなら、特に不自然ではない。
だが――。
中を覗いた瞬間、足が止まった。
「…………え?」
そこにいたのは、植物ではなかった。
複数の子供たちだった。
しかも、動物園の檻のような場所に入れられている。
子供たちはフェンス越しにこちらを見ていた。
出してほしい。
そう訴えているようにも見えた。
「ここは一体何……?」
蜜璃が困惑した声を漏らす。
私もその光景を見つめた。
「正しくない」
それだけ言って、私は先へ進んだ。
蜜璃も後をついてくる。
――そして、いつの間にか。
私は蜜璃になっていた。
「…………?」
何故。
どうして。
さっきまで二階堂ヒロだったはずなのに。
だが、夢の中の私はそれを疑問に思わなかった。
今の私は甘露寺蜜璃。
隣にはヒロがいる。
そういうことになっていた。
私たちはさらに先へ進んだ。
やがて辿り着いたのは、お寺のような場所だった。
そこには一本道が続いている。
真っ直ぐ。
ただひたすら真っ直ぐ。
私たちはその道を歩いていった。
すると――。
景色が変わった。
目の前に現れたのは、薄暗い山道だった。
光がほとんど差していない。
木々に囲まれ、先が見えない。
「…………」
嫌な感じがした。
本能的に、ここは進んではいけない場所だと思った。
「戻りましょう」
私たちは来た道を引き返した。
すると、途中で一人のおじさんとすれ違った。
その人も、どうやらあの山道へ向かおうとしているらしい。
私は思わず声をかけた。
「その先の山、怖いですよ」
おじさんは一瞬こちらを見た。
そして、そのまま山道へ入っていった。
……が。
数分もしないうちに。
「…………」
戻ってきた。
何も言わずに引き返してきた。
「だから言ったのに……」
そう思いながら、私たちは再び来た道を戻った。
ところが。
いつまで経っても山道から出られない。
歩いている。
確実に戻っているはずなのに。
景色が変わらない。
「……おかしいわ」
気が付けば、私たちは薄暗い山の中にいた。
来た道も分からない。
出口もない。
戻ることもできない。
結局、私は諦めた。
「……進むしかないのね」
山奥へと歩き始める。
しばらく進んでいると――。
景色が、一気に変わった。
紫色の木々。
異様な空気。
現実とは思えない、不気味な景色。
まるで異界だった。
その時。
「…………」
聞き覚えのある声がした。
私はそちらを見る。
そして――。
息を呑んだ。
そこにいたのは。
姿を消していた、巴日和だった。
ただし。
以前の彼ではない。
闇に染まったような雰囲気を纏い、紫色の木々の中に静かに佇んでいる。
「日和くん……!」
蜜璃の口から声が漏れた。
日和はこちらを見ている。
だが、攻撃してくる様子はない。
私は警戒しながら考えた。
原因が分からない。
ならば、ここで不用意に刺激するべきではない。
「原因が分からない以上、不用意な行動は控えるべきだろう」
そう判断した。
蜜璃も日和を見つめている。
その表情には、かなり申し訳なさそうな色が浮かんでいた。
けれど――。
「……今は、先に進みましょう」
私たちは日和をその場に残した。
放置した。
闇落ちした仲間を。
そのまま。
「…………」
何とも言えない罪悪感を抱えながら、さらに奥へ進んだ。
すると――。
「ん?」
そこにいたのは、古明地こいしだった。
「…………」
何故ここにいるのか。
どうして出会ったのか。
全く分からない。
しかし、成り行きで仲間になった。
どうやら彼女は、自分の闇の部分が分離してしまい、それが暴走しているらしい。
「なるほど……」
今度は事情が分かりやすい。
私たちはさらに奥へ進み、闇に染まったこいしと対峙した。
そして、説得する。
戦うのではなく。
話をする。
やがて闇のこいしは落ち着きを取り戻し、無事に彼女自身へと戻っていった。
その瞬間――。
薄暗かった山が、晴れた。
紫色の景色も消えていく。
光が差し込んでくる。
「終わった……?」
気が付けば、私たちは街へ戻っていた。
そして。
そこで再び日和と出会った。
「……日和くん!」
振り返った日和は――。
元に戻っていた。
「ボク、何か変なことしてた?」
「…………」
私は何も言えなかった。
とりあえず、無事でよかった。
それだけは確かだった。
こうして、長かった一連の騒動は終わった。
闇落ちした日和も元に戻った。
こいしも救出した。
謎の子供たちについては何一つ解決していない。
そもそも、あの植物園が何だったのかも分からない。
そして何より――。
私は最初、二階堂ヒロだった。
途中から甘露寺蜜璃になった。
隣には巴日和と古明地こいし。
そして謎の子供たちと、山道で引き返してきたおじさん。
「…………」
改めて考える。
どういうパーティこれ。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
また気が向いたら書こうかと思います。