ヴァンからあるはなしが……?
常夏の太陽が眩しく照りつけるカリナ諸島での大冒険を終え、次なる目的地を目指して街道を進んでいたムコーダ一行。
「ふぅ……それにしても、暑いところから急に普通の気候に戻ると、なんだか調子が狂うな」
従魔のフェル、ドラちゃん、スイを従え、ムコーダ(向田剛志)は額の汗を拭いながら溜息をついた。
カリナ諸島では巨大な海の魔物やダンジョンボスとの激闘、そして何より狂乱の海鮮バーベキューパーティの連続だった。胃袋的には大満足だったものの、精神的な疲労は相当なものだ。
『ヌハハハ! 軟弱な奴め。主たる者、どのような環境の差にも耐えねばならんぞ。それよりムコーダ、今日の昼飯は何だ? カリナの海鮮も美味かったが、久々に肉が食いたいぞ!』
先頭を闊歩する巨大な伝説の魔獣・フェルが、後ろを振り返りながらドスの利いた声で催促する。
『そうだそうだー! 肉! デカい肉がいい!』
ムコーダの肩の上で、小型のミニドラゴン・ドラちゃんが元気いっぱいに飛び回る。
『スイもねー、お肉たべたい! あと、あまい飲みものもー!』
革袋の中からひょっこりと顔を出したのは、プルプルと揺れるピンク色の可愛いスライム・スイだ。
「はいはい、わかってるよ。次の街……いや、大きな村が見えてきたから、まずはそこで宿をとってからにしよう」
街道の先に見えてきたのは、木造の防壁と、活気あふれる建物の屋根が立ち並ぶ一つの集落だった。
看板によれば、ここは「セアト村」。
普通の村にしてはどこか防衛設備が整っており、それどころか街道沿いには新しい建築物の工事が進んでいるなど、不思議な活気と発展の気配に満ちていた。
「へえ……ここがセアト村か。大きな村だけど、なんだかすごく活気があるな」
ムコーダたちは門番に冒険者証を提示し、特に問題もなく村の中へと足を踏み入れた。
実はこのセアト村、元々は辺境の貧しい村だったのだが、最近になって着任した幼き怪物領主――ヴァン・ネイ=セアトの手によって、規格外の速度で発展を遂げている真っ最中の領地であった。もっとも、一旅の冒険者に過ぎないムコーダがそんな背景を知る由もない。
「まずは宿探しだな。フェルたちが一緒だと、断られることも多いから……」
幸いなことに、セアト村は最近、冒険者や商人の出入りが急増しているため、大型の魔獣(従魔)を連れた冒険者向けの広々とした裏庭つきの高級宿屋が新設されていた。
宿の主人も、フェルの尋常ではない威圧感(※本人は抑えているつもりだが滲み出ている)に冷や汗を流しつつも、ムコーダが提示した金貨の輝きと丁寧な態度に毒気を抜かれ、快く一番広大な離れの部屋と庭を提供してくれた。
「よし、部屋も確保できたし、遅めの昼飯兼、早めの夕飯にしようか!」
『うむ! 待ちかねたぞ!』
裏庭に移動したムコーダは、さっそく彼の固有スキル『ネットスーパー』を起動した。
(さてと……今日のお肉は……)
空中に出現した光る操作画面(ホログラムパネル)を操作し、ネットスーパーの「肉」カテゴリを開く。
カリナ諸島で溜め込んだオーク肉やワイバーン肉などの魔獣肉もストレージに大量にあるが、今日は手軽に、かつフェルたちの胃袋を満たすために、ネットスーパーの精肉コーナーから「国産牛ロース」や「豚バラ肉」を大量買いした。
バァァァン! と現れるダンボールの山。
ムコーダは手際よく魔法のコンロを取り出し、特大の鉄板をセットする。
「今日は特製醤油ダレのバーベキューと、ガーリックライスだ!」
ジューーーッ! と、上質な脂が弾ける快音が庭中に響き渡る。
甘辛い醤油とニンニク、焦げた香ばしい匂いが風に乗ってセアト村の夕暮れの空へと広がっていった。
『ぬおおおっ! これだ! この香ばしい匂い!!』
『うっひょー! やっぱムコーダのタレ焼き肉は最高だぜ!』
『おいしい~! お肉やわらかーい!』
フェルが巨大な皿に盛られた数キロの肉を一口で平らげ、ドラちゃんが小さなお手てで肉にかぶりつき、スイがバキュームのように肉を飲み込んでいく。
「よしよし、いっぱい食べろよ~」
従魔たちの食欲を満足させたところで、ムコーダも自分の分を確保し、ふうと息をついた。
「ハァ……長旅だったし、今日はカリナの海鮮でもなく、ガッツリ肉でもなく……何より、あれが飲みたい気分だな」
ムコーダはニヤリと笑うと、再びネットスーパーの画面を開いた。
カテゴリ:お酒。
「カリナ諸島ではエールやワインをよく飲んだけど……やっぱり、日本のキンキンに冷えた『これ』には敵わないんだよなぁ」
ポチポチと画面を操作し、彼が注文したのは――『缶ビール(スーパードライ&黒ラベル)』。さらに、氷がたっぷり詰まったクーラーボックス。
ピロンッ♪ という電子音とともに届いたダンボールから、銀色と黒の美しいアルミ缶を取り出す。
魔法の氷でキンキンに冷やされた缶の表面には、びっしりと水滴がついていた。
「これだよ、これ! プシュッとな!」
カシュッ! という心地よい金属音とともに、白い泡が吹き出す。
ムコーダはそのまま缶を口に当て、勢いよく煽った。
「グビッ……グビッ……グビッ……プハァァァァァッ!!……う、うめぇぇぇぇ!!」
喉を激しく刺激する喉越し、弾ける炭酸、そして爽快な麦の苦味!
疲れた体に、冷えた缶ビールが染み渡っていく。
「やっぱり日本の缶ビールは最高だな! このキレ! 旅の疲れが一気に吹き飛ぶぜ……!」
ムコーダは悦に入りながら、ガーリックライスとジューシーな牛肉を口に放り込み、再びビールを煽った。
――だが。
この爽快な「カシュッ!」という音と、プハァという吐息、そして何よりムコーダが醸し出す「悪魔的なまでに美味そうな空気」を、陰からじっと見つめる視線があった。
セアト村の宿屋の裏庭は、防音設備までは整っていなかったのである。
そして、この宿にはセアト村の発展に伴い、あちこちから集まってきた商人や、村の自警団(元盗賊や元冒険者の面々)、さらには領主館から出向いてきていた騎士たちが滞在していた。
「……おい、見たか? あの男が手に持っている、あの光り輝く銀の筒……」
「ああ……なんだあの音は。『カシュッ』だと? その途端、泡が溢れ出て……」
「ていうか、あの匂い何だよ!? 麦の香ばしい匂いと、冷気……! まさか、冷やした酒か!?」
ヒソヒソと囁き合っていた男たちが、ぐうううっと喉を鳴らした。
この世界において、「冷えた酒」というのは極めて貴重だ。氷の魔導具や高級な氷魔法を使える者がいなければ、冷えた酒など王侯貴族でも滅多に口にできない至高の贅沢である。
しかも、見たこともない洗練された金属容器から直接飲むというスタイル。
「我慢できねぇ……! おい、あんた!」
ついに、我慢の限界を迎えた元冒険者の自警団員が、柵を飛び越えて庭に入ってきた。
「ん? なに、君?」
ムコーダが驚いて振り返る。
「その……すまん! 怪しい者じゃないんだ! 俺はセアト村の自警団の者なんだが……その、あんたが飲んでるその『銀の筒の酒』……一体なんなんだ!? いくら払えば飲ませてくれる!?」
「え? ああ、これ? これは……ええと、僕の故郷の酒で『缶ビール』っていうんだけど……」
「缶ビール!? なんだその洗練された名前は! 頼む! 銀貨……いや、金貨一両払う! その冷えた酒を一杯……いや、その筒ごと一口飲ませてくれ!!」
「ええっ!? 金貨一両!? 缶ビール一本で!?」
ムコーダが驚愕した瞬間、周囲の木々の陰や宿の窓から、ぞろぞろと大人の男たちが姿を現した。
「ずるいぞガイル! 俺だって金ならある! 金貨二両出す! 俺にその泡立つ酒をくれ!」
「待て待て! 私は領主様にお仕えする騎士だぞ! 騎士団の備品費から……いや、私財から金貨三両だ!」
「俺は行商人だ! その『缶ビール』の製法と現物を大金で買い取りたい!」
「ちょ、ちょっと待ってください!? みんな落ち着いて!!」
一瞬にして、ムコーダの周りは「冷えた缶ビール」を求める男たちの熱気と狂気に包まれた。
セアト村は開拓が進んでいるとはいえ、労働の後の娯楽、特に極上の酒には誰もが飢えていたのだ。そこに「キンキンに冷えた」「見たこともない泡立つ黄金の酒」が投入されたのだから、溜まったものではない。
『む? 何事だ、喧しいぞ』
ドスン! と地面が揺れ、フェルが巨体を起こして男たちを睨みつけた。
「「「ひぃぃぃぃっ!?」」」」
伝説の魔獣の圧倒的な圧力を前に、男たちは一瞬で固まった。だが――
「ひ、ひえぇっ……伝説のフェンリル!?……で、でも! そのフェンリル様の横にある、氷の箱に入った銀の筒……! あれだけはどうしても諦めきれねぇぇぇ!!」
「そうだ! 死んでもいいから一口飲みたい!!」
「酒の執念すごすぎだろ!!」
ムコーダは頭を抱えた。
フェルの威圧すら跳ね返す酒への執着。このままでは暴動が起きかねない。
「分かった! 分かりましたから! 売りませんけど、一杯ずつ奢りますから静かにしてください!」
「「「うおおおおおおお最高だぁぁぁぁぁっ!!!」」」」
ムコーダはネットスーパーで急遽『スーパードライ』『黒ラベル』『エビス』『プレミアムモルツ』の6缶パックを複数取り寄せ、紙コップ(※雰囲気は出ないが仕方ない)に注いで男たちに配った。
「う、美味い……! なんだこの喉を突く刺激は!?」
「苦味の後に、麦の旨味が押し寄せてくる……! しかも冷たい! 脳ミソが痺れるほど冷えている!!」
「泡が……泡がクリーミーすぎる! これが『缶ビール』なのか!!」
セアト村の男たちは、感動のあまり涙を流しながらビールを飲み干した。
そして、この「謎の行商冒険者が持ち込んだ至高の冷やし酒・缶ビール」の噂は、風のように速いスピードでセアト村中に広まっていくことになったのである……。
◆
翌朝。
「うう……昨日は酷い目に遭ったな……」
ムコーダは宿の部屋で頭を抱えていた。
昨夜は結局、ビールを配った後も噂を聞きつけた村人や作業員たちが次々と押し寄せ、ネットスーパーで缶ビールを何ケースも買い足すハメになったのだ。金貨は山ほど手に入ったが、ムコーダの精神的疲労は限界に達していた。
「早くこの村を出よう。フェル、出発の準備を――」
ムコーダが荷物をまとめようとした、その時であった。
コンコンコン!
宿の部屋の扉が、非常に礼儀正しく、しかし確固たる力強さで叩かれた。
「はい、どなたですか?」
「突然の訪問、失礼するよ。セアト村領主、ヴァン・ネイ=セアトだ。入っても良いかな?」
「え……り、領主様!?」
ムコーダが慌てて扉を開けると、そこに立っていたのは――見た目はまだ十歳にも満たないような、可愛らしい少年だった。
しかし、その背後に控える護衛の騎士(エスパーダ)や、メイド服を着た少年(ティティ)の醸し出す気配はタダモノではない。そして何より、この幼い領主・ヴァン本人の瞳には、底知れない知性と、どこか常軌を逸した「面白がり」の光が宿っていた。
(えっ……子供!? この子がこの村の領主!?)
『ぬ……小僧、タダモノではないな。体内に珍しい神の加護を感じるぞ』
フェルが気怠げに目を細めて呟く。
「やあ、初めまして冒険者殿。いや、伝説の魔獣フェンリル様を従える、噂のムコーダ殿とお呼びするべきかな?」
ヴァンはニコリと可愛らしい笑顔を浮かべた。しかし、その口から出た言葉は、極めて打算的かつ魅力的な提案だった。
「昨夜の『缶ビール』という狂乱の酒騒ぎ、報告を聞いてとても興味深く思っていたんだ。我がセアト村の男たちをあれほど一瞬で虜にするとは……素晴らしい商才、いや、素晴らしい『異世界の物品』をお持ちのようだね?」
(ゲッ!! バレてる!? 異世界のものだってバレてる!?)
ムコーダが冷や汗をダラダラと流していると、ヴァンは手振りを交えて続けた。
「まあ、種明かしを迫るつもりはないよ。僕だって神様から色々と貰っている身だからね。それより、単刀直入に相談……いや、依頼をしたいんだ」
「い、依頼……ですか?」
「そう! 実は近々、この地域の領主たちが集まる『領主会議』が、我がセアト村で開催されることになってね。近隣の貴族や、さらには王都からの視察団もやってくるんだ」
ヴァンは腕を組み、うーんと可愛らしく唸ってみせた。
「セアト村は急速に発展しているけれど、歴史が浅いから『格調高い料理』や『客人をもてなす至高の逸品』が決定的に不足しているんだよ。名物の料理を出して、他の領主たちの度肝を抜き、我がセアト村の威信を示したい! そこでだ……!」
ヴァンはビシッとムコーダを指差した。
「ムコーダ殿! 領主会議のメインディッシュ、およびパーティーの料理一式を、君の手でプロデュースしてほしいんだ! もちろん、君の故郷の『見たこともない素晴らしい料理と酒』を使ってね!」
「えええぇぇぇっ!? 貴族や領主たちが集まる宴会の料理!? 無理無理無理! 僕はただの街の料理好き冒険者ですよ! そんな格式高いパーティの料理なんて作れませんって!」
ムコーダは全力で手を振って拒否した。貴族絡みの面倒事など、一番関わりたくない案件だ。
「断るなら、昨夜の『税無許可での酒類販売行為』について、ちょっと厳しく取り調べなきゃいけないかなぁ~? なんてね」
「うぐっ……!(笑顔でえげつないこと言うなこの子供領主!?)」
「冗談だよ。僕はそんな野蛮な脅迫はしないさ。……代わりに、これでどうかな?」
ヴァンがパチンと指を鳴らすと、控えていたエスパーダが重々しい革袋をテーブルの上に置いた。
ジャラリ……という重厚な音が響く。
「白金貨5枚。さらに、セアト村でのあらゆる商業活動の永年非課税権。そして……我がセアト村が所有する『古代遺跡から掘り出された、属性魔法の威力を跳ね上げる魔導具の指輪』。これを報酬として進呈しよう」
(は、白金貨5枚!? 金貨500枚分!? さらに属性魔法の指輪!?)
『なに!? 魔法の威力を上げる指輪だと!? ムコーダ、受けろ! それがあればお前の弱々しい火魔法も少しはマシになるぞ!』
フェルが即座に食いついた。
『スイも、美味しいごはんいっぱい作ったら、またお買い物させてくれるの~?』
『俺も! 新しい美味いもん食えるなら賛成だぜ!』
「お前たち……! 人の苦労も知らないで……!」
ムコーダは頭を抱えた。だが、白金貨5枚という破格の報酬と、フェルたちの強い押し、そして何よりヴァンの断らせない圧に押され、ついに折れるしかなかった。
「……分かりましたよ。引き受けます。でも! 料理のジャンルや出し方は僕に一任してくださいね! 貴族のフルコースなんて作れませんから!」
「勿論だとも! 君の好きにしてくれて構わない。セアト村の誇る大宴会、楽しみにしているよ!」
ヴァンは満足そうに微笑み、颯爽と部屋を去っていった。
◆
「はぁぁぁぁ……大変なことになっちゃったぞ……」
一人残されたムコーダは、ベッドに倒れ込んだ。
領主会議の料理。集まるのは腹黒い貴族や領主たちだ。下手にマナー違反だの格調が低いだの言われたら、どんな難癖をつけられるか分かったものではない。
「とにかく、ネットスーパーで何か貴族受けしそうな高級な食材を調達するしかないか……」
ムコーダは半ば諦め顔で、いつものように『ネットスーパー』のスキルを起動した。
ボッ……!
「うわっ!?」
いつもと違う、眩い光が操作パネルから溢れ出した。
画面には大きなファンファーレの絵文字とともに、見たこともない通知メッセージが躍っていた。
『祝・ネットスーパーレベルアップ! 店舗拡張が行われました!』
「え……? レベルアップ!? このタイミングで!?」
ムコーダが目を見開いて画面を注視すると、そこには新しく追加されたテナントショップのロゴマークが、ズラリと並んでいた。
『新規オープン店舗一覧』
1. 【角上魚類(かくじょうぎょるい)】
――日本一の魚屋! 鮮度抜群の旬の魚介、豪華刺身盛り合わせ、特大の蟹や海鮮丼がズラリ!
2. 【オーケー(OKストア)】
――高品質・Everyday Low Price! 圧倒的コスパの高品質精肉、ジャンボピザ、惣菜の大群!
3. 【成城石井(せいじょういしい)】
――世界のグルメが集う高級スーパー! 至高のチーズ、生ハム、ワイン、極上スイーツ、プレミアム惣菜!
4. 【KALDI COFFEE FARM(カルディ)】
――珍しい輸入食材とスパイスの宝庫! 生ハム、ハーブ、エスニック調味料、魅惑のお菓子!
5. 【KURAND(クランド)】
――全国のクラフト酒が集結! 希少な日本酒、果実酒、プレミアムクラフトビール、リキュール専門コーナー!
「な……なにこれぇぇぇぇぇぇぇええええっ!??!?」
ムコーダは叫んだ。
「角上魚類!? 成城石井!? カルディにクランドまで!? 嘘だろ、ラインナップが神がかりすぎてる!!」
今まで「普通の街のスーパー」レベルだったネットスーパーに、一気に「専門特化型の最強店舗」が5つも同時オープンしたのだ!
「角上魚類があれば、生で食べられる超新鮮な高級魚や大トロ、タラバガニが手に入る! 成城石井があれば、貴族が泣いて喜ぶ本物の熟成チーズや生ハム、トリュフソースが揃う! カルディのスパイスやハーブを使えば、異世界の肉料理が一気に宮廷料理の味に化けるし……クランドの日本酒や限定果実酒があれば、酒好きの貴族なんて一発でコロリだろ!?」
『む? ムコーダ、何やら妙に興奮しているな。また美味いものが増えたのか?』
フェルがピクッと耳を立てる。
『わーい! 新しいお店~? スイ、甘いお菓子食べたい!』
『俺は美味い魚がいい! 魚のデカいやつ!』
「みんな……これならいける! いけるぞ!!」
ムコーダの瞳に、メラメラと炎が宿った。
白金貨5枚、そして属性魔法の指輪。それらを安全にゲットするため、ムコーダの「本気」スイッチが入ったのだ。
「貴族ども……日本の食文化と、最強スーパー連合の恐ろしさを思い知らせてやる……!」
角上魚類の極上本マグロと特大ボタンエビ。
成城石井の生ハムメロンとプレミアムチーズプラッター。
OKの圧倒的ボリュームの熟成ステーキ肉。
カルディの特製ハーブソルトとトリュフオイル。
そして、クランドが誇る金箔入りの高級純米大吟醸と、極上果実酒!
地球の食の技術と、異世界の最高級魔獣肉(ワイバーン&ロックバード)の奇跡の融合宴会メニューの構想が、ムコーダの頭の中で次々と組み立てられていく。
「待ってろよ領主会議! 最高の宴会を見せてやる!!」
最強の従魔たちと、新開店した最強ネットスーパーを携え、ムコーダの「セアト村・領主会議グルメ無双」の幕が今、静かに切って落とされたのだった――!
セアト村の領主館大会議室。
普段は村の開拓計画や防衛体制の協議に使われるその重厚な大ホールは、今やピリピリとした緊迫感と暗雲立ち込める政治的思惑に包まれていた。
「――おいおい、ネイ家のご落胤と聞いて来てみれば、随分と小綺麗な真新しい館を用意したものだな。だが、いくら建物を新しく整えたところで、辺境の貧困村であることに変わりはあるまい?」
豪奢な絹の服に身を包んだ肥満体の男――近隣の領主であるグラネル子爵が、鼻で笑いながらワイングラス(中身は薄くて酸っぱい安物だ)をあおった。
「ふむ。税の減免を申請してきたと聞いたが、セアト村が独自に街道を拡幅し、商人を引き込んでいるという噂も聞く。若い領主殿は、いささか分不相応な野望をお持ちのようだな」
冷ややかな視線を投げるのは、中央からの監査を兼ねてやってきた商業都市の有力貴族、バルトロメウス伯爵である。
周囲を取り囲む他の領主やその従者、付き添いの料理人たちもまた、品定めするように幼き領主ヴァン・ネイ=セアトを凝視していた。
一触即発のピリついた雰囲気。
セアト村の急速な発展を妬み、あるいはその利権を貪ろうと狙う貴族たちの腹黒い思惑が交錯する中、幼き領主ヴァンは不敵な笑みを崩さない。
「ははは、皆様、遠路はるばるセアト村へようこそ。ご挨拶はこれくらいにして、まずは我がセアト村がご用意いたしました『もてなしの宴』をご堪能いただきたい。本日の料理は、私の特別なゲスト……伝説の魔獣をも従える異能の料理人による、至高のフルコースでございます」
ヴァンが優雅に手を叩くと、重々しい大扉がゆっくりと開いた。
「(……うわあ、めちゃくちゃ空気重いんだけど! なんで俺がこんなドロドロした貴族の宴会でメシ作らなきゃいけないんだよー!)」
給仕の制服を着せられ、トレイを手にしたムコーダ(向田剛志)は、心の中で叫びながら冷汗を流していた。
背後には、万が一の暴動(?)に備えて別室で待機しているフェルとドラちゃん、スイの気配を感じるが、今の問題はこの目の前の腹黒貴族たちである。
「よし……ネットスーパーで解放された『最強スーパー連合』の力を借りて、さっさとこの宴会を終わらせてやる!」
ムコーダは意を決し、一歩を踏み出した。
### 【一の皿:前菜】
**カルディから取り寄せた生ハムとランプフィッシュキャビアのライムリーフドレッシング和え**
「まずは前菜でございます。しっとりとした塩気の生ハムに、黒く輝くランプフィッシュキャビア。そして特製のハーブドレッシングを添えております」
給仕たちによって運ばれた美しく繊細な一皿。
極薄にスライスされた熟成生ハムの上には、宝石のように黒く光るキャビアが散りばめられ、そこにエメラルドグリーンの涼やかなドレッシングが回しかけられている。
「ほう……? この黒い粒は魚卵か? だが、この香りは……なんだ? 普通のシトラスでも無ければ、我が領地のハーブとも違う……」
ヴァンの傍らに控える執事長エスパーダが、鋭い目つきで皿を観察し、ドレッシングをほんの少し口に含んだ。
その瞬間、エスパーダの眉根が跳ね上がった。
「な……ッ!? この爽やかでオリエンタルな、脳を突き抜けるような清涼感は……『ライムリーフ(柑橘の葉)』か!? 柑橘の果汁ではなく、葉の持つ爽快な香気だけを完璧に抽出してオイルと調和させているだと……!? このようなドレッシングの技法、王都の宮廷料理人すら知らんぞ……!!」
驚愕するエスパーダを余所に、貴族たちも一口口運ぶ。
「うむっ!? なんだこの生ハムの濃厚な旨味は! 塩気が絶妙で、そこにプチプチとしたキャビアの食感と、この清々しいハーブの香りが絡みついて……食欲が爆発しそうだ!」
「美味い! 暑さを忘れるような爽やかさだ!」
先ほどまで冷やかだった貴族たちの顔に、一気に驚嘆の色が広がる。
### 【二の皿:スープ&麺】
**OKから取り寄せた加賀野菜マーラータン・刀削麺入り**
「続きまして、温かいスープ料理でございます。加賀野菜とモチモチとした刀削麺を入れた『マーラータン』でございます」
運ばれてきたのは、真っ赤なスープから香ばしい花椒(ホアジャオ)と唐辛子の香気が立ち上る深皿だ。
中には色鮮やかな加賀野菜(蓮根、加賀太きゅうり、五郎島金時など)と、独特の削り出しによって作られた極厚の太麺が入っている。
「ぬぐっ……!? なんという刺激的な匂いだ! 鼻がツンとするぞ!」
グラネル子爵が恐る恐るスープをレンゲですくい、口に運ぶ。
ズズッ……。
「……ッ!!?? か、辛いっ! 辛いが……う、うまいっ!? なんだこの痺れるような感覚はっ!!」
舌を刺激する四川風のシビカラ(麻辣)!
花椒の痺れるスパイスと唐辛子の辛味、そしてスープに溶け込んだ野菜の甘みが爆発する。
モチモチとした刀削麺にスープが良く絡み、貴族たちは「辛い! 辛い!」と汗を吹き出させながらも、レンゲとフォークを止めることができない。
「ハァ……ハァ……! 舌が痺れるのに、箸が止まらん! この太い麺の食感も不揃いで実に面白い!」
「野菜の甘みと辛味のコントラストが凄まじい……! これぞ病みつきという奴か!」
シビカラの「沼」にはまり、なりふり構わず麺をすする貴族たち。セアト村のピリついた空気は、もはや汗をかきながらスープを飲み干す熱気へと変貌していた。
### 【三の皿:魚料理】
**角上魚類から取り寄せたのどぐろの炙りカルパッチョ**
「お次は魚料理となります。日本の魚屋の名門『角上魚類』より取り寄せました、白身のトロと称される『のどぐろ』の炙りカルパッチョでございます」
出されたのは、表面がサッと炙られ、美しい脂が浮き出た透き通る白身魚のスライス。
「魚だと……? 陸の孤島であるセアト村で魚料理など、干物か塩漬けくらいしか出せんはず……」
バルトロメウス伯爵が半信半疑で身を口に運んだ。
次の瞬間、伯爵の目が丸くなった。
「な、なんだこの脂の乗りは……!? 口に入れた瞬間、まるで極上の肉のように溶けてなくなったぞ!?」
「海の魚……!? 臭みが一切ない! それどころか、炙られた皮目の香ばしさと、溢れ出す上品な脂の甘みが……!」
海から遠く離れた内陸の貴族や、セアト村のヴァンたちにとって、新鮮な生の海魚など生まれて初めての体験である。
鮮度保持技術が極限に達している『角上魚類』ののどぐろは、彼らの「魚=臭くて固い」という常識を木々に砕いて見せた。
「素晴らしい……! これが海の本物の味なのか……!」
### 【四の皿:サラダ】
**カルディのパンチェッタとOKの京野菜シーザーサラダ(成城石井シーザーサラダドレッシング)**
「口直しに、カルディの熟成パンチェッタと、OKより仕入れた旬の京野菜(万願寺とうがらし、聖護院かぶなど)のシーザーサラダでございます。成城石井特製のプレミアムドレッシングでお召し上がりください」
シャキシャキとしたフレッシュな野菜の上に、カリカリに炒めた旨味たっぷりのパンチェッタ(豚バラ塩漬け)。そこに濃厚なチーズとニンニク、ブラックペッパーが効いた成城石井のドレッシングが惜しげもなくかけられている。
「うむ! このカリカリとした塩気の効いた肉と、瑞々しい野菜の対比が絶妙だ!」
「そしてこの白いドレッシング……チーズの風味が極めて濃厚で、酸味とのバランスが神がかっているぞ!」
ヴァンはこのサラダの異常なクオリティに目をつけると、すぐさま横の給仕長ティティに耳打ちした。
「ティティ……あの白いドレッシングとパンチェッタの製法を記録しろ。我が領地の厨房で再現させるんだ」
ティティは小声で、しかし絶望的な顔で答えた。
「領主様……無理でございます。あのドレッシングに含まれているチーズの熟成度、そして謎のスパイスとエマルジョン(乳化)の滑らかさ……我が館の料理人どころか、王都の宮廷料理長を連れてきても再現は不可能と判断いたします……!」
「な、なんだと……!? 異世界の技術、恐るべし……!」
### 【五の皿:肉料理(メイン1)】
**ほりにしのスパイスで焼き上げたブラッディホーンブルのサーロインステーキ**
「メインの肉料理一皿目です。超危険度魔獣『ブラッディホーンブル』のサーロインステーキ。万能調味料『ほりにし』のスパイスでシンプルかつ豪快に焼き上げました」
ドォン! と運ばれてきたのは、極厚のステーキ肉!
表面には数多のハーブとスパイスがまぶされ、食欲をそそる芳醇な香気を振りまいている。
「ブラッディホーンブルだと!? あのAランクの凶暴な魔獣の肉か!?」
ナイフを入れると、柔らかく肉汁が溢れ出す。
一口食べた瞬間、会場全体に悲鳴のような歓声が上がった。
「な、なんという肉の柔らかさ……! そして、この肉に合わされているスパイスは何だ!?」
「醤油の旨味……塩気……ニンニク……そして何十種類ものハーブが完璧な黄金比で配合されている! 肉の旨味を何百倍にも引き立てているぞ!」
貴族たちはこぞって肉にかぶりつき、指についたスパイスまで舐めとる始末だ。
(※ちなみに、この時ほりにしの味に衝撃を受けた貴族たちは、後に自領の料理人に「この万能スパイスを再現せよ!」と命じ、料理人たちが塩と醤油パウダーとハーブの調合で発狂し、歴史的な「スパイス再現の壁」にぶち当たるのは後のお話である)
### 【六の皿:中華肉料理(メイン2)】
**コカトリスのよだれ鶏・カルディのガチ中華よだれ鶏のタレ**
「メイン二皿目、コカトリスの胸肉を極限まで柔らかく蒸し上げた『よだれ鶏』です。カルディの本格四川よだれ鶏のタレをたっぷりかけております」
しっとりと蒸されたコカトリスの肉に、ラー油と黒酢、ナッツ、五香粉(ウーシャンフェン)が効いた深みのある赤黒いタレがたっぷりとかかっている。
「思い出すだけで『よだれが出る』ほど美味いことから名付けられた料理でございます」
一口食べたティティが、その場で目を見開いて震え出した。
「な……なんという柔らかな鶏肉……! そしてこのタレ! 黒酢のまろやかな酸味、ラー油の辛味、そしてナッツの香ばしさとエキゾチックな香辛料のハーモニー……! 美味い、美味すぎる!!」
ティティは宴会の裏で、こっそり皿に残ったタレを小瓶に回収し、厨房で必死に舐めながら再現に挑むこととなるが、カルディのガチ中華タレの複雑な調合を解明できず、数日間にわたって四苦八苦することになるのだった……。
### 【七の皿:締めのご飯】
**オークジェネラルの魯肉飯(ルーローハン)**
「締めのご飯ものです。高級魔獣オークジェネラルの肉を甘辛く煮込み、ふっくらと炊き上げた白米の上にのせた『魯肉飯』でございます」
五香粉の甘い香りと、煮込み豚肉のトロトロした脂、そしてツヤツヤと輝く謎の白い穀物(米)。
「む……? この白い粒粒は何だ? 麦でも豆でもないようだが……」
恐る恐るスプーンで肉とともに米を口に運んだ貴族たち。
次の瞬間、激震が走った。
「うまああぁぁぁぁいっ!! 何だこのモチモチとした穀物は! 甘辛いタレと豚肉の脂を吸い込んで、最高の噛み応えと旨味を生み出しているぞ!」
「米……? 米というのか!? パンや芋など比ではない、肉料理の最高の相棒ではないか!」
未知の穀物「米」の存在に、貴族たちは大絶賛。茶碗を綺麗に平らげ、お代わりを要求する声が続出した。
### 【八の皿:デザート】
**成城石井の自家製プレミアムチーズケーキ**
「最後のお口直し、デザートでございます。成城石井自家製の『プレミアムチーズケーキ』でございます」
クリームチーズをふんだんに使用した濃厚な生地に、レーズンとアーモンドスライスがぎっしりと詰まった、ずっしりとしたチーズケーキ。
これが出された瞬間、宴会に参加していた数少ない女性貴族や、甘党の貴族たちが狂喜乱舞した。
「んんんんっ~!♪ なんという濃厚なチーズのコク! そしてサクサクとしたアーモンドとシュトロイゼルの食感!」
「自然な甘みとレーズンの酸味が完璧すぎるわ! こんな素晴らしいお菓子、人生で食べたことがないわ!!」
あまりの美味さに、女性陣は言葉を失い、うっとりと目を閉じながらケーキを味わった。
(※この宴会後、貴族お抱えの最高級パティシエたちが「成城石井のプレミアムチーズケーキ」の噂を聞きつけ、再現しようと試みるも、クリームチーズとカスタード、アーモンドパウダーの黄金比率に到達できず、全員が頭を抱えて四苦八苦することになるのである)
### 【至高の酒】
**クランド(KURAND)から取り寄せたデザート日本酒『オパール(Opal)』**
「そして本日のお料理に合わせますお酒は、クラフト酒専門ブランド『クランド』より取り寄せました、虹色の輝きをイメージした至高のデザート日本酒『オパール』でございます」
透明な美しいボトルからグラス注がれる、ほんのり黄金色に煌めくお酒。
「再醸仕込み」という、水の代わりにお酒を使って仕込む贅沢な製法によって生まれた、リッチな甘みとフルーティな香り。
「(なお、お子様である領主ヴァン様には、日本のコカ・コーラをご用意いたしました)」
ヴァンは「むぅ、僕だけ子供扱い……」と不満げにコーラをシュワシュワと飲んだが、その爽快なシュワシュワ感と甘さに「……う、美味いじゃないか」とすぐに笑顔になった。
一方、大人貴族たちは『オパール』を口に含み、絶句した。
「……な、なんだこの酒は……!? 宝石のオパールのように、口の中で幾重にも広がる複雑で優雅な味わい……! フルーツのような甘みと酸味が調和し、至福の余韻が残る……!」
「これまで飲んできたワインや最高級のシードルが、まるで水のように思えるほどの奥行きだ……! クランド……なんと恐ろしい酒造なのだ……!」
### 【結末:大混乱とオチ】
「「「素晴らしい……! 素晴らしい宴だぁぁぁぁぁっ!!」」」
宴会は大成功のうちに幕を閉じた……はずだった。
貴族たちは満腹と至福の酔いに包まれ、セアト村への難癖や政治的圧迫のことなど完全に忘れ去り、「セアト村は最高の宴を催す素晴らしい領地だ!」とヴァンの手を握り締めて大絶賛していた。
「ふふん、大成功だな!」と胸を張るヴァン。
……しかし。
本当の地獄は、宴が終わった直後の厨房裏で始まった。
「おい! どこだ!? あの神がかりし料理人はどこに行った!?」
「あの『ほりにし』というスパイスの秘密を教えろ!」
「あの白いチーズドレッシングのレシピを売ってくれ! 金ならいくらでも出す!」
「我が家の専属料理人になってくれぇぇぇぇ!」
料理の味に狂わされた貴族のお抱え料理人たち、そしてレシピの再現に失敗して半狂乱になったエスパーダやティティ、さらには「あの酒と米を我が領地にも回せ!」と叫ぶ貴族たちが、目を血走らせてムコーダを探し始めたのだ!
「ひぇぇぇぇぇぇっ!? だから嫌だったんだよぉぉぉぉぉっ!!」
裏庭へ全速力で逃走するムコーダ!
その背後からは、包丁やメモ帳を掲げた数十人の料理人と貴族たちが、凄まじい様相で追いかけてくる!
「待てぇぇぇ! ムコーダ殿ー! 頼むからあのよだれ鶏のタレの原材料だけでも教えてくれぇぇぇっ!」(絶叫するティティ)
「ライムリーフドレッシングの乳化の秘密をぉぉぉぉっ!」(必死なエスパーダ)
「無理無理無理! 全部ネットスーパーの既製品なんだよー! 説明できるかぁぁぁぁっ!」
庭にたどり着いたムコーダは、横になってリラックスしていたフェルに飛びついた。
「フェル! ドラちゃん! スイ! 緊急事態だ! 今すぐこの村を出るぞ!!」
『ぬ? なんだムコーダ、宴は終わったのか? 報酬の指輪は貰ったのだろうな?』
「貰った! ヴァン様からさっき受け取った! だから早く飛んでくれぇぇぇぇっ!」
『ちっ、騒々しい奴らめ。おい小童ども、乗れ!』
『わーい! おでかけ~!』
『ヒャッハー! ズバッと逃げるぜー!』
フェルの巨体が風を切り、セアト村の防壁を越えて大空へと跳躍する!
「ああっ! 逃げたぞ! 伝説の魔獣に乗って飛んで行ったぁぁぁぁっ!?」
「待ってくれぇぇぇ! 『成城石井』とはどこにある国なんだぁぁぁぁぁっ!?」
地面から遠ざかる料理人たちの悲痛な叫び声を背に、ムコーダは胸を撫で下ろした。
「はぁ……はぁ……死ぬかと思った……。やっぱり貴族絡みはロクなことがないな……」
空の上でふとポケットを探ると、ヴァンから受け取った「白金貨5枚」と「属性魔法の指輪」、そして角上魚類や成城石井の残った食材が入ったストレージのずっしりとした重みがあった。
「ま、まあ……報酬は凄まじかったし、ネットスーパーに『角上魚類』も『成城石井』も『OK』も『カルディ』も『クランド』も追加されたから、結果オーライ……かな?」
『ムコーダ! 逃げ切った祝いに、さっきのオークジェネラルのルーローハンとやらを我にも作れ! 米とやらも大量にな!』
『スイも~! あの甘いチーズケーキたべたい!』
『俺はのどぐろの炙りだ! あれ美味そうだったぞ!』
「はいはい、分かったよ! 次の町に着いたら、新しいお店の食材で特大パーティしようあ!」
常識外れのネットスーパーと、最強の従魔たちを従えたムコーダの異世界放浪の旅は、新たな「日本の至高の味覚」を携えて、これからも賑やかに続いていくのだった――!