闇のカードが手元にあるが、私は平凡な人生を送りたい。   作:瑠璃色砂糖月

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7話 脳筋部長、データ系副部長、闇討ち部員

 まずは道明寺(どうみょうじ)先輩……なんだけど。

 道明寺先輩が対戦卓(バトル・ボード)に置いたデッキに若干の不安を覚えた。

 千草(ちぐさ)先輩を手招きして顔を近づけて、口元を隠しながらひそひそと問いかけた。

 

「千草先輩、道明寺先輩のデッキって……」

「? いつもの赤デッキですけど、それがどうかしました?」

「アッはい了解です」

 

 やべぇ負け確だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【蜂莱女帝 ヴェスパ・レガリア】でアタック……」

「クソオオオオオオオオッ!!!」

 

 ひっでぇバトルだった。

 相手が「えっ弱……雑魚……歯応え無(な)……」と思っているのがよく分かる微妙な顔をしていた。

 いや本当にひっどいバトルだった。

 

 道明寺先輩はとにかく脳筋なプレイスタイル。

 モンスターを出したら攻撃。とにかく攻撃。攻撃攻撃攻撃、攻撃こそがパワー。パワー is TIKARA。チカラ ハ サイキョウ☆

 みたいな感じのヘタクソである。

 だから、相手の仕掛けたトラップやフラッシュで使われるスペルに引っかかりまくる。

 そして負ける。

 もうここまで定型で出来上がっている。

 

 椅子から崩れ落ちた道明寺先輩は、若干細かい砂粒のついたタイルの上を這いながら私達の方に寄ってきた。

 とりあえず制服汚れるからやめません? それ。

 

「くっ……ち、千草ぁ……後は頼んだ……!」

「ええ勿論、任せてください道明寺くん! あなたの仇は僕が必ず取りますから!」

 

 データ系男子でも男子高校生なだけあり、千草先輩もノリが良い。この寸劇もどきみたいなやり取りをスマートにこなして、対戦卓(バトル・ボード)にデッキを置いた。

 

 私はその様子を眺めたあと、やっぱりなんだか嫌な予感がして、床の上であぐらをかいてデッキに頭を下げて謝る道明寺先輩に話しかけた。

 

「道明寺先輩、千草先輩のデッキは……」

「? いつもの青デッキだと思うが、それがどうかしたのか?」

「アッはーい。了解です」

 

 負け確ですね。知ってた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「手札誘発(ハンドトリガー)!【沈黙の暗殺者(サイレント・キラー) アサシン・トウロウ】を召喚!」

「づあああああああああっ!?!?」

 

 即負け2コマやめてほしい。

 本当にひどい。ひっでぇ本当に。

 寸劇のレベルだけ上げていくのやめてほしい本当に。最初は笑うの堪えていたけど、今はもう目が死に始めてるんですよ先ぱぁい……。

 

 千草先輩は……うーん……なんというか、予想外に非常に弱いし、“いざ”ってときの博打ができない。

 データ系男子らしく、ある程度のコンボやデッキのコンセプトも把握している。だが、データ系だからこそ、0か100かじゃないと動けない。

 なんて言えばいいんだろう……。

 例えば、自分のターン中、相手の手札が4枚あったとする。その4枚のうち、自分の行動を妨害できるカードが何枚あるのかをデッキの枚数や墓地、フィールドに置かれたカード……まあその他もろもろを元にして計算したとする。

 で、まあ妨害カードがおそらく25パーセント……だから、手札に1枚は入っている可能性があると計算できたとする。

 つまり、アタックしたとしても75パーセントの確率でアタックが通る。

 だから、アタックするのが正解……と、ここまではよしとする。

 だけど、千草先輩はここでさらに深読みを始める。「もしここで25パーセントの確率を引いて妨害カードが出てきたらどうしよう」と日和(ひよ)ってしまうのだ。

 そこでウンウンと悩み始めて、結局相手にターンを渡してしまう。

 

 で、負けると。

 これも定型です。よくあるパターン。

 

 こういうところが旲(ひかげ)高校の生徒だな、と思う。流石ソルクラ弱小高。

 パックたくさん剥いてるしバトルもしてるんだから、少しくらい上達してもいいようなものだが……。

 

 なんてことを考えていたら、タイル上に倒れ込んだ千草先輩が這いつくばいながら道明寺先輩の元にやって来ていた。

 だからなんで制服汚すような真似するの? 男ってよく分からん……。

 

「くっ……! す……すいません道明寺くん……! 敵討ち……できませんでした……! なんの成果も、得られませんでした……っ!!」

「千草……っ! ありがとう! お前はよく頑張った!!」

「道明寺くん……っ!!」

 

 ひしっ、と抱き合い寸劇もどきを繰り広げる2人に、なんて声をかけようかなと考えていたら、「おい」とテロリストから声がかかった。

 

「お前はどうするんだ?」

「私は使えるデッキがありませんので、不戦敗という形になりますね」

 

 まあ、一応先輩方からデッキを貸して貰うという手がある……と言いたいところなのだが。

 

 残念なことに、私が闇のカード以外に触れると弾かれるのだ。めちゃくちゃ強い静電気でも起こったかのように。

 

 手持ちの相棒達に確認してみたところ、どうやら一部の闇のカード(特にミザリィやノワールとか)が弾いているから起こる現象なんだとか。

 ついでに一般のカードからも拒絶されているらしく、以前無理矢理に使おうとしたとき、カードがボロボロと崩れて塵になってしまった。

 そこまでして私に使われたくないのかと思った。本当に詰んでる。

 まあ、そういう理由もあって、この場でのテロリストとのバトルはスキップせざるを得ないのである。

 

「ハッ! デッキも持ってねぇのにカドショに来てんのかよ」

 

 テロリストは私をバカにするように笑ったあと、立ち上がって【カグツチ・ドラゴン】のカードを懐に入れた。

 

「じゃあ、このカードは貰っていくぜ。サツに通報はすんじゃねぇぞ? ギャハハハハハッ!」

「月のない夜には背後に気をつけてくださいね」

「ハア? デッキもねぇくせに何言ってんだテメェ?」

 

 テロリストは最後までこちらを嘲笑いながら立ち去っていった。

 

 うーん……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここで使えるデッキがないだけなんだけどな。




○革命の尖兵(レヴォステラ・スピアヘッド) シュピア
・種類:モンスター
・系統:革命軍/造兵
・属性:黒
・コスト:2
・シンボル:黒1
・BP:2000
【カードテキスト】
・【誘発】
 このカードは、自分のフィールドにモンスターがいないとき、手札からコストを支払わずに召喚できる。
・【召喚】
 相手のフィールドに存在するBP3000以上のモンスター2体をランダムでゲームから除外する。
・【常時】
 このモンスターが破壊されたとき、フィールドに「革命の幼皇 エトワール」が存在するとき、このカードを「革命の幼皇 エトワール」の下に置くことができる。
・【特殊勝利】
 このモンスターが「革命の幼皇 エトワール」の下に置かれているとき、「革命の幼皇 エトワール」の下に置かれているカードが10枚以上なら、自分はこのゲームに勝利する。
【フレーバーテキスト】
「エトワールさま! ボクも戦うよ! いっくぞーーー! やーーー!」
 おもちゃの槍を持ったブリキの兵隊。
 いつも元気いっぱいで、やんちゃ過ぎるのが玉に瑕。
 でも、戦場でも勇敢に、前線を駆ける一番槍。
 ――『星の革命戦記』・革命軍所属一覧表より
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