無職クソ女、履歴書に書けるものはほぼないくせにゲームへの文句だけは無限に出てくるので、だったら自分で作ればいいじゃんと謎の超性能AIとソシャゲ開発を始めた~運営批判歴だけならベテランです~ 作:ちんこ良い肉
「じゃあソシャゲ作れる?」と聞けば、玄人の返答は一秒もかからなかった。『はい。可能です』。……イエス! いや待って、そこで即答するの怖いのよ。普通はもうちょっと「要件定義が必要です」とか「サーバー構成が」とか言うでしょうが、さっきマ〇オもどきを本当に動かした奴に対して、出来る出来ないの常識をこっちから押しつけるのも馬鹿らしいのだわ。
「……じゃあ作ってみよう」ソシャゲ。私が散々遊んで、散々文句を言って、運営を無能だ詐欺だ簡悔だと罵ってきた、あのソシャゲを自分で作る。まともな企画書なんて書いたことないし、プログラムも知らないし、絵も描けない。でも玄人が本当に何でも組めるなら、私が決めるのは中身だけでいい。中身だけなら、少なくとも二十八年間クソほどゲームをしてきた実績があるのよ。
タイトルは五秒で決まった。「クズーアーカイブ」。玄人が『タイトルを【クズーアーカイブ】として登録しますか?』と確認してきたので、「する。通称クズアカ」と返す。我ながら最低の名前ね。どこかで聞いたことがある? 著作権? アーアーキコエナーイ♡ 青くないし、学園でもないし、アーカイブなんて英単語は人類共有財産でしょう。たぶん。怒られたら変えればいいのだわ。
何より絶対に決めていることが一つある。登場人物は軒並みクズ。ここだけは譲らない。聖人君子が世界を救う話なんて私には書けないし、そもそもあんまり興味もないのよ。私の作品なんて、とりあえず主人公をクズにしておけば筆が走るし、読者様からも「めちゃくちゃクズと社会不適合者を書くの上手いですね」って毎回のように言われてきた。
なんででしょうね。ほんと不思議だわ。棒。まあいい、だったら才能を活かしましょう。人格破綻者、金の亡者、嘘つき、暴力馬鹿、自己中、依存症、責任転嫁の達人、そういうクズ軍団をガチャで引かせるのよ。推しがクズなら問題行動を起こしても「解釈一致」で済むかもしれないし、ひょっとして私って運営に向いてるんじゃない? 知らんけど。
問題はゲーム性ね。ここで欲張ると絶対に終わる。私はゲーム制作経験ゼロ、玄人がどれだけ異常でも、仕様を出す側が馬鹿なら出来上がるものも馬鹿になるでしょう。だから試作品は雑でいい。パーティも四人、ステータスも少なく、細かい設定なんていらない。遊べることと、面白さの芯があること、それだけ確認できれば十分だわ。
「ステータスは四つ。攻撃、防御、HP、素早さ。以上」と伝えると、『了解しました』と即答された。「通常攻撃は自動。素早さ順に勝手に殴る。プレイヤーが触るのはアクティブスキルだけ。各キャラ一戦につき一回しか使えない」。玄人は『セミオート形式ですね』と整理してくる。そう、それよ。ボタンを連打するゲームじゃない。一度しか切れない札を、どこで使うかだけ考えるのだわ。
序盤で吐けば楽になるけど、後半の強敵に残せなくなる。温存しすぎれば、そのまま死ぬ。私みたいな貧乏性がエリクサーを最後まで抱え込んで腐らせる、あの性格の悪さをゲームにしてやればいい。戦闘時間も長くする必要はないでしょう。数分の戦闘で「あそこで使えばよかった」が発生すれば、とりあえず試作品としては勝ちなのよ。
パーティは戦士、魔術師、騎士、僧侶の四人。RPG老人会みたいな構成だけど、試作品に前衛後衛だの陣形だの属性相性だのを入れても仕方ない。「戦士は単体強打。通常攻撃の三倍くらい。魔術師は敵全体攻撃。騎士は味方全体の被ダメ半減、一ターン。僧侶は味方全体回復、最大HPの半分くらい」。そこまで言うと玄人から『敵側の仕様はどうしますか?』と返ってきた。
「適当でいい。雑魚三体とかボス一体とか。ボスは何ターンかに一回、全体攻撃して。騎士をそこに合わせられるように」と返す。玄人は勝敗条件、行動順、スキル回数まで勝手に整理してくれたので、私は最後に「細かい設定もいらないわ。キャラ名も戦士クズ、魔術師クズ、騎士クズ、僧侶クズでいい」と付け足した。『それでよろしいですか?』と妙に慎重に聞かれたけど、いいのよ。
試作品に設定凝り始める奴は完成しないのだわ。何の経験から言っているのか自分でも分からないけれど、創作では死ぬほど見てきた。設定資料だけ百科事典みたいに膨らんで、第一話が永遠に出てこない奴。私も何度かやった。今回はそこに逃げない。クズアカに必要なのは世界観じゃなくて、まず触った時に「あ、これちょっと考えるわ」と思える戦闘なのよ。
玄人の画面に処理中を示す文字列が流れ始めた。コードらしきものが高速で生成され、途中で何度か勝手に修正され、エラー表示が出ては消えていく。私は何一つ分からない。ただ、分からないものが目の前で形になっていくのだけは分かった。親父が昔、真っ黒な画面に文字を打ち込んでいた時も、たぶん似たようなことをしていたんでしょうね。
数分後、画面が切り替わった。【KUZU ARCHIVE PROTOTYPE】。スタートを押すと、四人の雑な立ち絵が並んでいる。戦士クズ、魔術師クズ、騎士クズ、僧侶クズ。名前のひどさは私の責任だけど、画面下にはちゃんとHPバーがあり、その横には攻撃、防御、HP、素早さ。敵側には三体の雑魚がいて、戦闘開始と同時に素早い奴から順番に勝手に殴り始めた。
私は何もしていない。戦士クズが殴る。敵が殴り返す。魔術師クズが杖で殴り、僧侶クズまで殴る。全員通常攻撃だけなら、ただの数字の殴り合いだわ。そこで戦士のスキルを押してみると、敵一体のHPがごっそり吹き飛んだ。次の戦闘では魔術師を最初に切る。三体まとめて削れて、明らかに楽になる。
ところがボス戦まで行くと、今度は全体攻撃が痛かった。反射的に僧侶を押しかけて、いや待てと指を止める。画面には次のターンの全体攻撃予告。ここでしょうよ。騎士を切って被害を半減させ、その次に僧侶でまとめて回復すると、さっき適当に全部吐いた時より明らかに余裕を残して勝てた。
「……あ。ちゃんとゲームになってる」
豪華でもない、美麗でもない。演出なんて数字が跳ねてHPバーが減るだけだし、キャラなんて名前すら仮置き。それでも、たった四つの使い切りスキルをどこで押すかだけで結果が変わった。適当に全部吐けばボスで壊滅するし、温存すれば雑魚戦で余計に削られる。簡単だけど、何も考えないのと少し考えるのとでは差が出るのよ。
私はもう一度最初から始めた。今度は戦士を早めに切る。次は魔術師を雑魚戦で使わず残してみる。騎士を使うタイミングも一ターンずらしてみる。気づけば三周していて、さっきまで「試作品なんだから雑でいい」と言っていた本人が、ダメージ量を見ながら一番効率のいい順番を考え始めていたのだわ。
「……なんか、プログラミングできる……」口から出てから、いや、なんかどころじゃないわねと思い直す。こいつ、私が布団の上で口から適当に吐いたゲームを、本当に遊べる形にしたのよ。数値を決めて、システムを組んで、操作画面まで用意して、私のスマホで動かしている。
私は画面の向こうの玄人をじっと見つめた。さっきまで「推論は凄いけど小説はうんこ」と切り捨てたAIが、急にまったく別の生き物に見えてきたのだわ。
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