脚は小型核融合炉の大出力を有効に駆動力にできるとし、モビルスーツの地上戦での戦術、ジオン軍の作戦、戦略も含めて考察します。
※作者本人による外部ブログからのテキスト転載・マルチポスト作品。
モビルスーツは、その始祖である「ザク」からコロニー内壁上、地上を二脚の関節駆動機構で移動をしています。
宇宙世紀前史の「ザ・グレート・ウォー」から、地上の装甲戦闘兵器は装軌(履帯、キャタピラ)でした。
では、何故、モビルスーツ「ザク」は移動手段として「脚」を使用するのか?
※作者本人による外部ブログからのテキスト転載・マルチポスト作品です。
関節駆動 vs 装軌
戦車は装軌で地上を前進をする。
履帯は接地圧を下げ、不整地、軟弱地での移動を可能とし、砲弾でこねくり回された戦場で戦車を前進させる。
履帯の上には人類の偉大なる発明である車輪があり、大重量の鉄の塊りと内燃機関との間を効率的に取り持った。
これに対しザクは脚で地上を前進する。
生物が進化の過程で獲得した限定された回転範囲を持つ関節からなる脚である。
何故、ジオンは機械効率的な視点からは、まったく不利な関節駆動を採用したのか、その原因、歴史的背景、宇宙世紀に与えた影響を考察する。
地上兵器は小型核融合炉をどのように使用すべきなのか
ミノフスキー粒子工学により小型化された核融合炉、従来のエンジンから隔絶した出力/重量となるパワープラントを目の前にした時、兵器開発者は悩んだ。
装軌(履帯)では、その高出力を効率的に駆動力へ変換できないからだ。
低い接地圧は高速回転する履帯を滑らせ、大地を掴めず、高出力に見合う駆動力で地上兵器を押し出しすことができない。
この装軌ではオーバーパワーで扱いに持て余す核融合炉を、ジオンは関節駆動と結びつけたのだった。
核融合炉開発以前に大重量の地上兵器へ関節駆動を用いようとすると、常にパワ-不足となり、より効率的な装軌、装輪に比べてメリットを見出すことは出来なかった。
しかし、核融合炉は、このバランスを崩したのである。
人体プロポーションに近い脚の接地圧は履帯に比べ、はるかに高い値となる。
接地圧が高い、それは地面に足が沈み込むことになる。※1
しかし、足が地面に沈み込むことは、足と地面との間の接地力(グリップ力)を飛躍的に増加させた。
これは、核融合炉の高出力を確実に大地へ伝え、大重量のザクを前進させる駆動力※2になったのである。
有り余る核融合炉の出力は、機械的効率のデメリットを無視させ、装甲化され高火力を搭載した人体の10倍ものサイズのザクに戦術的に十分な機動力を与えるのである。
※1.足が沈み込むと足を地面から抜き出す時にエネルギーロスを生じさせる。この問題に対しても核融合炉を利用した。核融合炉の冷却で生じる高温高圧の空気を足底面から噴出、足と地面との間に空気層を設けて足と泥濘との剥離を容易にした。
※2.軟弱地や砂漠などの摩擦係数が低い土質では、足側面板を可動延伸して足底面と土を囲うポケットを形成、ポケット内の抱土を後ろへ蹴り出すようにしてグリップ力を確保する。
サスペンションとしての関節駆動
複数の関節機構は、全体として大きな可動範囲を得ることができ、スムーズな駆動力の発生とともに、サスペンション(懸架装置)にもなった。
装軌のサスペンション可動範囲(ストローク)は、車体サイズ、転輪、履帯に制約されるが、複数の関節は装軌サスペンションに比べ、上下、前後、左右に大きな可動範囲を持たせることができ、複数の関節の制御により動的応答も良好となる。
これは、装軌では不可能な高低差を持つ不整地での活動を可能とし、脚より上部の兵装プラットフォームの安定したスタビライザー機能にもなった。
連邦軍の装軌地上兵器
これらの関節駆動のメリットは小型核融合炉を前提としたものであり、ミノフスキー粒子工学でリードしていたジオンには、地上兵器における装軌から関節駆動への転換を決断、配備する時間が存在した。
連邦軍の開発局内部でも、関節駆動のメリットは十分認知されていた。
では、どうして、連邦の地上軍は、1年戦争中盤まで戦車でザクと戦ったのか?
これは、開戦前の連邦軍の主兵科はパレードと揶揄された体質のためである。
高位の軍人は平時の軍組織の官僚となり、変化を忌避した。
議会でも、誰もが責任を負わずに予算を決定できるよう、前例踏襲が続いた。
過去も現在も未来も、誰もが思い浮かべる「戦車」が正しい地上兵器であることが覆されることはなかった。
AMBACとの融合-そして人型へ
AMBAC(Active Mass Balance Auto Control=能動的質量移動による自動姿勢制御)は、宇宙空間での姿勢制御機構※3として開発されたものである。
ジオン開発局は、地上駆動装置としての関節機構とAMBACの質量移動機構とを融合させる。
一対の関節駆動肢を地上移動用およびAMBAC用にしたのである。
さらに一対の関節駆動肢へウェポンを搭載、可動可能なセンサーポッドを機体外部へ装着。
ここに人体シルエットに近い人型、機甲兵器としては異形のモビルスーツのデザインが完成した。
※3.一対の脚をそれぞれ逆方向に質量移動、機体は角運動量保存から相対的に脚と逆方向に回転、脚の質量移動の方向を変えて回転静止。
ザクの地上戦での運用方法
ジオン地上軍のドクトリンは、連邦軍とは異なるものだった。
それは生まれ育った地上が軌道上の人口的に造られたものであることの影響が伺える。
ザクの戦略上、作戦上の機動はガウによる空挺降下によるものだった。
このガウによる空挺降下は軌道からの降下の延長にあたるものである。
地上戦開始直後の軌道降下作戦、大きなクロスレンジを有するHRSL(大重量強襲可帰還揚陸艇)による地球上への降下機動には自由度があり、奇襲、戦力の集中、柔軟な運用を可能とした。
そのため短期間で降下堡、制圧地域、占領地域を得ることができたのである。
その後は地上から発進する無限の航続距離のガウで同じ機動を繰り返したことになる。
ミノフスキー粒子散布下でのガウによるザク、マゼランアタックの空挺降下※4は連邦軍を翻弄し、戦闘開始前の段階で、その両軍の配備状況はジオン軍へ戦略、作戦のアドバンテージを与えるものになっていた。
この、ガウによる空挺降下に先立つ前、または戦況の推移により、無尽蔵とも思える爆弾を搭載したガウが地上へ絨毯爆撃を行う。
この絨毯爆撃は、連邦軍が存在する場所、兵站の結節点、連邦軍の重心に限られたものではなく、無人の原野にも行われた。
絨毯爆撃の跡は、無数の巨大なクレータ、倒壊した建造物で覆いつくされる高強度の不整地になった。
高強度不整地では戦車含め従来型部隊の機動、運用が著しく低下させられる。
相手も同じ戦車なら同じ条件、しかしジオン軍は戦車ではなくモビルスーツだった。
高強度不整地はジオン軍にとって連邦軍への拒絶地帯として働き連邦軍が意図する作戦機動を阻止し、ジオン軍の意図する作戦機動をフリーハンドにした。
高強度不整地での戦術戦闘はモビルスーツのワンサイドゲームにならざるを得なかった。
ジオンは地上に自分達の居心地が良いフィールドを人工的に造り上げたのである。
ジオン軍は、モビルスーツの開発、実戦投入だけでなく、戦略、作戦上のパートナーとなるガウの配備、空挺運用にも成功した。
連邦軍は大規模な戦車の空挺運用を実現できなかった。戦車部隊が駐屯する地域の政治バランスが、これを妨げたのである。
※4.ザクは背部スラスター、マゼランアタックはマゼラントップのVTOLエンジンの噴射と衝撃吸収パレットの併用で軟着陸した。
ジムの登場とジオン地上軍の終焉
壊滅的な状況は、連邦軍を組織としての生存へ向かわせた。
開戦前ならあり得ないなペースで強引にV作成が遂行され、連邦軍にジムが配備されると、地上では、あらゆる地形が戦場となり、戦闘は関節駆動で高速に機動する巨人たちのものになった。
兵器のアドバンテージによるジオンの優勢は失われ、国力が戦場を支配するようになっていったのである。
以下の解説図
図1.関節駆動開発初期段階の簡易モーション解析結果
解析モデルの「脚」は「作業機のアーム」を流用している。
これは、グリップ力をイメージし易くし関節駆動の優位性をアピールするため。
バケットの内部のラインは、バケット内に設けた可動底板で土質と抱土量と駆動力を調整する。
「M・I/NFR」:ミノフスキー・イヨネスコ核融合炉(Minovsky-Ionesco Nuclear Fusion Reactor)
図2.ザクの可動延伸する足側面抱土プレート(概念図)
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