久し振りに物書きをしてしまった。
皆様の妄想をお待ちしております
まだ絆読めてないけど被ってたりするんでしょうか。
ネタバレの配慮はありません。何故なら神すぎて読んでいない人類はいないため。
「それでは、行ってくる」
「気を付けるんだよ~」
みんなで朝ご飯を食べ、片付けて。玄関でちょっと大きめの鞄を持つ寧月に蕾叶が声をかければ、寧月はこくりと頷きドアを開ける。
閉まる音がして暫くすれば洗い物が終わり、流れる水の音が聞こえなくなり静寂へ。しかしそんなものは一瞬で、似合わないそれを破ったのはちぇりだった。
「蕾叶、あなたいつの間にそんなの買ったんですか?」
「一昨日。どう、似合ってる?」
「はい、似合ってますよ。ちえりほどではないですが」
「あはは、ちえりもかけてみる?」
蕾叶がかけているのはサングラス。本当にいつの間に買ったのか、似合ってるのかどうかで言うならば……うん、まぁ、似合ってる。
なんでか彼女の事を見れないでいれば、突然目の前が暗くなる。
「ちょっと、びっくりするからやめなさいよ」
「ごめん、でも心玖も似合うと思ってさ」
恥ずかしいことを何でもないかのように言うやつだ。それがムカついて、煩くて、嫌になる。自分の耳に触れるちょっとした違和感も、それを隠すように口元に持ってきたら口角がほんの少し上がっていたことに気付いたのも、全部。
「あれ~、心玖~? もしかしてちょっと恥ずかしがってる~?」
「う、うるさい! それより、早く行かないと寧月の事見失っちゃうわよ」
暗くなった視界を明るくして、サングラスを返そうとすれば蕾叶はいまだにやけ面。イラッとしたから無理矢理、やり返すようにかけてあげれば、隙間に覗く彼女の瞳が見えて。
「ほ、ほんとうにいくんですかぁ……?」
「当然です。部下の仕事を見るのも連合トップの仕事ですから」
「べ、別に全員で行く必要ないじゃないですかぁ~。私が残っても.……」
「トップが出るんです。部下がサボっていいわけないでしょう」
当然、あたしも行く。心配だから。寧月がというのも無くはないけれど、彼女ならば多分大丈夫だろ。あたしが心配なのは寧月を教えたのは蕾叶だということ。
流石にと思いはすれ、洗濯機の前例があるがゆえに信じきれていない。ふぅ、と一息つけば浮かされたような気持ちも落ち着いて。
「よし、それじゃあ行こうか。寧月のはじめてのお使い見守り隊!」
おー、と手を上げ彼女たちも外に出る。蓬咲さんはちぇりに引き摺られてるけど、それが何だか可笑しくて。先ほど引いた熱が別の形で甦る。
騒がしくて、煩くて、それでもやっぱり。
「な、なんだか悪い事してる気分です~」
「何言ってるんですか、ちえりの部下ならシャキッとしてください」
「うう、よわよわメンタルでごべんなさい~」
すぐに出たからか、寧月の後につけることは簡単だった。隠れるようにしているのだから、悪いことではあるのだろう。
実際、中学生の後をつける高校生と大学生とだけみれば、ファミリーだとしてもである。
壁から顔だけを出して覗く彼女たちを置いて、その壁に寄りかかる。寧月の事は別に信頼している、そう、信頼できないのは蕾叶だから。
ではあれはど、心配はしている。一体どうだったか、信頼して欲しいとは思う頃の筈である。では心配して欲しいとは、多分過ぎた程かもうすぐか。
なんて、考えては見れど自分勝手だ。どうであれ、なんであれ、この馬鹿達はそんなことを微塵足りとも考えてはいないのだろう。ああだからこう、こうだからどう。理由なぞ後で。
「尾行は蓬咲が一番慣れてるんですから、しっかりしてくださいよ」
「へぇ、蓬咲さんが尾行……なんだか意外ね」
ちぇりの言葉が、なんだか気になった。不思議なことだ。あの蓬咲さんが尾行などと、そんなこと……しないとは言いきれないけれど、出来なさそうだとは思ったから。
「慣れてるって、一回しかないじゃないですか。それに結果も.……」
「なに言ってるのさ、大成功だったじゃん」
「その話、ちょっと気になるな」
蕾叶が抱きついて、蓬咲さんからはぐえと蛙みたいな声が零れていた。
あたしの知らないこと。私が来る前か後か、それすらも知らないくて、それがほんの少し嫌だと思えてしまうのは恐らく。
ちょっとだけ覗き込めば、ひぃと蓬咲さんは声を溢した。
「心玖の社内ライブの情報を得たのは蓬咲なんだよ。だから、蓬咲は尾行の天才!」
「それって。あたしを着けてたってこと?」
「うう、そうしたかったんですけど、実際に着けたのは鈴木さんの方です……」
「でも、そのお陰で心玖を取り返せたんだ」
言葉はでなくて、口からは息が零れるだけ。こいつらから得られる知らないことは、くだらないことかあたしのために何をしたか。真っ直ぐで、透明な。
蕾叶やちぇりがやったというのと、蓬咲さんがやったというのは、うん。きっと違うことだ。変わりたいと、願えた彼女だから。
であるからこそ、聞いたそれに返す言葉が思い付かなくて。
よくやったと褒めるのは……多分違って。ああでも違くはないのだろう、あたしからであるからであって、ちぇりならばきっと、溺れるくらいには褒めるから。
「蓬咲さん」
「な、なんですか」
「ありがとう」
「な、何がですか! 急に言われると、こ、怖いです」
ああもう、隠せはした筈なのに。でも言わないわけにはいかないから、ニヤつく蕾叶を睨み付けはすれど、嘘はない。
奇声を上げはじめた蓬咲さんに対して、蕾叶がサングラスをかけるとそのテンパりかたは加速して。
「蕾叶さん! く、暗いです、怖いです!」
「すぐ慣れるって。それに蓬咲も似合ってるよ、敏腕スパイみたいで」
「ちえりの部下なら焦らないでください。それに、大きい声を出すと寧月に気付かれちゃいますよ」
ちぇりのその声でぴたりと蕾叶と蓬咲さんの声が消えた。なんと思ったか、先程より縮こまって壁から覗いている。そろそろ寧月の事も見えなくなるだろうから移動しなくては。
「気付かれてないかな」
「さぁ。ですがちえりは連合トップで目立ちすぎるので、もう気付かれてるかもしれませんね」
「うう、よわよわ尾行ですびません……」
「ほら、早く移動しないと見失っちゃうわよ」
見失ったところでお使いを頼んだとこはいつもの商店街。道がわからなくなるということはないけれど……そういうことではないのだろうと、なんだかわかる気がして。
ああしかしバレてるかどうかと、気にすることに意味などない。こいつらだから気にしてるだけだ。特に蕾叶、こいつは何をするにもしたかもで。
でもあたしもほんのちょっと少しだけ。不安と心配と、さて後は。
気がつけば、あたしの前には誰もいない。
「あら寧月ちゃん。お使い?」
「ああ、今日の晩御飯に使うものを買ってきて欲しいと頼まれたのだ」
「偉いわね~。それで何買うの?」
「ええと……これを一つ頼む」
頭隠してという言葉があるが、それは今のあたし達のためのものだと思う。
柱の裏に隠れはしているが身体全体は隠せていなくて、振り返られれば一瞬で気付かれる。バレたくないなどとは言いつつも近くでないと声までは拾えないから、嫌な程に鳴る心臓はきっとあたしだけで。
「うう……寧月さん、もう私よりもきちんとできてますぅ……」
「ちえりの部下ですから当然です」
「あ、おまけ貰ってる。これからのお使いも寧月に頼んじゃおうかな」
おまけと称してちょっとだけ多めに貰って、さっきのお店ではお菓子を貰っていて。愛されてる、ああでもその気持ちはわかるから、笑みが浮かび上がってはくるものだ。
「ところで、寧月の買い物はまだ終わらないの? 随分と買っているように見えるけど」
「多分さっきので最後だと思う。寧月のはじめてのお使い祝いだからいっぱい作ってあげないとだからさ」
「それはいいけど、寧月に無理させるんじゃないわよ」
くっつくほどだった鞄は既に膨らみすぎて、寧月も真っ直ぐには歩けていない。祝いたい気持ちはわかりはすれど、無理をさせるのは別。
蕾叶にごめんと謝られるが、それはあたしに向けるものではないと言えば理解したのかしないのか。ああでもこいつは馬鹿ではあるけど馬鹿なりに、無遠慮であるくせに考えられるやつだと知っているから。
「みんな、何故いるのだ?」
そんな声がすれば、全員が一歩退いた。気を抜いたと言うには簡単だが、元より振り向かれれば隠れられぬものだったのだから、蕾叶が終わったと言った時点で場所を移すべきだったか。
「私はそんなに信頼できなかったか?」
「こ、これはその……うぅ」
「部下の活躍は見てあげないとですからね」
「これは信頼というより心配というか、ああでも……うーん、うまく言えないなぁ」
三者三様、しかし答えになっている奴はいなくて。
寧月に視線を合わせて、手を伸ばして。三人を馬鹿にしたけれど、あたしも別になんと言えばいいのかはわからない。
正解はわからないけれど、言いたいことはあって。
「よくやったわね、寧月」
「心玖、ずるいですよ!」
チェリが被せるように褒めれば、蕾叶も褒める。蓬咲さんもだ。あたし達を見る寧月の目は何を見ているのか。
逸らしはせず、赤らめもせず、見つめるだけ。
「ありがとう、でいいのだろうか?」
「ありがとうはこっちだよ。今度もお使いお願いしちゃおうかな」
「ああ、任せてくれて構わない」
「折角だしアイス食べながら帰っちゃおうか」
「これから夕飯でしょ。まぁ、買うのはいいけど食べるのは後でね」
荷物持とうかと聞いてみれば、帰るまでは持ちたいと言うから。
歩幅は小さく、足取りは軽く。寧月の出来ること、また一つ増えたね。
人の妄想を見るのは好きで、一家団欒が好きで、妄想が根付くと取れないので不定期で吐き出すかもしれませんし吐き出さないかも